VRの小売業界での活用事例25選|3大メリットも紹介
関連技術の進歩やMetaやAppleのデバイス発売などに伴い、多くの企業がVRの活用を進めています。
最近では、VRと小売業界との相性の良さから、VRを建築業界に活用する企業が増えています。
そこで今回は、小売業界へのVRの活用事例7選を、活用のメリット、成功のポイントなどとともにわかりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- 小売業界で自社のVR活用を検討している
- 他社による小売業界へのVRの活用事例を押さえておきたい
- VRを小売業界に活用するメリットが知りたい
本記事を読めば、小売業界へのVR活用を進める上で押さえておきたい知識を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
- そもそもVRとは
- VRを小売業界のビジネスに活用する3つのメリット
- VRの小売業界での活用事例25選
- ECプラットフォーム:Amazon
- 百貨店:三越、高島屋、阪急阪神など
- 食品小売業界:ローソン、ふくや、カンジュクファーム
- 自動車業界:ダイキン、日産
- ファッション業界:BEAMS、アダストリア、アンリアレイジなど
- ⑬BEAMS:VRイベントへの出展を通じリアル店舗への送客も
- ⑭アダストリア:VRイベント来場者にアバター用の洋服を提供
- ⑮アンリアレイジ:販売したNFT作品11点が総額5000万円で落札
- ⑯Gucci:Roblox上に自社独自のVR空間を構築
- ⑰Louis Vuitton:ブランドの歴史を感じられる独自VRゲームを公開
- ⑱Balenciaga:Fortniteと連携しアバター用のスキンを販売
- ⑲RTFKT:バーチャルスニーカーが販売開始7分で3.2億円を売り上げる
- ⑳ポロラルフローレン:ユーザー数2億人のZEPETOでアバター用の洋服を販売
- ㉑DOLCE & GABBANA:初めて発表したNFTコレクション9作品がオークションで総額6億円で落札
- ㉒AMBUSH® :独自のVR空間を公開
- ㉓GIVENCHY:Roblox上にVR空間を構築
- ㉔NIKE:Roblox上にVR空間を構築しデジタルアセットを販売
- ㉕Luis:バーチャル店舗をKDDIのVR「αU」上 に展示
- 小売業界へのVR活用を成功に導く5つのポイント
- 小売業界へのVR活用を進めるための4つのステップ
- 費用対効果・実現性が高いメタバース活用方法
そもそもVRとは
VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス、ゴーグル等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。
日本バーチャルリアリティ学会ではVRを「みかけや形は原物そのものではないが、本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」と定義しています。すなわち、VRは、現実世界そのものではないが、実質は現実世界とほとんど変わらないという意味です。
VRの定義についてはこの他にも色々な考え方がありますが、いずれにしても、本質的には現実とほとんど変わらないというところがポイントになります。
様々なユースケースの中でも特にゲームの使用を中心に利用が拡大しており、まるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感・臨場感を感じながらプレイすることが出来ます。
また、最近ではゲームだけでなく、仮想現実に出店し商品を販売したり、仮想空間上で社員研修や教育を行ったり、建築のシミュレーションを行ったりするなど、様々な分野でVRが活用されています。
VRを小売業界のビジネスに活用する3つのメリット
VRを小売業界のビジネスに活用するメリットとして主に以下の3つが挙げられます。
- ①コロナ禍対策としてのオンラインシフト
- ②幅広い顧客にリーチできる
- ③メタバースならではの体験により訴求力が向上する
それぞれのメリットについてわかりやすく紹介していきます。
①コロナ禍対策としてのオンラインシフト
1つ目のメリットは、コロナウイルス感染拡大防止のための行動制限などの影響で、幅広い業界のマーケティング・プロモーション活動が打撃を受けています。商材によってはオンラインでのプロモーションへのシフトを成功させています。
