メタバースの将来性は?市場規模や活用事例、GAFAの戦略や課題も
2021年末のFacebookのMetaへの社名変更をきっかけに、世界的に注目を集めるメタバース。
直近では、AppleがVision Proというゴーグル型XRヘッドセットを発表するなど、ビッグテックが相次いでメタバースに参入し、その将来性が期待されています。
そのため、「メタバースの今後の展望、将来性が気になる」「メタバースをめぐるGAFAの動向が知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はメタバースの将来性について、活用事例やGAFAの戦略とともに分かりやすく紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- メタバースの今後の展望、将来性が気になる
- メタバースが企業によってどのように活用されているか知りたい
- メタバースをめぐるGAFAの戦略が知りたい
本記事を読めば、メタバースの将来性をしっかりと理解できると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもメタバースとは
メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。
メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。
メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。
一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。
メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。
メタバースの利用者数
メタバースの全世界利用者数
アメリカのメタバースマーケティング会社であるMetaverse of Thingsが公表しているデータによると、2023年現在、メタバースの全世界利用者数は全人口の約5%にあたる約4億人と推定されています。その中でも、ROBLOXは利用者数が最も多く、月に1度以上プレイするユーザーは2億3千万人に達しています。
また、2026年には、インターネットユーザーの5人に2人は少なくとも1日1時間はメタバース上で時間を過ごし、2030年までには、全世界利用者数は7億人に達すると推計されています。
※参考:Metaverse Users Worldwide – Metaverse Statistics to Prepare for the Future
メタバースの国内利用者数
2022年、博報堂DYホールディングスは、全国15〜69歳の生活者を対象に、メタバースに関する現状の生活者意識や動向を把握することを目的とした「メタバース生活者意識調査」を実施しました。その結果、メタバース関連のサービスを認知している人は全体の約3分の1で、推計で約2,980万人という結果でした。
また、メタバース関連のサービスを利用したことがある人の割合は全体の8.3%で、推計約680万人がメタバースの利用経験があることが明らかになりました。利用者の平均年齢は33.4歳で、特に20代男性が多かったとのことです。
また、ゲームやアバターといった要素だけでなく、「友人もやっている」ことや「リアルと連動して楽しめる」ことを重視する人が多く、複数人が同時に参加できるようなイベントやゲーム等のコンテンツが今後人気を集めると考えられます。
※参考:博報堂DYホールディングス、メタバース生活者意識調査を実施
メタバースの市場規模
メタバースの海外市場規模
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2022年6月に発表したレポートにおいて、メタバースの市場規模は2022年時点で28兆8,000億円~43兆2,000億円、2030年には全世界で約720兆円に達する可能性があると予測しています。これは日本全体の経済規模にも匹敵するほどの大きさです。
同レポートによると、業界別の2030年におけるメタバース市場規模は、EC業界においては288兆円から377.4兆円、教育分野においては25兆9,200円から38兆8,800億円、広告業界においては20兆7,360円から28兆8,864億円、ゲーム市場においては15兆5,520億円から18兆円に達すると予測されています。
メタバースの国内市場規模
三菱総合研究所は、2022年11月に発表したレポートにおいて、メタバースの市場規模は2025年には4兆円程度、2030年には約24兆円に達すると予測しています。
約24兆円のうち、最も大きな割合を占めるカテゴリはゲーム・アミューズメント、次いで医療・健康、製造現場、オフィスワーク、観光、土木・建築、物流、小売、教育となっています。
※参考:三菱総合研究所「バーチャルテクノロジー活用の場 としての広義のメタバース」
個人がメタバースでできること6選と代表事例
個人がメタバースを利用することでできることは主に以下の6つです。
