メタバースの観光業界での活用事例16選|3大メリットも紹介

関連技術の進歩やMetaやAppleのデバイス発売などに伴い、多くの企業がメタバースの活用を進めています。

 

最近では、コロナによるリモート化の普及を背景にメタバース観光が人気を集めており、ANAやHISなどの大手企業も取り組みを開始しています。

 

そこで今回は、観光へのメタバースの活用事例16選を、メリットや費用相場、成功のポイントなどとともにわかりやすくご紹介します。

 

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • 観光へのメタバース活用を検討している
  • 他社による観光へのメタバースの活用事例を押さえておきたい
  • メタバース活用を成功させるポイントを押さえておきたい

 

本記事を読めば、観光へのメタバース活用を進める上で押さえておきたい知識を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

 

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企業がメタバースを観光業界で活用する3つのメリット

企業がメタバースを観光業界で活用する3つのメリット

①マーケティングに活用し、リアルでの観光客を獲得

メタバース空間上に観光客を呼び込むメリットは新たな収益機会の獲得に留まりません。一度メタバースを訪れることで、その観光地の魅力を知った方が、その後実際にその観光地を訪れるきっかけに繋がることが期待されます。

 

実際に凸版印刷とMONETが行った、移動中の社内でのメタバース事前体験を行う実証実験の結果、行く予定が無かった観光地のメタバース空間を訪れた多くの人が、その観光地に興味を持ったり、実際に訪れることになるという成果が得られています。

 

コロナで落ち込んだ観光需要の再燃の起爆剤として、メタバースのマーケティングチャネルとしての活用がますます注目を集めることとなるでしょう。

②コロナで落ち込む観光業界の新たな収益源に

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外国人観光客はもちろん、日本人観光客も大きく落ち込み、史上まれにみる低迷を見せる観光業界ですが、メタバースを活用した観光ビジネスに取り組むことで、新たな収益獲得の機会とすることができます。

③文化的資産の継承

メタバース上に文化的価値のある建造物や歴史的な物品を再現することで、半永久的に文化的資産を守り継ぐことができます。また、博物館等で保管する場合と比べ、より多くの人にいつでもどこからでもアクセスしてもらえることから、より資産を継承する意義が大きいといえます。

観光へのメタバースの活用事例16選

観光へのメタバースの活用事例16選

観光へのメタバースの活用事例16選は以下の通りです。

 

<企業や自治体による活用事例>

  • ①志摩スペイン村:メタバースゲーム Roblox上にリゾート施設を再現
  • ②あしびかんぱにー:メタバース上に「バーチャルOKINAWA」をオープン
  • ③国土交通省:メタバースを活用したバスツアーを開催
  • ④大日本印刷:「バーチャル秋葉原」をオープン
  • ⑤手塚プロダクション×鳥取:地域還元型のメタバース×NFTゲーム
  • ⑥バーチャル大阪:メタバース上で大阪の魅力を発信
  • ⑦島根縁結び商店街:メタバース商店街で地元の特産品を販売
  • ⑧岡山メタバース博:岡山の魅力の発信にメタバースを活用
  • ⑨Palan×金沢:観光しながら楽しめるバーチャルショッピング
  • ⑩吉本興行×養父市:かつての日本一の鉱山をメタバース上に再現
  • ⑪SBINFT×白浜町:メタバース×アートで地方創生へ
  • ⑫Google:GoogleストリートビューにVR機能を追加

 

<ホテル・旅行会社による活用事例>

  • ⑬ANA:バーチャル旅行プラットフォーム設立を目指す
  • ⑭HIS:旅行の疑似体験ができるVRゴーグルを各店舗に導入
  • ⑮Marriott :デジテルツインを活用したバーチャルホテル
  • ⑯Millennium :メタバース上でホテルを運営

  

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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<企業や自治体による活用事例>

①志摩スペイン村:メタバースゲーム Roblox上にリゾート施設を再現

志摩スペイン村:メタバースゲーム Roblox上にリゾート施設を再現
(画像:志摩スペイン村)

三重県志摩市のリゾート施設である志摩スペイン村は、大人気メタバースプラットフォームのRoblox上で志摩スペイン村を再現したエリアをオープンすることを発表しました。

 

