メタバースにAIを活用する6つのメリット|おススメツール3選も紹介

ここ数か月、ChatGPTを中心に生成系AIの進化が注目を集めています。

生成系AIはChatGPTのようなテキストだけでなく、画像や3DCGも作成できるため、メタバースの発展にも大きく貢献すると期待されています。

 

一方、AIとメタバースの関係性を知りたい、AIをメタバースに活用する方法の具体的なイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、メタバースにAIを活用する6つのメリットをオススメのAIツールと合わせて分かりやすくご紹介します。

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • メタバースにAIを活用する具体的なメリットが分からない
  • どんなAIツールがあるのか知りたい
  • AIの活用により、メタバースがどう発展していくのか気になる

 

本記事を読めば、メタバース開発にAIを活用するメリットから今後の展望まで一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

 

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メタバースとAIの関係性|AIをメタバースに活用する6つのメリット

メタバースとAIの関係性|AIをメタバースに活用する6つのメリット

メタバースとAIの関係性について、AIをメタバースに活用するメリットとして以下の6つが挙げられます。

 

  • ①パーソナライズされたユーザー体験
  • ②よりリアリティ・没入感の高いユーザー体験
  • ③同時翻訳による言語の壁を超えたコミュニケーション
  • ④仮想キャラクターとのより自然なコミュニケーション
  • ⑤ワールド・コンテンツ制作の効率化、サポート
  • ⑥ハッキングや嫌がらせなどの不正行為の検出・パトロール

 

それぞれをわかりやすく解説していきます。

 

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①パーソナライズされたユーザー体験

AIの自己学習により、メタバース内でパーソナライズされたユーザー体験を提供することが可能になります。メタバース内では、従来の2Dのサービスと異なり、ユーザーの全ての行動をデータ化することが可能です。それらのデータをAIが自己学習し、ユーザーの興味や行動の特徴をもとに、各ユーザーに最適なUI、UXにカスタマイズして提供できます。

 

例えばゲームであれば、ユーザーごとにイベントやキャラクターの会話内容が変わるといった仕掛けが可能です。

②よりリアリティ・没入感の高いユーザー体験

よりリアリティ・没入感の高いユーザー体験 バンダイナムコ
(画像:バンダイナムコ)

AIの自然言語処理や画像認識などの技術によって、リアリティの高いメタバース空間を構築することができます。生成系AIの進化により、メタバース内のオブジェクトやキャラクターをAIが作成し、現実に近い形で再現することが可能になっており、ユーザーはリアルな世界と近い感覚でメタバース内での活動を楽しむことが可能です。

 

さらに、①のパーソナライズとも関連しますが、ユーザー自身の選択により次に起きる展開が変わることで、ユーザーは自分自身がメタバース内で起こる出来事に関与しているという感覚が強くなり、没入感が高まる事も期待されます。

 

また、リアリティや没入感の高いユーザー体験を実現する為には、高解像度のグラフィックスを実現するデバイスや5Gなどの高速な通信技術も重要となります。詳しくは以下の関連記事で解説しています。

 

※関連記事:【2023年最新】メタバース開発に必要な13の技術や仕組みを紹介

③同時翻訳による言語の壁を超えたコミュニケーション

200 languages within a single AI model: A breakthrough in high-quality machine translation
(動画:Meta)

AIの同時翻訳機能により、世界中のユーザーと言語の壁を超えたコミュニケーションが可能になります。メタバースは、物理的制約がないため世界中からユーザーが集まることができるという特徴がある一方で、異なる言語を話すユーザー同士のコミュニケーションが大きな課題でした。しかし、AIによる同時翻訳の精度は年々向上しており、あらゆるユーザーが同時翻訳によって言語の壁を超えて会話できるようになると考えられます。

 

実際に、Meta社は2022年に200の言語を同時翻訳できるAIの「Babelfish」を開発中と発表しており、メタバース空間での実用化が期待されます。

④仮想キャラクターとのより自然なコミュニケーション

仮想キャラクターとのより自然なコミュニケーション NVIDIA
(画像:NVIDIA)

AIによって、メタバース空間内の仮想キャラクターが、人間のような自然なコミュニケーションを取ることができるようになります。主にゲームにおいて、NPC(Non Player Character)と呼ばれるプレイヤーが操作しないキャラクターが多数登場しますが、従来のNPCはプログラムされた通りの決まったセリフしか発しないものでした。

 

これに対し、生成AIにより生み出されたNPCは、まるでプレイヤーが操作しているキャラクターと同じように、ユーザーの言葉を汲み取って自然な会話ができるようになります。

 

これにより、仮想キャラクターとの会話自体を楽しむという新たな体験が生まれることが期待されます。

⑤ワールド・コンテンツ制作の効率化、サポート

ワールド・コンテンツ制作の効率化、サポート NVIDIA
(画像:NVIDIA)

AIによって、ラフな下書きや写真、テキスト、音声などから3DCGを作れるようになり、質の高いワールドやコンテンツを低コストで作ることが可能になります。近年MetaやGoogleといったビックテックを中心に、メタバースを構築する3DCGをテキスト入力や音声の指示などによって作成できるAIツールが開発されており、一部は既に実用化されています。企業や開発者は、これらのツールを活用してハイエンドのエンジニア人材に頼らずに質の高いワールド・コンテンツを作成し提供することが可能です。

 

また、ユーザー自身もこれらのAIツールを活用することで、良質なコンテンツを作成できるようになります。これにより、Robloxのようにユーザー自身が作ったコンテンツであるUGC(User Generated Content)によって成り立っているメタバースは、今まで以上に質、量ともに充実したコンテンツを抱えるサービスへと成長できます。

 

