メタバースのスポーツ業界における活用事例9選|メリットとともに徹底解説

コロナウイルス感染拡大の影響で、スタジアムでの観戦が制限されるなど、スポーツ業界は大きな打撃を受けています。

そんななか、ファンに対してオンライン上で様々な体験を提供できるメタバースの活用が、スポーツ業界でも注目を集めています。

 

実は既に、マンチェスターシティやソフトバンクホークスなどの有名スポーツチームや、アディダスやNIKEなどの有名スポーツブランドが、メタバースの活用を進めていることをご存知でしょうか? 

 

そこで今回は、メタバースのスポーツ業界での活用事例5選をご紹介します。

本記事をお読みいただければ、メタバースをスポーツ業界のビジネスに活用するためのヒントが得られるかと思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

スポーツ業界におけるメタバース活用の方向性

スポーツ業界におけるメタバース活用の方向性

スポーツ業界におけるメタバース活用の方向性として、主に以下の5つが存在します。

 

  • ①チームやブランドのプロモーションへの活用
  • ②仮想空間上での新たなファンコミュニティ構築
  • ③新たなスポーツ観戦スタイルの実現
  • ④選手・審判のトレーニングの質向上
  • ⑤メタバースを活用したNFTの販売

 

それぞれの方向性をわかりやすく説明していきます。

 

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➀チームやブランドのプロモーションへの活用

メタバース上でチームやブランドのコンテンツを用いたイベントを開催したり、ブランド独自のメタバース空間を構築したりすることで、プロモーションやユーザー接点の強化を行うことができます。従来の2Dでのデジタルコンテンツでのプロモーションに比べ、3Dでの没入感のある体験などを通じたプロモーションが可能なため、より高い訴求効果が期待できます。

 

そのため、スポーツ業界に限らず、アーティストやアニメ・漫画、ハイブランドなど様々な業界の企業がプロモーションへの活用に取り組んでいます。

②仮想空間上での新たなファンコミュニティ構築

メタバースの特徴である、ユーザー同士がチャットや音声会話、身振り手振りを用いて交流することにより、世界中のファン同士が繋がり、オンライン上での新たなファンコミュニティを構築することができます。既にオンライン上でのファンコミュニティは存在していましたが、3D空間でアバターを介して交流することで、よりリアルでの交流に近い感覚を提供することができ、更に強固なファンコミュニティが構築できるのではないかと期待されています。

③新たなスポーツ観戦スタイルの実現

メタバースを活用した新たなスポーツ観戦スタイルを実現し、観客により高い体験価値を届ける事が可能です。例えば、オンラインでは、メタバース上でのパブリックビューイングを実施し、家に居ながら他のファンと一体になって盛り上がりながら観戦をしたり、現地での観客向けには、ARを活用しプレー中の選手や試合のデータ、観客の声などをスマホ上で確認しながら観戦をしたりすることで、今まで以上に試合を楽しむことができます。

④選手・審判のトレーニングの質向上

選手や審判がヘッドマウントディスプレイなどを装着し、メタバース空間でのトレーニングコンテンツを利用することで、従来よりも臨場感があり、実践的なトレーニングを行うことができます。試合中の特定のシチュエーションを簡単に再現し、何度でもトレーニングを行うことが可能です。近年スポーツ分野でのデータ活用が進んでいますが、取得・蓄積されたデータを基に、メタバース空間内でのトレーニングも更に発展していくと考えられます。

⑤メタバースを活用したNFTの販売

メタバース空間にアクセスする権利を特典とし、NFTを販売することで、コロナ禍で大打撃を受けるスポーツ業界の新たな収益源の獲得や顧客エンゲージメント向上に繋げることができます。既にアディダスやNIKEなどのスポーツブランドやFCバルセロナなどのスポーツチームがメタバースを活用したNFTの販売を発表しています。

スポーツ業界におけるメタバースの活用事例9選

スポーツ業界におけるメタバースの活用事例は次のようなものがあります。

 