- ①ゲーム・エンタメサービスの利用
- ②オンラインショッピング
- ③他ユーザーとのコミュニケーション
- ④イベントへの参加
- ⑤NFTの売買・利用
- ⑥仕事をしてお金を稼ぐ
それぞれを事例とともにわかりやすく解説していきます。
①ゲーム・エンタメサービスの利用
1つ目はゲーム・エンタメサービスの利用です。メタバース/VRゲームは、従来のゲームに比べ、3Dでのリッチな映像表現や他のユーザーとチャットやボイスチャットによって交流できる点が特徴です。さらに、MetaQuestなどを活用することでよりゲームの世界に入り込んだような体験をすることができます。ゲーム・エンタメサービスの利用は、現在メタバースの利用事例として最も主流となっており、世界的に多くのユーザーが利用しています。
事例としては、アメリカのRoblox社が提供する、オンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox」が挙げられます。Robloxとは、他ユーザーが作成した様々なゲームをプレイしたり、ユーザー自身もゲームを作成することのできる、ゲームプラットフォームです。利用されるゲームの全てがユーザー自身によって作成されていることから、「ゲーム版のYoutube」とも評されています。
また、ゲーム内でリアルタイムでのユーザー同士のコミュニケーションが活発に行われている点やゲーム内のアバターやアイテムを売買する経済圏が成立していることなどから、世界を代表するメタバースの1つとも言われています。
②オンラインショッピング
2つ目はオンラインショッピングの利用です。メタバース上でのオンラインショッピングは従来のECサイトでのショッピングとは異なり、商品が3Dで立体表示されるため、サイズ感や魅力を確かめやすかったり、店舗スタッフや同行者とボイスチャットで会話を楽しみながら買い物をすることができるといった特徴が存在します。
事例としては、三越伊勢丹が提供するメタバース上の百貨店「REV WORLDS」が挙げられます。三越伊勢丹は、独自のメタバース上の仮想都市である「レヴ ワールズ」を構築し、専用アプリから提供しています。
利用者はアバターを登録し、デジタル空間の「バーチャル伊勢丹」での買い物を楽しむことができます。店員のアバターも配置され、チャット機能を使った接客も受けられます。現在は婦人服や食品など180ブランドを扱っていますが、今後は家具や日用品にも対象を広げる方針です。友人のアバターと一緒に会話しながら買い物できるようにするなど機能も強化する予定です。
他社がメタバース上で開催されるイベントへの出展が中心のなか、三越伊勢丹は既に独自のメタバース空間を構築・提供しており、百貨店業界のメタバース活用をリードする存在といえます。
③他ユーザーとのコミュニケーション
3つ目は他ユーザーとのコミュニケーションです。メタバースの特徴として、3Dでのアバターの表現や相手との位置関係が反映されるボイスチャット機能などにより、まるで相手と同じ空間にいるような感覚を得ることができるという点があります。その特徴が最もシンプルに活きるのがオンラインコミュニケーション手段としてのメタバースの利用です。コロナによるオンラインコミュニケーションの増加により、様々なコミュニケーション型のメタバースプラットフォームが利用者数を伸ばしています。
事例としては、世界最大のメタバース/VRSNSである「VRChat」が挙げられます。VRChatとはVR上で友達と遊べるソーシャルVRというジャンルのサービスです。数あるソーシャルVRの中でも最もユーザー数が多いのが特徴で、一日あたり30,000人のユーザーがアクセスしています。
また、没入感をより感じることができるVRゴーグルをかぶってログインしているユーザーが多く、他のソーシャルVRと比較して濃いコミュニケーションが生まれています。
④イベントへの参加
4つ目はメタバース上で行われるイベントへの参加です。メタバースでは、3Dでのコンテンツ表示、頭の動きに合わせた視点の切り替え、相手との位置関係が反映されるボイスチャット機能などにより、まるで実際のライブ会場を訪れているような体験をすることができます。
コロナウイルス感染拡大の影響により、リアルでのイベント開催が大きな制限を受けるなか、音楽やライブ、アニメ・漫画など様々なイベントがメタバース上で開催されるようになりました。
事例としては、阪神阪急HDが提供するメタバース上の音楽フェス「JM梅田ミュージックフェス」が挙げられます。大手関西私鉄である阪神阪急HDは、メタバース上での音楽フェスである「JM梅田ミュージックフェス」を開催しました。JM梅田ミュージックフェスは、阪急阪神HDが百貨店を含む大阪・梅田の街を忠実に再現したメタバース空間上で実施されるオンライン音楽祭です。
当イベントでは、メタバース空間となった大阪梅田を舞台に、VTuber等のバーチャルキャラクターによる音楽フェスが実施されました。アバターの姿で参加する来場者は、コンサートの参加、グッズ販売などのコンテンツが提供された他、バーチャルな梅田を高い没入感で体感できました。音楽フェスには30名を超えるVTuberなどのバーチャルアーティストが参加し、来場者数は8万人以上を記録する盛況となりました。
