Facebook改めMetaがメタバースに社運を賭けるワケとは?
2021年末のFacebookのMetaへの社名変更は、世界的なニュースとなり、メタバースが世間から注目を集めるきっかけとなりました。Meta社は、年間約1兆円超をメタバース領域に投資することを発表するほど、メタバース領域での事業展開に本気です。
一方で、Metaがメタバース事業に取り組んでいることは知っているものの、「Metaがそこまで本気で注力する理由/背景までは知らない」「戦略や展開している事業をキャッチアップしておきたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はMeta社がメタバースに社運を賭ける5つの理由や戦略、展開する事業について分かりやすく紹介します。
本記事を読めば、メタバース市場の発展を担うキープレイヤーであるMeta社の動向や市場の展望ついて理解を深められると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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Metaがメタバースに社運を賭ける5つの理由
Facebook改めMetaがメタバースに社運を賭ける理由として主に以下の5つが挙げられます。
- ①メタバース市場の魅力度の高さ
- ②メタバース市場での勝算の高さ
- ③ザッカーバーグ氏のメタバースへの想い入れの強さ
- ④Facebook等の既存事業の行き詰まり
- ⑤他社プラットフォーム依存からの脱却
それぞれの理由について分かりやすく解説していきます。
①メタバース市場の魅力度の高さ
1つ目の理由は、メタバース市場の魅力度の高さです。メタバース市場は世界的に今後大きな成長を見せると考えられています。世界のメタバースの市場規模は2020年時点で約68兆円、2024年には約111兆円。日本国内のメタバースの市場規模は2021年度時点で約744億円、その後年率170%で成長し、2026年度には約1兆円にまで成長すると予想されています。近年の市場成長の要因は、MetaQuestを始めとするVRデバイスの低価格化・小型化が進んでいることや、FortniteやRobloxなどのゲームを中心とするヒットコンテンツの登場が相次いでいることなどが挙げられます。
②メタバース市場での勝算の高さ
2つ目の理由はMetaのメタバース市場での勝算の高さです。既にMeta社はデバイス、ユーザー基盤、コンテンツなど、様々な面において競合優位性を構築しています。
デバイスに関しては、展開するVRヘッドセットのMeta Questシリーズが業界シェア40〜50%を誇るなど、圧倒的な優位性を構築しています。Meta Quest2は累計販売台数1400万台を突破するなど、世界的に大ヒットを記録しています。
また、ユーザー基盤に関しても、Facebookやinstagramなどの各オンラインサービスユーザーの合計は月間30億人、1日に20億人とも言われています。
このように、Metaはメタバース市場での競争を制する、さらに言えばメタバース市場を押し広げることの期待される業界のリーディングカンパニーなのです。
③ザッカーバーグ氏のメタバースへの想い入れの強さ
3つ目の理由は、Metaの創業者でありCEOのザッカーバーグ氏のメタバースへの想い入れの強さです。
ザッカーバーグ氏は近い将来、人々の生活にメタバースが普及する未来を誰よりも信じ、多数の企業買収など多額の投資を続けています。
ザッカーバーグ氏はMetaConnect2022の講演にて、Meta社が提供する主要サービスが「人と人を繋ぐ」ことに重点をおいていることを強調しました。Meta社がFacebookやinstagram等のSNSを通じて人々の繋がりをサポートしてきたのと同様、近い将来メタバースがその役割を担うと期待しているはずです。
④Facebook等の主力事業の行き詰まり
4つ目の理由は、Facebook等の主力事業の行き詰まりです。現在Meta社の主力事業であるFacebookはユーザー数33億人を誇っており、世界最大のSNSの1つとなっています。
一方で、主に以下の3つの理由から、Facebook事業は今後の大きな成長は期待できないと言われています。
- 新規のユーザーの伸びしろが限定的
- 競合サービスの台頭による若者のFacebook離れ
- 個人情報保護の強化による広告事業への影響
それぞれの理由について分かりやすく説明していきます。
新規のユーザーの伸びしろが限定的
1つ目の理由は、既に中国を除いて33億人のユーザーを抱えており、新規のユーザーの伸びしろが限定的という点があります。Facebookのマネタイズポイントは依然として広告が中心であり、収益の成長はユーザー数の成長とほぼ比例関係にあることから、ユーザーの伸びしろが少ないことは、大きなインパクトがあると言えます。
