メタバースは今後どうなるのか?将来性や市場規模、活用事例まで解説
2021年末のFacebookのMetaへの社名変更をきっかけに、世界的に注目を集めるメタバース。
一方で、「メタバースが注目されているのは知っているけど、社会や企業にとって具体的にどのような意義があるのか、今後どうなっていくのかは分からない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はメタバースが注目される理由や将来性を初心者の方にも分かりやすく解説します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- メタバースが注目を集めている理由が知りたい
- 企業によるメタバースの活用事例が知りたい
- メタバースの将来性、今後の展望について知りたい
本記事を読めば、メタバースの意義、将来性をしっかりと理解できると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
- メタバースの世界・国内の市場規模
- メタバースの今後に注目が集まる5つの理由
- メタバースの今後の普及・発展のシナリオ
- AppleやMetaなどのビックテックによるエコシステム構築戦略
- AIの進化がメタバース市場にもたらす6つの影響
- メタバースの普及・発展を左右する8つのカギ
- メタバースの普及により生まれる6つのビジネスモデル
- 企業がメタバースを活用する3つのメリットと活用事例7選
- ①新サービスの構築:KDDI、バンダイナムコ
- ②マーケティング・ブランディングへの活用:三越伊勢丹、日産自動車
- ③社内業務効率化への活用:ウォルマート、DHL、川崎重工
- おススメのメタバースサービス3選
- 費用対効果・実現性が高いメタバース活用方法
メタバースの世界・国内の市場規模
メタバースの市場規模は今後急激に拡大していくものと予想されますが、「具体的にどの程度の規模に達するのか」、気になる方も多いのではないでしょうか?
以下では、世界及び国内のメタバースの市場規模予測を紹介していきます。
メタバースの海外市場規模
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2022年6月に発表したレポートにおいて、メタバースの市場規模は2022年時点で28兆8,000億円~43兆2,000億円、2030年には全世界で約720兆円に達する可能性があると予測しています。これは日本全体の経済規模にも匹敵するほどの大きさです。
同レポートによると、業界別の2030年におけるメタバース市場規模は、EC業界においては288兆円から377.4兆円、教育分野においては25兆9,200円から38兆8,800億円、広告業界においては20兆7,360円から28兆8,864億円、ゲーム市場においては15兆5,520億円から18兆円に達すると予測されています。
メタバースの国内市場規模
矢野経済研究所によると、日本国内のメタバースの市場規模は2021年度時点で約744億円、2026年度には約1兆円にまで成長すると予想されています。世界市場と同様急速な成長を見せると考えられ、年率成長率は約170%程度になると予測されています。
メタバースの今後に注目が集まる5つの理由
近年メタバースに注目が集まる理由として主に以下の5つが挙げられます。
- ①FacebookのMetaへの社名変更と多額の投資
- ②NFTを含むWeb3への注目の高さ
- ③メタバース関連技術の進歩
- ④コロナによるリモートコミュニケーションの普及
- ⑤若年層へのゲーム型メタバースの普及
それぞれの理由について分かりやすく解説していきます。
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①FacebookのMetaへの社名変更と多額の投資
1つ目の理由は、2021年末に行われたFacebookのMetaへの社名変更です。また同社はこの社名変更と合わせて、メタバース領域に年間約1兆円規模の投資を行うことを発表しました。世界を代表するテック企業であるFacebookが社名変更と多額の投資をしてまで、今後メタバースに注力するという姿勢は、世界中でメタバースの注目を集める大きなきっかけとなりました。
②NFTを含むWeb3への注目の高さ
2つ目の理由は、NFTを含むWeb3への注目度の高さです。ブロックチェーン技術の発展により、NFT発展の土壌が整ってきたことや、2021年〜2022年にかけてNFTの高額売買が立て続けに行われ世間を賑わせたことなどにより、NFT/Web3への注目度が高まりました。
NFTはメタバース上のアバターなどのデジタルアセットの売買に活用できることなどから、両者の相性は非常に良いとされており、その結果メタバースにも注目が集まることとなりました。