同社は、100年以上続けてきた「街づくり」のノウハウをメタバース領域でのビジネス展開に活用できるのではと考えています。
⑤NFTの売買・利用
5つ目はNFTの売買・利用です。人々がメタバース空間で過ごす時間が増えると、メタバース空間上でのデジタルアセットが現実の世界と同様の価値を持つようになり、やり取りにNFTが活用されるようになります。具体的にはアバターやアバターの着用する洋服、土地もNFTとして売買されています。
これまで、デジタル上のアセットはリアルな商品と比べ複製が容易に行えるため、価値がつきずらいという現状がありました。そこでブロックチェーン技術を活用することで、そのアセットデータが唯一無二であることを証明できるNFTが注目を集めるようになり、企業・個人間での売買が活発化するようになりました。
事例としては、ファッションブランドである「バレンシアガ」の「Fortnite」上でのデジタルアイテム販売が挙げられます。バレンシアガがゲーム用のデジタルファッションアイテムを制作し、同様のデザインのリアルのアイテムをバレンシアガの一部店舗やオンラインショップにて販売しました。リアルのアイテムの価格は約5万〜17万円ほどでした。
フォートナイトのゲーム内では、バレンシアガの仮設店舗をオープンし、ウェアやスキンを取りそろえました。それらのアイテムはバレンシアガの2020〜2021年のコレクションアイテムをスキャンし3Dモデル化して制作されています。
また他にも、ゲーム内にバレンシアガが2021年秋コレクションのために制作したオンラインゲーム「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー」に着想を得たエリアを特設するなど、ユーザーが楽しみながらバレンシアガのブランドに触れられる取り組みが行われました。
⑥仕事をしてお金を稼ぐ
6つ目は仕事をしてお金を稼ぐという利用方法です。人々がメタバース空間で過ごす時間が増えると、現実世界の仕事のメタバース版が次々と登場することが予想されます。例えば、メタバース上の建物をデザインする仕事や、メタバース上で商品の接客を行う仕事などが今後需要を高めていくと考えられています。
事例としては、国内最大のメタバースプラットフォームである「cluster」上でのアルバイトが挙げられます。2021年にcluster上でKDDI社が開催したバーチャル渋谷ハロウィーンフェスでは、ハロウィーンフェスの運営スタッフとしてアルバイトを募集していました。アルバイトの業務内容としては、メタバースでの操作に慣れていない方へのサポートやイベント参加者の記念撮影のお手伝いであり、単なるアルバイトではなくメタバース空間を楽しみながら働くことができました。
企業がメタバースをビジネスに活用する12の方法
メタバースのビジネス活用方法は多岐にわたりますが、代表的な手法として大きく以下の3カテゴリ・12パターンが挙げられます。
<新規事業構築>
- ①メタバースサービスの構築
- ②イベントの開催
<マーケティング・ブランディング>
- ③自社ワールド制作
- ④自社アバターやスキン配布・販売
- ⑤広告出稿
- ⑥イベントへの出展
- ⑦既存の顧客接点の機能強化
- ⑧自社メタバースサービスの構築
<社内業務効率化>
- ⑨バーチャルオフィスの導入
- ⑩社員研修への活用
- ⑪シミュレーション
- ⑫作業現場のサポート
それぞれの手法についてわかりやすく紹介していきます。
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新規事業構築への2つの活用手法
①メタバースサービスの構築
1つ目の活用手法は、メタバースを活用した各社独自のメタバースサービスの構築です。現実に存在するもの/しないものを含め、仮想空間上に3Dの世界を構築することができるというメタバースならではの特徴を活かし、ユーザーにユニークな体験を提供することができます。
企業のメリットとして、構築したサービスの利用料やコンテンツ課金、広告枠販売など多様なビジネスモデルで収益を獲得できることなどが挙げられます。
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②イベントの開催
2つ目の活用手法は、メタバース上でのイベントの開催です。アーティストを集めたライブイベントやバーチャルマーケットのような企業を集め各企業がコンテンツを提供するイベントなど、幅広い内容のイベントを開催することができます。
リアルでのイベント開催に比べたメリットとして、幅広いエリアから多くのユーザーを集客できる点、メタバースならではユニークな体験を届けることができる点、会場費や運営費などのコストを節約できる点などが挙げられます。
企業のメリットとしては、イベント開催により、イベントへの入場券やデジタルコンテンツの販売など非常に収益性の高い新たなビジネスを展開できることなどが挙げられます。
マーケティング・ブランディングへの6つの活用手法