競合サービスの台頭による若者のFacebook離れ
2つ目の理由は、競合サービスの台頭による若者のFacebook離れが進んでいるという点です。中国初の単発動画投稿アプリの「Tiktok」や米国発の動画共有アプリ「Snapchat」などの競合SNSにユーザー数を奪われています。さらに近年では、若者は「Fortnite」や「Roblox」などのオンラインゲームもチャットや音声会話でのコミュニケーションの場となっており、新たな競合となっています。これらの競合サービスの台頭により、Facebookはもはや「おじさん世代向けのアプリ」という認識が広まりつつあります。実際に、2021年末にFacebookはサービスリリース以来、初のユーザー減を記録しています。
個人情報保護の強化による広告事業への影響
3つ目の理由は、近年Appleを中心に個人情報保護の強化が進んでおり、広告事業に大きな影響が出ているという点があります。2022年よりAppleは、ユーザーへのターゲティング広告を配信する際に、ポップアップ画面を表示しユーザーに許可を求めることを義務づけています。この新ルールを導入すると一定の利用者が個人情報の追跡を拒否され、ターゲティング広告の精度が下がり、広告出稿者の費用対効果が低下、ひいては広告単価の低下につながると考えられます。そのため、広告収入が収益の大部分を占めるMeta社からすると、大きなインパクトがあると言えます。
これらの理由により、Meta社はFacebookの次なる収益の柱となる事業の構築を目指しており、この筆頭候補としてメタバースに狙いを定めているのです。
⑤他社プラットフォーム依存からの脱却
5つ目の理由は、他社プラットフォーム依存からの脱却です。Meta社の主力事業であるFacebookやinstagramは、AppleやGoogleなどのプラットフォームに大きく依存しているという課題を抱えています。Facebookやinstagramは、AppleやGoogleの提供するアプリストアからダウンロードされ、各社の提供するスマホ上で利用されます。そのため、ユーザーからの課金に対して30%程度の高額の手数料が徴収されたり、
AppleやGoogleらの意向次第では、サービス提供すらままならない不利な立場にあるのです。実際に、FortniteとAppleがApple側の課金手数料の高さなどを理由に、闘争となり、Appleのプラットフォームから排除されたという事例もあり、Facebookも他社プラットフォームへの依存に強い危機感を抱いていると考えられます。
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Metaが構築を目指すメタバース市場でのエコシステム
Meta社は今後10年間でメタバースの利用者を10億人に増やすことを目標に掲げていますが、その背景として、Meta社は将来的にメタバースが検索エンジン、EC、SNSの次なるキラーサービスとなり、人々がメタバース上でコミュニケーションやコマースなど様々な活動を行う未来が訪れると考えています。Meta社はこれまで、検索エンジンではGoogle、ECではAmazon、SNSではAppleとGoogleにプラットフォームを握られてきたという過去があります。そこでメタバースではプラットフォーマーとなり、エコシステムを確立することでその覇権を握り、ビジネスを優位に進めたいという狙いがあります。
Meta社は、AppleとGoogleがスマホが人々の生活に普及したここ10年間で構築したものと同様のエコシステムをメタバース領域で確立する狙いがあると考えられます。そのエコシステムはベースのプラットフォームとして、ハードウェア、ソフトウェアで構成されるプラットフォーム上で、開発者、サービス、ユーザーがスパイラル上に増大していく形で構成されています。
そこで、エコシステムの各構成要素をAppleとGoogleがスマホでどのように構築してきたかを例に、簡単に解説していきます。
1つ目の構成要素はハードウエアです。AppleはiPhone、GoogleはAndroidを製造・販売し多くの人々に普及させることで、大きなユーザー接点を獲得しました。
2つ目の構成要素はソフトウェアです。Apple、Googleは各社のOSとアプリストアを提供しており、サービス開発とユーザーへの提供の基盤となっています。
3つ目の構成要素は開発者です。Apple、Googleは各社のプラットフォームを利用するユーザーの多さや充実した開発基盤により、多くの開発者に自社プラットフォーム上でサービスを提供させることに成功しました。
4つ目の構成要素はサービスです。Apple、Googleは、多くの開発者に各社のプラットフォーム上からサービスをリリースさせることで、ユーザーに対して様々なニーズを満たす、優良なサービスが利用できる環境を構築しました。
