メタバースはまたも失敗に終わるのか?普及へのカギやリスクとは?
2021年末のFacebookのMetaへの社名変更をきっかけに、メタバースは世界的に注目を集めています。
一方で、20年ほど前にリリースされたセカンドライフというメタバースに近いサービスが、一時は一世を風靡しながらも、現在は当時の勢いを失っていることもあり、「メタバースもセカンドライフの二の舞となり、一過性のブームで終わってしまうのではないか」という意見も聞かれるようになりました。
そこで、今回はメタバースとセカンドライフの違いやメタバースの普及に向けてのカギやリスクついて分かりやすく解説します。
本記事を読めば、今後のメタバースの展望について、歴史を振り返りながら効率良くキャッチアップできると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもメタバースとは
メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。
メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。
メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。
一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。
メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。
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メタバースが注目を集める6つの理由
メタバースが注目を集める理由として以下の6つが挙げられます。
- ①AppleやMetaなどのビックテックの本格参入・巨額投資
- ②関連技術の大幅な進歩とデバイスの低価格化
- ③コロナによるリモートコミュニケーションの普及
- ④若年層を中心とするユーザー数の増加
- ⑤仮想世界に対する人々の意識の変化
- ⑥メタバース市場の成長性の高さ
メタバースがセカンドライフの二の舞で終わらない4つの違い
セカンドライフ(Second Life)とは、人々が自由に楽しむことのできる、3DCGで構成されたインターネット上の仮想空間のことで、世界で最初のメタバース空間ともいわれています。
ユーザーはアバターの姿で他のユーザーとコミュニケーションを取ったり、イベントに参加したり、恋愛を楽しんだりと、ユーザーの思い思いの方法で楽しむことができます。
同サービスは、2003年にアメリカのリンデンラボ社によってリリースされ、ピーク時の2008年には会員数1500万人、デイリーアクティブユーザー100万人と社会現象になるほどの盛り上がりを見せました。しかし、一時期は一世を風靡したセカンドライフですが、現在は当時ほどの盛り上がりを見せておらず大成功とはいえない結果となっており、「近年注目されているメタバースもセカンドライフの二の舞になってしまうのでは」と言われることもあります。
一方で、近年注目を集めるメタバースは以下の4つの違いがあることで、セカンドライフの二の舞にならず、今後より人々の生活に普及していくと考えられています。
①関連技術の大幅な進歩
②リモートコミュニケーションの普及
③ユーザー数の増加
④市場への投資額の増大
それぞれの違いついて分かりやすく解説していきます。
①関連技術の大幅な進歩
1つ目の理由は、関連技術の大幅な進歩です。メタバースは様々な領域のテクノロジーによって構成されているサービスですが、特に近年のテクノロジーの発展により体験価値が大きく向上しています。具体的には通信技術の向上やコンピューターの処理性能の向上、メタバース向けデバイスの登場などが挙げられ、2006年時点と比べると、メタバース空間内での体験をよりスムーズに、より没入感のある形で楽しむことができるようになりました。
②リモートコミュニケーションの普及
2つ目の理由は、リモートコミュニケーションの普及です。コロナウイルス感染拡大の影響で、人々のコミュニケーションの機会が対面からリモートに移行し、プライベートはもちろん仕事上でのコミュニケーションも、SlackなどのチャットやZOOMなどのビデオ会話によって行われるのが当たり前の時代となりました。デジタルを介したコミュニケーションの需要が拡大しているのはもちろん、人々が抵抗感なくデジタルコミュニケーションを利用するようになっているというのが非常に大きなポイントといえます。
③ユーザー数の増加
3つ目の理由は、メタバースサービスのユーザー数の増加です。現在メタバースはオンラインゲームでの用途を中心にユーザーが拡大しています。代表的なサービスとして挙げられるフォートナイトが約3.5億人、ロブロックスが約2億人と圧倒的なユーザー数を誇ります。また、メタバース領域への注力を図っているMeta社は、FacebookやInstagramなどのサービスを合わせて約40億人以上の月間アクティブユーザーを抱えており、それらのユーザーを自社のメタバースサービスへ誘導できると考えると、今後より多くのユーザーがメタバースを利用するようになると考えられます。
