音楽業界のVR活用事例10選|4大メリットや成功のポイントも解説
近年、音楽やゲームといったエンターテインメント業界を中心に、VRを活用した事例が多くなっています。
VRはリアルに近い体験だけでなく、リアルでは出来ないVRならではの体験も提供できるため、ユーザーにとって非常に魅力的なコンテンツを提供できます。
一方で、まだ自社では本格的なVRの活用まで至っていないという音楽業界の方も多いのでしょうか?
そこで今回は音楽業界でVRを活用する方法、代表的事例、活用のメリット、成功のポイントまで分かりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- VRを活用するにはどんな方法があるか把握しきれていない
- 音楽業界でVRを活用した代表的事例を知りたい
- 活用するメリットや成功のポイントを抑えておきたい
本記事を読めば、音楽業界でVRを活用するための知見を一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもVRとは?
VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。
VRはエンターテインメント業界を中心に利用が広がっており、ユーザーはまるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感や臨場感を味わいながらプレイすることができます。
また、似たような技術としてARやMRがあり、VRと合わせた3つを総称してXRと呼ばれます。
VRを音楽業界に活用する4つの方法
音楽業界でVRを活用する方法として、主に以下の4つが挙げられます。
- ①VR上でのアーティスト・レーベルの宣伝
- ②VRを活用したリアルでのライブイベントの配信
- ③VR空間上でのライブイベントの開催
- ④VR上でのデジタルアイテムの販売
それぞれをわかりやすく解説していきます。
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①VR上でのアーティスト・レーベルの宣伝
1つ目の活用方法は、VR上でのアーティスト・レーベルの宣伝です。小売やアパレルブランド各社と同様、Roloboxやフォートナイトなどの既存のVR空間に常設/特設のブースを設けることで、自社のアーティスト・レーベルの宣伝をすることができます。
宣伝をWebやSNSで行う場合とVR上で行う場合の最も大きな違いは、ブランドがユーザーに対し3次元の空間上でインタラクションを交えた体験を設計できることです。そのため、従来は各ブランドがリアルで開催していたイベントや、リアルでは実現の難しいゲーミフィケーションを交えた体験設計などを通じて、ブランドの世界観を体験してもらう取り組みが可能です。
②VRを活用したライブイベントの配信
2つ目の活用方法は、VRを活用したライブイベントの配信です。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リアルでのライブイベントの開催に制限がかかるなか、リモートで実際にライブ会場を訪れているかのような体験を提供することができます。
どの程度没入感のある体験ができるかは、ライブ運営者の設備への投資と、来場者側の使用するデバイスによって決まります。
ライブ運営者の設備への投資としては、立体的な音声情報の取得・配信や空間の3次元の情報を丸ごとリアルタイムで撮影するボリュメトリックビデオなどが挙げられます。
また、来場者の使用するデバイスとしては、もちろんスマホやPCからでもアクセス可能ですが、MetaQuestなどのHMDを使用することで、より没入感のある体験をすることができます。
③VR上でのライブイベントの開催
3つ目の活用方法は、VR上でのライブイベントの開催です。世界最大のVRであるフォートナイトにて、米津玄師や星野源がライブを行ったことが世間を賑わせたように、VR上でのライブイベントの開催は、今後広く普及するユースケースになる可能性があります。
理由として、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リアルでのライブイベントの開催に制限がかかっているのはもちろん、3次元の仮想空間上で他の来場者とともに盛り上がることができるという点が、実際にライブ会場を訪れているような体験を実現しているからです。
また、ライブに特化したVRプラットフォームも既に登場しており、今後最も活用が進むと考えられる活用法の1つです。
④VR上でのデジタルアイテムの販売
4つ目の活用方法は、VR上でのデジタルアイテムの販売です。人々の活動がリアルからVR上にシフトしていくにつれ、VR上でのアバター用の洋服やコレクションアイテムが価値を持つようになっていくと考えられています。
