メタバースはまた失敗に終わってしまうのか?展望と普及のカギも解説
FacebookのMetaへの社名変更をきっかけに、国内外の大手企業が相次いで参入を発表するなど、世界中から注目を集めるメタバース。
一方で、「メタバースの歴史や現在地を知りたい」、「今後、本当に普及していくのか気になる」という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、メタバースの歴史から現在地、今後の展望までをわかりやすく解説します。
本記事を読めば、近年メタバースが大きく注目を集める理由や今後の市場動向を効率良く理解できると思いますので、ぜひ最後までご一読ください.
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目次
メタバースの過去:失敗とMeta社による巨額投資
メタバースが大きく注目を集めるようになったのは、2021年末のMeta社の社名変更がきっかけですが、それ以前からメタバースの概念やメタバースサービスは存在していました。その中でも代表的なものを紹介します。
①1992年:SF小説「スノウ・クラッシュ」で初めて概念として登場
世界で初めて「メタバース」という言葉が使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。メタバースの語源は「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」から来ているとされています。
②2003年:世界初のメタバース空間「セカンドライフ」がリリース
世界初のメタバース空間は、リンデンラボ社が発表した「セカンドライフ」だと考えられています。セカンドライフでユーザーは他のユーザーと交流できるほか、アバターが使えるアイテムに似た仮想資産を作り、セカンドライフ上で使用される仮想通貨「リンデンドル」で仮想資産の売買ができるようになりました。「リンデンドル」は法定通貨で購入することができるため、世界で初めて仮想空間上で経済活動が行われた事例といえます。
③2021年:フェイスブックがメタ・プラットフォームズに社名変更
2021年末、フェイスブックは社名をメタ・プラットフォームズに変更し、今後同社の主力事業としてメタバースに注力していくことを対外的にアピールしました。
同時期に、今後メタバース関連デバイスやサービスの開発のため、年間約1兆円の投資を行う事を発表しました。
この社名変更をきっかけに、世界中にメタバースのコンセプトが認知され、多くの企業がメタバース領域への参入するきっかけとなりました。
メタバースの現在:市場規模と注目される理由
メタバースの海外市場規模
Bloomberg社によると、世界のメタバースの市場規模は2020年時点で約68兆円、2024年には約111兆円にまで成長すると予想されています。
その中でもゲーム関連のメタバース市場の内訳としては上図となっており、ゲーム向けのソフトウェアとサービスが最も大きな割合を占めることになると考えられています。
メタバースの国内市場規模
矢野経済研究所によると、日本国内のメタバースの市場規模は2021年度時点で約744億円、2026年度には約1兆円にまで成長すると予想されています。世界市場と同様急速な成長を見せると考えられ、年率成長率は約170%程度になると予測されています。
現在メタバースに注目が集まる6つの理由
近年メタバースに注目が集まる理由として主に以下の6つが挙げられます。
- ①AppleやMetaなどのビックテックの本格参入・巨額投資
- ②関連技術の大幅な進歩とデバイスの低価格化
- ③コロナによるリモートコミュニケーションの普及
- ④若年層を中心とするユーザー数の増加
- ⑤仮想世界に対する人々の意識の変化
- ⑥メタバース市場の成長性の高さ
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①AppleやMetaなどのビックテックの本格参入・巨額投資
1つ目の理由は、AppleやMetaなどのビッグテックが本格参入し、巨額の投資を行っていることです。例えば、Meta社は、2021年末にFacebookからMetaへ社名変更し、合わせて、メタバース領域に年間約1兆円規模の投資を行うことを発表しました。また、Appleは、2023年6月に、ゴーグル型XRヘッドセットデバイスであるApple Vision Proを発表するなどメタバース関連のデバイスの開発に力を注いでいます。
