【図解】メタバースの市場構造と海外/日本の主要企業の動向とは?

関連技術の進歩やオンラインコミュニケーション需要の高まりなどを背景とし、今後急速に人々の生活や仕事に普及していくと考えられるメタバース。

メタバースの市場規模は全世界で2024年には約110兆円に達するという予測も行われており、Metaを筆頭に、ゲーム・エンタメ・小売など様々な業界の企業が参入を表明しています。

 

一方で、「市場が伸びているのは知っているが、どのような構造になっているのかまでは知らない」、「主要プレイヤーがどのような取り組みを進めているのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、メタバースの市場構造と国内外の主要企業の動向をご紹介します。

本記事を読めば、メタバース市場の全体像を効率良く理解できると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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メタバースの市場を構成する4つのレイヤー

メタバースの市場を構成する4つのレイヤー

メタバースの市場は大きく以下の4レイヤーに分けて整理をすることができます。

 

  • ①サービス/コンテンツ
  • ②プラットフォーム
  • ③開発エンジン・ツール
  • ④デバイス

 
各市場レイヤーについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①サービス/コンテンツ

サービス/コンテンツレイヤーの市場は、メタバース空間で利用されるゲームやSNSなどのサービスやキャラクターなどのコンテンツに関するビジネスで構成されます。

 

LINEなどのSNSの普及によってスマホが普及したのと同様、メタバース上に多くのユーザーが利用したいと思えるキラーサービス/コンテンツが登場することが、メタバース市場全体の成長の大きなドライバーとなります。

 

また、このレイヤーはポケモンやワンピースなど世界中で愛される優良IPを多く保有する日本企業にとって、大きなビジネスチャンスが存在する市場と言えます。

②プラットフォーム

プラットフォームレイヤーの市場は、メタバース空間自体の提供や、メタバース上でのサービスやアセットを売買するマーケットプレイスの提供を行うビジネスで構成されます。

 

メタバース空間自体の提供において存在感を示す企業は、FortniteRobloxなど元々ゲームとしてリリースしたサービスがユーザー数の増加や利用方法の多様化などによりメタバース空間に昇華したという企業が多い傾向にあります。

 

一方で、マーケットプレイスセグメントの市場は、それらの新興勢力とスマホ市場で強力なエコシステムを構築したAppleやGoogleとの競争が加熱していくと考えられます。

 

また、メタバースの市場がスマホ市場と同様、限られた数社によって独占される形になるのか、数多くの企業がプラットフォームを提供し共存する形になるのかは、プラットフォームレイヤー市場における重要論点となります。

③開発エンジン・ツール

開発エンジン・ツールレイヤーの市場は、メタバース空間自体やメタバース上のアバター矢アイテムなどのコンテンツ作成に用いられる開発エンジンやツールに関するビジネスで構成されます。

 

開発エンジン・ツールレイヤーの市場の中心となるのは、3Dモデリングツールを提供する企業であり、3Dモデリングツールをメタバース市場が盛り上がる以前から提供していた、ゲーム向けの開発エンジン・ツール企業が存在感を発揮しており、今後もその流れは継続されると考えられます。

④デバイス

デバイスレイヤーの市場は、メタバース空間にアクセスするためのVRHMDやARグラス、それらのデバイスの構成部品を提供するビジネスで構成されます。

 

デバイス自体の開発には多額の投資が必要となることから、Metaを筆頭とするBigtech各社が開発を牽引している状況です。

 

デバイスレイヤーの市場は、現状はVRゲーム好きの限られた顧客セグメントに支えられ立ち上がっていますが、今後一般消費者が購入しやすい価格帯で装着負担の少ないデバイスが開発されたタイミングで、PCやスマートフォン市場のように一大市場に成長するポテンシャルを秘めています。

各市場における海外/日本の主要企業の動向とは

これまでにご紹介した各市場レイヤーにおける主要企業と取り組みについてわかりやすく紹介していきます。

①サービス/コンテンツ

Meta:VRゲームの代表格「Beat Saber」の運営会社を買収

2019年Meta社は大ヒットVRゲームである「Beat Saber」を開発したVRゲームスタジオであるBeat Games社を買収しました。

 

