不動産業界でのメタバース活用事例12選|4つのメリットも紹介

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業活動に大きな支障が出ている住宅・不動産業界ですが、その解決策としてメタバース・VR/ARが注目を集めています。

 

そこで、今回はメタバース・VR/ARの住宅・不動産業界での活用事例13選を、活用の4大メリットとともにご紹介します。

 

本記事を読めば、住宅・不動産業界でなぜメタバース・VR/ARの活用が進んでいるのか、ユーザーと企業それぞれにとってどのようなメリットがあるのかを理解できると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

メタバース・VR/ARを住宅・不動産業界へ活用する4大メリット

メタバース・VR/ARを住宅・不動産業界へ活用する4大メリット

メタバース・VR/ARを住宅・不動産業界へ活用するメリットとして、大きく以下の4つが挙げられます。

 

  • ➀内見・住宅展示場訪問の手間が解消され集客力が向上
  • ②視覚的に魅力を伝え、成約率が向上
  • ③コロナ禍でも安全に内見・住宅展示場訪問が可能
  • ④住宅・不動産業者の内見対応などの業務効率が改善

 

それぞれのメリットをわかりやすく紹介していきます。

 

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➀内見・住宅展示場訪問の手間が解消され集客力が向上

試しに物件を見たいだけなのに、いちいち現地に足を運ぶ手間が省けるため、顧客は便利なメタバース・VRを導入している不動産会社を好んで利用するようになることが想定されます。特に遠方の別荘などの物件は、メタバース・VRによって集客力向上が期待できます。

②視覚的に魅力を伝え、成約率が向上

メタバース・VRを活用することで家に居ながらにして、実際に内見に訪れたかのような体験ができます。また、ARを活用することで、実際に内見に訪れた際に、家具をレイアウトした後のインテリアのイメージを視覚的に確認することが出来るなど、口頭や文章で説明するよりも、より具体的な入居後のイメージを湧かせることができます。

③コロナ禍でも安全に内見・住宅展示場訪問が可能

新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、あらゆる対面の営業活動が制限されるようになりました。そんな状況下でもメタバース・VRを活用することで、非対面で内見を実施することも可能です。

④住宅・不動産業者の内見対応などの業務効率が改善

メタバース・VRにより、不動産会社は様々な時間的制約を解消することができます。その結果、業務効率を向上させることができます。従来の方法では、不動産会社は顧客を物件に案内する必要がありましたが、メタバース・VRを利用することで、この時間のかかる作業を省くことができます。不動産会社は「物件訪問」「物件への移動」の時間を省くことで、成約までの工数を大幅に削減することができます

メタバース・VR/ARの住宅・不動産業界への活用事例7選

メタバース・VRの住宅・不動産業界での活用事例として次の7つが挙げられます。

 

  • ① 住友不動産:メタバース上で物件の内見から販売まで完結
  • ② 大和ハウス:メタバース上の住宅展示場を自由に見学
  • ③ 神稲建設:メタバース上のモデルハウスを自社で開発
  • ④ 東急不動産:複数人での同時参加可能なVRモデルルーム
  • ⑤ 東急住宅リース:内見にARを活用し顧客への訴求力向上
  • ⑥ 不動産SHOPナカジツ:これから建つ家をARで確認
  • ⑦ JIBUN HAUS:ゲーム感覚で内見でよりリアルな暮らしをイメージ可能に

 

それぞれの事例について、わかりやすく解説します。

  

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①住友不動産:メタバース上で物件の内見から販売まで完結

住友不動産:メタバース上で物件の内見から販売まで完結
(画像:住友不動産)

住友不動産はメタバースショッピングモール「メタパ」上に住宅販売拠点「メタマンションギャラリー」を開設し、物件情報を3次元映像として見せるだけでなく新築分譲マンションの販売を行っています。メタバースでの内見では窓ガラスの計上などを詳しく把握でき、自宅に居ながらにして実際の部屋にいるかのように内見できます。また現在入居者のいる物件や未完成の物件もメタバース上では内見可能です。今後、「将来は要望があれば大半の業務をメタバース空間で実施する」としており、今後更に注力する模様です。

 

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②大和ハウス:メタバース上の住宅展示場を自由に見学

大和ハウス:メタバース上の住宅展示場を自由に見学
(画像:大和ハウス)

大和ハウスはアバターを用いて担当者と見学者がコミュニケーションを図りながら仮想空間上の住宅展示場を自由に見学できる「メタバース住宅展示場」を公開しました。ユーザーはスマホやタブレット・PCからメタバースにアクセスでき、最大6名の見学者とともに担当者にリアルタイムに質問や相談を実施することが可能です。

 

メタバース上にある住宅展示場という特徴を活かし地面から屋根の上までさまざまな角度から見学できることに加え、室内では子どもやペットなどの視点でも見学が可能です。また、見学者が床や壁紙・天井等の色や素材、インテリアなどを瞬時に切り替えて、イメージを検討することもできます。今後、対応する住宅商品ラインナップを拡充していく方針とのことです。

