メタバースと著作権|メタバース上の知的財産法を事例とともに解説

関連技術の進歩やオンラインコミュニケーション需要の高まりなどを背景とし、今後急速に人々の生活や仕事に普及していくと考えられるメタバース。
 

一方で、メタバースサービスを提供する企業や個人は様々なコンテンツを作成・提供することから、このようなコンテンツを作成した企業や個人の権利をどのように保護していくかが重要な問題となっています。

 

そのため、「メタバース上のコンテンツが法律でどのように保護されるのか知りたい」「メタバースにおける知的財産権の問題について重要なポイントをおさえておきたい」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、メタバースにおける知的財産権について、想定される事例とともに分かりやすくご紹介します。

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • メタバースのビジネスへの活用を検討している
  • メタバースにおける知的財産権のポイントをおさえておきたい
  • メタバース上のコンテンツが法律上どのように保護されるのか知りたい

 

本記事を読めば、メタバースにおける知的財産権について一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

 

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そもそも知的財産権とは

そもそも知的財産権とは

知的財産権とは、人間の知的な活動によって生み出されたアイデアや創作物に対して認められる権利のことです。知的財産権は、その内容によって、著作権、意匠権、商標権など様々な種類に分かれます。これらの権利を総称したものが知的財産権です。

 

あるコンテンツが知的財産権として認められると、第三者によって無断で模倣・利用された場合に権利侵害を主張して利用の差止めや損害賠償を求めることができるなど、自らが生み出したコンテンツが法的に保護されることになります。

 

逆に知的財産権として認められないコンテンツについては、仮に第三者によって模倣・利用されたとしても、当該第三者に対して差止めや損害賠償を求めることは極めて困難となります。

 

そのため、自社が作成したコンテンツが知的財産権として保護の対象となるか否かは、メタバースのビジネス活用を進める上で極めて重要なポイントになります。

メタバースにおける知的財産権が重要である3つの理由

メタバースにおける知的財産権が重要である3つの理由

メタバースにおいて知的財産権が重要視されている理由として以下の3つが挙げられます。

 

  • ①メタバース空間におけるコンテンツ利用の多さ
  • ②デジタルアセットの複製の容易さ
  • ③メタバース空間の匿名性の高さ

 

以下、それぞれの理由についてわかりやすく紹介していきます。

①メタバース空間におけるコンテンツ利用の多さ

メタバース空間におけるコンテンツ利用の多さ フォートナイト
(画像:Epic Games)

1つ目の理由は、メタバース空間におけるコンテンツ利用の多さです。メタバースにおいてユーザーは、ゲームをプレイしたり、ライブイベントに参加したりするなど、様々なコンテンツを楽しむことができます。また、アニメのキャラクターなどを再現したアバターを通じて他人とコミュニケーションをとることもできます。

 

このように、メタバース空間においては、ゲーム、音楽、アニメなど様々なコンテンツが利用されることになるため、これらのコンテンツに対する知的財産権が問題となりやすいと考えられます。

②デジタルアセットの複製の容易さ

2つ目の理由は、デジタルアセットの複製の容易さです。デジタルアセットは、物理的なモノとは異なり、容易に複製することができます。そのため、メタバースは、コンテンツの複製・流用が容易に行われ、知的財産権の侵害が生じやすい環境といえます。

③メタバース空間の匿名性の高さ

3つ目の理由は、メタバース空間の匿名性の高さです。ユーザーがアバターを通じてメタバース空間にログインする際、多くの人は実名ではなく匿名で参加するものと考えられます。

 

そのため、実名の場合と比較して、コンテンツの複製・無断利用に対する心理的なハードルが低く、知的財産権を侵害する行為が横行する可能性が高いと考えられます。

メタバースにおいて知的財産権による保護が重要な4種類のコンテンツ

メタバースにおいて知的財産権による保護が重要な4種類のコンテンツ

メタバース上には様々なコンテンツが存在しますが、主に以下の4種類のコンテンツにおいて、知的財産権による保護が重要であると考えられます。

 

  • ①メタバース上のアバター
  • ②メタバース上の仮想アイテム
  • ③メタバース上の建物
  • ④メタバース上でクリエイターが作成したコンテンツ

 

各コンテンツについて、想定される事例や、関連する法律と対応策をわかりやすく紹介していきます。

 

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①メタバース上のアバター

Ready Player Me アバター
(画像:Ready Player Me)

想定される事例

メタバース上では、ユーザーはアバターを通じて、メタバース空間にログインし、ゲームをしたり、ライブイベントに参加したり、他人とコミュニケーションをとったりします。

 

そのような中、例えば、アバターのなりすましや他人のアバターのデザインの模倣といった事態が発生することが想定されます。このような場合、そのアバターの持ち主であるユーザーがなりすましをした他のユーザーに対して知的財産権の侵害を理由とする差止めや損害賠償などを求めることが考えられます。

 

メタバースのプラットフォームを提供する企業としては、ユーザー間でこのようなトラブルが生じた場合に、その責任を一部追及されたり、プラットフォームに対する信頼性が損なわれるリスクが想定されます。

関連する法律と対応策

まず、アバターが著作物として認められ、著作権として保護される場合には、ユーザーは著作権侵害を理由として、なりすましをした相手に差止めや損害賠償などを求めることができます。しかし、著作物に該当するためには、創作性・芸術性を有していなければならないなど、高いハードルがあります。そのため、単に人の顔をデフォルメしたものやアニメなどのキャラクターを模しただけに過ぎない場合には、アバターの著作権は認められない可能性が高いです。

 