Beat Saberは、自分に向かってくるキューブをリズムに合わせて剣で切っていくVRリズムアクションゲームです。

 

MetaはBeat Games社以外にも毎年ゲームスタジオの買収を重ねており、既存のヒットコンテンツや新たに制作するコンテンツをMetaのプラットフォームやデバイスで利用可能にすることで、エコシステムを強化する狙いがあると考えられます。

 

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HIKKY:世界最大のメタバースイベントを主催

HIKKY:世界最大のメタバースイベントを主催
(画像:HIKKY

HIKKYは、エンターテインメントVRを牽引する注目のクリエイターをメンバーとし、VR/AR領域の大規模イベントの企画・制作・プロモーション、パートナー企業との新規事業開発を主な事業として、業界の発展、クリエイターの発掘・育成を目的に2018年に設立された会社です。

 
HIKKYが2018年から開催している「バーチャルマーケット」は、2020年の国際的なVRアワードセレクション「VR AWARDS」のマーケティング部門で最優秀賞を、日本の「XR CREATIVE AWARD 2020」では大賞を受賞しました。

 
HIKKYの運営するバーチャルマーケットは、最新のテクノロジーを活用し、その発展を目指す仮想空間におけるユニークなイベントです。会場内に展示された3Dアバターやモデルを自由に試着し、購入することができます。

 
また、バーチャルリアリティキャラクターに関する新しい技術や手法を研究するためのワークショップも複数開催されます。メタバース空間上でのイベントとしては世界最大規模を誇り、来場者数は100万人を超えるなど、ギネス世界記録にも登録されています。

②プラットフォーム

Meta:メタバース上の作業空間Horizon Work Roomsを提供

Meta:メタバース上の作業空間Horizon Work Roomsを提供
(画像:Meta)

toB向けの代表的なサービスとして、VR空間で一緒に働くことができる「Horizon Workrooms」を提供しています。Horizon Workroomsとは、VR空間内でアバターの姿でミーティングや共同作業ができるサービスです。メタバース空間内に複数のディスプレイやホワイトボードを表示させたり、自分の持っているキーボードを持ち込めたりと様々な機能が充実しています。

 

また、MetaConnect2022にて、MicroSoft社との提携により、ExcelやPowerPointなどのビジネスツールがHorizon Workrooms上で利用できるようになることも発表されました。

 

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cluster(クラスター):国内最大のメタバースプラットフォーム

cluster(クラスター):国内最大のメタバースプラットフォーム
(画像:クラスター

clusterは、人々が自由に交流する空間を提供するメタバースプラットフォームです。人々に日常的に利用されるソーシャルVRを目指し、イベント等を開催していない通常時のユーザー獲得に成功しており、日本初のメタバースプラットフォ―ムとしては圧倒的な存在感を誇ります。

 

音楽ライブやカンファレンスなどのイベントに誰でもバーチャルで参加でき、友人と一緒に常設のワールドやゲームをプレイできます。また、スマートフォンやPC、VRなど、好きなデバイスから何万人もの人が同時に接続できるのが特徴です。

 

渋谷区公認の「バーチャル渋谷」やポケモンのバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェス」などを制作・運営し、全く新しいエンターテインメントと熱狂体験を提供し続けています。

③開発エンジン・ツール

Unity:世界最大手のゲームエンジンUnityを開発提供

Unity:世界最大手のゲームエンジンUnityを開発提供
(画像:Unity)

Unity technologies社は2005年に開発された、世界で最も普及しているゲームエンジン「Unity」を提供しています。初心者でも比較的簡単に扱えることや、活用できるアセットなどの開発環境が充実していることから、ゲーム開発者の約6割に利用されているという統計もあります。

 

Unityは3Dコンテンツを開発するゲームエンジンとしてのコア機能はもちろん、ゲームらしい振る舞いをする実行環境や、開発に活用できる充実したアセット(イラスト、パーツ、背景、音声など)などの機能を備えていることから、ゲーム/3Dコンテンツの開発プラットフォームとも言えます。

 

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AUTODESK:世界最大手の3DCGエンジンMayaを開発・提供

AUTODESK:世界最大手の3DCGエンジンMayaを開発・提供
(画像:AUTODESK)