一方で、実物を確認して買いたいという人が多い商材や実店舗でのプロモーションイベントや顧客ひとり一人に寄り添った提案が重要な商材のマーケティングのオンラインシフトは非常に難易度が高く、幅広い業界の企業の課題となっています。そこで、マーケティングにVR活用することで、実店舗などのリアル空間で行っていたマーケティング施策のオンラインシフトを行うことが可能です。
②幅広い顧客にリーチできる
2つ目のメリットは、幅広い顧客にリーチできるという点です。VRを活用したマーケティングの特徴の1つとして、「いつでも、どこからでもアクセスしてもらえる」という点があります。
従来のリアルな空間でのプロモーションイベントでは、ターゲットとなる人が地理的に大きく制限されているため、一定程度ターゲットが密集している都心部など以外で施策を実施しづらいという課題がありました。そこで、VR上でマーケティング施策を行うことで、幅広い地域のターゲットにリーチすることが可能です。
また、VRを活用することで、従来若者世代との接点獲得に苦戦していた企業・商材のマーケティングを加速させることもできます。VRがデジタルネイティブの比較的若い世代から人気を集めていることや、人気のコンテンツなどとコラボしたりゲーミフィケーションを取り入れたプロモーション施策との相性が良いことから、若者世代の顧客獲得への打ち手としての活用が進んでいくことが考えられます。
③VRならではの体験による訴求力向上
3つ目のメリットは、VRならではの体験による訴求力向上ができるという点です。
マーケティングにVRを活用することで、オンラインでの商材の訴求力を向上することができます。訴求力向上に繋がるポイントは大きく2点あります。
1点目は、3Dモデルを活用した訴求力の向上です。顧客が商材や店舗、施設を目の前にしているような体験を提供でき、従来オンラインで商材の魅力が伝わりづらく、オンラインプロモーションに苦戦していた商材の訴求力を向上することができます。
2点目は、VRならではの体験を通じた、新たな購買体験による訴求力の向上です。オンラインでありながら、友人と一緒に買い物が出来る環境を構築したり、リアルでは簡単に提供できない非現実的な体験型のプロモーション施策を低コストで実施したりすることができます。
VRの小売業界での活用事例25選
VRの小売業界での活用事例として代表的なものに、以下の25事例が挙げられます。
ECプラットフォーム:Amazon
- ①Amazon:グローバル規模での倉庫の配送オペレーションを最適化
百貨店:三越、高島屋、阪急阪神など
- ②三越伊勢丹:独自のVR空間上に百貨店を再現
- ③凸版印刷:VR上のショッピングモールメタパを展開
- ④高島屋:VRを活用した家具のオンライン接客を実施
- ⑤阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催
- ⑥大丸松坂屋:VR上の百貨店で600種類の食品を販売
- ⑦阪急阪神百貨店:VR上の百貨店でVR接客を実施
食品小売業界:ローソン、ふくや、カンジュクファーム
- ⑧ローソン:アバター接客スタッフを募集
- ⑨ふくや :ECにバーチャルショッピングを活用しCVR30%を記録
- ⑩カンジュクファーム:VR空間上でフルーツを販売
自動車業界:ダイキン、日産
- ⑪ダイキン:VRを活用し製造ラインのロスを削減へ
- ⑫日産自動車:VR上での新車発表・試乗会を開催
ファッション業界:BEAMS、アダストリア、アンリアレイジなど
- ⑬BEAMS:VRイベントへの出展を通じリアル店舗への送客も
- ⑭アダストリア:VRイベント来場者にアバター用の洋服を提供
- ⑮アンリアレイジ:販売したNFT作品11点が総額5000万円で落札
- ⑯Gucci:Roblox上に自社独自のVR空間を構築
- ⑰Louis Vuitton:ブランドの歴史を感じられる独自VRゲームを公開
- ⑱Balenciaga:Fortniteと連携しアバター用のスキンを販売
- ⑲RTFKT:バーチャルスニーカーが販売開始7分で3.2億円を売り上げる
- ⑳ポロラルフローレン:ユーザー数2億人のZEPETOでアバター用の洋服を販売
- ㉑DOLCE & GABBANA:初めて発表したNFTコレクション9作品がオークションで総額6億円で落札
- ㉒AMBUSH® :独自のVR空間を公開
- ㉓GIVENCHY:Roblox上にVR空間を構築
- ㉔NIKE:Roblox上にVR空間を構築しデジタルアセットを販売
- ㉕Luis:バーチャル店舗をKDDIのVR「αU」上 に展示
それぞれについて、わかりやすく紹介します。
ECプラットフォーム:Amazon
①Amazon:グローバル規模での倉庫の配送オペレーションを最適化