ユーザーは志摩スペイン村の広場や街並みを楽しんだり、スペインの奇祭「牛追い祭り」「トマト祭り」をモチーフにした生き残りゲームを楽しむことができる予定です。

 

志摩スペイン村は、魅力的なアトラクションやフードがあるのに対し、立地の悪さから気軽にアクセスしにくいという課題を抱えており、若者や遠隔地在住の人に志摩スペイン村の魅力を知ってもらうことを目的とし、今回の取り組みを進めているとのことです。

 

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②あしびかんぱにー:メタバース上に「バーチャルOKINAWA」をオープン

あしびかんぱにー:メタバース上に「バーチャルOKINAWA」をオープン
(画像:あしびかんぱにー)

沖縄発のエンタメ企業であるあしびかんぱにーが、メタバース上で沖縄の観光名所を楽しむことのできる「バーチャルOKINAWA」をリリースしました。バーチャルOKINAWAでは、メタバース上で再現された国際通り商店街やビーチなど、沖縄のさまざまな観光名所を巡ることができます。

 

例えば、恩納湾の贅沢なビーチから、沖縄の名所であるひめゆりの塔まで、美しい風景を日本全国で楽しむことができます。

 

2022年4月には、バーチャルOKINAWAで提供される沖縄商品のショッピングを楽しめる場所として人気を博している「国際通り商店街公式オンラインショップ」がリニューアルオープンしました。ストアサイトでは、実際に国際通りで販売されている500点以上の商品を取り扱っており、今後さらに多くの店舗がオープン予定です。

 

また、すでに公開している「国際通りエリア」「ビーチエリア」に続き、新たに「首里城エリア」として、守礼門から首里城正殿までの首里城公園を忠実に再現しています。見て楽しむだけでなく、エリア内のガイドと会話しながら、首里城の歴史や雑学を学ぶことができます。

 

このバーチャルOKINAWAには、アバターを使って世界中の人々と交流できるソーシャルプラットフォーム「VRChat」を、VRデバイスなどにダウンロードすることで利用可能なほか、簡易版をスマホやPCから利用することも可能です。

③国土交通省:メタバースを活用したバスツアーを開催

国土交通省:メタバースを活用したバスツアーを開催
(画像:国土交通省)

2021年12月〜2022年1月にかけて、国土交通省などが進めるまちづくりのDXプロジェクトである「Project Plateau」の一環として横浜みなとみらい周辺で「メタバースを活用したバスツアー」が開催されました。

 

この取り組みはXR技術を活用した新しい観光体験型アトラクションの実現を目指すもので、横浜のみなとみらい地区の3D都市モデルを活用しています。観光バスツアーでは、交通状況に応じたスケジューリング技術や予測技術、3D都市モデルをもとに横浜のメタバースを構築するプランニング技術などを活用します。また、現実の物体の前後関係を反映させるオクルージョン技術により、横浜のメタバースを形成することで、没入感を高めています。

 

取組の結果としては、予約率は9割近く、約380人が参加し、XR観光コンテンツへの関心の高さと集客力の高さを明確に示しました。今回の実証実験では、高精度な3次元点群地図データと3D都市モデルデータを連携させることで、XR映像の未来都市や海底都市世界などの仮想空間データとして利用できることが確認されました。

 

また、体験の質を高めるために、元の3D都市モデルデータよりも細かい粒度でモデルを作成し、世界観に合わせたテクスチャなどの効果を加えることで、映像制作コストの低減と没入感の向上を実現しました。

④大日本印刷:「バーチャル秋葉原」をオープン

大日本印刷:「バーチャル秋葉原」をオープン
(画像:大日本印刷)

大日本印刷とAKIBA観光協議会は、現実世界と仮想世界を融合させた地域共創型XR街づくりプロジェクトとして、2022年4月に「バーチャル秋葉原」をオープンしました。

 

生活者は、PC用アプリケーションやVRゴーグル、Webブラウザなどを通じて、世界のどこからでもいつでも秋葉原の魅力を楽しむことができます。仮想空間には、ショッピングができる店舗やギャラリースペース、広告看板などが設置されており、コンテンツホルダーをはじめとする様々な企業が、情報発信や販促活動を行う「第3のチャネル」として利用することができます。

 

