メタバースの保険業界の活用事例11選|3つのビジネスチャンスも解説

メタバース×保険業界。一見関わりの少ないように見える両者ですが、三井住友海上や損保ジャパンなど大手保険企業がメタバースへの参入を発表するなど、多くの注目を集めています。

 

一方で、「具体的にどのような活用事例があるのか知りたい」、「活用することでどのようなビジネスチャンスがあるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、今後メタバースの保険業界での活用事例やビジネスチャンスをわかりやすくご紹介します。

本記事をお読みいただければ、メタバースを保険業界のビジネスに活用するためのヒントが得られるかと思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

そもそもメタバースとは

そもそもメタバースとは VRChat
(画像:VRChat

メタバースとは一言でいうと、人々が様々な活動を行うことのできるインターネット上の3次元の仮想空間のことを指します。

 

メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語だと言われています。メタバースという言葉が世界で初めて使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。

 

メタバースにおいて、ユーザーはアバターと呼ばれる自身の分身の姿でメタバース空間にアクセスし、他のユーザーとコミュニケーションや経済活動を行うことができます。例えば、集まって会話をしたり、イベントやスポーツ、買い物などを楽しむことができます。

 

一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスとして、「Fortnite」や「Roblox」、「どうぶつの森」などのゲーム型のメタバース、「VRChat」や「Cluster」などのSNS型のメタバースが挙げられます。

 

メタバースへのアクセス方法としては、スマホやPCからもアクセス可能ですが、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイからアクセスすることにより、より世界に没入したような体験が可能になります。

メタバース×保険業界で生まれる3つのビジネスチャンス

メタバース×保険業界で生まれる3つのビジネスチャンス

メタバース×保険業界で生まれるビジネスチャンスとして主に以下の3つが挙げられます。

 

  • ①新たな営業チャネルとしての活用
  • ②メタバース上でのリスクに対する保険商品の開発
  • ③メタバース上での行動データのリスク評価への活用

 

それぞれのビジネスチャンスについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①新たな営業チャネルとしての活用

人々がメタバース空間上で過ごす時間が増えると、既存の保険商品の営業チャネルとしてメタバースを活用しようという動きが加速すると想定されます。スマホシフトの際に、保険会社の営業チャネルがウェブサイトやSNSに移行したのと同様のメタバースシフトが予測されます。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、実店舗での営業が制限されるなか、新たな営業チャネルとしての活用が注目されています。

 
また、メタバース上であれば、スタッフとのインタラクティブなコミュニケーションや地震や火災などの災害のリスクを、没入感のある体験を通じて訴求することも可能なため、従来の営業チャネルよりも成約率の高いチャネルに発展する可能性もあります。

②メタバース上でのリスクに対する保険商品の開発

メタバース空間という新たな世界で、人々の新たな行動様式や交流が広がるなかで、当然新たなリスクが発生し、それに対応する新たな保険商品が求められる可能性があります。
toC向けのリスクとしてはNFTなどのデジタルアイテム・コンテンツの商取引にまつわるリスク、バーチャル空間上での人との交流の中での名誉棄損などのリスクが挙げられます

 

toB向けのリスクとしては、まだまだ市場の中で不確定要素の多いWeb3領域でのビジネス構築・展開に挑む様々なリスクが挙げられます。

それらのリスクに対応する保険商品を開発することで、人々や企業が安心してメタバース空間での交流やビジネス構築を行うことができ、メタバースの発展に貢献することが期待されます。

③メタバース上での行動データのリスク評価への活用

こちらもスマホシフトの際と同様、人々がデジタル空間上で過ごす時間が増えると、それだけ取得できる個人の行動データが増える事になります。

 

メタバース上で新たに得られるデータを活用することで、今まで保険を提供する事が難しかった高リスク顧客へのサービス提供や、保険サービスの価格の最適化など、メタバース上でのデータのリスク評価への活用は、加入者・事業者双方にとってメリットのある取り組みと言えるでしょう。

メタバースの保険業界での活用事例11選

メタバースの保険業界での活用事例として主に以下の11個が挙げられます。

 

  • ①東京海上日動:大災害の予測にデジタルツインを活用
  • ②東京海上日動:災害体験ができるARアプリを開発
  • ③三井住友海上火災保険:メタバース上にビジネス拠点開設
  • ④損保ジャパン:ANAと提携しメタバース上での実証実験
  • ⑤あいおいニッセイ同和損保:メタバース向けの保険商品開発を目指す
  • ⑥明治安田生命:クラスタ―上にバーチャルスタジアムを開設
  • oVice:「メタバース保険」の事前予約を開始
  • ⑧アドバンスクリエイト:保険相談にアバターを活用」
  • ⑨損保ジャパン:ジャパンメタバース経済圏におけるリスク分析および保険開発
  • ⑩あいおいニッセイ同和損保:独自のメタバース空間を作成
  • ⑪楽天生命:バーチャルマーケットに出店

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①東京海上日動:大災害の予測にデジタルツインを活用

東京海上日動:大災害の予測にデジタルツインを活用
(画像:東京海上日動)