Amazonは全世界の倉庫内にある50万台以上の配送ロボットのオペレーションの最適化にNVIDIA Omniverseを活用しています。AIを活用したデジタルツインを構築し、倉庫の設計と流れを最適化しています。これにより、配送オペレーションの効率化や、シミュレーションのリードタイム・コストの削減が可能です。
百貨店:三越、高島屋、阪急阪神など
②三越伊勢丹:独自のVR空間上に百貨店を再現
三越伊勢丹は、独自のVR上の仮想都市である「レヴ ワールズ」を構築し、専用アプリから提供しています。利用者はアバターを登録し、デジタル空間の「バーチャル伊勢丹」での買い物を楽しむことができます。店員のアバターも配置され、チャット機能を使った接客も受けられます。
β版のリリースから1年ほどが経過する「レヴ ワールズ」ですが、百貨店の強みである「デパ地下」や「ギフト」への関心の高さが確認できているとのことです。
現在は婦人服や食品など180ブランドを扱っていますが、今後は家具や日用品にも対象を広げる方針です。友人のアバターと一緒に会話しながら買い物できるようにするなど機能も強化する予定です。
他社がVR上で開催されるイベントへの出展が中心のなか、三越伊勢丹は既に独自のVR空間を構築・提供しており、百貨店・小売業界のVR活用をリードする存在といえます。
③凸版印刷:VR上のショッピングモールメタパを展開
メタパは凸版印刷が提供するリアルとバーチャルを融合したVR/メタバースショッピングモールです。
メタパの特徴は次の2点です。
- 1.リアルとバーチャルを融合した新しい買い物体験
- 2.友だちや家族とグループでショッピングができる
1点目のリアルとバーチャルを融合した新しい買い物体験に関して、メタパではリアルのお店で販売されているリアルの商品をVR上で購入することができます。
2点目の友だちや家族とグループでショッピングができる点に関して、メタパは メタ+パーティの造語であり、仲間と集まれるVR(仮想空間)です。人が集まる賑わいや、友だちや家族といろんなお店を一緒に巡ってショッピングできる楽しさをバーチャルで体験できます。
④高島屋:VRを活用した家具のオンライン接客を実施
高島屋はVRを活用した家具のバーチャル売り場を構築している。家具売り場の一角に設けられたVR体験スペースでは、来客がVRヘッドセットを着用し、仮想空間上に構築された12部屋のモデルルームに配置された家具を体感することができます。12部屋の内の1つは本店に実在するバラショップの部屋で、バラを飾った生活を体験し、気に入った場合は購入をすることも可能です。こちらのバーチャル家具売り場と連携する取引先を2022年には3倍にも拡大する予定です。
従来の家具販売では、スペースの関係で限られた家具しか置けないなか、バーチャル空間上で多数のモデルルームや家具を体感してもらいながら接客をすることで、百貨店の強みがより活かされるとしています。今後は、家具だけでなく百貨店の取り扱う生活全般の提案にVRが活用できないか検討していくとのことです。
⑤阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催
大手関西私鉄である阪神阪急HDは、VR上での音楽フェスである「JM梅田ミュージックフェス」を開催しました。JM梅田ミュージックフェスは、阪急阪神HDが百貨店を含む大阪・梅田の街を忠実に再現したVR空間上で実施されるオンライン音楽祭です。
当イベントでは、メタ―バース空間となった大阪梅田を舞台に、VTuber等のバーチャルキャラクターによる音楽フェスが実施されました。アバターの姿で参加する来場者は、コンサートの参加、グッズ販売などのコンテンツが提供された他、バーチャルな梅田を高い没入感で体感できました。音楽フェスには30名を超えるVTuberなどのバーチャルアーティストが参加し、来場者数は8万人以上を記録する盛況となりました。
同社は、100年以上続けてきた「街づくり」のノウハウをVR領域でのビジネス展開に活用できるのではと考えています。
⑥大丸松坂屋:VR上の百貨店で600種類の食品を販売
大丸松坂屋は、世界最大のVRのイベント「バーチャルマーケット」への出展を発表しました。大丸松坂屋は専用のブースであるニューヨークの街並みを再現した空間に、「バーチャル大丸・松坂屋」を出展します。来場者は百貨店内で600種類以上のグルメの買い物を楽しんだり、大丸松坂屋の400年の歴史を体感できるアトラクションを楽しんだりすることができます。
食品ブースでは、来場者が自由に店内をまわり、食品3Dモデルを手に取って商品の形状を確認したり、バーチャルカタログで詳細を見たり、商品を購入することが可能です。夏に食べたい「しろくまアイス」や「盛岡冷麺」などのグルメを600点以上が販売される予定です。購入した商品は、後日自宅に届きます。