③メタバース関連技術の進歩
3つ目の理由は、メタバース関連技術の進歩です。メタバースは様々な領域のテクノロジーによって構成されているサービスですが、特に近年のテクノロジーの発展により体験価値が大きく向上しています。
具体的には5G通信の実装等による通信技術の向上やコンピューターの処理性能の向上、Apple Vision Proなどのメタバース向けデバイスの登場などが挙げられ、セカンドライフが登場した2000年代前半時点と比べると、メタバース空間内での体験をよりスムーズに、より没入感のある形で楽しむことができるようになりました。
④コロナによるリモートコミュニケーションの普及
4つ目の理由は、コロナによるリモートコミュニケーションの普及です。コロナウイルス感染拡大の影響で、人々のコミュニケーションの機会が対面からリモートに移行し、プライベートはもちろん仕事上でのコミュニケーションも、SlackなどのチャットやZOOMなどのビデオ会話によって行われるのが当たり前の時代となりました。
デジタルを介したコミュニケーションの需要が拡大しているのはもちろん、人々が抵抗感なくデジタルコミュニケーションを利用するようになっているというのが非常に大きなポイントといえます。
⑤若年層へのゲーム型メタバースの普及
5つ目の理由は、若年層へのゲーム型メタバースの普及です。現在メタバースはオンラインゲームでの用途を中心に若年層のユーザー数が急増しています。背景として、若年層は子供の頃から日常的にスマホを利用していること、コミュニケーションの手段としてSNSではなく、オンラインゲーム上のコミュニケーション機能を利用するシーンが増えていることなどが挙げられます。
ゲーム型メタバースの代表的なサービスとして挙げられる、フォートナイトが約5億人、ロブロックスが約2億人と圧倒的なユーザー数を誇ります。
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メタバースの今後の普及・発展のシナリオ
メタバース市場は、今はまだ黎明期にあり、2040年ごろにかけて「黎明期」「普及期」「定着期」の3つのフェーズを経て発展していくと考えられています。
それぞれのフェーズについてわかりやすく解説していきます。
①黎明期(~2025年):一般ユーザーにメタバースの認知が広まる
現在〜2025年までのメタバース黎明期は、メタバースを構成する技術要素の進化と社会的なニーズの高まりを機に、多くの一般ユーザーがメタバースに興味を示し始めます。それに伴い多くの企業がメタバース市場への参入を始めます。
具体的には技術の発展により、VRデバイスの低価格や小型化が進み、一般ユーザーでも利用しやすいデバイスになること、新型コロナウイルスの流行により、リモートコミュニケーションの需要が高まることなどにより、メタバースが大きく発展する準備が整うフェーズと言えます。
一方で、メインのユーザー層はVRゲームを目的とするコアユーザーであり、市場としてもデバイスやゲームタイトルが中心となっています。
②普及期(2025~2030年):メタバースが一気に人々の生活に普及
2025〜2030年のメタバース普及期は、要素技術の更なる発展と、メタバース上で提供されるサービスの充実により、メタバースが一気に人々の生活に普及し始めます。この頃にはVR/ARデバイスはかなり小型化・軽量化され、長時間装着することが可能になっており、現代におけるスマホのような感覚で、幅広い活動をメタバース上で行うようになっていきます。
人々がメタバースで過ごす時間が長くなるにつれ、メタバース空間上のデジタルアセット(アバターやアバターの洋服など)がより価値を持ったり、メタバース上のメディアやSNSの広告がより価値を持っていくと考えられます。
③定着期(2030年~):多くの人々が当たり前にメタバース空間で活動
2030年以降のメタバース定着期は、要素技術が一通り成熟し、人々がメタバース空間にアクセスする上での課題は解決され、老若男女問わず多くの人々が当たり前にメタバース空間で活動するようになると考えられています。現代のスマホのように、あらゆる領域のサービスにアクセスするベースとなる存在に発展しており、消費者向けのサービスの充実はもちろん、多くの企業の業務プロセスにメタバースが取り込まれていくと考えられます。
具体的には、企業の教育研修がメタバースを通じて行われたり、製造業のバリューチェン全体がメタバース上に構築され、各種シミュレーションや現場の作業員のサポートにも活用されるなど、仕事でもメタバースを活用することがごく自然に行われるようになっていくでしょう。
AppleやMetaなどのビックテックによるエコシステム構築戦略