また、メタバースはユーザー数が増えれば増えるほど、体験価値が向上するというネットワーク効果性が高いという特徴を持っており、ユーザー数の増加は加速度的に増えていくと考えられます。
④市場への投資額の増大
4つ目の理由は、市場への投資額の増大です。近年のメタバースへの注目度の高まりから、GAFAはもちろん、ゲーム・エンタメ業界など幅広い業界の企業がメタバースの発展に向け、多額の投資を行っています。その動きを牽引するのがMeta社です。Meta社は2021年末にFacebookからの社名変更とともに、今後メタバースに年間で約1兆円超の投資を行うことを発表しました。
このようにメタバース市場への積極的な投資により、関連技術の発展による体験価値の向上や人々を惹きつけるヒットコンテンツの開発などが進み、よりメタバースの普及が加速していくと考えられます。
メタバースの普及のカギを握る8つのポイント
これまで紹介したようにメタバース普及の土台は固まりつつある一方で、今後大きく普及していくためには様々なドライバーが存在します。
その中から特に重要な9つのポイントを技術、社会、経済、政治の4つの観点から整理しましたので、それぞれについて分かりやすく解説していきます。
技術的観点
①VR/ARデバイスの性能・UXの向上
1つ目のポイントは、VR/ARデバイスの性能・UXの向上です。Meta Questを筆頭とするVRゴーグルやARグラスなどのデバイスが、いつ小型化・軽量化を実現するかはメタバース普及に向けた最大のカギです。
現在のMeta QuestなどのVRゴーグルは10年ほど前から比べれば遥かに小型化・軽量化が進んでいますが、長時間装着するには身体への負担が大きいというのが現状です。
逆に、デバイスがサングラスのような重量とサイズ感に進化すれば、日常生活のほぼすべての時間、デバイスを装着しリアルとバーチャルが融合された、SFのような世界に一気に近づいていくでしょう。
②ハードウェア・ソフトウェアの標準化
2つ目のポイントは、ハードウェア・ソフトウェアの標準化です。メタバース関連デバイス・サービスの仕様がバラバラだと、利用・操作方法が異なる、アバターなどのデジタルアセットを他社の運営するメタバースに持ち込めないなど、様々な問題が発生します。
現状、メタバース関連デバイス・サービスを提供する各企業毎に仕様が異なっているものの、アバターではVRMというプラットフォームに依存しない規格が存在するなど、関連企業や団体が足並みを揃えるべく動いています。
社会的観点
③マス層に受けるヒットコンテンツの登場
3つ目のポイントは、ヒットコンテンツの登場です。現状の有力なメタバース上のサービスやコンテンツはVRゲームが大部分を占めており、若年層が中心のゲーム好き以外の一般層には、日々利用したくなるようなサービスが少ないというのが現状です。
そこで、ゲーム以外のコミュニケーションやエンタメ、仕事などの領域で多くの人々を魅了するヒットコンテンツが登場すれば、それを機に一気にメタバースが普及していくと考えられています。スマホの例で考えれば、LINEやパズドラなどのヒットコンテンツの登場がデバイスの普及に大きく貢献しています。
④アバターを介したコミュニケーションの定着
4つ目のポイントは、メタバースを介したコミュニケーションの定着です。メタバース普及に向けては、メタバース上の自分の分身であるアバターの姿で他のユーザーとコミュニケーションを取ることがどの程度定着するかが重要と考えられています。
多くのユーザーがアバター姿の他ユーザーと話す際に、まるで本人と対面して話しているような感覚を得るようになれば、多くのリモートコミュニケーションがメタバースを通じたコミュニケーションに代替されていくと考えられています。
既に、Vtuberが世間的に流行したり、iPhoneに「ミー文字」と呼ばれる自分のオリジナルアバターで表情を送ることが出来る機能が搭載されるなど、アバターを介したコミュニケーションの定着の土台は整い始めていると言えるでしょう。
⑤メタバース関連人材の育成
5つ目のポイントは、メタバース関連人材の育成です。メタバース市場の成長には、メタバースを裏から支えるエンジニアや、メタバース上のコンテンツを作成するクリエイター、メタバースのビジネス活用を推進するBizDevなど、様々な人材が必要となります。
そのなかでも特に重要と考えられているのがメタバース上のコンテンツを作成するクリエイターです。メタバースの体験価値はメタバース上に集まるユーザー数とそれを惹きつける魅力的なコンテンツ数で大半が決まると言っても過言ではありません。そこでメタバース上で人々を魅了する3Dコンテンツを作成できるクリエイターをどの程度育成できるかは、メタバースの普及に向けて重要なカギとなります。
例えば、代表的なメタバースの1つであるRobloxは、ゲーム版のYoutubeと称されるように、ユーザーが制作したゲームタイトルによって構成されており、UGC(UserGeneratedContents)活用に成功し、約2億人に利用されるほどの成長を遂げました。