また、今回のイベント開催に伴い、「VR上で働くアルバイト」を初めて採用。バーチャル接客の経験があり、商品知識を身につけたスタッフが商品の魅力を伝えます。
⑦阪急阪神百貨店:VR上の百貨店でVR接客を実施
阪急阪神百貨店は、世界最大のVRのイベント「バーチャルマーケット」への出展を発表しました。来場者は自身のアバターの姿で、百貨店内を自由に歩き回り、洋服や食品、家電などの買い物を楽しむことができます。
洋服コーナーでは、実在する靴下を愛する阪神百貨店のスタッフが、アバターの姿で接客を担当し、来場者ひとり一人にピッタリの靴下をレコメンドしてくれます。実物の靴下をECから購入できるのはもちろん、実物と同様のデザインのアバターが着用できるデジタルアイテムとしての靴下も購入可能です。
食品コーナーでは、関西の名物グルメである「551HORAI」「阪神名物いか焼き」「クラブハリエ」「フジマル醸造所」などのショップが、阪神梅田本店内のショップをイメージした内装でVRに登場。ECサイトとも連携しており、購入後日本全国に発送可能です。
家電コーナーでは、人気の生活家電ブランド「バルミューダ」のコーヒーメーカーやケトルなどを3DCGで再現します。ケトルを手に持って好きな角度から眺めたり、椅子に座るなど人気のインテリアアイテムをバーチャル上で試すことが可能です。
食品小売業界:ローソン、ふくや、カンジュクファーム
⑧ローソン:アバター接客スタッフを募集
ローソンは2022年11月にオープンする新店舗「グリーンローソン」に設置されるアバターをリモートで操作するアルバイトスタッフを10〜30人募集すると発表しました。アルバイトスタッフは遠隔地からアバターをPCで操作し、身振り手振りを交えた会話を通じて、接客や販促活動を行います。
時給は1100〜2200円で、将来的には在宅勤務を可能にすることも検討されています。2025年には全国のローソンに勤務するアバター接客スタッフを1000人の育成を目指すとのことです。
⑨ふくや :ECにバーチャルショッピングを活用しCVR30%を記録
明太子メーカーのふくやは、バーチャル店舗をVR上に設置し、リアル店舗同様に商品を確認し、店員から説明を受け、購入ができるという取り組みを実施し、来場者の約3割が商品を購入するという成果をあげました。
来場者は、PRG風のVR空間上で、自分のアバターを操作し、別のアバターに近づくことでチャットやビデオ通話などができ、コミュニケーションをとりながら買い物を楽しむことができました。
⑩カンジュクファーム:VR空間上でフルーツを販売
山梨県で果物の生産・販売を行う株式会社カンジュクファームは、3D仮想空間「ガイアタウン」内に設計した自社独自のVR空間で、果物の販売を開始しました。販売だけでなく、現在利用者が急増しているVR空間でアバターと直接会話することで、フルーツ王国・山梨の素晴らしさを国内外の消費者に伝えることを目的としています。
同社は、バーチャルショッピングを活用した新たなコミュニケーションにより、農家と消費者の関係性を進化させようとしています。生産者や他のお客さまとのボイスチャットを通じて、お客さまが果物のさまざまな食べ方を楽しめる体験を提供しています。また専用フロアでは、桃の生産工程を見学することができます。
6月にオープンした自社専用フロアでは、すでに初日からアバターによるコミュニケーションのみで注文を獲得しています。今後は、桃に続き、キウイフルーツ、さらにシャインマスカットや山梨の秋の名産品「あんぽ柿」などを季節に合わせて販売する予定です。
自動車業界:ダイキン、日産
⑪ダイキン:VRを活用し製造ラインのロスを削減へ
2021年に空調製品を生産するダイキン工業は、堺製作所臨海工場(大阪府堺市)向けに、デジタルツインを搭載した新しい生産管理システムを開発しました。
この新たなシステムにより、同社は潜在的な問題を事前に予測し、迅速に対応することが可能になります。製造装置や組立作業、ワークフローの状態を監視し、仮想空間上に再現します。そして、過去の事象を詳細に分析し、将来起こりうる事象をシミュレーションすることで、潜在的な問題を予測します。
デジタルツイン生産管理システムの導入の結果として、2021年度には2019年度比で30%以上のロス削減を見込んでいるとのことです。
⑫日産自動車:VR上での新車発表・試乗会を開催
日産自動車はVR上で、新型軽電気自動車「日産サクラ」の発表・試乗会を開催しました。イベントは参加者は世界最大のVR SNSプラットフォーム「VRChat」で開催されました。
発表会では日産副社長のアバターが登場し、ボイスレターが再生されました。