今後加速度的に普及・発展していくと考えられているメタバースにおいて、AppleやMetaなどのビッグテックら各社は、自社プラットフォーム上でのエコシステム構築を目指し投資を加速させています。エコシステム内で参入企業数・サービス数・ユーザー数が連鎖的に増加することで、市場全体が加速度的に成長していくと考えられます。
エコシステムの構築が重要なのは、AppleやGoogleがスマホ市場においてエコシステムの構築に成功し、高額の手数料を徴収するなど、大きな利益を得ることができたことからも明らかといえます。
以下では、ビッグテック各社がプラットフォームの提供により構築を目指すエコシステムについて、わかりやすく解説していきます。
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エコシステムの構築に欠かせない5つの要素
ビッグテックが構築を目指しているエコシステムはベースのプラットフォームとして、ハードウェア、ソフトウェアで構成されるプラットフォーム上で、開発者、サービス、ユーザーがスパイラル上に増大していく形で構成されています。
そこで、エコシステムの各構成要素をAppleとGoogleがスマホでどのように構築してきたかを例に、簡単に解説していきます。
1つ目の構成要素はハードウエアです。AppleはiPhone、GoogleはAndroidを製造・販売し多くの人々に普及させることで、大きなユーザー接点を獲得しました。
2つ目の構成要素はソフトウェアです。Apple、Googleは各社のOSとアプリストアを提供しており、サービス開発とユーザーへの提供の基盤となっています。
3つ目の構成要素は開発者です。Apple、Googleは各社のプラットフォームを利用するユーザーの多さや充実した開発基盤により、多くの開発者に自社プラットフォーム上でサービスを提供させることに成功しました。
4つ目の構成要素はサービスです。Apple、Googleは、多くの開発者に各社のプラットフォーム上からサービスをリリースさせることで、ユーザーに対して様々なニーズを満たす、優良なサービスが利用できる環境を構築しました。
5つ目の構成要素はユーザーです。多くの魅力的なサービスが利用できるため、全世界の大半の人々がAppleかGoogleのプラットフォームを利用しています。
このように、AppleとGoogleはハードウエアとソフトウェアで構成される自社のプラットフォーム上で、開発者、サービス、ユーザーをスパイラル上に増大させることで、強力なエコシステムを確立し、圧倒的な競争優位性を構築することに成功しました。
AIの進化がメタバース市場にもたらす6つの影響
メタバースはAIの発達とも親和性を有すると言われています。AIの進化は、メタバース上でのユーザー体験の進化やメタバース制作の効率化に寄与し、市場成長を加速させます。
AIの進化によりメタバースにもたらされる影響としては、以下の6つが挙げられます。
- ①体験のパーソナライズ
- ②没入感・リアリティの向上
- ③同時翻訳による言語の壁を超えた交流
- ④仮想キャラクターとの自然な対話
- ⑤不正行為の検出・防止
- ⑥メタバース制作の効率化・サポート
それぞれの影響についてわかりやすく解説します。
①体験のパーソナライズ
AIは、メタバース上でのユーザーのあらゆる行動や会話内容に関する情報を収集・データ化し、そこから得られる各ユーザーの行動特性や嗜好性に基づき、最適なUI/UXをカスタマイズして提供することができます。これにより、各ユーザーにより最適化したマーケティングを行ったり、各ユーザーの好みに合わせたサービスを提供することが可能となります。
②没入感・リアリティの向上
会話、ストーリー、画像、動画、音楽など、新しいコンテンツやアイデアを生み出すことができる生成系AIを活用したリアルな空間やオブジェクトや、AIによる各ユーザーにパーソナライズされた体験により、仮想世界での没入感やリアリティが向上します。
③同時翻訳による言語の壁を超えた交流
AIによる同時通訳により、異なる言語を話すユーザーと自国語でのリアルタイムでのコミュニケーション・交流が可能になります。これにより、同じメタバース空間内における外国人との交流が広がると考えられます。
④仮想キャラクターとの自然な対話
メタバース上で登場する仮想のキャラクターと、ユーザーの言葉を汲み取った、リアルな人間と会話しているような自然な会話が可能になります。
⑤不正行為の検出・防止
AIが異常なユーザーの行動やシステムの動作を検知することで、ハッキングや嫌がらせなどの不正行為の検出・防止を強化することができます。
⑥メタバース制作の効率化・サポート
AIによりラフな下書きやテキスト、音声などからリアルな3DCGを自動作成することができ、メタバース制作を強力に効率化・サポートすることができます。
メタバースの普及・発展を左右する8つのカギ
これまで紹介したようにメタバース普及の土台は固まりつつある一方で、今後大きく普及していくためには様々なドライバーが存在します。