  • ①マンチェスターシティ:メタバース上にスタジアムを再現
  • ②福岡ソフトバンクホークス:メタバース上に球場を再現
  • ③福岡ソフトバンクホークス:ARを活用し新たな球場での観戦スタイルを実現
  • ④KDDI:メタバース上で熱狂しながらサッカー日本代表戦を観戦
  • ⑤NBA:審判のトレーニングにVRを導入
  • ⑥アディダス:NFTを活用したメタバース事業に本格参入
  • ⑦Black Box VR:VRを活用した体験型フィットネスジム
  • ⑧広島東洋カープ:試合観戦やファンとの交流を行えるメタバースアプリ
  • ⑨MLB:各球団のメタバースを一元化

 

それぞれの事例について分かりやすく紹介していきます。

 

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➀マンチェスターシティ:メタバース上にスタジアムを再現

マンチェスターシティ:メタバース上にスタジアムを再現
(画像:ソニー株式会社)

英国のプロサッカークラブであるマンチェスターシティが、ソニー株式会社と協力し、ホームスタジアムであるエティハドスタジアムの仮想バージョンをメタバース上に構築した。ファンは自由にカスタマイズ可能なアバターの姿でこのメタバースを訪れることで、選手やチームを身近に感じながら、ファン同士での交流を図ることができる。

 

今回の取り組みには、ソニーのソニーの画像解析技術やセンシング技術に加え、ソニーのグループ会社であるホークアイのエレクトロニックパフォーマンストラッキングシステムが活用される。これらの技術により、メタバース上に全選手の位置や骨格の動きレベルでのプレーの様子が、精度高く再現される。

 

マンチェスターシティとソニーはこの取り組みを通じて、バーチャルを融合した新たなスポーツエンターテイメントの構築と、特定のチームの選手やファンだけでなく、リーグ全体のファンの繋がりの創出を実現したいとしている。

②福岡ソフトバンクホークス:メタバース上に球場を再現

福岡ソフトバンクホークス:メタバース上に球場を再現
(画像:福岡ソフトバンクホークス)

福岡ソフトバンクホークスは、同チームのホーム球場であるPayPayドームをメタバース上に再現し、球場で様々なコンテンツを楽しめるサービスの提供を開始しました。

 

このバーチャルPayPayドームにはスマホやPCから、アプリDL不要でアクセス可能です。ユニフォームを着たアバターの姿で、観戦席から飲食店ブース、普段は入ることの出来ない選手のロッカールーム名で、球場内の様々な施設を巡ることができます。また、PayPayドームを訪れたファン同士で、チャットやジェット風船を飛ばすなどのアクションを通じて、盛り上がりながら応援することができます。

 

また、プロが投げた玉をほぼリアルタイムで疑似体験できる機能も提供しています。この機能では、バッターやキャッチャーの視点から、リアルタイムに投じられたボールを体感することができます。実際の投球データから球速や投球コース・変化の軌道などが再現されています。

③福岡ソフトバンクホークス:ARを活用し新たな球場での観戦スタイルを実現

福岡ソフトバンクホークス:ARを活用し新たな球場での観戦スタイルを実現
(画像:福岡ソフトバンクホークス)

福岡ソフトバンクホークスは球場に訪れた観客向けに、選手の成績などのデータが表示されるARサービスの提供を期間限定で行いました。観客がフィールドにスマホをかざすと、各選手のパネルが表示され、それらのパネルをタップすると各選手の成績などのデータを確認することができました。球場でも各種データを確認しながら選手たちのプレーを観戦するという、リアルとバーチャルがミックスされた新たな観戦スタイルにより、より試合を楽しむことができます。

 

また、ピッチャーがボールを投げる際にスマホをかざすと、投球の速度や起動が表示される「投球解析」もARを通じて体験することができました。

④KDDI:メタバース上で熱狂しながらサッカー日本代表戦を観戦

KDDI:メタバース上で熱狂しながらサッカー日本代表戦を観戦
(画像:KDDI)