また、試乗会では日本の四季を感じられるドライブコースでバーチャルなサクラを運転することができます。自分で運転席に座って運転したり、後部座席に座ってみたりと、現実の試乗さながらの体験ができ、新車の特徴を確認することができます。VR上での試乗は通常の試乗とは違い、書類での手続きなども不要で、いつでもどこからでも体験可能なのが強みです。
このような試験的な取り組みを重ねるなかで、将来的に製品のプロモーションチャネルとしてVRが本格的に活用できるユースケースが確立されていくことが期待されます。
ファッション業界:BEAMS、アダストリア、アンリアレイジなど
⑬BEAMS:VRイベントへの出展を通じリアル店舗への送客も
ファッション大手であるビームスはVR領域への参入を果たしています。具体的な取り組みとしては、世界最大のVRイベントである「バーチャルマーケット」に4度出展を行っています。
バーチャルマーケットとはVR空間上にある会場で、アバターなどのさまざまな 3D アイテムや、リアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いでき、日本はもとより世界中から100万人を超える来場者を誇る世界最大のVRイベントです。
バーチャルマーケットでは、アバター用の洋服であるデジタルアイテムの販売やライブなどのイベントの開催が行われました。アバター用の洋服であるデジタルアイテムは、ビームスの2022年の秋冬商品を3Dモデルに起こした、Tシャツやワンピースなどの全7種類が販売されました。
また、ライブでは池田エライザさんがバーチャルライブを開催し、VRに着想を得た新曲の発表も行われました。一方でリアルでの商品販売も行われ、バーチャルマーケットの出展を記念したリアルな洋服の商品もビームスの公式オンラインショップにて販売されました。
4度目の参加の際には、関西のショップスタッフも含む約50名の社員が交代でバーチャル接客にあたり、VR空間上での接客を通じてリアル店舗への来客に繋がっている事例も生まれてきているとのことです。
⑭アダストリア:VRイベント来場者にアバター用の洋服を提供
ファッション大手であるアダストリアはVR領域への参入を果たしています。具体的な取り組みとしては、阪急阪神ホールディングス主催の「JM梅田ミュージックフェス2022 SUMMER」にて、アダストリア参加のブランドである「レイジ―ブルー」と「ハレ」のアイテムをアバター用の洋服として来場者に無料で提供しました。
これらのアバターアイテムの作成にあたって、洋服の質感やデザインの再現性を高めるとデータ容量が重くなってしまうという問題があり、バランスを調整しながら作成が行われました。
同社のVR領域への参入の狙いとしては、「デジタルの顧客接点・サービスを広げる」という成長戦略の実現に向け、VRの世界でもファッションを楽しむきっかけをつくることであるとのことです。同社は将来的に、様々なVRプラットフォームへの展開、VR空間内でのコンテンツ提供、イベント開催なども予定しています。
⑮アンリアレイジ:販売したNFT作品11点が総額5000万円で落札
日本を代表するファッションブランドの1つであり、パリコレクションなどへの参加をはたしているアンリアレイジは、VR・NFT領域への進出を進めるファッションブランドの代表格と言えます。
同ブランドは2022年3月にVRプラットフォーム「ディセントラランド」を舞台に開催されたファッションイベント「VRファッションウィーク」に、日本のファッションブランドとして唯一の参加を果たしています。
また、2022年春夏のパリコレクションにて、映画「竜とそばかすの姫」とのコラボ作品をリアルとバーチャルの洋服で発表し、販売したバーチャルの洋服であるNFT作品11点が総額5000万円で落札され、大きなニュースとなりました。
アンリアレイジは2014年からパリコレクションの参加をきっかけに、海外の歴史あるブランドに対抗する方法としてテクノロジーの活用に取り組んできていたため、業界でも早い段階からデジタルファッションへの取り組みを進めていました。
同ブランドのデザイナーである森永さんは、洋服のデジタルアセットをNFT化して販売するメリットの1つとしてNFTは二次流通、三次流通でも利益が発行者に還元される仕組みがあり、理論上半永久的にその価値が担保される点を挙げています。
⑯Gucci:Roblox上に自社独自のVR空間を構築
没入型マルチメディア体験「Garden Archetypes」の公開と同時に、グッチはRobloxと共同で、ユニークでインタラクティブなバーチャル展示「Gucci Garden」を発表しました。
グッチ ガーデンに入ると、アバターがニュートラルなマネキンに変身します。さまざまな部屋を歩き回りながら、来場者のマネキンは展示の要素を吸収していきます。各人が異なる順序で部屋を体験し、空間の他の断片を保持することで、旅の終わりには唯一無二のクリエイションとして姿を現すのです。