③大手メタバースプラットフォームでの自社ワールド制作
3つ目の活用手法は、FortniteやRobloxに代表される大手メタバースプラットフォーム上での自社ワールドの制作です。メタバースプラットフォーム上に、自社の実店舗を再現したワールドや、自社のブランドイメージをゲームを通じて体験してもらえるワールドを展開することができます。
企業のメリットとしては、急速に普及が進むメタバースプラットフォーム上の多数のユーザーに対し、メタバースならではの体験を通じ、自社の商品やブランドの魅力を深く訴求できることなどが挙げられます。
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④大手メタバースプラットフォームでの自社アバター配布・販売
4つ目の活用手法は、大手メタバースプラットフォームでの自社オリジナルのアバターやスキンの配布・販売です。多数のユーザーに対し、自社のブランドや商品をモチーフとしたアバターやアバターが着用するスキンを配布・販売することができ、大手ラグジュアリーブランドを中心に活用が進んでいます。
企業のメリットとしては、メタバースプラットフォームの多数のユーザーに対し、自社ブランドをPRできる点やコンテンツへの課金による収益を獲得できる点などが挙げられます。
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⑤大手メタバースプラットフォームでの広告出稿
5つ目の活用手法は、大手メタバースプラットフォームでの広告出稿です。現実世界の屋外広告のように、メタバースプラットフォーム上の看板や建物の壁などに広告を出稿することができます。企業のメリットとしては、若年層を中心に急速に普及が進み、多くの視線を集めるメタバースをメディアとして活用し、自社の商品やブランドの魅力をPRできることが挙げられます。
※関連記事:【事例9選】メタバースを広告に活用する5大メリットや活用方法とは
⑥大手メタバースイベントへの出展
6つ目の活用手法は、大手メタバースイベントへの出展です。バーチャルマーケットに代表されるように、企業が出展可能なメタバースイベントが多数開催されています。イベントに自社ワールドを出展し、ゲーミフィケーションを取り入れたアトラクションやユーザー参加型のイベントを展開したり、アバター姿での接客・営業などを行うことができます。
企業のメリットとしては、メタバースならではの体験やこれまでバーチャル空間では実現しえなかったリアルな顧客体験により自社をPRすることに加え、自社のメタバース活用の可能性を探るための初期的な検証ができることなどが挙げられます。
⑦既存の顧客接点の機能強化
7つ目の活用手法は、自社の既存の顧客接点の機能強化です。企業は、ECサイトやアプリ上で、アパレルアイテムや化粧品のサイズや使用感を試すことができるARなどの機能を追加することで、顧客接点を強化することができます。
企業のメリットとしては、従来オンライン空間上での販売やマーケティングが難しかった商材を、3DモデルやARを活用したメタバースならではの体験を通じて強力に訴求できることなどが挙げられます。
⑧自社メタバースサービスの構築
8つ目の活用手法は、マーケティングを目的とした自社メタバースサービスの構築です。自社のメタバースサービス上での体験提供を通じて、顧客のニーズを高めたり、商品の魅力を訴求することで商品販売やマーケティングを行うことができます。
企業のメリットとしては、アパレルアイテムや家、無形商材などの従来オンライン空間上での販売やマーケティングが難しかった商材を、3Dモデルの活用やメタバースならではの体験を通じて強力に訴求できることなどが挙げられます。
社内業務効率化への4つの活用手法
⑨バーチャルオフィスの導入
9つ目の活用手法は、バーチャルオフィスの導入による社内コミュニケーションの円滑化です。バーチャルオフィスとは、リモート環境ながら、アバターの動きやステータス表示などで情報量の豊富なコミュニケーションがとれるため、まるで実際のオフィスで一緒に働いているような体験ができるバーチャル空間上のオフィスのことです。
企業のメリットとしては、コミュニケーションが円滑化されることで生産性が向上したり、自然発生的なコミュニケーションが生まれることで社員同士の繋がりが強化されることなどが挙げられます。
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⑩社員研修への活用
10番目の活用手法は、社員研修への活用によるスキル向上です。社員に対しMeta QuestなどのVRヘッドマウントディスプレイを着用してもらうことで、様々なシチュエーションをリアルに再現した研修コンテンツを体験してもらうことができます。
企業のメリットとしては、3Dコンテンツによる没入感が高くかつインタラクティブな研修による学習効率の向上や、バーチャル場であるため自由に失敗できる環境の提供、非常時のシチュエーションを再現できることなどが挙げられます。
※関連記事:メタバースの研修・教育への活用事例14選|メリットや活用方法も解説!