世界を代表するテック企業であるAppleやMeta社が多額の投資をしてまで、メタバースに注力していることは、メタバースには大きな可能性があるということを物語っています。
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②関連技術の大幅な進歩とデバイスの低価格化
2つ目の理由は、メタバース関連技術の進歩です。メタバースは様々な領域のテクノロジーによって構成されているサービスですが、特に近年のテクノロジーの発展により体験価値が大きく向上しています。
具体的には通信技術の向上やコンピューターの処理性能の向上、メタバース向けデバイスの登場などが挙げられ、セカンドライフが登場した2000年代前半時点と比べると、メタバース空間内での体験をよりスムーズに、より没入感のある形で楽しむことができるようになりました。
このようにメタバースがオワコンであるといわれる理由の一つである通信速度の遅さという技術的な制約は、大幅に改善され、今後もさらに進化していくことが期待できます。
③コロナによるリモートコミュニケーションの普及
3つ目の理由は、コロナによるリモートコミュニケーションの普及です。コロナウイルス感染拡大の影響で、人々のコミュニケーションの機会が対面からリモートに移行し、プライベートはもちろん仕事上でのコミュニケーションも、SlackなどのチャットやZOOMなどのビデオ会話によって行われるのが当たり前の時代となりました。
デジタルを介したコミュニケーションの需要が拡大しているのはもちろん、人々が抵抗感なくデジタルコミュニケーションを利用するようになっているというのが非常に大きなポイントといえます。
④若年層を中心とするユーザー数の増加
4つ目の理由は、若年層を中心とするユーザー数の増加です。現在メタバースは、特にオンラインゲームでの用途を中心に若年層のユーザー数が急増しています。背景として、若年層は子供の頃から日常的にスマホを利用していること、コミュニケーションの手段としてSNSではなく、オンラインゲーム上のコミュニケーション機能を利用するシーンが増えていることなどが挙げられます。
ゲーム型メタバースの代表的なサービスとして挙げられる、フォートナイトが約5億人、ロブロックスが約2億人と圧倒的なユーザー数を誇ります。
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⑤仮想世界に対する人々の意識の変化
5つ目の理由は、仮想世界に対する人々の意識の変化です。かつては、仮想世界に時間を費やすのはおかしなことで、一部の変わった人がするものだという風潮がありました。
ところが、コロナのロックダウンで自宅に閉じ込められた結果、多くの人がフォートナイトやロブロックスなどの仮想世界のゲームに参加し、大いに楽しむようになりました。
ゲームだけでなく、バーチャルなイベントに参加したり、離れた場所にいる人と会話したりするためにメタバースを利用する人も増えたことで、仮想世界に対する人々の見方が変わり、かつてあったような偏見があまり見られなくなったと考えられます。
⑥メタバース市場の成長性の高さ
6つ目の理由は、メタバース市場の成長性の高さです。メタバース市場は国内・海外ともに今後大きな成長を見せると考えられています。
世界のメタバースの市場規模は2020年時点で約68兆円、2024年には約111兆円。日本国内のメタバースの市場規模は2021年度時点で約744億円、その後年率170%で成長し、2026年度には約1兆円にまで成長すると予想されています。
メタバースの未来:今後の展望と普及へのカギ
メタバース市場は、今はまだ黎明期にあり、2040年ごろにかけて「黎明期」「普及期」「定着期」の3つのフェーズを経て発展していくと考えられています。
➀黎明期(~2025年):一般ユーザーにメタバースの認知が広まる
現在〜2025年までのメタバース黎明期は、メタバースを構成する技術要素の進化と社会的なニーズの高まりを機に、多くの一般ユーザーがメタバースに興味を示し始めます。
それに伴い多くの企業がメタバース市場への参入を始めます。具体的には技術の発展により、VRデバイスの低価格や小型化が進み、一般ユーザーでも利用しやすいデバイスになること、新型コロナウイルスの流行により、リモートコミュニケーションの需要が高まることなどにより、メタバースが大きく発展する準備が整うフェーズと言えます。