③神稲建設:メタバース上のモデルハウスを自社で開発

神稲建設:メタバース上のモデルハウスを自社で開発
(画像:神稲建設)

総合建設業の神稲建設がメタバース上に同社の住宅展示場「くましろハウジング」を開設しました。ユーザーは同社HPより無料の専用アプリをダウンロードすることで見学が可能。住宅展示場ではCADデータを基に再現されたオリジナルの企画住宅をアバター姿で見学することができ、リビングや寝室、天井の高さなどの幅を確かめることができ、実際にモデルハウスを訪れているかのような臨場感を味わうことが可能です。

 

こちらの「くましろハウジング」はコロナ禍でモデルハウスを訪れる事が難しい、県外から移住したいといった要望を受け開発されました。今後は、イベントの開催などにより、来訪者同士でコミュニケーションが取れる場にしていきたいとのことです。

④東急不動産:複数人での同時参加可能なVRモデルルーム

東急不動産:複数人での同時参加可能なVRモデルルーム
(画像:東急不動産)

東急不動産は、複数人が同時に参加できるモデルルームをブランズシティ湘南台マンションギャラリーにて公開しました。こちらのVRモデルルームはVR企画制作を行うハシラス社のVRソリューションである「キネトスケイプ」を活用しています。

 

これまでのVRモデルルームは体験人数が1人に限定されていましたが、こちらのソリューションを活用することにより、複数人で同時にVRを視聴することが可能になり、ご家族と話をしながらのリアルな内見さながらの体験をすることが可能です。こちらの物件は若い世代がターゲットであることから、VRでの物件提案が有効と考え導入を決定したとのこと。今後も他のマンションギャラリーへの活用を進める方針です。

 

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⑤東急住宅リース:内見にARを活用し顧客への訴求力向上

東急住宅リース:内見にARを活用し顧客への訴求力向上
(画像:東急住宅リース)

東急住宅リースは、同社が管理する賃貸マンションにおいて、ARを活用した内見サービス「AR内見」の実証実験を開始しました。同社では、内見客に本サービスを利用してもらい、成約が増えれば本格的な導入に踏み切る考えです。x garden社のメガネ型デバイス「AR glasses」を使い、家具などのバーチャル映像を内見する部屋に重ね合わせることで、家具のレイアウトや入居後の生活スタイルがイメージしやすくなります。

 

将来的にメタバースの活用が進むと、物件を探す顧客は、まずはVRでのオンライン内見で内見の候補を絞込み、実際に物件を訪れた際は上記のようなAR内見により、生活スタイルをイメージできる内見を行うといった流れで物件を決定するよになるかもしれません。

⑥不動産SHOPナカジツ:これから建つ家をARで確認

不動産SHOPナカジツ:これから建つ家をARで確認
(画像:不動産SHOPナカジツ)

愛知県岡崎市で戸建住宅を販売する株式会社不動産SHOPショップナカジツは、お客様が検討している住宅が建設後にどのようになるかをイメージしやすいように、ASATEC株式会社のARサービス「build+」を採用しました。販売前の未開発の土地に、現在の分譲地の様子をイメージした画像を重ねることで、着工前のお客様に新しい住まいのイメージをより鮮明にお伝えすることができます。広さや間取りのイメージを着工前にお客様にシェアすることが可能なため、購買意欲の促進が期待されています。

 

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⑦JIBUN HAUS:ゲーム感覚で内見でよりリアルな暮らしをイメージ可能に

JIBUN HAUS:ゲーム感覚で内見でよりリアルな暮らしをイメージ可能に
(画像:JIBUN HAUS.)

JIBUN HAUS.株式会社は2022年3月、仮想空間上で暮らしの疑似体験ができるバーチャルモデルハウスをリリースしました。

ユーザーはゲームコントローラーを使って家の中や外を歩き回ったり、壁紙を変えて雰囲気を変えたりすること、日の傾きや天候まで変えることもできます。

 

今回のバーチャルモデルハウスは、ゲーム開発エンジンの「Unreal Engine(アンリアル エンジン)」によって作成された3DCGモデルです。自由に動き回って視点を操作できる点が、VRの360度のパノラマ視点とは異なります。

ゲーム感覚で、仮想空間上のモデルハウス見学をリアルで行う内見以上の体験として提供することで実世界において本当に望む住まいづくりにつなげられると期待されています。

メタバース・VRの住宅・不動産業界向けソリューション5選

メタバース・VRの住宅・不動産業界向けソリューションは次の5つが挙げられます。

 

  • ① LIVRA WORLD:住宅業界初のバーチャル住宅展示場
  • ② PLANNERZ:富山発のメタバース上の住宅展示場
  • ③ メタ住宅展示場:全国のVRモデルハウスを内覧できるプラットフォーム
  • ④ THETA 360.biz:誰でも簡単に360°コンテンツが作成できるツール
  • ⑤ Build+:不動産業者や住宅メーカー向けの営業支援ARソリューション

 

それぞれのソリューションをわかりやすく紹介していきます。

 

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①LIVRA WORLD:住宅業界初のバーチャル住宅展示場