※VR活用を検討する際に、必ず押さえておきたい5大VRプラットフォームの特徴や活用方法、選び方をまとめた資料をダウンロード頂けます。
⑰Louis Vuitton:ブランドの歴史を感じられる独自VRゲームを公開
ルイ・ヴィトンは、創業者の200歳の誕生日を記念して、ブランド・モノグラムから生まれたマスコット、ヴィヴィアンがバーチャルな世界を駆け巡り、収集可能なNFTキャンドルを求めて世界中の活気あるロケーションを旅するVRゲームをリリースしました。
それぞれのキャンドルは、ルイとその家族の旅にまつわるストーリーを解き放ちます。プレイヤーは30個のNFTを集めることができ、その中には、デジタルコラージュがNFTとしてクリスティーズのオークションで6930万ドルで落札されたアーティスト、Beepleの作品も10個含まれています。
⑱Balenciaga:Fortniteと連携しアバター用のスキンを販売
Balenciagaは、Epic Gamesと提携し、ハイセンスなFortniteのアバター用スキンを作成しました。4つのスキンに加えて、つるはしやBalenciaga blingバックパックなどのBalenciagaをテーマにしたアクセサリーも作成されました。
また、バレンシアガをテーマにしたゲーム内のハブが開発され、現実世界の衣料品ラインも提供されました。ハブにはバレンシアガのバーチャルショップがあり、訪問者はコスメを購入することができます。バーチャル・ストアの上には、パーカーを着た散歩中の犬 Doggoが登場するアニメーションの広告掲示板が設置されました。
現実世界でも、ニューヨーク、ロンドン、東京、ソウルに広告掲示板が現れました。Doggo’s のパーカーは、フォートナイトをテーマにしたバレンシアガのコレクションの一部でもありました。
⑲RTFKT:バーチャルスニーカーが販売開始7分で3.2億円を売り上げる
RTFKT(アーティファクト)は2020年にロンドンで立ち上げられたブランドで、スニーカーを中心にデジタルアセットのデザイン・NFTの販売を行っています。オークションでの多額の販売実績や有名ブランド・アーティストとのコラボなど、VR・NFT×デジタルファッションの文脈では圧倒的な存在感を誇っています。
RTFKTの販売するNFTの保有者はスニーカーや洋服をVR上で自身のアバターに着用させられたり、ARを活用して自身が実際にスニーカーを履いているような体験ができたりします。
RTFKTが脚光を浴びたのは2021年3月のこと、バーチャルスニーカーNFTのオークションを行い、開始7分で600足、約3.2億円の売上を記録しました。
RTFKTは数々のコラボレーションで度々注目を集めており、スポーツファッションブランドのNIKEや、アーティストの村上隆などとのコラボNFTをローンチしています。NFTの購入者に対し、デジタルアセットだけでなく、NFTとリンクした実物の洋服を入手できるなどの取り組みも行っています。
RTFKTは2021年末にNIKEに買収されたことをTwitterで発表し、今後NIKEのケイパビリティを活かし、更なる成長を遂げることが期待されています。
⑳ポロラルフローレン:ユーザー数2億人のZEPETOでアバター用の洋服を販売
ラルフローレンはユーザー数2億人を誇るSNSであるZEPETO上で購入可能なバーチャルウェアの販売を開始しました。ZEPETOとはユーザーが自身の3Dアバターを作成し他のユーザーと交流するアプリで、ラルフローレンは、ZEPETO のアプリ内に50種類のファッションアイテムを用意し、ZEMと呼ばれるアプリ内通貨で購入可能にしています。価格は約80円〜400円となっています。
また、今回のコラボでは、ファッションアイテムの販売以外にも、ニューヨークの実在するセントラルパークなどのロケーションのバーチャル空間での再現やラルフローレンのアイテムを身に着けたK-POPバンドTomorrow x Together(TXT)のバーチャルライブなど、ユーザーが楽しめる様々な取り組みが行われました。ユーザーがライブの様子を自撮りしSNSにアップするなど、コラボの認知度を高める動きも多く見られました。
同社は、今回のコラボにて、ZEPETOのアプリ内のアクティビティから様々なデータを取得し、訪問者数や交流の頻度、利用時間、アイテムの売上などを把握し、今後の取り組みの検討に活用しています。リアル店舗より多くの顧客データが得られるのも、VR参入によるメリットの1つと言えます。今後はNFTの販売を検討するなど、バーチャル領域でのビジネス展開を加速させる方針とのことです。