東京海上日動はNTTコミュニケーションズらと共同で、地震や水害など複数の種類の大規模災害をデジタルツインで予測する研究を開始しました。この研究の目的は、予測に基づく安全対策や補償を検討することです。

 

デジタルツインにおいて、人の流れ・空間・気象・自然災害などに関するデータと防災科学技術研究所の災害予測技術を活用し、リアルタイム性の高い被害予測モデルを構築する予定です。また、このモデルの予測に基づき、災害の種類や規模に応じた複数パターンの災害初動対応策を策定します。

 

また、災害発生時の個別避難誘導、災害情報の一元管理、インフラの安定運用を目的とした、防災アプリケーションやクラウド型防災管理システムの研究も行います。
さらに、防災ソリューションの高度化にむけ、メタバース上でのリスクデータの活用やデータドリブンな保険商品についても研究していくとのことです。

②東京海上日動:災害体験ができるARアプリを開発

東京海上日動:災害体験ができるARアプリを開発
(画像:東京海上日動)

東京海上日動は、スマートフォンやタブレット端末を使って、河川の氾濫による洪水や土砂災害の危険性を疑似体験できる「災害体験AR」を開発しました。同アプリは、洪水や土砂災害の危険性をより多くの人に理解してもらい、社会全体の防災意識を高めることを目的として開発されました。また、今後は自治体や企業との連携による小学生や住民への防災教育、スマートシティなどでの活用を予定しています。

 

さらに、日系企業の多いタイでの浸水深の可視化も可能で、今後はニーズに応じてグローバルに展開も検討中とのことです。

③三井住友海上火災保険:メタバース上にビジネス拠点開設

三井住友海上火災保険:メタバース上にビジネス拠点開設
(画像:三井住友海上火災保険)

2022年3月に、三井住友海上火災保険は、メタバースが浸透した未来を目指し、「Metaverse Project」の立ち上げを発表しました。メタバース上の拠点「GDH(Global Digital Hub)Meta」を開設し、新規事業の設計・開発を行うとしています。本プロジェクトは、中長期的な社会変革を見据え、外部の知見を取り入れた社内外のクロスセクタープロジェクトを展開する三井住友海上の第一弾となります。

 
同社は立ち上げの理由として、メタバース上で発生する新たな損失を補償する商品やサービスの提供を通じて、メタバースが普及し、人々が安心して楽しめる環境を構築するためとしています。

 

同社は、テクノロジーを活用した新規事業推進で最先端のノウハウを持つPwCコンサルティング合同会社と共同で、サービス提供者、プラットフォーム提供者、ユーザーなどが被るリスクを特定し、損失を補償する商品・サービスを開発します。また、メタバース業界団体への参画や他業界の企業・専門家との協議を行い、新しい価値観を持つ未来のお客様との対話の場として、実空間とメタバースを横断した新しい保険の開発を目指します。

 

また、GDHの開設だけでなく、今年の8月13日から28日までの16日間開催される「バーチャルマーケット2022」に出展し、新しい時代の到来に向けて保険のイメージを一新するブースを企画しています。

 

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④損保ジャパン:ANAと提携しメタバース上での実証実験

損保ジャパン:ANAと提携しメタバース上での実証実験
(画像:損保ジャパン)

損害保険会社大手の損保ジャパンと航空会社ANAホールディングスグループのANA NEOが提携を発表しました。ANA NEOが開発中の新たなメタバース空間である「SKY WHALE」上で損保ジャパンの保険商品開発やリスクマネジメントのノウハウを活用し、メタバースにおける新たな保険商品開発やサービスに関する可能性を実証するとのこと。

 
ANA NEOのメタバースはANAマイレージ会員約3,400万人、国際線・国内線搭乗者の5,442万人を取り入れることで国内最大規模のメタバース基盤となる予定で、大規模な基盤を活用し、保険会社が実証実験を行うケースは世界初となる取り組みです。

 

実証実験の内容としては保険とリスクマネジメントを中心に、様々なケースの検証を行う予定で、これまでの保険のあり方やデジタルアセットの活用を踏まえ、契約・加入プロセス、商品設計、契約保全について深く検討していく予定とのこと。

 
Web3.0型志向の保険会社として、急速に変化するデジタル社会に参加するためのプラットフォームの構築と商品開発を目指します。具体的には新たな保険商品開発に関する市場性・事業性の検証や各種取引等に関するリスク実態の検証、メタバース上での各種データ分析、有用性等の検証を検証項目として掲げています。

 
また、メタバースならではのビジネス構築に向けデジタルアイテムとデジタルコンテンツに関する商取引やメタバースでのUXをカバーする保険、Web3.0型のビジネスモデル(ウォレットやNFT取引、越境)の関連領域についても検証が行われる予定です。

⑤あいおいニッセイ同和損保:メタバース向けの保険商品開発を目指す

あいおいニッセイ同和損保:メタバース向けの保険商品開発を目指す
(画像:あいおいニッセイ同和損保)