一方で、メインのユーザー層はVRゲームを目的とするコアユーザーであり、市場としてもデバイスやゲームタイトルが中心となっています。
②普及期(2025~2030年):メタバースが一気に人々の生活に普及
2025~2030年のメタバース普及期は、要素技術の更なる発展と、メタバース上で提供されるサービスの充実により、メタバースが一気に人々の生活に普及し始めます。
この頃にはVR/ARデバイスはかなり小型化・軽量化され、長時間装着することが可能になっており、現代におけるスマホのような感覚で、幅広い活動をメタバース上で行うようになっていきます。
人々がメタバースで過ごす時間が長くなるにつれ、メタバース空間上のデジタルアセット(アバターやアバターの洋服など)がより価値を持ったり、メタバース上のメディアやSNSの広告がより価値を持っていくと考えられます。
③定着期(2030年~):多くの人々が当たり前にメタバース空間で活動
2030年以降のメタバース定着期は、要素技術が一通り成熟し、人々がメタバース空間にアクセスする上での課題は解決され、老若男女問わず多くの人々が当たり前にメタバース空間で活動するようになると考えられています。
現代のスマホのように、あらゆる領域のサービスにアクセスするベースとなる存在に発展しており、消費者向けのサービスの充実はもちろん、多くの企業の業務プロセスにメタバースが取り込まれていくと考えられます。
具体的には、企業の教育研修がメタバースを通じて行われたり、製造業のバリューチェン全体がメタバース上に構築され、各種シミュレーションや現場の作業員のサポートにも活用されるなど、仕事でもメタバースを活用することがごく自然に行われるようになっていくでしょう。
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メタバース普及に向けた8つのカギ
これまで紹介したようにメタバース普及の土台は固まりつつある一方で、今後大きく普及していくためには様々なドライバーが存在します。
その中から特に重要な8つのポイントを技術、社会、経済、政治の4つの観点から整理しましたので、それぞれについて分かりやすく解説していきます。
技術的観点
①VR/ARデバイスの性能・UXの向上
1つ目のポイントは、VR/ARデバイスの性能・UXの向上です。Meta Questを筆頭とするVRゴーグルやARグラスなどのデバイスが、いつ小型化・軽量化を実現するかはメタバース普及に向けた最大のカギです。現在のMeta QuestなどのVRゴーグルは10年ほど前から比べれば遥かに小型化・軽量化が進んでいますが、長時間装着するには身体への負担が大きいというのが現状です。
逆に、デバイスがサングラスのような重量とサイズ感に進化すれば、日常生活のほぼすべての時間、デバイスを装着しリアルとバーチャルが融合された、SFのような世界に一気に近づいていくでしょう。
②ハードウェア・ソフトウェアの標準化
2つ目のポイントは、ハードウェア・ソフトウェアの標準化です。メタバース関連デバイス・サービスの仕様がバラバラだと、利用・操作方法が異なる、アバターなどのデジタルアセットを他社の運営するメタバースに持ち込めないなど、様々な問題が発生します。
現状、メタバース関連デバイス・サービスを提供する各企業毎に仕様が異なっているものの、アバターではVRMというプラットフォームに依存しない規格が存在するなど、関連企業や団体が足並みを揃えるべく動いています。
社会的観点
③マス層に受けるヒットコンテンツの登場
3つ目のポイントは、ヒットコンテンツの登場です。現状の有力なメタバース上のサービスやコンテンツはVRゲームが大部分を占めており、若年層が中心のゲーム好き以外の一般層には、日々利用したくなるようなサービスが少ないというのが現状です。
そこで、ゲーム以外のコミュニケーションやエンタメ、仕事などの領域で多くの人々を魅了するヒットコンテンツが登場すれば、それを機に一気にメタバースが普及していくと考えられています。スマホの例で考えれば、LINEやパズドラなどのヒットコンテンツの登場がデバイスの普及に大きく貢献しています。
④アバターを介したコミュニケーションの定着