㉑DOLCE & GABBANA:初めて発表したNFTコレクション9作品がオークションで総額6億円で落札
DOLCE&GABANAは、2021年10月に初のNFTコレクション「Collezione Genesi(ジェネシス コレクション)」を発表し、オークションで総額約6億円で落札されました。今回NFT化された9つの作品は、DOLCE&GABANAの各コレクションから厳選されたハンドメイド仕立てのミュージアム級の逸品です。
落札者には、カスタムメイドのデジタルウェアラブルの贈呈や、次回のコレクションイベントへの招待など、リアルとデジタルの2つのエコシステムを通じてVIPサービスが提供されました。リアルの価値をデジタルでの価値に昇華した取り組みとして、今回のDOLCE&GABANAのNFTコレクションは意義のある取り組みだといえます。
㉒AMBUSH® :独自のVR空間を公開
ジュエリーブランドであるAMBUSH®︎はデジタル時代における第3フェーズ Web 3.0の到来とともに、VR領域への参入を開始しました。今回オンライン上で様々なブランドが体験できる場としてVR空間である“AMBUSH® SILVER FCTRY”を公開します。チェーンを形取った仮想宇宙船内では、ランウェイの観覧、過去コレクションのアーカイブの閲覧、イベントへの参加、ファン同士の交流が可能です。
㉓GIVENCHY:Roblox上にVR空間を構築
フランスの世界的ラグジュアリーブランドGIVENCHYはVRプラットフォームであるRoblox上にVR空間「Givenchy Beauty House」を構築しました。「Givenchy Beauty House」では、GIVENCHYとRobloxが、アバターを通じて個性と美しさを最大限に表現できる場を提供します。
プレイヤーはブランドイメージから着想を得たダンスフロアや地下鉄をイメージした地下空間などバーチャル体験の様々なエリアにアクセスすることができます。さらに、GIVENCHYのファッションアクセサリーをイメージしたアイテムを手に入れることも可能です。
㉔NIKE:Roblox上にVR空間を構築しデジタルアセットを販売
NIKEは、VRプラットフォームRoblox(ロブロックス)上に没入型3D空間「NIKELAND」(ナイキランド)をオープンしました。ユーザーは3Dアバターを操作し、VR空間上に作られたバスケットボールコートなどの運動施設で、他のユーザーと共に鬼ごっこやドッジボールなどのスポーツを楽しむことができます。
また、ツールキットを利用して自分だけのオリジナルミニゲームを制作することも可能です。さらに、デジタルショールームでは、NIKEのアパレルやシューズをデジタルアセットとして購入でき、アバターに装着させることで身体能力をアップさせることもできます。
NIKELANDは、NIKEのブランドとしての世界観を表現するためのマーケティングの施策としてだけでなく、VRという新たなマネタイズポイントの開拓に繋げる目的があると考えられます。
㉕Luis:バーチャル店舗をKDDIのVR「αU」上 に展示
アパレルブランドLuisは、KDDIのバーチャルショッピングサービス「αU」上に渋谷パルコ5階のアパレル店舗「Lui`s/EX/store」の店舗と商品を展示しています。渋谷パルコの店舗にバーチャルで訪問できる他、実際の店舗で働く店員と会話することも可能です。このように「αU place」など新たなバーチャルサービスの発達により、店舗のVR領域への参入がよりしやすくなっています。
小売業界へのVR活用を成功に導く5つのポイント
企業がVR活用で成果を上げるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
- ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
- ③ユーザーファーストなUX設計
- ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
- ⑤強力な開発・運用体制の構築
それぞれについて分かりやすく紹介していきます。
①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。
デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。
VR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。
②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案