実際、Robloxは生成系AIがゲーム作成を手助けしてくれるツールの提供を2023年から開始しており、今後のトレンドとなっていくでしょう。

 

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⑥ハッキングや嫌がらせなどの不正行為の検出・パトロール

AIが異常な行動パターンを検知し、ハッキングや嫌がらせを未然に防ぐことに貢献します。メタバース空間は、法整備の遅れや顔や名前を明かさずに活動できることからリアルの場と比べて秩序を保つ仕組み作りが難しく、運営によるパトロールの重要度が高くなっています。これに対し、運営側はAIを活用することで、効率的なパトロールが可能です。

 

また、AIによって自動的にハラスメント等を防ぐ仕組みを作ることも可能です。例として、Meta社の提供するメタバースサービス「Horizon worlds」では、ユーザーが安心して滞在できる環境作りとしてハラスメント対策などが行われています。詳しくは以下の関連記事で解説しています。

 

⇒関連記事:【事例あり】メタバース・ハラスメントとは?企業の責任や対策も解説

注目のメタバース向けAIツール3選

メタバース開発に活用できる注目のAIツールとして、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①MetaのProject CAIRaoke:音声によるメタバース構築が可能に
  • ②NVIDIAのNVIDIA Avatar Cloud Engine for Games:仮想キャラクターとリアルな人間同士のような会話が可能に
  • ③GoogleのDreamFusion:テキストを基に3Dモデルを生成

 

それぞれのツールの特徴、できることをわかりやすく紹介します。

①MetaのProject CAIRaoke:音声によるメタバース構築が可能に

Builder Bot demo
(動画:Meta)

Meta社は2022年、メタバース用AIアシスタント「Project CAIRaoke」を発表し、その中の「Builder Bot」という機能により音声によるメタバース構築が可能になると明かしています。Project CAIRaokeは会話型AIと呼ばれるAIで、人間でいう秘書のように音声で相談事を話すとサポートしてくれます。例えば、レストランの予約をAIに頼むこともできます。

 

また、Builder Botという機能では、メタバースのワールド構築におけるオブジェクトの設置やアバターのデザインを会話ベースで指示することが可能です。「ヤシの木を置いて」というオブジェクトの指示や、「アバターをゴーギャン風のファッションにして」という指示をするだけで、AIが指示通りに作成してくれます。

 

将来的にVR/ARデバイスのUIは会話型AIになると考えられており、Apple社も発売予定の「Vision Pro」では音声による操作が可能になると発表しています。

 

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②NVIDIAのNVIDIA Avatar Cloud Engine for Games:仮想キャラクターとリアルな人間同士のような会話が可能に

NVIDIA ACE for Games Sparks Life Into Virtual Characters With Generative AI
(動画:NVIDIA)

NVIDIAは2023年5月に「NVIDIA Avatar Cloud Engine for Games(NVIDIA ACE for Games)」を発表し、仮想キャラクターとリアルな人間同士のように会話ができるデモ動画も公開しました。開発者は、NVIDIA ACE for Gamesを活用してAIモデルを取り込んだゲーム、ソフトウェアを開発することが可能になります。

 

デモ動画では、プレイヤーはゲーム内の仮想キャラクターであるラーメン店の店主と、リアルな人間同士と遜色ない自然な会話を展開しています。今までのゲームでは、NPC(Non Player Character)との会話はゲームをクリアするための情報を得ることが主な目的で、NPCは決められたセリフを繰り返すのみでしたが、今後はNPCとの会話自体も楽しめるようになり、ユーザーに新たな体験価値を提供できると予想されます。

③GoogleのDreamFusion:テキストを基に3Dモデルを生成

(動画:Google)

Googleの「DreamFusion」は、テキストを入力するだけで3Dモデルを生成することが可能なツールです。「ハンバーガー」「木彫りのワシ」といった簡単な指示から、「ろくろの前に座り年度の器を作るリス」「真っ二つに割れた卵の殻とその隣に立つ可愛らしいひよこ」といった複雑な指示まで、AIが3Dモデルに反映してくれます。

 

DreamFusionの特徴として、生成する3Dモデルのクオリティが高いこと、生成した3Dモデルを更にテキストによる指示で何度も修正できることが挙げられます。一方、1つの3Dモデル生成に1時間以上かかる場合もあり、生成時間を短縮することは今後の課題です。

 

他にもOpenAIの「Point-E」やNVIDIAの「Magic3D」などもテキストから3Dモデルを作成できるAIツールであり、今後の発展が期待されます。

 

※参照:DreamFusion

AI活用で広がるメタバースの可能性

メタバースの市場成長の大きなドライバーとして、いかにUGC(User Generated Content)が活発に生み出される環境が整うかが極めて重要です。このUGCの活発化に向け、昨今ChatGPTなどで話題の生成系AIの進化が大きく貢献すると考えられます。

 

これまでのUGCの活発化に向けた課題として、3DCGコンテンツを作成するには、専門ツールで長時間かけて制作する必要があるなど、一般ユーザーにはかなりハードルが高い点が存在しました。

 

そんななか、Googleの提供する「DreamFusion」やNVIDIAの提供する「Magic3D」など、入力したテキストに応じてAIが3Dモデル/3DCGを自動で生成してくれる画期的なツールが登場し始めています。

 

このようなツールの活用により、ユーザーが理想を思い描くだけで自由自在に3DCGコンテンツを作成できるようになれば、メタバース上のコンテンツは加速度的にリッチになり、同時に体験価値も高まることが予想されます。

 

このように、生成系AIをうまく活用したツール・開発基盤の提供により、多くのユーザーをクリエイター化に成功すれば、各メタバースや市場全体のこれまで以上の成長が期待できます。ビックテックを筆頭とする各社の今後の動向から目が離せません。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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