そこで、従来のアーティストのグッズなどの市場も徐々にVR上にシフトしていくと予想されています。デジタルアイテムはリアルのアイテムと異なり、製造や販売にかかるコストが極めて小さいことから、ビジネスの目線からすると非常に魅力的な活用方法の1つです。
音楽業界のVR活用事例10選
音楽業界での代表的なVR活用事例として、以下の10個が挙げられます。
- ①ソニーミュージック:最先端のXRライブプロジェクトを実施
- ②エイベックス:The Sandbox上にエイベックスランドを開設
- ③ぴあ:バーチャルライブ向けの独自メタバースを構築
- ④フォートナイト:米津玄師や星野源がバーチャルライブを開催
- ⑤REALITY:アバター姿でのライブ配信プラットフォーム
- ⑥VARK:VR上でのライブイベントプラットフォーム
- ⑦サンリオバーチャルフェス:有名アーティストがVR上に集合
- ⑧阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催
- ⑨PatchXR:VR上で楽器・音楽作成/演奏プラットフォームを展開
- ⑩Roblox:ゲーム空間上でのバーチャルライブを開催
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①ソニーミュージック:最先端のXRライブプロジェクトを実施
株式会社ソニー・ミュージックレーベルズは新たな仮想空間プロジェクト「ReVers3:x(リバースクロス)」の始動を発表しています。「ReVers3:x」では独自に制作した仮想空間を舞台に様々なアーティストのライブを楽しむことができるショートライブプロジェクトです。
「ReVers3:x」の第1弾として、ラッパーのKEIJUのライブが配信されました。仮想空間上に作られた東京のストリートに設置されたステージ上にはデジタルアーティストによるアートも配置され、音楽のみならず、空間としても楽しめるコンテンツとなっています。
②エイベックス:The Sandbox上にエイベックスランドを開設
エイベックス・テクノロジーズは、The Sandboxとパートナーシップ体制を構築し、アーティストとファンが仮想空間上で交流できるテーマパーク「エイベックスランド(仮称)」をオープンすると発表しました。エイベックスランド(仮称)は2022年度中に、「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」内にオープンする予定で、アーティストのライブ配信やファンミーティングの実施、NFTアイテムの販売などが検討されています。
これらに先駆けて、ピコ太郎さんや浜崎あゆみさんに関連するNFTアイテムなどをセットにしたプレミアムLANDを2022年3月3日に販売しました。
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③ぴあ:バーチャルライブ向けの独自メタバースを構築
ぴあ株式会社は、バーチャルライブプラットフォーム「NeoMe」(ネオミー)をスマートフォンアプリのサービスとして提供開始しました。「NeoMe」は、ユーザーがアバターとなってバーチャル空間に入り、バーチャルライブを中心に、ユーザー同士の交流やアバターのコーディネートを楽しむことができるスマートフォンアプリです。
ぴあは、「NeoMe」を通じて、次世代を担う若手パフォーマーに対して、バーチャルを起点とした新たな表現や活動の場を提供しています。ユーザーやファンは、同じ趣味の人とつながる場を提供し、パフォーマーとユーザーの新たなコミュニティづくりを支援します。
バーチャルライブの第1弾となる「NeoMe Live Vol.1」には、ヤバイTシャツ屋さんが出演しました。
④フォートナイト:米津玄師や星野源がバーチャルライブを開催
米津玄師や星野源は、フォートナイト上でバーチャルライブを開催しました。
米津玄師は2020年に開催中であったライブツアー「米津玄師 2020 TOUR / HYPE」の中断等に伴いフォートナイトでの全世界同時バーチャルライブを開催し、世界中から様々なプレイヤーが参加しました。米津玄師は「STRAY SHEEP」のジャケットに描かれた羊のマスクを被った3DCGの姿で様々な場所に移動しながらパフォーマンスを披露しました。
星野源はフォートナイト内で開催されるバーチャルイベント「Soundwave Series」に参加して世界中のアーティストとともにバーチャルライブを披露しました。
⑤REALITY:アバター姿でのライブ配信プラットフォーム
REALITYは、アバターを用いたライブ配信を軸としたVRプラットフォームです。
自分だけのオリジナルアバターを作成し、モーションキャプチャー技術を用いたリアルなライブ配信で視聴者とコミュニケーションを取ったり、アバターが受け取るギフトでマネタイズするなど、簡単操作で楽しめるスマートフォン向けメタバースです。5GやVR/ARを見据えたエンタテインメントの未来像を実現しています。
