【2024年最新】メタバースの防災への活用事例5選とメリットを解説

近年多くの注目を集めるメタバースですが、実は、メタバースのベースとなる技術であるVRは、元々パイロットのトレーニング用のシュミレーターから始まったことをご存知でしょうか?

その起源からも分かるように、メタバースはゲームなどの用途だけでなく、シュミレーションに基づく訓練と非常に相性が良いものなのです。

 

一方で、「防災にどのようにメタバースを活用するのかイメージが沸かない」、「具体的にどのような活用事例があるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、メタバースの防災への活用事例をメリットとともに解説します。

本記事を読めば、メタバースの防災領域へのビジネス活用のヒントが得られると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

メタバースを防災に活用する3つのメリット

メタバースを防災に活用する3つのメリット

メタバースの防災への活用のメリット代表的なものとして、以下の3つが存在します。

 

  • ➀災害に強い都市や建物の設計への活用
  • ②防災・避難情報の視認性の向上
  • ③防災訓練の臨場感・没入感の向上

 

それぞれのメリットをわかりやすく説明していきます。

 

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➀災害に強い都市や建物の設計への活用

近年、異常気象や大規模地震発生リスクの高まりなど、災害に強い都市づくりが注目を集めるなか、デジタルツインなどの仮想空間上の3Dモデルを活用した都市・建物設計のシュミレーションへの活用が進んでいます。

 

従来、災害に強い都市や建物の計画・設計を検討する際に、現実世界での物理的な建物や模型を用いたシミュレーションが行われていましたが、それらを仮想空間上で行うことで、シミュレーションの精度向上やコスト削減や、従来行えなかった状況下でのシュミレーションが可能となりました。

 
この領域には政府も力を入れており、2020年度には、都市の3Dモデルを構築・活用し、まちづくりのDX化を推進するプロジェクト「Project  PLATEAU」が始動し、多くの民間企業を巻き込んだ実証実験が進められています。

②防災・避難情報の視認性の向上

東日本大震災での津波被害からも分かるように、災害が発生してから迅速に正しい非難行動を取れるかが生死を分けることも多く、普段から居住地や勤務地などでの災害時の避難経路などの情報を理解しておくのは非常に重要です。

 

一方で、従来政府が提供しているハザードマップなどの避難情報は2Dで提供されていることが多く、人々が地形と紐づけて理解しづらいという課題がありました。

 

そこで、都市の3Dモデルを活用した防災・避難情報を作成することで、視認性が高く、いざとなった時に行動に移しやすい情報を提供する取り組みが始まっています。
同様の取り組みはオフィスビル内での避難経路情報などにも活用が可能であり、今後は民間企業での活用も進んでいくと考えられています。

③防災訓練の臨場感・没入感の向上

災害発生時に備え、学校やマンション、オフィスなどで行われてきた避難訓練ですが、実際に火災や洪水などが発生している様子を現実世界で再現するのには限界があるという課題が存在します。

 

そこで、メタバース上災害の状況をリアルな3Dコンテンツで再現し、参加者のアバターを介した防災訓練に参加してもらうことで、より臨場感や没入感の高い防災訓練を実施しようという取り組みが始まっています。

 
メタバース上で実際の災害発生時に近い環境を経験することで、防災意識の向上や、災害発生時の適切な対処に繋がるのではと期待されています。

メタバースの防災への活用事例5選

メタバースの防災への代表的な活用事例として以下の5つが挙げられます。

 

  • ①国交省:災害に強いまちづくりに3D都市モデルを活用
  • ②東京海上日動:大災害の予測にデジタルツインを活用
  • ③NTT:メタバース上で参加型の水害対策訓練を実施
  • ④東京海上日動:災害体験ができるARアプリを開発
  • ⑤明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①国交省:災害に強いまちづくりに3D都市モデルを活用

国交省:災害に強いまちづくりに3D都市モデルを活用
(画像:国土交通省)

2020年度から国土交通省がスタートしたProject PLATEAUは、スマートシティをはじめとする都市開発のDX化を目的とし、都市の3Dモデルの整備・活用を推進するプロジェクトのことです。
地方自治体や民間企業を巻き込みながら、3D都市モデルのデータ整備、ユースケース開発、3D都市モデルの整備・利活用ムーブメントの惹起とオープンデータ化に取り組んでいます。

 

近年の自然災害の深刻化・頻発化に伴い、平時から災害リスクを認識した上で、河川氾濫時の危険箇所や避難場所などの情報を的確に提供することが重要となっています。

一方で、現在のハザードマップは、2次元の地形図に洪水浸水域を重ね合わせて作成されており、地図に慣れていない子供や土地勘のない観光客にとっては分分かりにくい場合が多いことが問題となっています。