その中から特に重要な8つのポイントを技術、社会、経済、政治の4つの観点から整理しましたので、それぞれについて分かりやすく解説していきます。
技術的観点
①VR/ARデバイスの性能・UXの向上
1つ目のポイントは、VR/ARデバイスの性能・UXの向上です。Meta Questを筆頭とするVRゴーグルやARグラスなどのデバイスが、いつ小型化・軽量化を実現するかはメタバース普及に向けた最大のカギです。現在のMeta QuestなどのVRゴーグルは10年ほど前から比べれば遥かに小型化・軽量化が進んでいますが、長時間装着するには身体への負担が大きいというのが現状です。
逆に、デバイスがサングラスのような重量とサイズ感に進化すれば、日常生活のほぼすべての時間、デバイスを装着しリアルとバーチャルが融合された、SFのような世界に一気に近づいていくでしょう。
②ハードウェア・ソフトウェアの標準化
2つ目のポイントは、ハードウェア・ソフトウェアの標準化です。メタバース関連デバイス・サービスの仕様がバラバラだと、利用・操作方法が異なる、アバターなどのデジタルアセットを他社の運営するメタバースに持ち込めないなど、様々な問題が発生します。
現状、メタバース関連デバイス・サービスを提供する各企業毎に仕様が異なっているものの、アバターではVRMというプラットフォームに依存しない規格が存在するなど、関連企業や団体が足並みを揃えるべく動いています。
社会的観点
③マス層に受けるヒットコンテンツの登場
3つ目のポイントは、ヒットコンテンツの登場です。現状の有力なメタバース上のサービスやコンテンツはVRゲームが大部分を占めており、若年層が中心のゲーム好き以外の一般層には、日々利用したくなるようなサービスが少ないというのが現状です。
そこで、ゲーム以外のコミュニケーションやエンタメ、仕事などの領域で多くの人々を魅了するヒットコンテンツが登場すれば、それを機に一気にメタバースが普及していくと考えられています。スマホの例で考えれば、LINEやパズドラなどのヒットコンテンツの登場がデバイスの普及に大きく貢献しています。
④アバターを介したコミュニケーションの定着
4つ目のポイントは、メタバースを介したコミュニケーションの定着です。メタバース普及に向けては、メタバース上の自分の分身であるアバターの姿で他のユーザーとコミュニケーションを取ることがどの程度定着するかが重要と考えられています。
多くのユーザーがアバター姿の他ユーザーと話す際に、まるで本人と対面して話しているような感覚を得るようになれば、多くのリモートコミュニケーションがメタバースを通じたコミュニケーションに代替されていくと考えられています。
既に、Vtuberが世間的に流行したり、iPhoneに「ミー文字」と呼ばれる自分のオリジナルアバターで表情を送ることが出来る機能が搭載されるなど、アバターを介したコミュニケーションの定着の土台は整い始めていると言えるでしょう。
⑤メタバース関連人材の育成
5つ目のポイントは、メタバース関連人材の育成です。メタバース市場の成長には、メタバースを裏から支えるエンジニアや、メタバース上のコンテンツを作成するクリエイター、メタバースのビジネス活用を推進するBizDevなど、様々な人材が必要となります。
そのなかでも特に重要と考えられているのがメタバース上のコンテンツを作成するクリエイターです。メタバースの体験価値はメタバース上に集まるユーザー数とそれを惹きつける魅力的なコンテンツ数で大半が決まると言っても過言ではありません。そこでメタバース上で人々を魅了する3Dコンテンツを作成できるクリエイターをどの程度育成できるかは、メタバースの普及に向けて重要なカギとなります。
例えば、代表的なメタバースの1つであるRobloxは、ゲーム版のYoutubeと称されるように、ユーザーが制作したゲームタイトルによって構成されており、UGC(UserGeneratedContents)活用に成功し、約2億人に利用されるほどの成長を遂げました。既に、海外ではMetaやMicrosoft、国内ではPhychicVRLabなどの企業がクリエイター育成に向けた投資やプログラムの運営に取り組んでおり、今後多くのクリエイターの育成が進んでいくと考えられています。
経済的観点
⑥VR/ARデバイスの低価格化
6つ目のポイントは、VR/ARデバイスの低価格化です。法人向けデバイスとしてはマイクロソフト社の販売するHoloLens2の価格が本体のみで30万円以上、一般消費者向けのものも、Meta社の販売するMetaQuest2の価格がが2022年10月時点での価格は約6万円と、近年VRHMDを中心に低価格化は進みつつあるものの決して誰でも手に取れる価格とは言えません。
一部報道によると、MetaQuest2はほぼコストと同等の価格で販売しているとも言われており、今後ビックテックを中心にどのように原材料費などのコスト削減を進めるかに注目が集まります。