また、法人向けに3DCGとXR技術を活用したXRクラウド事業「REALITY XR」も展開しています。
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⑥VARK:VR上でのライブイベントプラットフォーム
VARKは、VR上で現実と同じようにライブイベントを楽しむことができるアプリケーションです。決まった時間に開かれるイベントに誰でも参加でき、そのイベントに「いる」アーティストのライブを、一体感を感じながら楽しむことができます。目の前で歌う」「一瞬で世界が変わる」など、バーチャルの可能性をフルに活用し、最高の体験を提供することを目指します。
⑦サンリオバーチャルフェス:有名アーティストがVR上に集合
サンリオバーチャルフェストは、VR上で開催された、リアル/バーチャルのアーティスト総勢52組が集まったライブイベントです。
アーティストは、AKB48などのリアルアーティストから、Vtuber、VRChat上で活動するアーティストまで、幅広いジャンルのアーティストが一堂に会することで、大きな話題を呼びました。
この取り組みのポイントは、ユーザーが求めるものを実現するために、企業や団体の垣根を超えたコラボレーションを実現させた点です。このように、ユーザーを特定の企業やプラットフォームに囲い込もうとするWeb2.0的な発想とは違った取り組みが、今後のVR市場の盛り上がりに繋がっていくでしょう。
⑧阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催
大手関西私鉄である阪神阪急HDは、VR上での音楽フェスである「JM梅田ミュージックフェス」を開催しました。JM梅田ミュージックフェスは、阪急阪神HDが百貨店を含む大阪・梅田の街を忠実に再現したVR空間上で実施されるオンライン音楽祭です。
当イベントでは、メタ―バース空間となった大阪梅田を舞台に、VTuber等のバーチャルキャラクターによる音楽フェスが実施されました。アバターの姿で参加する来場者は、コンサートの参加、グッズ販売などのコンテンツが提供された他、バーチャルな梅田を高い没入感で体感できました。音楽フェスには30名を超えるVTuberなどのバーチャルアーティストが参加し、来場者数は8万人以上を記録する盛況となりました。
同社は、100年以上続けてきた「街づくり」のノウハウをVR領域でのビジネス展開に活用できるのではと考えています。
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⑨PatchXR:VR上で楽器・音楽作成/演奏プラットフォームを展開
PatchXRは、VR上でユーザーがデジタル楽器・音楽の作成/演奏を行えるプラットフォームです。ユーザーはオリジナルの楽器や音楽、演奏ステージ空間を作成可能です。また、それらを他ユーザーにシェアしたり、セッションを楽しむこともできます。PatchXRはVRHMD”MetaQuest2”にも対応しており、より没入感のある体験が可能です。
今後、プラットフォーム上でアーティストがオリジナルの楽器や音楽、演奏を有料で販売し、収益化する仕組みを導入予定です。
⑩Roblox:ゲーム空間上でのバーチャルライブを開催
アメリカでは「Fortnite」「Minecraft」に並ぶ人気オンラインゲーム、「Roblox」において、ゲーム空間を活かした音楽ライブイベントが急増しています。
2023年3月にはアメリカで開催されるスポーツ一大イベント「NFTスーパーボール」のプレーゲームイベントとして、Roblox内に新設されたRhythm Cityでヒップホップ歌手Saweetieによるパフォーマンスが行われました。
今後は、Saweetieの他にもワーナーミュージック所属アーティストによるバーチャルコンサートがRhythm Cityで開催される予定です。
VRを音楽ビジネスに活用する3つのメリット
企業がVRを活用するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- ①VR領域での新たなビジネスの創出
- ②VRから得られたデータの活用による商品・サービスの改善
- ③新たな顧客接点の獲得
それぞれを分かりやすく解説していきます。
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①VR領域での新たなビジネスの創出
検索エンジン、EC、SNSに並ぶ次なるキラーサービスになるとも言われているVRですが、様々な業界の企業がVR領域に参入しており、新たなビジネスを創出しています。VRがより人々に普及し、VR上で過ごす時間が増えると、VR領域のビジネス市場も拡大すると予想されます。
②VRから得られたデータの活用による商品・サービスの改善