あいおいニッセイ同和損保は、メタバースにおけるリスクに対応する新たな保険商品開発に向け、アバターやメタバース空間の開発に取り組むことを発表しました。メタバースにおけるリスクの把握・分析を行うため、まずは自社でメタバース内で様々な取り組みを行い知見を蓄積する狙いがあると見られます。

 

具体的には、社長のアバターを作成し社内外のコミュニケーションで活用したり、社員間・取引先間のコミュニケーションをメタバース空間を活用するなどの取り組みを進める予定です。

⑥明治安田生命:クラスタ―上にバーチャルスタジアムを開設

明治安田生命:クラスタ―上にバーチャルスタジアムを開設
(画像:明治安田生命)

明治安田生命は、日本最大のメタバースプラットフォームであるクラスター上に、Jリーグのスタジアムをモチーフとしたバーチャルスタジアムを開設しました。

スタジアムでは、バーチャル上で健康や保険の知識を学べるクイズやゲーム、また、パートナーとなっているJリーグの試合映像配信などの様々なコンテンツを他ユーザーと共に楽しむことができます。

 

明治安田生命は、コロナウイルス感染拡大の影響により、需要が拡大する非対面コンテンツとして、メタバースの活用を推進しているとのことです。

 

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⑦oVice:「メタバース保険」の事前予約を開始

oVice:「メタバース保険」の事前予約を開始
(画像:oVice)

リモートワークに活用できるメタバース空間である「メタバースオフィス」サービスを提供するoViceは、仕事で利用するチャットツールのトラブル発生時や大規模な自然災害発生時に、自社の運営するメタバースオフィスをサービスを無料で利用できる「メタバース保険」の事前予約を開始しました。料金は月額980円となっています。

 

2022年7月に他社サービスの大規模障害が発生した際に「oViceがあったおかげで問題なくコミュニケーションできた」、「バックアップとしてoViceを利用していて良かった」の声が寄せられたことから、メタバース保険の提供に踏み切ったとコメントしています。

アドバンスクリエイト:保険相談にアバターを活用

アドバンスクリエイト:保険相談にアバターを活用
(画像:アドバンスクリエイト)

国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を手がける株式会社アドバンスクリエイトは、アバター事業を展開するAVITA株式会社と提携し、アバターによる保険相談を開始しています。アバターによる問い合わせ対応や保険相談サービスを開始して以降、アバターによる保険相談アポ獲得率は電話に比べて2倍超になり、オンライン保健相談におけるコンサルタント指名予約においてにアバターが最も支持されるなど、アバターの活用はサイト利用者からも支持されています。

損保ジャパン:ジャパンメタバース経済圏におけるリスク分析および保険開発

損保ジャパン:ジャパンメタバース経済圏におけるリスク分析および保険開発
(画像:TBT lab)

損保ジャパンは、オープン・メタバース基盤「リュウグウコク(仮)」を活用した異なるメタバースサービス間およびメタバース・プラットフォーム間の相互運用によって形成されるエコシステムである「ジャパンメタバース経済圏」の創出に向け基本合意書を締結しました。

 

「リュウグウコク(仮)」とは、損保ジャパンを含んだ10社が構築するTBT labグループのJP GAMESが手掛けるメタバース構築フレームワーク「PEGASAS WORLD KIT」を用いたBtoB向けのオープンメタバース基盤です。本計画において同社はメタバースを含むWeb3時代に向けたリスク分析および保険開発を行う予定です。

 

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あいおいニッセイ同和損保:独自のメタバース空間を作成

あいおいニッセイ同和損保:独自のメタバース空間を作成
(画像:NEIGHBOR )

あいおいニッセイ同和損保は、フォートナイト上にメタバース空間を作成する株式会社NEIGHBOR JAPANとメタバース空間を共同制作しました。このメタバース空間は、サイバーパンク風の世界観を構築しており、世界を管理しているサーバーが不具合を起こし崩壊しつつある世界で、主人公が世界の終わりを止めるべく立ち上がるといった内容になっています。

 

今回の共同制作は、あいおいニッセイ同和損保が2022年12月から推進しているフォートナイト上で様々なゲームを提供する取り組みの一つです。メタバース上での新たな経済圏の創出や、防災などの社会課題を啓蒙することを目的としています。NEIGHBORはあいおいニッセイ同和損保がメタバース上で発生するリスクのノウハウを蓄積し、ユーザーとの新たな接点を構築することをサポートします。

楽天生命:バーチャルマーケットに出店

楽天生命:バーチャルマーケットに出店
(画像:楽天)

楽天生命は生命保険業界で初めて世界最大級のバーチャルマーケット「バーチャルマーケット2022 Winter」に出店しました。企業出店会場の一つ「パラリアル名古屋」にフィットネスジムをモチーフとした特別ブースを出店しました。健康増進をコンセプトに、トレーニング機材に触れて遊びながら、ポップアップ内で保険についての知識を学ぶことができます。今回の取り組みは、若年層のユーザーに同社への関心を高め、新たな形の接点を作ることを目的としています。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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