Vision ProからみるAppleのメタバース戦略|GAFAMとの比較も
2023年6月に、遂にAppleから初のメタバース/XRデバイスである「Apple Vision Pro」が発表され、魔法のような新たな体験を実現する画期的なデバイスとしてメタバース市場に大きなインパクトを与えると言われています。
そんななか、Vision Pro発表の背景にあるAppleのメタバース戦略について、気になっている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、Apple Vision ProからみるAppleのメタバース戦略について、他のGAFAM企業と比較しながら分かりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- Vision pro発表の背景にあるAppleのメタバース戦略について知りたい
- 他のGAFAM企業のメタバース戦略についても押さえておきたい
本記事を読めば、Apple Vision ProからみるAppleのメタバース戦略やGAFAMの動向に関して抑えておきたい一通りの最新情報を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
- そもそもApple Vision Proとは?
- Apple Vision Pro からみるAppleのメタバース戦略
- Apple Vision Proがメタバース市場を急成長させる7つの理由
- GAFAM各社のメタバース戦略・動向の比較
- Googleのメタバース戦略:リアルに根差したARメタバースにフォーカス
- GoogleがARに注力する3つの理由
- Googleのメタバース領域での6つの取り組み
- Metaのメタバース戦略:Questシリーズのデバイスを武器にエコシステム構築を狙う
- Metaがメタバースに注力する6つの理由
- Metaのメタバース領域での4つの取り組み
- Microsoftのメタバース戦略:toBに特化しリモートワーク向けメタバースなどを提供
- Microsoftのメタバース領域での3つの取り組み
- 企業がApple Vision Proをビジネスに活用する3大メリット
- Apple Vision Proの活用を成功させるための5つのポイント
- 費用対効果・実現性が高いメタバース活用方法
そもそもApple Vision Proとは?
Apple Vision Proは、2023年6月に発表された、Apple初のゴーグル型XRヘッドセットデバイスです。Appleは、このデバイスをPC、スマートフォンにとって変わる「空間コンピューティング」デバイスとして発表しています。
発表会では、Apple Vision Proを装着して、映画やゲームなどのエンタメ体験だけでなく、デスクワークや製品の設計・シミュレーションなどでの利用が紹介され、日常生活からビジネスユースまで幅広い用途で利用されるデバイスとして開発されていることが伺えます。
Apple Vision Proは、Appleが「MacbookやiPhone、Apple Watchなど、長年開発してきた数々のプロダクトデザインの集大成」と発表しています。
そのため、Meta Questなどの既存のXRデバイスと比べ、圧倒的な性能の高さと使いやすさを実現するのではと、世界中から大きな注目を集めています。
本デバイスの価格は日本円で約50万円で、2024年初頭にアメリカで発売された後、2024年中にその他の国と地域でも販売される予定です。
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Apple Vision Pro からみるAppleのメタバース戦略
Vision Proのメインターゲットはメタバース/XRサービスやコンテンツの開発者であることから、Appleのメタバース/XR市場における戦略は、”開発者・サービス・ユーザーのエコシステムを構築することで、プラットフォーマーとして覇権を握る”というものであることが明確になりました。
この戦略は、端的に言うと”市場の黎明期に、多くの開発者を惹きつける自社プラットフォームを提供し、豊富なサービス/コンテンツを開発してもらうことで、その後多くのユーザーを獲得する”というものです。
この戦略は、Appleがスマホ市場が台頭した際にも取った戦略と同じものであり、彼らの最も得意とする戦い方です。
Appleが構築を目指すメタバース/XR市場でのエコシステムを分かりやすく紹介します。
(前提)メタバース/XR市場でのエコシステムを構成する5つの要素
前提として、メタバース/XR市場でのエコシステムを構成する要素は以下の5つです。
- ①ハードウェア:Vision ProなどのXRデバイス
- ②ソフトウェア:Vision OSなどのXRデバイス向けOSや開発ツール
- ③開発者:XRデバイス向けのサービス/コンテンツを開発する企業やエンジニア
- ④サービス/コンテンツ:XRデバイスで利用できるアプリケーションやコンテンツ
- ⑤ユーザー:XRデバイスを通じてサービスやコンテンツを利用する一般ユーザー
今後のメタバース/XR市場でのエコシステムの発展の仕組み
Step1:多くの開発者を惹きつける魅力的なハード・ソフトウェアを提供