もっとも、企業としては、アバターが著作権として認められるか否かに関わらず、プラットフォームの健全な運営のため、利用規約等でなりすまし行為を禁止するとともに、そのような行為に及んだユーザーに対しては警告やサービスの利用停止措置を施すなどして、ユーザーが安心して自身のアバターを利用できる環境を整えることが重要です。

 

また、ユーザー間での著作権侵害をめぐるトラブルを防ぐために、利用規約等において、アバターの著作権は企業に帰属する旨をあらかじめ明記しておくことも有効な対策となると考えられます。

②メタバース上の仮想アイテム

三越伊勢丹 メタバース上の仮想アイテム
(画像:三越伊勢丹)

想定される事例

メタバース空間において、企業がバーチャルな店舗を設けて、NFTなどの仮想アイテムを販売するケースが増えています。

 

そのような中、例えば、A社が、自社でデザインした仮想のTシャツをメタバース上の店舗で販売していたところ、B社がA社に無断で同じデザインの仮想のTシャツを販売し始めた、といった事態が想定されます。

 

このような場合に、A社は、自社のTシャツのデザインに関する知的財産権が侵害されたとしてB社に対し販売の差止めや損害賠償などを求めることができるかが問題となります。

関連する法律と対応策

A社のTシャツのデザインが著作物として認められれば、著作権侵害を理由として、差止めや損害賠償などを求めることができます。

 

また、仮にA社のTシャツに、商標登録した自社のロゴやマークをプリントしていた場合には、商標権侵害を理由に、B社に対して販売の差止めや損害賠償などを求めることができます。

 

そのため、企業としては、自社がメタバース上で販売する仮想アイテムのデザインが著作物に該当するように、機能面や実用面を重視するだけでなく、できる限り創作性・芸術性を持たせるように工夫することがポイントとなります。また、仮想アイテムにかかるロゴやマークについてはしっかりと商標登録を行うことが重要です。

③メタバース上の建物

メタバース上の建物 バーチャル渋谷
(画像:cluster)

想定される事例

メタバースサービスの中には、現実の世界をそのままメタバース空間上に再現するといったサービスも存在します。例えば、メタバースプラットフォームのclusterにおいては、リアルな渋谷の街を再現した「バーチャル渋谷」が話題になりました。

 

一方で、現実世界にある建物の中でも特に芸術性のあるものをメタバース上でそのまま再現した場合に、当該建物の知的財産権侵害に当たるとして、差止めや損害賠償などを求められるといった事態が想定されます。

 

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関連する法律と対応策

建築物の多くは、実用性・機能性といった要素が強く、創作性や芸術性はないため、著作物として認められません。

 

一方で、ランドマークや歴史的建造物などの特別な建物については、著作物であると認められる可能性もあります。実際に認められた例はあまり多くはありませんが、大阪の商業施設である新梅田シティ内の庭園や著名な建築家が建てた慶応義塾大学内のノグチ・ルームといった建物は著作物として認められた前例があります。

 

しかし、このような場合でも、同じような建築物を建築する行為は複製に当たるとして禁止されますが、写真や映像等で利用することは認められるので、メタバース上で同様の建築物を単に再現しただけでは、著作権侵害に当たるとされる可能性は低いと考えられます。

 

また、現実世界の建築物が意匠登録されている場合には、意匠権の侵害に当たらないかが問題となります。意匠権とは、モノのデザインに対して認められる権利のことです。しかし、意匠登録された建築物をメタバース上で再現したとしても、意匠登録された建築物の用途や機能に従った使用ではないことから、意匠権侵害には当たらず、差止めや損害賠償などを求められる可能性は低いと考えられます。

④メタバース上でクリエイターが作成したコンテンツ

メタバース上でクリエイターが作成したコンテンツ Roblox
(画像:Roblox)

想定される事例

メタバース上では、サービスを提供する企業だけでなく、ユーザー自身がプラットフォーム上で、コンテンツを作成することが一般的になっています。例えば、メタバースゲームプラットフォームであるRobloxは、ユーザー自身もゲームを作成することができ、「ゲーム版のYoutube」とも評されています。

 

そのため、ユーザーであるクリエイターが作成したコンテンツが、他のユーザーに無断利用されたり、プラットフォームを提供する企業が当該コンテンツを他のサービスに流用したりした場合に、クリエイターから知的財産権侵害を理由として差止めや損害賠償などを求められるといった事例が想定されます。

関連する法律と対応策

クリエイターが作成したコンテンツが著作物に当たれば、当該コンテンツは著作権として認められ、その権利は原則としてコンテンツを作成したクリエイターに帰属します。そのため、クリエイターは、無断利用した第三者に対して、著作権侵害による利用の差止めや損害賠償を求めることができます。

 

そのため、メタバースプラットフォームを提供する企業が、クリエイターが作成したコンテンツを利用したい場合は、利用規約等において、クリエイターが作成したコンテンツを企業が利用できる権利を有することを明記しておく必要があります。

 

また、クリエイターが作成したコンテンツを他のユーザーが無断で模倣してはならないことを利用規約等において明記したり、注意喚起するなどして、ユーザー間のトラブルを未然に防止することも重要です。

※免責事項

本記事は、メタバースにかかる法規制を一般論として解説したものであり、実際のサービスの内容や事実関係によって、結論が異なる可能性もあります。実際にメタバースのサービスを提供するにあたっては、弁護士などの専門家に相談するなどして適切に対応されることをおすすめいたします。本記事の著者及び当社は、本記事の内容についていかなる保証を行うものでも、責任も負うものでもございませんのでご了承ください。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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