KDDIは、メタバース上でのサッカー日本代表戦のパブリックビューイングを開催しました。このイベントは、日本最大のメタバースプラットフォームであるCluster上で開催されました。参加者はサッカー日本代表のユニフォームを着たアバターの姿で、試合の中継スクリーンの前に集まり、ファンが一体となって応援しながら観戦したり、有名YouTuberのトークイベントを楽しんだりすることができました。

 

このイベントの目的は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リアルでの観戦や応援が制限を受けるなか、サポーターが一体となり熱狂しながらサッカー観戦が行える環境を提供したいというものです。

 

メタバース上でのサッカー日本代表戦のパブリックビューイングイベントは、3試合で延べ約3万人を集めるほどの盛況ぶりだったそうです。また、3試合の来場者の約8割の方が、日本代表戦を初めて観戦した方となっており、サッカー日本代表のファン層拡大に繋がったとのことです。

 

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⑤NBA:審判のトレーニングにVRを導入

NBA:審判のトレーニングにVRを導入
(画像:NBA)

北米男子プロバスケットボールリーグのNBAは審判員の教育におけるVR導入を進めています。審判はVRヘッドセットとPCを使用し、VR空間にアクセスします。

 

従来の審判のトレーニングは座学や試合への立ち合いが中心でしたが、VRを導入することで、実際の試合に近い環境で学習を行うことができます。審判は複数の選手が激しく交錯しあう環境の中、瞬時に判断を下す必要があり、その環境をゲーム外で再現することは多数の選手を集める必要性などから困難でしたが、VRを通じて、様々な選手の始点アkら、プレイをスロー再生したり、過去の試合の特定のシーンに入り込んだり、新たにシーンを設定することも可能です。

 

スポーツ選手のトレーニングにVRを導入する事例は既に数多くみられますが、今後審判の教育への導入も進んでいきそうです。

⑥アディダス:NFTを活用したメタバース事業に本格参入

アディダス:NFTを活用したメタバース事業に本格参入
(画像:Adidas Originals)

Adidas Originalsが世界的なNFTプロジェクトであるBored ApeYacht Clubらとともに、ブランド初のNFTコレクションである「Into The Metaverse」をリリースし、メタバースへの本格参入を発表しました。協業するNFT関連企業と共に、ブランドを愛するNFTホルダーのコミュニティの活性化に取り組むとのことです。

このNFTは3万点販売され既に完売し、総売り上げは約26億円に上りました。

 

NFT購入者に付与される特典として、adidas Originalに関する限定の体験をはじめ、ブロックチェーンを活用したNFTゲーム『The Sandbox』やその他プラットフォームで使用できるバーチャル上の着せ替え、それと同じデザインの実際のアパレルプロダクトを手にすることができます。

⑦Black Box VR:VRを活用した体験型フィットネスジム

Black Box VR:VRを活用した体験型フィットネスジム
(画像:Black Box VR)

Black Box VRは、カリフォルニア州やアリゾナ州などで展開されているVRを活用した体験型フィットネスジムです。

 

ジムの会員はVRヘッドセットを着用し、オリジナルのVRゲームを楽しみながらフィットネスを行います。1バトルは30分となっており、プレイヤーの動きがゲーム内に反映され相手への攻撃に繋がります。

 

また、トレーニングを続けていくことで、利用できるキャラクターの種類が増えたり、レベルが上昇するなどやり込み要素を備えています。

さらに、トレーニングを経て収集された各種データは専用のアプリから確認できるとのことです。

 

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⑧広島東洋カープ:試合観戦やファンとの交流を行えるメタバースアプリ

広島東洋カープ:試合観戦やファンとの交流を行えるメタバースアプリ
(画像:広島東洋カープ)