⑪バリューチェーン全体のシミュレーション
11番目の活用手法は、バリューチェーン全体のシミュレーションによる効率化です。企業は、メタバース(デジタルツイン)上に自社のバリューチェーンを再現し、バーチャル上で様々な状況を想定した高精度なシミュレーションを行うことができます。
企業のメリットとしては、製品の品質の向上やオペレーションの効率化、シミュレーション自体のリードタイムやコストの削減などが挙げられます。
※関連記事:【図解】デジタルツインとは?活用事例10選や5大メリットも解説
⑫作業現場のサポート
12番目の活用手法は、作業現場のサポートへの活用による品質と作業効率の向上です。作業員がAR/MRデバイスを着用し、どの位置にどの部品をはめるかなどの立体的かつ詳細な作業指示をタイムリーに行うことができます。
企業のメリットとしては、現場の作業員の効率や安全性の向上や遠隔地からの作業指示の円滑化などが挙げられます。
※関連記事:【2023年最新】MRのビジネスへの活用事例6選|メリットも紹介
メタバースの今後の普及・発展のシナリオ
メタバース市場は、今はまだ黎明期にあり、2040年ごろにかけて「黎明期」「普及期」「定着期」の3つのフェーズを経て発展していくと考えられています。
それぞれのフェーズについてわかりやすく解説していきます。
①黎明期(~2025年):一般ユーザーにメタバースの認知が広まる
現在〜2025年までのメタバース黎明期は、メタバースを構成する技術要素の進化と社会的なニーズの高まりを機に、多くの一般ユーザーがメタバースに興味を示し始めます。それに伴い多くの企業がメタバース市場への参入を始めます。
具体的には技術の発展により、VRデバイスの低価格や小型化が進み、一般ユーザーでも利用しやすいデバイスになること、新型コロナウイルスの流行により、リモートコミュニケーションの需要が高まることなどにより、メタバースが大きく発展する準備が整うフェーズと言えます。一方で、メインのユーザー層はVRゲームを目的とするコアユーザーであり、市場としてもデバイスやゲームタイトルが中心となっています。
②普及期(2025~2030年):メタバースが一気に人々の生活に普及
2025〜2030年のメタバース普及期は、要素技術の更なる発展と、メタバース上で提供されるサービスの充実により、メタバースが一気に人々の生活に普及し始めます。この頃にはVR/ARデバイスはかなり小型化・軽量化され、長時間装着することが可能になっており、現代におけるスマホのような感覚で、幅広い活動をメタバース上で行うようになっていきます。
人々がメタバースで過ごす時間が長くなるにつれ、メタバース空間上のデジタルアセット(アバターやアバターの洋服など)がより価値を持ったり、メタバース上のメディアやSNSの広告がより価値を持っていくと考えられます。
③定着期(2030年~):多くの人々が当たり前にメタバース空間で活動
2030年以降のメタバース定着期は、要素技術が一通り成熟し、人々がメタバース空間にアクセスする上での課題は解決され、老若男女問わず多くの人々が当たり前にメタバース空間で活動するようになると考えられています。
現代のスマホのように、あらゆる領域のサービスにアクセスするベースとなる存在に発展しており、消費者向けのサービスの充実はもちろん、多くの企業の業務プロセスにメタバースが取り込まれていくと考えられます。
具体的には、企業の教育研修がメタバースを通じて行われたり、製造業のバリューチェン全体がメタバース上に構築され、各種シミュレーションや現場の作業員のサポートにも活用されるなど、仕事でもメタバースを活用することがごく自然に行われるようになっていくでしょう。
メタバース市場におけるGAFAのエコシステム構築戦略
今後加速度的に普及・発展していくと考えられているメタバースにおいて、AppleやMetaなどのビッグテックら各社は、自社プラットフォーム上でのエコシステム構築を目指し投資を加速させています。エコシステム内で参入企業数・サービス数・ユーザー数が連鎖的に増加することで、市場全体が加速度的に成長していくと考えられます。
彼らにとってエコシステムの構築が重要なのは、AppleやGoogleがスマホ市場においてエコシステムの構築に成功し、高額の手数料を徴収するなど、大きな利益を得ることができたことからも明らかといえます。
(前提)メタバース/XR市場でのエコシステムを構成する5つの要素
前提として、メタバース/XR市場でのエコシステムを構成する要素は以下の5つです。