4つ目のポイントは、メタバースを介したコミュニケーションの定着です。メタバース普及に向けては、メタバース上の自分の分身であるアバターの姿で他のユーザーとコミュニケーションを取ることがどの程度定着するかが重要と考えられています。多くのユーザーがアバター姿の他ユーザーと話す際に、まるで本人と対面して話しているような感覚を得るようになれば、多くのリモートコミュニケーションがメタバースを通じたコミュニケーションに代替されていくと考えられています。
既に、Vtuberが世間的に流行したり、iPhoneに「ミー文字」と呼ばれる自分のオリジナルアバターで表情を送ることが出来る機能が搭載されるなど、アバターを介したコミュニケーションの定着の土台は整い始めていると言えるでしょう。
⑤メタバース関連人材の育成
5つ目のポイントは、メタバース関連人材の育成です。メタバース市場の成長には、メタバースを裏から支えるエンジニアや、メタバース上のコンテンツを作成するクリエイター、メタバースのビジネス活用を推進するBizDevなど、様々な人材が必要となります。
そのなかでも特に重要と考えられているのがメタバース上のコンテンツを作成するクリエイターです。メタバースの体験価値はメタバース上に集まるユーザー数とそれを惹きつける魅力的なコンテンツ数で大半が決まると言っても過言ではありません。そこでメタバース上で人々を魅了する3Dコンテンツを作成できるクリエイターをどの程度育成できるかは、メタバースの普及に向けて重要なカギとなります。
例えば、代表的なメタバースの1つであるRobloxは、ゲーム版のYoutubeと称されるように、ユーザーが制作したゲームタイトルによって構成されており、UGC(User Generated Contents)活用に成功し、約2億人に利用されるほどの成長を遂げました。既に、海外ではMetaやMicrosoft、国内ではPhychic VR Labなどの企業がクリエイター育成に向けた投資やプログラムの運営に取り組んでおり、今後多くのクリエイターの育成が進んでいくと考えられています。
経済的観点
⑥VR/ARデバイスの低価格化
6つ目のポイントは、VR/ARデバイスの低価格化です。法人向けデバイスとしてはマイクロソフト社の販売するHoloLens2の価格が本体のみで30万円以上、一般消費者向けのものも、Meta社の販売するMetaQuest2の価格がが2022年10月時点での価格は約6万円と、近年VRHMDを中心に低価格化は進みつつあるものの決して誰でも手に取れる価格とは言えません。一部報道によると、MetaQuest2はほぼコストと同等の価格で販売しているとも言われており、今後ビックテックを中心にどのように原材料費などのコスト削減を進めるかに注目が集まります。
⑦企業によるマネタイズ
7つ目のポイントは、企業によるマネタイズです。現在Meta社などのビックテックから、国内の幅広い産業のリーディングカンパニーまで、多くの企業がメタバースのビジネス活用に向けた積極的な投資を行っています。その理由として、収益向上に繋がる様々な活用が考えられていることがあり、具体的にはメタバース領域でのビジネス創出や作業現場の効率化、各種シミュレーションへの活用等があります。
一方で、メタバースは技術として黎明期のステータスにあり、現時点で既に大きな収益化に結びつけられている企業は多くはないのが現状です。そのため、企業が中長期的な収益獲得に繋がるビジネスモデルやエコシステムの確立に成功した事例が立ち上がる度に、各企業のメタバースへの投資が加速し、市場全体の発展に大きく貢献すると考えられます。
政治的観点
⑧メタバース・NFTに関する法整備
8つ目のポイントは、メタバースやNFTに関連する法律整備です。現在、日本政府はWeb3を日本の成長産業の1つとして掲げ、Web3.0政策推進室を設置するなど、産業の発展に積極的な動きを見せています。一方で、メタバース・NFT関連の法律はいまだ整備がなされておらず、企業・個人間でのトラブルに繋がるリスクが存在します。例えば、NFT関連事業者に関する課税制度やデジタルアセット等の所有権、嫌がらせ・誹謗中傷への対処、写り込みの問題など様々な法整備が進んでいないのが現状です。
※参照:経済産業省-経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性
メタバースのビジネス活用による6つのビジネスチャンス
メタバースのビジネス活用によるビジネスチャンスは主に以下の6つです。