⑦企業によるマネタイズ
7つ目のポイントは、企業によるマネタイズです。現在Meta社などのビックテックから、国内の幅広い産業のリーディングカンパニーまで、多くの企業がメタバースのビジネス活用に向けた積極的な投資を行っています。
その理由として、収益向上に繋がる様々な活用が考えられていることがあり、具体的にはメタバース領域でのビジネス創出や作業現場の効率化、各種シミュレーションへの活用等があります。
一方で、メタバースは技術として黎明期のステータスにあり、現時点で既に大きな収益化に結びつけられている企業は多くはないのが現状です。
そのため、企業が中長期的な収益獲得に繋がるビジネスモデルやエコシステムの確立に成功した事例が立ち上がる度に、各企業のメタバースへの投資が加速し、市場全体の発展に大きく貢献すると考えられます。
政治的観点
⑧メタバース・NFTに関する法整備
8つ目のポイントは、メタバースやNFTに関連する法律整備です。現在、日本政府はWeb3を日本の成長産業の1つとして掲げ、Web3.0政策推進室を設置するなど、産業の発展に積極的な動きを見せています。
一方で、メタバース・NFT関連の法律はいまだ整備がなされておらず、企業・個人間でのトラブルに繋がるリスクが存在します。例えば、NFT関連事業者に関する課税制度やデジタルアセット等の所有権、嫌がらせ・誹謗中傷への対処、写り込みの問題など様々な法整備が進んでいないのが現状です。
※参照:経済産業省-経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性
メタバースの普及により生まれる6つのビジネスモデル
メタバースの普及により生まれるビジネスモデルとして主に以下の6つが挙げられます。
- ①デジタルサービス/コンテンツ課金
- ②プラットフォーム手数料
- ③広告枠販売
- ④インフラ/ツール提供
- ⑤マーケティング・セールスへの活用
- ⑥各種業務効率化への活用
それぞれのビジネスモデルについてわかりやすく解説していきます。
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①デジタルサービス/コンテンツ課金
1つ目のビジネスモデルは、デジタルサービス/コンテンツ課金です。メタバース上でのユーザーのゲームなどのサービスの利用料や利用する武器・アバターなどのデジタルコンテンツへの課金からマネタイズをするモデルで、現時点で最も多くの企業がマネタイズに成功しているモデルでもあります。
従来からゲームなどのサービスへの課金市場は一定の規模で存在しましたが、メタバースの普及によりデジタルコンテンツの市場がより拡大していくと考えられています。
その背景として、人々がメタバースを利用する時間が増えるにあたり、メタバース上でのアバターや洋服などのデジタルアセットがより高い価値を持つようになること、NFTを活用することで唯一無二の価値を持ち、取引が容易になる事などがあります。
このビジネスモデルの事例として、世界を代表するゲーム型メタバースであるフォートナイトや国内最大のSNS型メタバースであるClusterなどが挙げられます。
②プラットフォーム手数料
2つ目のビジネスモデルは、プラットフォーム手数料です。メタバースを運営するプラットフォーマーが、メタバース上での価値交換を仲介しその手数料によりマネタイズするモデルです。
メタバースの発展には、企業だけでなく一般ユーザーがクリエイターとしてデジタルコンテンツ制作などの様々な価値提供を行うことが必要不可欠だと考えられており、その実現にこのビジネスモデルが役割を果たします。
このビジネスモデルの事例として、ゲーム版Youtubeとも称されるRobloxが挙げられます。Robloxは一般ユーザーによって制作された5000万本を超えるゲームタイトルを自由に遊べ、課金もできるメタバースサービスなのですが、このユーザーからの課金の一部がゲームを制作したクリエイターに還元される仕組みとなっています。
③広告枠販売
3つ目のビジネスモデルは、広告枠販売です。メタバースを運営するプラットフォーマーやメタバースの一区画を所有する企業や個人が、メタバース上での広告枠を企業などに販売することでマネタイズするモデルです。
テレビ広告、Web広告と人々の視線を集めるメディアが広告価値を持ってきたのと同様、人々がメタバースで過ごす時間が増えるにつれて、メタバース上の建物の壁などに掲示される広告の価値も高まります。
このビジネスモデルの事例として、Roblox上の広告枠の販売が挙げられ、この広告枠の販売の一部は博報堂の子会社によって行われました。
④インフラ/ツール提供
4つ目のビジネスモデルは、インフラ/ツール提供です。メタバースのビジネス活用を進める企業などに対し、メタバースを構築するインフラやコンテンツを作成するツールを提供し、その利用料によってマネタイズするモデルです。