- ①ハードウェア:Vision ProなどのXRデバイス
- ②ソフトウェア:Vision OSなどのXRデバイス向けOSや開発ツール
- ③開発者:XRデバイス向けのサービス/コンテンツを開発する企業やエンジニア
- ④サービス/コンテンツ:XRデバイスで利用できるアプリケーションやコンテンツ
- ⑤ユーザー:XRデバイスを通じてサービスやコンテンツを利用する一般ユーザー
今後のメタバース/XR市場でのエコシステムの発展の仕組み
Step1:多くの開発者を惹きつける魅力的なハード・ソフトウェアを提供
AppleやMetaは開発者がサービス/コンテンツを提供しやすいハードウェア・ソフトウェアのプラットフォームを提供することで、多くの開発者を惹きつけようとしています。
また、Appleが提供するプラットフォームなら、今後多くのユーザーを集めるだろうという期待感もそれに貢献するでしょう。
Step2:多数の開発者が豊富なサービス/コンテンツをリリース
AppleやMetaのプラットフォームに魅力を感じた多くの開発者は、AppleやMetaのプラットフォーム上で豊富なサービス/コンテンツを開発し、リリースします。
Step3:多くのユーザーがAppleやMetaのプラットフォームを利用
ユーザーがどのXRデバイスを購入するかを検討する際に、どれだけ魅力的なサービスやコンテンツを利用できるのかは非常に重要であり、結果として多くの人々がAppleやMetaの販売するXRデバイスを購入する流れが生まれると考えられます。
Step4:多くのユーザーを求め、より多数の開発者がサービス/コンテンツをリリース
Step3で多くのユーザーを集めたAppleやMetaのプラットフォームは、開発者にとってより魅力的な選択肢となり、より多くの開発社がサービス/コンテンツをリリースするようになります。
このように、自社のプラットフォーム上で開発者・サービス/コンテンツ・ユーザーのポジティブスパイラルを生み出し、先行者ならではの競争優位性を築き上げることで、メタバース/XR市場の覇権を握ろうとしているのです。
メタバースの普及・発展を左右する8つのカギ
これまで紹介したようにメタバース普及の土台は固まりつつある一方で、今後大きく普及していくためには様々なドライバーが存在します。
その中から特に重要な8つのポイントを技術、社会、経済、政治の4つの観点から整理しましたので、それぞれについて分かりやすく解説していきます。
技術的観点
①VR/ARデバイスの性能・UXの向上
1つ目のポイントは、VR/ARデバイスの性能・UXの向上です。Meta Questを筆頭とするVRゴーグルやARグラスなどのデバイスが、いつ小型化・軽量化を実現するかはメタバース普及に向けた最大のカギです。現在のMeta QuestなどのVRゴーグルは10年ほど前から比べれば遥かに小型化・軽量化が進んでいますが、長時間装着するには身体への負担が大きいというのが現状です。
逆に、デバイスがサングラスのような重量とサイズ感に進化すれば、日常生活のほぼすべての時間、デバイスを装着しリアルとバーチャルが融合された、SFのような世界に一気に近づいていくでしょう。
②ハードウェア・ソフトウェアの標準化
2つ目のポイントは、ハードウェア・ソフトウェアの標準化です。メタバース関連デバイス・サービスの仕様がバラバラだと、利用・操作方法が異なる、アバターなどのデジタルアセットを他社の運営するメタバースに持ち込めないなど、様々な問題が発生します。
現状、メタバース関連デバイス・サービスを提供する各企業毎に仕様が異なっているものの、アバターではVRMというプラットフォームに依存しない規格が存在するなど、関連企業や団体が足並みを揃えるべく動いています。
社会的観点
③マス層に受けるヒットコンテンツの登場
3つ目のポイントは、ヒットコンテンツの登場です。現状の有力なメタバース上のサービスやコンテンツはVRゲームが大部分を占めており、若年層が中心のゲーム好き以外の一般層には、日々利用したくなるようなサービスが少ないというのが現状です。
そこで、ゲーム以外のコミュニケーションやエンタメ、仕事などの領域で多くの人々を魅了するヒットコンテンツが登場すれば、それを機に一気にメタバースが普及していくと考えられています。スマホの例で考えれば、LINEやパズドラなどのヒットコンテンツの登場がデバイスの普及に大きく貢献しています。
④アバターを介したコミュニケーションの定着