- ①独自のユーザー向けメタバース空間/サービスの構築
- ②オンラインショッピングへの活用
- ③プロモーションへの活用
- ④メタバースイベントへの出展
- ⑤独自の業務効率化向けメタバース空間/サービスの構築
- ⑥リモートワークへの活用
それぞれを代表的な事例とともにわかりやすく解説していきます。
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①独自のユーザー向けメタバース空間/サービスの構築
1つ目は独自のユーザー向けメタバース空間/サービスの構築です。ユーザーに対し、現実に存在するもの/しないものを含め、仮想空間上に3Dの世界を構築することができるというメタバースならではの特徴を活かし、ユニークな体験を提供することができます。
企業のメリットとしては、構築したメタバース空間/サービスに既存顧客を集め、新たなサービスを提供することで収益源としたり、既存顧客とは異なる新たな顧客層に対し、既存のビジネスを提供するためのマーケティングに活用するなど様々な形での収益獲得の機会を創出することができます。
活用事例として、バンダイナムコ社が構想を発表した「ガンダムメタバース」が挙げられます。バンダイナムコグループは、2022年4月から掲げる中期ビジョン「Connect with Fans」の重点戦略の1つとして、IPでファンとつながる「IPメタバース」を設定しました。これは、メタバースを介して、バンダイナムコグループとファンのコミュニティを作る仕組みで、その第1弾がガンダムメタバースです。先日のガンダムカンファレンスで流れたイメージ映像では、メタバース上に世界中のガンダムファンが集い、語り合ったり、ライブイベントに参加したりする様子が描かれていました。
今後はバンダイナムコグループ以外の企業によるガンダムビジネスへの参入促進やガンダムファンがガンダムを活用したビジネスができる場の提供を目指して事業展開を行っていく予定とのことです。
②オンラインショッピングへの活用
2つ目はオンラインショッピングへの活用です。メタバースの特徴を活かし、従来のECでは実現できなかった、実店舗さながらの購買体験を提供することができます。例えば、商品のイメージを3Dで立体的に確認できたり、店舗スタッフや同行者とボイスチャットで会話しながら買い物を楽しんだりすることができます。
企業のメリットとしては、コロナ禍でより実店舗での商品販売が伸び悩むなか、メタバースの特徴を活かすことで、EC化に苦戦していた商品のオンライン化を推し進めることができます。
活用事例として、三越伊勢丹が提供するメタバース上の百貨店「REV WORLDS」が挙げられます。三越伊勢丹は、独自のメタバース上の仮想都市である「レヴ ワールズ」を構築し、専用アプリから提供しています。利用者はアバターを登録し、デジタル空間の「バーチャル伊勢丹」での買い物を楽しむことができます。店員のアバターも配置され、チャット機能を使った接客も受けられます。
現在は婦人服や食品など180ブランドを扱っていますが、今後は家具や日用品にも対象を広げる方針です。友人のアバターと一緒に会話しながら買い物できるようにするなど機能も強化する予定です。
他社がメタバース上で開催されるイベントへの出展が中心のなか、三越伊勢丹は既に独自のメタバース空間を構築・提供しており、百貨店業界のメタバース活用をリードする存在といえます。
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③プロモーションへの活用
3つ目はプロモーションへの活用です。メタバースは従来のWebページや動画と比べ伝えられる情報がリッチであるため、ユーザーを惹きつけやすく、幅広い業種でのプロモーションへの活用が進んでいます。
企業のメリットとしては、コロナ禍でより実店舗でのプロモーションが制限されるなか、メタバースの特徴を活かすことで、従来はオンラインでのプロモーションが難しかった商品やサービスを訴求することができます。
活用事例として、日産自動車が行ったメタバース上での新車の発表・試乗会が挙げられます。2022年5月に日産自動車はメタバース上で、新型軽電気自動車「日産サクラ」の発表・試乗会を開催しました。イベントは参加者は世界最大のVR SNSプラットフォーム「VRChat」で開催されました。