現在多数の企業がメタバースに参入していますが、0からメタバース空間の構築やコンテンツ制作を行うには様々なケイパビリティや多くのリソースが必要となるため、他の企業が提供するインフラやツールを活用するのが一般的です。
このビジネスモデルの事例として、代表的な3DゲームエンジンであるUnityやバーチャルマーケットを運営するHIKKYが提供するVketCloudなどが挙げられます。
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⑤マーケティング・セールスへの活用
5つ目のビジネスモデルは、マーケティング・セールスへの活用です。新たな集客チャネルとしてメタバースを活用したり、セールスにメタバースを活用することで、既存の商品やサービスの販売に繋げるモデルです。
新たな集客チャネルとしてメタバースを活用することで、新たな顧客層との接点の構築やブランドへのロイヤリティ向上、セールスにメタバースを活用することで3Dの没入感のあるコンテンツやアバターでの接客による成約率の向上が期待されています。
⑥各種業務効率化への活用
6つ目のビジネスモデルは、各種業務効率化への活用です。製造ラインや製品のシミュレーションや遠隔地からの業務の実現、研修などのへの活用により様々な業務効率を高めるモデルです。
メタバースのビジネス活用というと、ユーザー向けのサービス提供がイメージされがちですが、業務効率化への活用を進める企業も多く、短期での収益向上に結びつきやすいモデルとなっています。
企業がメタバースを活用する3つのメリットと活用事例7選
企業がメタバースをビジネスに活用するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ①新サービスの構築
- ②マーケティング・ブランディングへの活用
- ③社内業務効率化への活用
それぞれについて、事例とともに分かりやすく解説していきます。
①新サービスの構築:KDDI、バンダイナムコ
メタバースを活用し新たなサービスを構築することで、ユーザーに対し現実に存在するもの/しないものを含め、仮想空間上に3Dの世界を構築することができるというメタバースならではの特徴を活かし、ユニークな体験を提供することができます。
そんなメタバースを活用した新サービスに取り組む企業の事例をご紹介します。
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1.KDDI:ライブ配信、バーチャルショッピングなどができるメタバース「αU」を提供
KDDIはライブ配信、バーチャルショッピングなどを行うことができるメタバース「αU」を提供しています。KDDIはこれを「現実と仮想を軽やかに行き来する新しい世代に寄り添い、誰もがクリエイターになりうる世界に向けたメタバース・Web3サービス」と位置付け、メタバースは「体験する場所」から「発信する場所」へと進化していきます。
αUではライブ配信やバーチャルショッピングを楽しめることに加えて、アバターやマイルームの制作、マイルームの家具の販売など、クリエイターとしての体験が可能です。さらにクリエイター支援の取り組みとして、国内外のパートナーと連携し、日本のクリエイターやコンテンツのグローバル展開をサポートしています。KDDIはこの新サービスに1000億円投入しメタバース関連のコンテンツを拡大していく予定です。
2.バンダイナムコ:ガンダムファンが交流できるメタバースを構築へ
バンダイナムコグループは、2022年4月から掲げる中期ビジョン「Connect with Fans」の重点戦略の1つとして、IPでファンとつながる「IPメタバース」を設定しました。これはメタバースを介し、バンダイナムコグループとファンのコミュニティを作る仕組みで、その第1弾が「ガンダムメタバース」です。ガンダムカンファレンスにて発表されたイメージ映像では、世界中のガンダムファンがメタバース上に集い、語り合ったり、ライブイベントに参加したりする様子が描かれていました。
今後バンダイナムコは、グループ以外の企業によるガンダムビジネスへの参入促進や、ガンダムファンがガンダムを活用したビジネスができる場の提供を目指して事業展開を行っていく予定とのことです。
②マーケティング・ブランディングへの活用:三越伊勢丹、日産自動車
メタバースをマーケティング・ブランディングに活用することで、従来はオンラインでの実施が難しかった商品・サービスの販促やメタバースならではの体験を通じた強力なブランディングを行うことができます。メタバースは従来のWebページや動画と比べ伝えられる情報がリッチかつインタラクティブな体験を提供可能なため、ユーザーを惹きつけやすく幅広い業種での活用が進んでいます。