5つ目の構成要素はユーザーです。多くの魅力的なサービスが利用できるため、全世界の大半の人々がAppleかGoogleのプラットフォームを利用しています。
このように、AppleとGoogleはハードウエアとソフトウェアで構成される自社のプラットフォーム上で、開発者、サービス、ユーザーをスパイラル上に増大させることで、強力なエコシステムを確立し、圧倒的な競争優位性を構築することに成功しました。
Metaが展開するメタバース事業
Meta社はメタバースでのエコシステムを確立することで覇権を握りたいと考えており、
幅広い領域での取り組みを進めています。Meta社の主要な取り組みをエコシステムの構成要素毎に紹介していきます。
- ①ハードウエア:Oculasの買収を筆頭に、買収・自社開発に積極投資
- ②ソフトウェア:独自OSや屋内外のARマップの構築へ
- ③開発者:メタバースクリエイターの育成に向け約10億円を投資
- ④サービス:メタバースオフィスやVRゲームなどのサービスを提供
それぞれの取り組みについて分かりやすく紹介していきます。
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①ハードウエア:Oculasの買収を筆頭に、買収・自社開発に積極投資
Meta社は人々がメタバースにアクセスするための幅広いハードウェアを提供すべく、相次ぐ企業買収と自社での研究開発に多額の資金を投入しています。
その筆頭が2014年に2200億円超で行ったOculas社の買収です。Oculasは2012年創業のベンチャー企業で、ゲーム好きを利用者を明確なターゲットとしたことで、それまでに存在したVRHMDを遥かに超えるコストパフォーマンスを実現したOculas Riftの開発に成功しました。Meta社はOculas社の買収後も改良を重ねリリースしたMeta Quest2は累計販売台数1400万台を突破するなど、VR/メタバース市場を大きく牽引する存在となっています。
またHMD以外にも、脳からの筋肉信号と電気信号によりコンピューターに指示を出すリストバンドの開発を行うコントロール・ラボ社の買収やAR環境でジェスチャーや動きを命令として読み取るAIを搭載したリストバンドの研究開発など、幅広いハードウェアの提供に向け取り組みを進めています。
②ソフトウェア:独自OSや屋内外のARマップの構築へ
Meta社は2017年から、VR/ARデバイス向けの独自OSである「XR OS」の開発を約300人体制で進めているとされています。2021年末の一部報道では、チーム責任者のMark Lucovsky氏がメタ社を辞任していたことから、プロジェクトが注視になったのではと噂されていますが、同社はそれらを否定しています。
また、ARサービスの提供に必要な現実世界の3Dマップである「LiveMaps」の構築にも力をいれています。ARサービスの提供には、現実世界の建物や設備の3Dモデルを位置情報とともに構築する必要があります。そのため、Meta社は映像解析技術を使って路上の画像を解析し、センチメートル単位の精度を持つ3Dマップを作成する技術を持つスケープ・テクノロジーズ社とマピラリー社を買収しました。さらに、最近はオフィスやビル内の3Dマップも構築するため業界大手のマターポート社と提携を行いました。
③開発者:メタバースクリエイターの育成に向け約10億円を投資
Meta社は、サービス・コンテンツの充実によりメタバース空間の魅力を高めるため、メタバースクリエイターの育成に向けた様々な取り組みを行っています。代表的な取り組みとして、Horizon World Creator Fundと呼ばれるメタバースクリエイター向けの基金に1000万ドルを投資しており、それらの資金は優れたクリエイターへの賞金やトレーニングプログラム等に使われるとのことです。
④サービス:メタバースオフィスやVRゲームなどのサービスを提供
Meta社はtoB向け、toC向けの両方にメタバースサービスを提供しています。
toB向けの代表的なサービスとして、VR空間で一緒に働くことができる「Horizon Workrooms」を提供しています。Horizon Workroomsとは、VR空間内でアバターの姿でミーティングや共同作業ができるサービスです。メタバース空間内に複数のディスプレイやホワイトボードを表示させたり、自分の持っているキーボードを持ち込めたりと様々な機能が充実しています。
一方で、toC向けのVRゲームの有力タイトルをリリースしている企業の買収にも積極的です。例えば、音楽に合わせて飛んでくるブロックを剣で切りつけるリズムゲーム「ビートセイバー」を提供するビートゲームズ社や、20年には高い評価を得たVRゲーム「アスガーズ・ラス」をリリースしたばかりのサンザルゲームズ社を買収しています。
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