既に、海外ではMetaやMicrosoft、国内ではPhychic VR Labなどの企業がクリエイター育成に向けた投資やプログラムの運営に取り組んでおり、今後多くのクリエイターの育成が進んでいくと考えられています。
経済的観点
⑥VR/ARデバイスの低価格化
6つ目のポイントは、VR/ARデバイスの低価格化です。法人向けデバイスとしてはマイクロソフト社の販売するHoloLens2の価格が本体のみで30万円以上、一般消費者向けのものも、Meta社の販売するMetaQuest2の価格がが2022年10月時点での価格は約6万円と、近年VRHMDを中心に低価格化は進みつつあるものの決して誰でも手に取れる価格とは言えません。
一部報道によると、MetaQuest2はほぼコストと同等の価格で販売しているとも言われており、今後ビックテックを中心にどのように原材料費などのコスト削減を進めるかに注目が集まります。
⑦企業によるマネタイズ
7つ目のポイントは、企業によるマネタイズです。現在Meta社などのビックテックから、国内の幅広い産業のリーディングカンパニーまで、多くの企業がメタバースのビジネス活用に向けた積極的な投資を行っています。
その理由として、収益向上に繋がる様々な活用が考えられていることがあり、具体的にはメタバース領域でのビジネス創出や作業現場の効率化、各種シミュレーションへの活用等があります。
一方で、メタバースは技術として黎明期のステータスにあり、現時点で既に大きな収益化に結びつけられている企業は多くはないのが現状です。そのため、企業が中長期的な収益獲得に繋がるビジネスモデルやエコシステムの確立に成功した事例が立ち上がる度に、各企業のメタバースへの投資が加速し、市場全体の発展に大きく貢献すると考えられます。
政治的観点
⑧メタバース・NFTに関する法整備
8つ目のポイントは、メタバースやNFTに関連する法律整備です。現在、日本政府はWeb3を日本の成長産業の1つとして掲げ、Web3.0政策推進室を設置するなど、産業の発展に積極的な動きを見せています。
一方で、メタバース・NFT関連の法律はいまだ整備がなされておらず、企業・個人間でのトラブルに繋がるリスクが存在します。例えば、NFT関連事業者に関する課税制度やデジタルアセット等の所有権、嫌がらせ・誹謗中傷への対処、写り込みの問題など様々な法整備が進んでいないのが現状です。
メタバースの普及に向けた4つのリスク
➀ユーザーへの普及
1つ目のリスクは、メタバースがどの程度ユーザーに普及するか?という点です。現在はマルチプレーヤー型オンラインゲームやVRゲームの流行に牽引され、利用者を増やしつつあるという状況です。一方で、本格的にマス層まで普及していくためにはいくつかの障壁が存在します。例えば、より多くの人が「メタバースを利用したい!」と思えるようなユースケースの確立やヒットコンテンツの登場、メタバースを利用するためのデバイスの低価格化や軽量化などが挙げられます。
②企業の収益向上への寄与
2つ目のリスクは、企業がメタバースを活用することがどの程度収益に繋がるのか?という点です。現在、国内外の幅広い業界の企業がメタバース活用に取り組んでいます。一方で、各社はまだメタバースを投資フェーズの市場として捉え、大きく収益化を果たしている企業は少ないのが現状です。今後、メタバース市場が本格的に成長した際に、自社が新たなビジネスモデルの構築や収益化に繋げられるかで明暗が分かれることとなるでしょう。
③法整備の進展
3つ目のリスクは、メタバースに関連する法律整備がどの程度早く進むのか?という点です。現在、日本政府はWeb3/メタバースを日本の成長産業の1つとして掲げ、Web3.0制作推進室を設置するなど、産業の発展に積極的な動きを見せています。一方で、メタバース関連の法律はいまだ整備がなされておらず、企業・個人間でのトラブルに繋がるリスクが存在します。例えば、メタバース上でのデジタルアセット等の所有権や嫌がらせ・誹謗中傷への対処、写り込みの問題など、メタバース上での様々な活動への法整備が進んでいないのが現状です。
④技術の発展
4つ目のリスクは、メタバースに関連する技術がどの程度早く発展するのか?という点です。メタバースでの体験は様々な要素技術によって構成されており、それらの技術発展は
大きくメタバースでの体験価値を高めるものとメタバースにアクセスする負担を減らすものの2つに分けられます。メタバースでの体験価値を高めるものに関しては、3Dモデリングやユーザーの動作のトラッキング技術の進化、メタバースにアクセスする負担を減らすものに関しては、バッテリーやデバイス自体の小型化、軽量化などが挙げられます。
一方で、現状のMetaQuest2を通じたメタバースの体験でも、メタバースの世界にかなり没入した感覚を得られるレベルまで来ているため、今後より要素技術が発展していくことで、メタバースがより人々の生活に普及していくと考えられます。
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