4つ目のポイントは、メタバースを介したコミュニケーションの定着です。メタバース普及に向けては、メタバース上の自分の分身であるアバターの姿で他のユーザーとコミュニケーションを取ることがどの程度定着するかが重要と考えられています。多くのユーザーがアバター姿の他ユーザーと話す際に、まるで本人と対面して話しているような感覚を得るようになれば、多くのリモートコミュニケーションがメタバースを通じたコミュニケーションに代替されていくと考えられています。
既に、Vtuberが世間的に流行したり、iPhoneに「ミー文字」と呼ばれる自分のオリジナルアバターで表情を送ることが出来る機能が搭載されるなど、アバターを介したコミュニケーションの定着の土台は整い始めていると言えるでしょう。
⑤メタバース関連人材の育成
5つ目のポイントは、メタバース関連人材の育成です。メタバース市場の成長には、メタバースを裏から支えるエンジニアや、メタバース上のコンテンツを作成するクリエイター、メタバースのビジネス活用を推進するBizDevなど、様々な人材が必要となります。
そのなかでも特に重要と考えられているのがメタバース上のコンテンツを作成するクリエイターです。メタバースの体験価値はメタバース上に集まるユーザー数とそれを惹きつける魅力的なコンテンツ数で大半が決まると言っても過言ではありません。そこでメタバース上で人々を魅了する3Dコンテンツを作成できるクリエイターをどの程度育成できるかは、メタバースの普及に向けて重要なカギとなります。
例えば、代表的なメタバースの1つであるRobloxは、ゲーム版のYoutubeと称されるように、ユーザーが制作したゲームタイトルによって構成されており、UGC(UserGeneratedContents)活用に成功し、約2億人に利用されるほどの成長を遂げました。既に、海外ではMetaやMicrosoft、国内ではPhychicVRLabなどの企業がクリエイター育成に向けた投資やプログラムの運営に取り組んでおり、今後多くのクリエイターの育成が進んでいくと考えられています。
経済的観点
⑥VR/ARデバイスの低価格化
6つ目のポイントは、VR/ARデバイスの低価格化です。法人向けデバイスとしてはマイクロソフト社の販売するHoloLens2の価格が本体のみで30万円以上、一般消費者向けのものも、Meta社の販売するMetaQuest2の価格がが2022年10月時点での価格は約6万円と、近年VRHMDを中心に低価格化は進みつつあるものの決して誰でも手に取れる価格とは言えません。一部報道によると、MetaQuest2はほぼコストと同等の価格で販売しているとも言われており、今後ビックテックを中心にどのように原材料費などのコスト削減を進めるかに注目が集まります。
⑦企業によるマネタイズ
7つ目のポイントは、企業によるマネタイズです。現在Meta社などのビックテックから、国内の幅広い産業のリーディングカンパニーまで、多くの企業がメタバースのビジネス活用に向けた積極的な投資を行っています。その理由として、収益向上に繋がる様々な活用が考えられていることがあり、具体的にはメタバース領域でのビジネス創出や作業現場の効率化、各種シミュレーションへの活用等があります。
一方で、メタバースは技術として黎明期のステータスにあり、現時点で既に大きな収益化に結びつけられている企業は多くはないのが現状です。そのため、企業が中長期的な収益獲得に繋がるビジネスモデルやエコシステムの確立に成功した事例が立ち上がる度に、各企業のメタバースへの投資が加速し、市場全体の発展に大きく貢献すると考えられます。
政治的観点
⑧メタバース・NFTに関する法整備
8つ目のポイントは、メタバースやNFTに関連する法律整備です。現在、日本政府はWeb3を日本の成長産業の1つとして掲げ、Web3.0政策推進室を設置するなど、産業の発展に積極的な動きを見せています。一方で、メタバース・NFT関連の法律はいまだ整備がなされておらず、企業・個人間でのトラブルに繋がるリスクが存在します。例えば、NFT関連事業者に関する課税制度やデジタルアセット等の所有権、嫌がらせ・誹謗中傷への対処、写り込みの問題など様々な法整備が進んでいないのが現状です。
※参照:経済産業省-経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性
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