 
そこで、Project PLATEAUでは、3D都市モデルの三次元であり、視覚的に理解しやすいという特徴を活かし、災害ハザード情報をわかりやすく表示する取り組みを実施しました。
具体的には、全国48都市を対象に、構造浸水想定区域のマップ等を3D都市モデルに重ね合わせ、人々に直観的・視覚的に理解しやすい形で表現しました

②東京海上日動:大災害の予測にデジタルツインを活用

東京海上日動:大災害の予測にデジタルツインを活用
(画像:東京海上日動)

東京海上日動はNTTコミュニケーションズらと共同で、地震や水害など複数の種類の大規模災害をデジタルツインで予測する研究を開始しました。予測に基づく安全対策や補償を検討することが目的です。

 
具体的には、デジタルツインの仮想空間において、人の流れ、空間、気象、自然災害に関するデータと、防災科学技術研究所の災害予測技術を融合し、リアルタイム性の高い被害予測モデルを構築する予定です。また、このモデルの予測に基づき、災害の種類や規模に応じた複数パターンの災害初動対応策を策定します。

 

また、災害発生時の個別避難誘導、災害情報の一元管理、インフラシステムの安定運用を目的とした防災アプリケーションやクラウド型防災管理システムの研究を行います。
さらに、防災ソリューションの高度化に向け、リスクデータの活用やデータドリブンな保険商品についても研究していくとのことです。

③NTT:メタバース上で参加型の水害対策訓練を実施

NTT:メタバース上で参加型の水害対策訓練を実施
(画像:NTTコミュニケーションズ)

NTTコミュニケーションズは、東京理科大学と共同で、水害リスクの高い地域での防災・減災を実現するために、市民参加型の「デジタル防災訓練」を用いた実証実験を開始すると発表しました。
構築されたメタバースは、国が提供するオープンな都市空間データや独自のデータに基づいて店舗や看板などを3D CGでリアルに再現されたもので、市民はアバターとして水害発生前後の避難行動をシュミレーションし、その行動データをNTTが分析するとのこと。

 

これにより、避難行動の可視化、防災意識の向上、安全な避難のための対策検討などに役立てることができます。また、デジタルツインの構築における技術的な課題を明らかにする予定です。
同社は、本実証実験のデータをもとに、企業や行政機関へ防災・減災のための提言を行うとともに、企業や行政などの共創パートナーとともに新しいサービスを開発していきたいと考えているとのことです。

 

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④東京海上日動:災害体験ができるARアプリを開発

東京海上日動:災害体験ができるARアプリを開発
(画像:東京海上日動)

東京海上日動は、スマートフォンやタブレット端末を使って、河川の氾濫による洪水や土砂災害の危険性を疑似体験できる「災害体験AR」を共同開発しました
本アプリは、洪水や土砂災害の危険性をより多くの人に知ってもらい、社会全体の防災意識を高めることを目的として開発されました。

 
また、今後は自治体や企業との連携による小学生や住民への防災教育、スマートシティなどでの活用を予定しています。
加えて、日系企業の多いタイでの浸水深の可視化も可能で、今後ニーズに応じてグローバルに展開も検討中とのことです。

⑤明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化

明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化
(画像:スペースリー)

明治安田生命は、VRクラウドソフトを提供するスペースリー社と共同で、VRコンテンツを活用した防災訓練を実施しました。

 
経緯としては、コロナ禍による行動制限下において、防災訓練を実施する手段としてVRの活用を検討したとのことです。
加えて、実施してみると従来の訓練よりも、リッチな情報を3D空間で理解できたり、ゲーミフィケーションを取り入れながら楽しんで訓練ができた、訓練の所要時間が半減できたなどと様々な効果が得られたとのこと。

メタバースの防災への活用における2つの課題

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①初期費用の軽減

1つ目の課題は初期費用の軽減です。VR防災訓練など多くのVRが必要な状況では初期費用が導入の障壁となり得ます。しかし、災害のリスクをメタバース活用によってより低下させることができること、VR訓練を行うための人件費や会場費をVR導入後抑えることを考慮すると、長期的に見るとコスト削減に繋がる場合もあります。

②VR/ARデバイスの性能・UXの向上

2つ目の課題は、VR/ARデバイスの性能・UXの向上です。Meta Questを筆頭とするVRゴーグルやARグラスなどのデバイスの小型化・軽量化は防災訓練などでの長時間の利用において重要な課題です。現在のMeta QuestなどのVRゴーグルは10年ほど前から比べれば遥かに小型化・軽量化が進んでいますが、長時間装着するには身体への負担が大きいというのが現状です。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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