VR上の人々の行動データはWebサイトやSNS上のものに比べ圧倒的にリッチになると考えられており、それらを活用すれば商品・サービスの改善がより効果的になります。VR上ではいつ、誰と、どんな行動を取っていたかに加え、ユーザーの感情などもデータとして取得できるようになると考えられています。それが実現すれば、VR上のユーザーに商品やサービスを試してもらい、その反応をデータとして収集することも可能です。
③新たな顧客接点の獲得
VR空間はいつでもどこからでもアクセスできるため、新型コロナウイルス感染拡大の影響で実店舗との接触が減少する中、新たな顧客接点として活用されることが期待されています。VRの特徴である、3Dのコンテンツを活用した商品やサービスの説明などにより、これまでEC化に苦戦していた業界・企業にとって貴重なオンラインでの接点を作れる可能性があります。
企業がVR活用を成功させる5つのポイント
VRのビジネス活用を成功させるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①実際にVRに触れ理解の解像度を高める
- ②市場/競合の動向や事例をキャッチアップする
- ③VR活用の目的や課題の明確にする
- ④不足するケイパビリティやリソースを補完する
- ⑤プロジェクトをアジャイルに推進する
それぞれのポイントについてわかりやすく解説していきます。
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①実際にVRに触れ理解の解像度を高める
VRのことを理解するには、VRを体験してみるのが一番です。
VRに触れることで、VRの魅力や現在の可能性・制約をより深く理解することができます。
一方で、VRのビジネス活用を検討されている担当者の方のなかにも、「実はVRを体験したことが無い」という方がまだまだいらっしゃる印象です。
もしまだ体験されていない方は、MetaQuestなどのVRデバイスを使用して体験してみると、VRの最大の魅力の1つである没入感を体感できます。手軽に試したい場合はスマホやPCからでも簡易的な体験が可能です。
また、初心者の方におススメのVRサービスとしては、「Cluster」という日本最大のSNS型メタバースや、「VRChat」という世界最大級のVRサービスなどが挙げられます。どちらもスマートフォンのアプリストアから簡単にダウンロードし、無料で利用できます。
②市場/競合の動向やナレッジをキャッチアップする
VRの活用を検討する企業の担当者の方は、テクノロジー、ユーザー、ビジネス戦略の観点から多岐にわたる情報をキャッチアップする必要があります。
近年メタバース市場は大きな成長を見せており、関連テクノロジーの進化や幅広い業界の企業の参入、様々なビジネス活用向けサービス・ツールのリリースなど、日々大きな動きを見せています。
このように刻々と変化する国内外の市場/競合の動向や事例、ナレッジのキャッチアップ・分析が、成果に繋がるメタバース活用の前提となります。
③VR活用の目的や課題の明確にする
VRは今後大きな市場成長が予想される領域であり、国内外の幅広い業界の企業が参入を発表し、活用に向けたサービスやツールなども多数登場しています。
その影響から、「競合が参入しているからウチも参入してみよう」、「面白そうなツールがあるから導入してみよう」といった、打ち手ベースの検討に留まってしまう傾向にあります。
一方で、VRのビジネス活用といっても、目的やユースケース、活用し得るツール、サービスは様々です。
そのため、「そもそも自社のどのような課題を解決したいのか」、「課題解決の方法としてVR活用が適しているのか?」といった上流工程の検討をしっかりと行うことが重要です。
④不足するケイパビリティやリソースを補完する
企業でのVR活用は、プロジェクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、メタバースのエキスパートなど様々な能力をもった人材を必要とします。一方で、新規のプロジェクトでこのような人材を十分に確保できることは稀です。
また、プロジェクトで成功を収めるためには、プロジェクトの立ち上げだけでなく、中長期的にプロジェクトを推進し、仮説検証を回し続けることが重要です。
そのため、不足するケイパビリティやリソースをVRコンサルや開発ベンダーなどの活用により補完することが有効となります。
⑤プロジェクトをアジャイルに推進する
VR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあります。様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、活用法を模索している段階です。
そのため、計画と実行のプロセスをアジャイルに回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないための重要なポイントといえます。
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