秋葉原の特徴である商標の看板等も地元企業の協力のもと、バーチャルリアリティ上で再現します。一部のバーチャル店舗の中には、商品などを展示するスペースがあり、ECサイトへ誘導して購入に繋げることができます。

 

バーチャル秋葉原は、ユーザーの分身であるアバターが集まり、動画視聴や商品購入、バーチャルゲームへの参加などを同時に行うことができる空間です。現実の特性を踏まえ、企業はコンテンツを提供・実施するだけでバーチャル秋葉原の世界に参加できます。

 

また、クリエイターが同一IPの二次創作を行い、スペース内で展示・販売できるよう、新たなビジネススキームを準備しています。コンテンツはNFTで管理し、クリエイティブビジネスの健全な循環を実現するとのことです。

 

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⑤手塚プロダクション×鳥取:地域還元型のメタバース×NFTゲーム

手塚プロダクション×鳥取:地域還元型のメタバース×NFTゲーム
(画像:手塚プロダクション)

鉄腕アトムなど世界的マンガ・アニメコンテンツ制作を行う手塚プロダクションや旅行事業を行うJTBの設立したJ&J事業創造らが、日本各地にちなんだNFTを使用したメタバースゲームを開発しました。

 

このプロジェクトは、コロナ禍で大きなダメージを受けた地域経済および国内観光マーケットの回復と支援を目的としています。

 

ユーザーは、日本各地の魅力や文化の詰まったNFTを資産として所持し、それを使用して遊んだり、カード同士を合成することで新たなカードを生成したり、カードの売買によって収益をあげたりすることができます。

 

その第一弾として、県を掲げ宇宙産業の飛躍に向けた取り組みを進める鳥取県とのタイアップが決定しました。

 

このNFTの販売を通じて得られた売上の一部は、各地域産業に寄付されるという新たな復興支援の形を目指しています。

⑥バーチャル大阪:メタバース上で大阪の魅力を発信

バーチャル大阪:メタバース上で大阪の魅力を発信
(画像:バーチャル大阪)

バーチャル大阪は、大阪府と大阪市がKDDIと共同で展開する都市連動型メタバースです。2025年開催の大阪・関西万博に先駆けて、道頓堀など大阪市内をモチーフにした「新市街」エリアが登場し、大阪の都市の魅力を国内外に発信しています。

 

公式サイトからメタバースサービス「Cluster」をインストールして無料アカウントを登録するだけでバーチャル大阪に入ることができます。

 

自宅や外出先から多様なデバイスを使用してバーチャル大阪に参加することで、リアルタイムで世界中の人とコミュニケーションを取りながら、バーチャル音楽ライブ等のエンタメコンテンツやアバターを介したユーザー自らの創作活動など、様々な楽しみ方を体験することができます。今後は、バーチャル商店街で買い物すると実際に商品が届いたり、イベント会場で音楽ライブが開催されたりさらなる発展に期待が集まります。

 

道頓堀や大阪城など大阪市内のランドマークが集結していたり、太陽の塔をモチーフにしたアバター衣装を着たりすることができ、大阪の魅力を感じることのできるデジタルコンテンツとなっています。

⑦島根縁結び商店街:メタバース商店街で地元の特産品を販売

島根縁結び商店街:メタバース商店街で地元の特産品を販売
(画像:一般社団法人島根城下町食文化研究会)

松江商工会議所、出雲商工会議所、一般社団法人島根城下町食文化研究会はメタバースで買い物を楽しめる「しまね縁結び商店街」をオープンしました。商店街には、地元の特産品や商材を販売する店舗が並んでおり、24時間自由に来場・買い物が可能です。

 

商店街がある仮想空間「GAIA TOWN」に参加するには、ガイアタウンのアプリをパソコンにインストールし、自身のキャラクターとなるアバターを作り入場することで、手元のパソコンから誰でも気軽に商談やショッピングができます。商店街への訪問アバター数は、開設1週間で1500超。メタバースに構築した日本初の商業交流空間を提供しています。

 

今後は、仮想空間の商店街は展示商談を行う場としてだけでなく、商店街として機能させることにも挑戦する予定。常に来訪アバターが集う商流・交流の場の創造と、行政サービス、観光、暮らし相談など実際の商店街が持つ多様な機能を仮想空間上でも発揮できるようにします。