AUTODESK社は2002年に開発された、世界で最も普及している3DCGソフト「Maya」を提供しています。

 

Mayaはディズニーを始めとする世界最高峰のクリエイティブ企業にも採用されているなど、3DCGソフトの定番的な存在です。

 

アニメーションやバーチャルエフェクトなどの機能の高さや、初期装備されているツールセットの豊富さ、関連教材などの学習環境の高さなどの特徴により、多くの3DCGデザイナーに長年愛用されています。

④デバイス

Meta:Meta Questを一般消費者向け/業務向けの両方に展開

Meta社はメタバースデバイスの開発に最も積極的な企業です。2018年にVRデバイス・ソフトウェアの開発を行っていたOculas社を約2200億円で買収し、現在はMeta Questというブランド名でVR/MRデバイスを開発・販売しています。

 

一般消費者向けの代表的なデバイスとしてはMeta Quest2が挙げられ、販売台数は1500万台に迫る大ヒットを記録し、VRヘッドセットの約50%のシェアを誇るなど、今日のメタバース市場を牽引する存在となっています。PlayStation5の販売台数が2000万台であることを踏まえると、そのヒットぶりが分かるのではないでしょうか。

 

また、2022年10月には初の業務用のデバイスであるMeta Quest Proを販売しました。主に業務やビジネスでの用途を想定しており、コロナ禍で急速に普及したリモートワークの生産性向上に繋がる、様々なユースケースが存在します。価格は22万6800円~とかなり高額で、企業や仕事への投資を厭わないビジネスマンをターゲットとし、PCの代替品として位置づけていることが伺えます。Meta Quest Proの登場により、メタバースの仕事向けのユースケースが一気に普及していくか、注目が集まっています。

Microsoft:世界最大手の業務用MRデバイス HoloLensを販売

Microsoft:世界最大手の業務用MRデバイス HoloLensを販売
(画像:Microsoft)

Microsoft社は、世界最大手の業務用MRデバイス HoloLensを販売しています。

ホロレンズ(HoloLens)とは、世界最大手の業務用MR(複合現実)デバイスです。ホロレンズは、デバイスを通じて見える現実の世界にバーチャル上の3Dオブジェクトを重ねてみることのできるゴーグル型のMRデバイスです。

 

また、HololensはPCなどとの接続が不要で、単体で動作し、またコントローラーなどが不要でハンドジェスチャーなどを通じてアプリケーションの操作をすることが可能です。

 

ホロレンズを装着しながら企業向けのビジネスアプリケーションを活用することで、業務効率化が図れるため、製造業や建設業、物流業や医療現場など幅広い業界での活用が広がっています。

今後の日本企業の勝ち筋とは

これまで紹介した4レイヤーのうち、日本企業が勝ち得るレイヤーは①サービス/コンテンツレイヤー、次点で②プラットフォームレイヤーと言えます。各レイヤーの日本企業の勝ち筋についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①サービス/コンテンツ

サービス/コンテンツレイヤーは、ポケモンやワンピースに代表される世界中の人々の親しまれるIPを多く保有する日本企業が最も勝ち得る市場と言えます。例えば、ポケモンGOは、ARメタバースの代表的なサービスであり、世界中の人々に親しまれるIPとARによる新たなゲーム体験により、国内外で大ヒットを記録しました。

 

また、日本企業は漫画・アニメ市場でのビジネスを構築する上で優秀なクリエイターを数多く保有しており、新たなコンテンツ製作の際に、そのリソースが大きな武器となるでしょう。

②プラットフォーム

プラットフォームレイヤーも、日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなり得る市場です。理由は、日本企業の強みであるIPをフックに、多くのユーザーが利用するプラットフォームを構築し得るからです。

 

プラットフォームにユーザーが集まるかどうかは、そのプラットフォームをわざわざ訪れたい魅力的なサービスやコンテンツが存在するかにかかっています。そのため、日本の強力なIPを活用したメタバースサービスを構築し、ユーザーが拡大した結果、メタバース空間に昇華されていくという勝ち筋が考えられます。

 

事例としては、バンダイナムコ社がガンダム好きが集まるメタバース空間である「ガンダムメタバース」の開発を進めており、IPを活用したプラットフォーム構築の成功事例となれるのかに注目が集まっています。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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