2つ目のポイントは、VRを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。
現在VR活用に取り組む企業には、VR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。
その結果、活用のPDCAが回らない、VR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。
自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜVRではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。
③ユーザーファーストな企画・UX設計
3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなVRの企画・UX設計です。
現在、多くの企業がVRに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなVRが多く存在します。それらのVRは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。
そのため、「VRならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。
④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。
VR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。
そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。
⑤強力な開発・運用体制の構築
5つ目のポイントは、強力なVR開発・運用体制の構築です。
高いユーザー体験と事業性を両立するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。
小売業界へのVR活用を進めるための4つのステップ
VR活用を進める上では、大きく4つのフェーズと以下の35ステップを抑える必要があります。
<Phase1:業界動向・知見のキャッチアップ>
- VRの基礎知識
- ①ユーザー・企業ができること/メリット
- ②注目を集める背景・歴史
- ③XRデバイス・Web3等の関連テクノロジー
- ④今後の普及・発展への展望
- 市場/ユーザー動向
- ⑤ビックテックなどの戦略・取り組み
- ⑥主要VRプラットフォーム
- ⑦各業界における大手企業の取り組み
- ⑧国内外のユーザーの動向
- VR活用手法・先行事例
- ⑨VR活用手法の全体像
- ⑩自社と類似する業界における国内外の事例
- ⑪自社が検討する活用手法の国内外の事例
<Phase2:戦略/企画の立案>
- 自社が取り得る活用の方向性の洗い出し
- ⑫ターゲットとする経営課題と活用目的の明確化
- ⑬目的達成に向けた活用手法候補の幅出し
- 目的達成に向けた活用の方向性の評価
- ⑭自社の目的に合わせた評価軸の設定
- ⑮評価軸に沿った活用の方向性の評価
- VR戦略の立案
- ⑯自社の強み・アセットの活かし方を検討
- ⑰中長期で目指す姿と企画のコンセプトの立案
- ⑱ビジネスモデルの設計
- 詳細な先行事例ベンチマーク
- ⑲企画コンセプトに類似する国内外の事例ベンチマーク
- ⑳企画の立案・具体化に向けた示唆出し
- 企画の立案・具体化
- ㉑コアターゲット像と提供価値
- ㉒ユーザー体験/コンテンツ案
- ㉓活用チャネル/プラットフォーム案
<Phase3:事業計画の策定>
- 事業計画の策定
- ㉔期待する成果/主要KGI・KPIの設定
- ㉕開発・運用アプローチ(活用ツール・ベンダー等)の設計
- ㉖必要なリソース(コスト・人員等)の算出
- ロードマップ策定
- ㉗開発・運用のタイムラインの設定
- ㉘主要マイルストーンの設定
- ㉙想定されるリスクと対処方法の検討
<Phase4:開発・運用>
- 開発
- ㉚不足するケイパビリティやリソースの補完
- ㉛要件定義・システムの基本設計
- ㉜開発の実行
- 運用
- ㉝VRへの集客/マーケティング
- ㉞運用・保守の実施
- ㉟効果測定と運用方法の見直し
それぞれのフェーズとステップの詳細については以下の記事をご覧ください。
※関連記事:VRを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ
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