LIVRA WORLD:住宅業界初のバーチャル住宅展示場
(画像:岡田工業株式会社)

岡田工業株式会社はパソコンやスマートフォン で24 時間好きな時に、いつでもどこからでも内覧できるバーチャル住宅展示場「LIVRA(リブラ) WORLD」を一般公開しました。メタバースの特徴を活かし、従来の住宅展示場では難しい、ニーズに合わせた間取りの変更が可能であり、また複数の住宅を見比べるといったことも、家に居ながらにして可能です。さらに今後は、外壁や内装などの色合いを納得がいくまで試せるカラーシミュレーションや、素材やオプションをアレンジした際の費用を確認する価格シミュレーション機能なども随時実装予定とのこと。

 

出展する中小工務店のメリットとしては、顧客は、実際の住宅展示場やモデルハウスを訪れる前に、当サービスを利用し、シミュレーションを行うことで、戸建住宅を建てるイメージを家族で共有し、概算価格などの情報を把握したうえで、来店予約やオンライン相談となるため、購入確度の高い顧客の送客ができること、実物のモデルハウスを建築することよりもコストが抑えられることなどが挙げられます。

 

今後は、住宅購入に併せて検討される家具についても、バーチャルでサイズ感の確認や配置のシミュレーション行った後、気に入ったものをワンストップで購入できるサービスの実装など、顧客のライフスタイルをサポートできる様々なサービスの提供を実現するプラットフォームを目指しているとのことです。

②PLANNERZ:富山発のメタバース上の住宅展示場

PLANNERZ:富山発のメタバース上の住宅展示場
(画像:株式会社ModelingX)

PLANNERZは株式会社ModelingXの提供する、複数のハウスメーカーを見学できる交流型バーチャル展示場です。ユーザーはアバター姿で住宅の専門家や自身と同様に住宅を検討するユーザーと共にメタバース上の住宅展示場を訪れ、ボイスチャットで交流ができます。

 

β版では、富山エリアのハウスメーカー4社・リフォーム会社1社、計5社15棟掲載され、今後全国展開を予定しています。

ユーザーの理想の生活スタイル・住宅が見つかる場所を目指し、新築やリフォーム、マンション、トレーラーハウス、3Dプリント住宅など、様々な形の暮らしを想像できるコンテンツやユーザーの好みや予算から分析し、モデルハウスをリコメンドする機能を追加予定とのことです。

③メタ住宅展示場:全国のVRモデルハウスを内覧できるプラットフォーム

メタ住宅展示場:全国のVRモデルハウスを内覧できるプラットフォーム
(画像:リビン・テクノロジーズ株式会社)

リビン・テクノロジーズ株式会社は、メタバース上に全国の住宅会社のVRモデルハウスを一堂に集めたバーチャル住宅展示場を開設し、ゴーグル要らずでスマホやPCからVR内覧できる「メタ住宅展示場」をリリースしました。

 

メタ住宅展示場には全国の住宅会社のVRモデルハウスが一堂に集まるため、ユーザーは時間や場所の制限なく、住宅会社を比較検討することができます。実際に建築された住宅の屋内を高画質4Kデジタル撮影するため、リアルな質感で室内を歩いているように内覧することが可能です。

一方で、出展する住宅会社側のメリットとして多くの住宅購入希望者にリーチできること、超高画質のVRにより3Dパースよりも大幅に訴求力が向上すること、実際の住宅展示場と比較して大幅にコストが抑えられることなどが挙げられます。

 

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④THETA 360.biz:誰でも簡単に360°コンテンツが作成できるツール

THETA 360.biz:誰でも簡単に360°コンテンツが作成できるツール
(画像:株式会社リコー)

株式会社リコーの提供するTHETA 360.bizは、RICOH THETAとインターネットに接続されたパソコンやスマートフォンがあれば、誰でも簡単にバーチャルツアーを作成・公開できる法人向けクラウドサービスです。バーチャルツアーは、カメラで撮影した10枚程度の画像をつなぎ合わせて作成し、1枚のパノラマ画像(IPN)ファイルとして書き出すことができます。バーチャルツアーは、視覚的に伝えられる情報量が多いため、施設や商品、設備、サービスなどの紹介に適しており、見る人の場所を選ばないのが特徴です。

⑤Build+:不動産業者や住宅メーカー向けの営業支援ARソリューション

Build+:不動産業者や住宅メーカー向けの営業支援ARソリューション
(画像:ASATEC株式会社)

Build+(ビルドプラス)は、不動産業者や住宅メーカー向けの営業支援ARソリューションとしてASATEC株式会社が開発しています。例えば、土地や家を売りたい場合、空き地や家の予定地にスマートフォンなどをかざすと、その土地にすでに建っているかのような3DCGの家が現れ、その仮想建物の中に外から入って内部を確認することができるのです。これにより、不動産会社や住宅メーカーは、購入希望者に住宅の具体的なイメージを伝えることができ、スムーズな成約につなげることができます。

 

また、戸建てだけでなく、マンションや商業施設、ビルなどの様々な物件に活用できる可能性があり、今後の発展に注目です。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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