 

地方特有の物産や商材を世界に発信できるメタバースを活用した取り組みは今後もさらに発展していくことが予想され、本サービスはその先駆けとして注目を集めています。

 

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⑧岡山メタバース博:岡山の魅力の発信にメタバースを活用

岡山メタバース博:岡山の魅力の発信にメタバースを活用
(画像:岡山メタバース博)

岡山メタバース博は岡山県に点在する産業や観光、文化、食などの地域資源をメタバース上に結集し、岡山の魅力を再認識することのできるイベントです。PRブースにて岡山の産業や観光名所の魅力を発信したり、岡山県内で活躍する「ヒト」のPRツールとして活用されています。

 

「Spatial」というプラットフォームを通じて無料でアバターを作成し、空間を楽しむことができます。アバターは5分ほどの短い時間で作成可能です。岡山メタバース博の開催中には、300名以上の来場者があり、多くの人が岡山の魅力を再発見しています。

 

今後は、行政とのタイアップ空間を活用した行政PRイベントの開催も予定しています。

以上のようなイベントを通じて、地域資源を活用し、地方がより輝く可能性を引き出すことが期待されています。

⑨Palan×金沢:観光しながら楽しめるバーチャルショッピング

Palan×金沢:観光しながら楽しめるバーチャルショッピング
(画像:Palan)

Palanは、金沢の特産品店である「MIHON-ICHI KANAZAWA」のバーチャルショップをメタバース上にオープンし、XRを活用した新たな買い物体験に関する実証を開始しました。

 

メタバース上での店舗を訪れることで、職人こだわりの金沢の特産品の買い物を楽しむことが出来ます。また、ブースにはひがし茶屋街や兼六園など、春夏秋冬の金沢の観光地が再現されており、ウェブメタバース空間で、観光気分を味わうことができます。

 

加えて、気になった商品をARで試し置きすることができ、自宅にいながら商品の色や質感、サイズを確認することができます。

 

こちらのメタバースショップは、ウェブがベースとなっているので、アプリ不要で、ワンストップで購入することができる手軽さも、特徴となっています。

⑩吉本興行×養父市:かつての日本一の鉱山をメタバース上に再現

吉本興行×養父市:かつての日本一の鉱山をメタバース上に再現
(画像:吉本興行)

吉本興業は人口約2万人、兵庫県北部に位置する養父市の観光名所を再現したメタバースをリリースしました。

 

ユーザーは、かつて日本一のすず鉱山として栄えた明延鉱山の坑道後を観光したり、吉本興行所属のタレントコラボした採掘ゲームを楽しんだり、市役所を訪れ、デジタル住民票交付してもらったりすることができます。

 

バーチャル養父のオープニングイベントには、吉本興業所属のお笑い芸人である、野生爆弾くっきー!さんやとろサーモンの村田さんらが参加し、その様子は吉本の映像配信サービス「FANCY」によってライブ配信されました。

 

また、イベントで養父市市長がアバター姿で登場し、「メタバースには無限の可能性があると思います。世界中どこからでも来ていただけるので、いろんな国の方々に来てもらって、養父市の自然や観光名所を楽しみ、市民とも交流してもらいたい。そして、ゆくゆくは現実世界でも体験しに来ていただければ。バーチャルでは100万人都市を目指しています」とコメントしました。

 

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⑪SBINFT×白浜町:メタバース×アートで地方創生へ

SBINFT×白浜町:メタバース×アートで地方創生へ
(画像:SBINFT)

SBINFTは、白浜で開催されたストリートアートイベント「POW!WOW!JAPAN」と連動したメタバース「バーチャル白浜」を仮想空間であるCryptovoxels上でリリースしました。

 
今回のイベントでは、SBINFTが運営するNFTマーケットプレイスであるnanakusa公認アーティストである、AUORA氏、ひかげ氏のコラボ作品の販売や参加者への限定NFTの配布キャンペーンを通じて、バーチャル空間を通じた新たな地方創生に取り組んでいます。

⑫Google:GoogleストリートビューにVR機能を追加

Google:GoogleストリートビューにVR機能を追加
(画像:Google)