試乗会では日本の四季を感じられるドライブコースでバーチャルなサクラを運転することができました。自分で運転席に座って運転したり、後部座席に座ってみたりと、現実の試乗さながらの体験ができ、新車の特徴を確認することができます。メタバース上での試乗は通常の試乗とは違い、書類での手続きなども不要で、いつでもどこからでも体験可能なのが強みです。
④メタバースイベントへの出展
4つ目はメタバースイベントへの出展です。メタバースはアバターを通じ、チャットやボイスチャットでの人々とのコミュニケーションができることが最大の魅力の1つであり、その特徴を活かし、メタバース上で様々な大規模なイベントが開催されています。それらのイベントは個人・企業がブースを出展することができ、多くのユーザーの来場を期待できます。
企業のメリットとしては、既存の顧客とは異なる新たな顧客層にリーチができたり、メタバースイベント上でのリアル/バーチャルな商品の販売により収益を得ることができたりします。
活用事例として、世界最大のメタバースイベントである「バーチャルマーケット」への出展が挙げられます。バーチャルマーケット(Virtual Market)とは、メタバース上で開催される世界最大規模のオンラインイベントです。参加者はメタバース上の企業やクリエイターが出店しているブースにて、アバターなどの3Dデータ商品やリアルの商品(食品、PC、洋服など)を購入することができます。
同イベントには、Meta Questなどのヘッドマウントディスプレイはもちろん、PCやスマホのブラウザからでも簡単に参加が可能です。同イベントは株式会社VR法人HIKKYによって2018年から開催されており、2022年夏の開催で8回目を迎えます。2021年に開催されたバーチャルマーケット6では、73社の出店企業と100万人を超える来場者数を記録し、世界最大のVRイベントとして、ギネス世界記録にも認定されました。
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⑤独自の業務効率化向けメタバース空間/サービスの構築
5つ目は独自の業務効率化向けメタバース空間/サービスの構築です。メタバースの特徴である3Dでの情報の表示により、現場の作業員の作業をサポートする情報をグラス上に表示したり、現状存在しない施設や設備を設計し、シミュレーションを行うことで、最適な製造ラインや運用方法を特定するなどの活用ができます。
企業のメリットとしては、現場レベルの作業効率改善のみならず、バリューチェーン上の開発→生産→販売→アフターサービスの全てのプロセスの業務効率化を図ることができます。
活用事例として、川崎重工が取り組む工場の生産ラインのメタバース化が挙げられます。2022年5月、川崎重工業はマイクロソフトのカンファレンス「Build2022」で、工場全体をメタバース化する「インダストリアルメタバース」の構築に取り組むと発表しました。
この取り組みにより、工場内の全工程を仮想空間に再現できるデジタルツインを構築し、離れた場所にいる人が各工程の状況を確認したり、操作したりできるようにすることを目指しているそうです。同社は、マイクロソフトのIoTクラウド/IoTマネジメントソリューション、MRデバイス「HoloLens 2」、エッジAIソリューション「Azure Percept」により、複数の拠点で同時に、遠隔地の専門家からリアルタイムにアドバイスや支援を受けられるようにしました。これにより、ロボットの故障への迅速な対応、トラブルを未然に防ぐ予知保全が可能になります。
⑥リモートワークへの活用
6つ目はリモートワークへの活用です。メタバース上のオフィス空間に集まり、アバターの姿で一緒に働くことで、まるでリアルのオフィスに出社して働いているような体験を提供することができます。
企業のメリットとしては、コロナ禍で多くの企業がリモートワークへの移行を進めるなか、リモートワークでの課題となっていた、リモートでのコミュニケーションの難しさや共同での議論や作業の難しさを解消することができます。
活用事例として、Meta社の提供するバーチャル会議室サービス「Horizon Workrooms」が挙げられます。Horizon Workroomsはどこにいても、同僚とより良く一緒に仕事をすることを目的としており、アバターとしてVR空間で会議に参加したり、パソコンのビデオ通話でバーチャルルームにダイヤルインしたりすることができます。Horizon WorkroomsはMeta社が提供しているため、今後ユーザー数が大きく伸びると予想されるメタバースのオフィスの一つです。