メタカープは、広島東洋カープの公式試合をメタバース空間で観戦できるAndroidとiOS対応のアプリです。このプロジェクトは広島県の「ひろしまサンドボックス」補助金を利用して始まり、広島東洋カープのファンクラブ会員向けのコミュニティ空間としてスタートしました。「メタカープ」では、メガホンでの応援や風船を飛ばす演出などをすることができ、テキストチャットを使って他のカープファンと交流を深めることも可能です。

 

これらの取り組みにより、ファンの一体感を高め、応援へのモチベーションを高める狙いがあります。実際にメタカープを利用する人の多くは遠方のカープファンであり、応援の気持ちを共有する手段の少ないファンにとってメタカープは一つの居場所になっています。

⑨MLB:各球団のメタバースを一元化

MLB:各球団のメタバースを一元化
(画像:MLB)

MLBはこれまで各球団が構築してきた球場のメタバースを「没入型デジタルツイン」としてネットワーク化し、MLB独自のメタバース空間に一元化しました。試合の視聴や様々な疑似体験、商品購入を同メタバースで行うことができます。

また、アクセスに関して、世界中のファンが所有するデバイスによって差異が生じないようWebブラウザベースとし、スマホからも簡単にメタバースに入れるシステムとなっています。

 

この取り組みにより、空間内で設置される看板などの広告、販売されるNFT、さらにメタバース球場の一部の土地の不動産取引によって利益を得ることができます。
MLBは、リアル球場で実際に試合を楽しんでいるファンと世界に点在するファンが同時に、試合や場内のアメニティーを楽しみ、SNSでコミュニケーションできる機能の充実を図っています。

スポーツ業界におけるメタバース活用のメリット

ファン・観客にとってのメリット

観客にとっての最大のメリットは、オンラインでありながらまるで現地にいるような臨場感のある観戦体験ができる点。スポーツ観戦とメタバースは非常に相性が良いです。

  • パブリックビューイングやスポーツバーに多くの人が集まることから分かるように、スポーツ観戦のコア価値の1つは、リアルタイムでファン同士で熱気や感情を共有できることです。
  • メタバースの大きな特徴は、オンラインでありながら、まるでそこにいるかのような臨場感のあるコミュニケーションが取れることであるため、非常に相性が良いです。

 

「メタバースでスポーツ観戦」と聞くと全く新しいもののように思えるが、これまでのスポーツ観戦スタイルの変化を踏まえると、ある意味自然な流れとも言えます。

  • スマホが普及して以来、Twitterや掲示板を見ながら、TV中継を見たり、現地観戦をする若者が増えています。
    • Twitterや掲示板で他のファンと熱量や感情を共有することでより観戦を楽しむことができます。
  • このような観戦スタイルに慣れている若者を中心に、メタバースでのスポーツ観戦が広まっていくはずです。

スポーツチームにとってのメリット

チームや団体がメタバースを活用することは、ファンとの繋がり強化・新たなファンの獲得など大きなメリットや可能性があります。

  • コロナで現地観戦やオフラインイベントなどに制限がかかるなか、ファンとの新たな接点として活用し、繋がりを強化することができます、
  • メタバース観戦の観客にとってのメリットとして、現地観戦に比べ圧倒的に手軽に観戦ができる点がある。そのため今まで競技やチームに馴染みのなかった人に、手軽に魅力を体験してもらい、新たなファンの獲得に繋げることができます。

 

また将来的には、NFTを組み合わせた活用を進めることで、新たなファンコミュニティビジネスやコンテンツビジネスを展開できる可能性があります。

スポーツ業界におけるメタバース活用の今後

今後多くの競技でメタバース上での観戦が普及し、スポーツの魅力に触れるなかで、より多くの人が現地観戦をしたりグッズを買ったりと、苦境に立つスポーツ業界の盛り上がりに貢献することが期待されています。また、メタバース上での観戦は現地観戦と対立するものではなく、共に繁栄していく関係性になると考えられます。

 

そのためには、VRデバイスなどの技術革新はもちろんだが、各チーム・団体が実際に取り組みを進めるなかで、よりファンに楽しんでもらえる体験を模索していくことが重要です。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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