Google Earth VRとは、Googleのバーチャル地球儀アプリ「Google Earth」のVR版です。Google Earthに備わっているストリートビュー機能にVRを組み合わせることで、世界中の都市の風景をVR映像で楽しむことができます

 

専用のVRゴーグルを装着し、VR空間上に現れる地球儀から行きたい場所を選ぶことで、その場所の迫力ある360度映像を見ることができます。コントローラーを行きたい方向に向けてボタンを押すだけで簡単にどこへでも行けるため、自宅にいながらまるで世界中を飛び回っているかのような体験をすることができます。

 

コロナを機にリモート化の動きが加速する中、自宅で旅行を楽しめるコンテンツは今後もますます人気を高めていくと考えられます。

<ホテル・旅行会社による活用事例>

⑬ANA:バーチャル旅行プラットフォーム設立を目指す

ANA:バーチャル旅行プラットフォーム設立を目指す
(画像:ANA)

ANAホールディングスは、2022年5月に新会社「ANA NEO」の設立を発表しました。同社は、インターネット上の仮想空間で様々なアトラクションを体験できる「バーチャル旅行プラットフォーム」SKY WHALEの設立・運営を担当する予定です。2022年内のサービス開始を目指しています。

 

ANAホールディングスでは、アバターロボット「newme」を用いた遠隔案内などの実証実験を行っていますが、ANA NEOでは、ANAグループが航空会社として培ってきた知見や「newme」が提供する各種サービスを活用し、ビジネスモデルのデジタル化を推進します。仮想空間での地域コミュニティによる経済発展や社会課題の解決を促進することで、生活者に新たな価値の創造を目指すとのことです。

 

同社がリリース予定のSKY WHALEは、「Skyパーク」「Skyモール」「Skyビレッジ」という3つのサービスで構成されています。

 

「Skyパーク」はバーチャル旅行テーマパークであり、3次元CGで描かれた世界のさまざまな都市や景勝地で、誰もが気軽に楽しめる新しい旅行体験をお客様に提供します。

 

「Skyモール」では、ご家族やご友人と自由にモール内を回遊し、お買い物や各種イベントを楽しむことができます。スカイモールは、ANAグループならではの品揃えを世界中のお客様のお手元にお届けする越境ECサービスで、偶然の出会いの楽しさや利便性を提供し、地域振興や地産外商の促進を図ります。

 

「Skyビレッジ」ではバーチャルにおけるスマートシティの実現を目指して、バーチャル上での医療・教育・行政などのサービス展開を予定しているとのことです。

 

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⑭HIS:旅行の疑似体験ができるVRゴーグルを各店舗に導入

HIS:旅行の疑似体験ができるVRゴーグルを各店舗に導入
(画像:HIS)

HISは関東地区の127の店舗にVRゴーグル「CREWL」を導入しました。来店者は、VRゴーグルを装着し、海外のホテルの様子などを360度の映像で見ることができます。来店者がVRで体感している映像は、営業担当者のPCと共有することができるため、担当者はVR映像に合わせて来店者に説明を行うこともできます。

 

CREWLは、VRコンテンツプラットフォームを提供するナーブ株式会社が提供するVRゴーグルです。手で持って覗くタイプのゴーグルであり、顔と機器との接触面が少ないので、来店者から衛生面を気にされるおそれが低いというメリットがあります。また、付けはずしが容易なためVR酔いになりにくく、適度な没入感を楽しめる点も特徴です。そのため、営業店舗などで多数の来店者に使用してもらうのに適したゴーグルと言えます。

 

実際にホテルの中にいるかのような感覚を体験させることで、来店者の旅行への意欲を掻き立てることができると考えられます。

⑮Marriott :デジテルツインを活用したバーチャルホテル

VR Postcards | Behind the Scenes
(動画:マリオット)

世界最大規模のホテルチェーンマリオットは、メタバースに参入しています。マドリッド マリオット オーディトリアム ホテルは、メタバースにカンファレンス センターを含むデジタルツインを導入し、ホテルやカンファレンスセンターをメタバース内に再現しています。

 

ゲストはホテルへの宿泊を検討する際に、PCとヘッドセットを用いて利用することができ、ヘッドセットを通して施設内を歩き回って見学することができます。マドリッドマリオットの最大のセールスポイントは、ホテルとイベント施設が 1 つの建物内にあることです。メタバースを利用することで、ホテルのレイアウトをアピールするために現地で説明することが不要となり、コスト削減が図れます。