そんなメタバースを活用したマーケティング・ブランディングに取り組む企業の事例をご紹介します。
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3.三越伊勢丹:独自のメタバース空間を構築し新たなEC体験の提供へ
三越伊勢丹は、社の百貨店の店舗を再現したメタバース「Rev worlds」をスマホ向けアプリをリリースしています。同社はこのアプリを通じて、”バーチャルな伊勢丹の店舗”で”リアルな買い物”体験を提供しています。ユーザーはアバターの姿で商品を見て回ることができ、その商品を実際にECで購入することが可能です。店員のアバターも配置され、チャット機能を使った接客も受けられます。
現在は婦人服や食品など310ブランドを扱っていますが、今後は家具や日用品にも対象を広げる方針です。友人のアバターと一緒に会話しながら買い物できるようにするなど機能も強化する予定です。
他社がメタバース上で開催されるイベントへの出展が中心のなか、三越伊勢丹は既に独自のメタバース空間を構築・提供しており、マーケティングへのメタバース活用をリードする存在といえます。
4.日産自動車:VR chat上で新車発表・試乗会を開催
日産自動車はメタバース上で、新型軽電気自動車「日産サクラ」の発表・試乗会を開催しました。イベントは世界最大のVR SNSプラットフォーム「VRChat」で開催されました。
発表会は日産副社長のアバターが登場し、ボイスレターが再生されるという形で進行。また、試乗会では日本の四季を感じられるドライブコースでバーチャルなサクラを運転することができました。VR上での試乗は通常の試乗とは違い、書類での手続きなどが不要で、いつでもどこからでも体験可能な点が強みです。
今回の取り組みにより、販売スタッフのアバター操作経験不足や、リアルな商品を仮想空間上でプロモーションする難しさなどが明らかになったとのことです。このような試験的な取り組みを重ねるなかで、将来的に製品のプロモーションチャネルとしてVRイベントが本格的に活用できるユースケースが確立されていくことが期待されます。
③社内業務効率化への活用:ウォルマート、DHL、川崎重工
メタバースス・デジタルツインを社内業務の効率化に活用することで、バリューチェーン全体や工程全体の最適化や社員の作業のサポート、研修の効率化をすることができます。
メタバース上で現状存在しない施設や設備を設計し、シミュレーションを行うことで、最適な製造ラインや運用方法を特定したり、メタバースの特徴である3Dでの情報の表示により、AR/MRグラスで現場の作業員の作業をサポートしたり、VRグラスにより様々なシチュエーションを想定した研修を行ったりと多岐にわたる活用方法が存在します。
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5.ウォルマート:メタバース上で混雑等の状況を再現した研修
世界的なスーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、接客のトレーニングにVRを導入しています。従業員にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着させ、ブラックフライデーなどの販売イベント時に大勢のお客様に対応するための研修を行っています。
従来の研修とは異なり、現実には再現が困難な状況を実際に体験しているかのような、リアリティの高い研修を行うことができます。
この研修を行うため、ウォルマートは1万7000台のOculas Questを約4700店舗に準備するなど大規模な投資を行っており、VRを活用した研修に本腰を入れています。
6.DHL:倉庫でのピッキング作業の効率化
ドイツの大手物流企業のDHL社は、グーグルのスマートグラス「Glass Enterprise Edition 2」を導入し、倉庫での配送業務にARを活用しています。従業員はピッキング作業の現場でグラスを着用することで、製品・商品の保管場所やカート配置場所といった必要な情報を確認することが可能です。
ハンズフリーで即座に必要な情報にアクセスできるため、作業の精度と効率の向上に繋がります。また多くのスマートグラスにはマイク機能が搭載されており、遠隔かつハンズフリーで会話による連携を取ることも可能です。
7.川崎重工:工場を丸ごとメタバース化する計画を発表
川崎重工はマイクロソフト社のカンファレンス「Build2022」にて、工場を丸ごとメタバース化する「インダストリアルメタバース」の構築に取り組むことを発表しました。この取り組みにより、工場における全工程をバーチャル空間上でシミュレーションできるデジタルツインの構築を目指すとのことです。