メタバースのビジネス活用を成功させる5つの方法
メタバースのビジネス活用を成功させる方法として以下の5つが挙げられます。
- ①実際にメタバースに触れ理解の解像度を高める
- ②市場/競合の動向や事例をキャッチアップする
- ③メタバース活用の目的や課題の明確にする
- ④不足するケイパビリティやリソースを補完する
- ⑤プロジェクトをアジャイルに推進する
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
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①実際にメタバースに触れ理解の解像度を高める
メタバースのことを理解するには、メタバースを体験してみるのが一番です。
メタバースに触れることで、その魅力や現時点でできること/できないことの理解の解像度が一気に高まります。
一方で、メタバースのビジネス活用を検討されている担当者の方のなかにも、「実はメタバースを体験したことが無い」という方がまだまだいらっしゃる印象です。
もしまだ体験されていない方は、手軽に試したい場合はスマホやPCから、できればMetaQuestなどのデバイスを使用して体験してみるとメタバースの最大の魅力の1つである没入感を体感できます。
また、初心者の方におススメのメタバースサービスとしては、日本最大のSNS型メタバースである「Cluster」や世界最大のゲーム型メタバース「Roblox」などが挙げられ、どちらもスマホのアプリストアから簡単にダウンロードし、無料で利用できます。
②市場/競合の動向やナレッジをキャッチアップする
メタバースの活用を検討する企業の担当者の方はテクノロジー、ユーザー、ビジネス戦略の観点から多岐にわたる情報をキャッチアップする必要があります。
近年メタバース市場は大きな成長を見せており、関連テクノロジーの進化や幅広い業界の企業の参入、様々なビジネス活用向けサービス・ツールのリリースなど、日々大きな動きを見せています。
このように刻々と変化する国内外の市場/競合の動向や事例、ナレッジのキャッチアップ・分析が、成果に繋がるメタバース活用の前提となります。
③メタバース活用の目的や課題の明確にする
メタバースは今後大きな市場成長が予想される領域であり、国内外の幅広い業界の企業が参入を発表したり、活用に向けたサービスやツールなども多数登場しています。
そのため、「競合が参入しているからウチも参入してみよう」、「面白そうなツールがあるから導入してみよう」といった、打ち手ベースの検討に留まってしまう傾向にあります。
一方で、メタバースのビジネス活用といっても、目的やユースケース、活用し得るツール/サービスは様々です。
そのため、「そもそも自社のどのような課題を解決したいのか」、「課題解決の方法としてメタバース活用が適しているのか?」といった上流工程の検討をしっかりと行うことが重要です。
④不足するケイパビリティやリソースを補完する
企業でのメタバース活用は、プロジェクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、メタバースのエキスパートなど様々な能力をもった人材を必要とします。一方で、新規のプロジェクトでこのような人材を十分に確保できることは稀です。
また、プロジェクトで成功を収めるためには、プロジェクトの立ち上げだけでなく、中長期的にプロジェクトを推進し、仮説検証を回し続けることが重要です。
そのため、不足するケイパビリティやリソースをメタバースコンサルや開発ベンダーなどの活用により補完することが有効となります。
⑤プロジェクトをアジャイルに推進する
メタバース市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、活用法を模索している段階にあります。
そのため、計画と実行のプロセスをアジャイルに回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないための重要なポイントです。
費用対効果・実現性が高いメタバース活用方法
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