 

さらに、ホテルの情報を発信するためにメタバースを活用することは、利用者にとってWebサイトよりも実際の現場を理解しやすく、集客に効果的です。

⑯Millennium :メタバース上でホテルを運営

Millennium :メタバース上でホテルを運営
(画像:Hospitality net)

MullenLoweシンガポールは、Millennium Hotels and Resortsと提携し、メタバース上にM Social Decentralandを立ち上げました。

 

M Social Decentralandは世界各地のM Socialホテルをモデルにした、メタバースでホテルを運営する世界初のホスピタリティグループです。ゲストはこのバーチャル空間を探索し、スペースを借りたり購入したりできます。自分のアバターのスクリーンショットをソーシャルチャネルで#MSocialDecentralandと共有すると、実際のホテルに宿泊できる抽選に参加できます。

 

また、バーチャルホテルにはゲストがパフォーマンスやプロジェクトの立ち上げなどのバーチャルイベントを開催できるロビースペースも用意されています。

 

Millenniumは、M Socialを通じてブランドの認知度を高め、新規ゲストを獲得するためにメタバースを活用しています。

観光へのメタバース活用を成功に導く5つのポイント

観光へのメタバース活用を成功に導く5つのポイント

観光へのメタバース活用を成功に導くためのポイントとして以下の5つが挙げられます。

 

  • ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
  • ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
  • ③ユーザーファーストなUX設計
  • ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
  • ⑤強力な開発・運用体制の構築

 

それぞれについて分かりやすく紹介していきます。

 

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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ

1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。

デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。

 

メタバース活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。

②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案

2つ目のポイントは、メタバースを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。

現在メタバース活用に取り組む企業には、メタバース活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。

 

その結果、活用のPDCAが回らない、メタバース活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。

 

自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜメタバースではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。

③ユーザーファーストな企画・UX設計

3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなメタバースの企画・UX設計です。

現在、多くの企業がメタバースに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなメタバースが多く存在します。それらのメタバースは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。

 

そのため、「メタバースならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。

④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進

4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。

メタバース市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。

 

そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。

⑤強力な開発・運用体制の構築

5つ目のポイントは、強力なメタバース開発・運用体制の構築です。

高いユーザー体験と事業性を両立するメタバースの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。

 

メタバース開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。

企業がメタバース活用を進めるための4つのステップ

企業がメタバース活用を進めるための4つのステップ

企業がメタバース活用を進めるステップとして、大きく以下の4つのフェーズが挙げられます。

 

  • Step1:市場動向・知見のキャッチアップ
  • Step2:戦略/企画の立案
  • Step3:事業計画の策定
  • Step4:開発・運用

 

それぞれのフェーズについて分かりやすく紹介していきます。

 

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Step1:市場動向・知見のキャッチアップ

1つ目のStepとして取り組むべきは、最先端の市場動向・知見のキャッチアップです。MetaやApple、Microsoftなどのビックテックやユーザーの動向・先行活用事例など、日々変化する市場動向やナレッジへのキャッチアップが必要です。

 

このフェーズが、成果に繋がる骨太な戦略/企画策定の基盤となります。

Step2:戦略/企画の立案

2つ目のStepはメタバース活用の戦略/企画です。活用目的を踏まえ、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方、実現に向けた企画を立案しましょう。

 

ユーザーバリューと自社の事業性の両方を満たす、質の高い戦略/企画の立案が、成果につながるメタバース活用の実現に向け最も重要なポイントとなります。

Step3:事業計画の策定

3つ目のStepは事業計画の策定です。事業に期待する成果や開発・運用のアプローチやタイムライン、必要な投資額などを検討しましょう。

 

メタバース開発・運用といっても、プロジェクト毎に求められるケイパビリティは様々であるため、自社にマッチするツール・ベンダーの選定が非常に重要です。

Step4:開発・運用

4つ目のStepが開発・運用です。メタバース開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを有効活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完しつつ、ユーザーに届けたい体験を実現するメタバースの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。 

 

4つのフェーズで取り組むべき35のステップに関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。

 

※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ【担当者必見】

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メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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