同社は、マイクロソフトのクラウド/IoT管理ソリューション「Azure IoT」、エッジAIソリューション「Azure Percept」、MRデバイス「HoloLens 2」を採用し、生産ラインや製造現場の管理に取り組んでいます。これにより、ロボットの障害発生時の迅速な対応や、トラブルを未然に防ぐ予知保全が可能になります。また、リアルタイムかつ遠隔で専門家からのアドバイス、支援を受けることができるようになりました。
また、「Azure Digital Twins」を用いることで、過去・現在・未来の稼働状況を仮想空間上で把握することで、問題の原因を特定し解決することも可能です。従来は物理的に目を通しにくかった箇所の点検や、未来の状況予測が可能になるため、未然の事故防止に繋がると考えられています。
おススメのメタバースサービス3選
- ①CYZYSPACE:約1000人が同時接続可能なメタバースイベントを開催可能
- ②VRChat:世界最大のソーシャルVRプラットフォーム
- ③Fortnite:3億人がハマるメタバースバトルロイヤルゲーム
①CYZYSPACE:約1000人が同時接続可能なメタバースイベントを開催可能
CYZYSPACEでは、約1000人が同時接続可能な「大人数プラン」を利用することができます。
運営会社である株式会社メタバーズは、2007年に「メタバース」の商標を取得した日本の老舗企業です。CYZYSPACEとは、VRショールーム、3Dオンライン展示会やバーチャルイベントで活用できるクラウドVRサービス・メタバースであり、VRヘッドセットやPC、スマートフォン、タブレットを使って、インターネットのブラウザ環境で利用できます。
同サービスでは自社に合わせたショールーム空間や展示・プレゼンテーション会場、催事会場、教室などの新たなスペースをオンライン上で構築し、ユーザーのアバターやChatGPTを利用した自動化AIアバター等で快適なコミュニケーションをとることができます。
今回提供を開始した大人数プランではwebベースのバーチャル空間でアバターによる空間入室ができ、少人数プランとは異なり大規模イベントの提供が可能です。
さらに、セミナー・ピッチ会・講演会などの様子を別途ストリーミングサーバーを構築し、ストリーミングサーバーを経由することによって配信することができます。
利用する際は要望に合わせて機能を追加することができ、利用者だけのオリジナル空間を作ることができます。
また、テキストチャットや挙手機能でのコミュニケーションが可能であり、今後さらなる機能拡張を予定しています。
CYZYSPACEについてさらに詳しく知りたい方はこちらの公式HPをご覧ください。
②VRChat:世界最大のソーシャルVRプラットフォーム
VRChatとは、VR上で世界中の人々とコミュニケーションが取れる、世界最大のソーシャルVRプラットフォームです。ユーザーは、好きなアバターの姿でチャットや音声通話、身振り手振りなどを通じてコミュニケーションを取ることができます。また、コミュニケーションはVRChat内に存在する無数のワールドと呼ばれるバーチャル空間内で行われ、ユーザー自身がワールドを作成したり、そこでイベントを開いたりすることもできます。
VRChatはPCからもアクセス可能ですが、Meta QuestなどのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)からアクセスすることで、まるで同じ部屋にいる人と会話しているような体験をすることができます。
2022年1月には同時接続者が過去最高の約4.2万人にまで上り、世界を代表するVR/メタバース空間に成長しています。
③Fortnite:3億人がハマるメタバースバトルロイヤルゲーム
Fortniteとは、小さな島で100人のプレイヤーと戦って最後まで勝ち残ることを目指すバトルロイヤルゲームです。一般的に知られてはいないですが、Fortnite内にはバトルロイヤル以外にも3つのゲームモードがあり、それぞれ「ゼロビルド」(建築なしのバトルロイヤル)、「クリエイティブ」(ユーザーが制作したゲーム)、「世界を救え」というゲームモードになります。ゲーム内でリアルタイムでのユーザー同士のコミュニケーションが活発に行われている点やアーティストのライブなどゲーム以外での利用もされている点から、世界を代表するメタバースの1つとも言われています。
基本的には無料で複数人でプレイできること、簡単な操作でゲームを楽しめること、コロナウイルス感染拡大により余暇時間が生まれたことなどにより、小学生を中心に世界中で爆発的に流行な流行を見せています。
2017年にリリースされたFortniteは、現在総ユーザー数約3.5億人、月間アクティブユーザー数はピーク時で6,200万人と、圧倒的なユーザー数をかかえるメタバースへと発展しており、未上場ではありますが時価総額は約4兆円まで到達しています。
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