Appleは開発者がサービス/コンテンツを提供しやすいハードウェア・ソフトウェアのプラットフォームを提供することで、多くの開発者を惹きつけようとしています。また、Appleが提供するプラットフォームなら、今後多くのユーザーを集めるだろうという期待感もそれに貢献するでしょう。
Step2:多数の開発者が豊富なサービス/コンテンツをリリース
Appleのプラットフォームに魅力を感じた多くの開発者は、Appleのプラットフォーム上で豊富なサービス/コンテンツを開発し、リリースします。
Step3:多くのユーザーがAppleのプラットフォームを利用
ユーザーがどのXRデバイスを購入するかを検討する際に、どれだけ魅力的なサービスやコンテンツを利用できるのかは非常に重要であり、結果として多くの人々がAppleの販売するXRデバイスを購入する流れが生まれると考えられます。
Step4:多くのユーザーを求め、より多数の開発者がサービス/コンテンツをリリース
Step3で多くのユーザーを集めたAppleのプラットフォームは、開発者にとってより魅力的な選択肢となり、より多くの開発社がサービス/コンテンツをリリースするようになります。
このように、自社のプラットフォーム上で開発者・サービス/コンテンツ・ユーザーのポジティブスパイラルを生み出し、先行者ならではの競争優位性を築き上げることで、メタバース/XR市場の覇権を握ろうとしているのです。
Apple Vision Proがメタバース市場を急成長させる7つの理由
Apple Vision Proの発売は、メタバース市場の成長に向けた課題を解消すると期待されています。その理由として以下の7つが挙げられます。
- ①従来のXRデバイスを圧倒する没入体験
- ②リアルとバーチャルのシームレスな融合
- ③エコシステム戦略によるアプリの充実
- ④Vision ProでもiOSアプリが利用可能
- ⑤本体重量の軽量化
- ⑥手や目線の動きによる直感的な操作
- ⑦Appleの誇る洗練されたUI/UX
それぞれの理由について分かりやすく紹介していきます。
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①従来のXRデバイスを圧倒する没入体験
Apple Vision Proは、片目だけで4KTVを超える画素数を誇る高精細ディスプレイを搭載しており、またユーザーの周囲の空間を含め、個人や状況に最適化された立体音響機能を有しているなど、圧倒的な没入体験を実現するXRデバイスとして最高峰のスペックを誇っています。
②リアルとバーチャルのシームレスな融合
従来のメタバース/XRデバイスは、ゲームを行う際など、特定のシーンでのみ装着する位置付けでした。一方で、Apple Vision Proは、発表時の紹介動画でリビングや職場などでの利用シーンが多用されるなど、日常生活に溶け込む存在として位置付けられています。
Vision Proはリアルとバーチャルのシームレスな融合を実現すべく、バーチャル空間への没入度を調節できる「Digital Crown」というダイヤルや、ユーザーの表情がデバイスの前面にリアルタイムで表示される、「EyeSight」という機能が搭載されています。
③エコシステム戦略によるアプリの充実
Appleは、Vision Proの発売により、メタバース/XR市場でも、スマホ市場で構築したような、強力なプラットフォーム/エコシステムを構築しようとしています。
Appleの戦略は、端的に言うと”市場の初期段階に、多くの開発者を惹きつける自社プラットフォームを提供し、豊富なサービス/コンテンツを開発してもらうことで、その後多くのユーザーを獲得する”というものです。
この戦略により、 今後Vision Proに対応する、豊富なXRアプリケーションやコンテンツが開発されていくことが想定されます。
このエコシステム戦略については、後ほど詳細に解説します。
④Vision ProでもiOSアプリが利用可能
Apple Vision Proでは、iPhone/iPad向けにリリースされている全てのアプリケーションが利用可能となる予定です。
そのため、Apple Vision Proは従来のデバイスと異なり、購入した直後から様々なカテゴリのサービス/コンテンツが利用可能となります。
⑤本体重量の軽量化
Apple Vision Proの正式な重量は発表されていません。一方で、既にVision Proを体験した The Vergeの編集長であるNilay Patel 氏は、重さが約450グラム弱であると推定しています。
これは、類似のスペックを持つデバイスであるMeta Quest Proが約720グラムであることを踏まえると、かなりの軽量化に成功していると言えます。
⑥手や目線の動きによる直感的な操作
Apple Vision Proは、指のジェスチャーや目線、Siriでの音声入力による、直感的な操作が可能です。Questなどの類似デバイスが、コントローラーを両手に持って操作しないといけないのに比べ、操作の負担はかなり軽減されそうです。
⑦Appleの誇る洗練されたUI/UX
Appleの最大の武器の1つとして、iPhoneやMacbookに説明書が付属していないなど、初めて利用したユーザーでも直感的に操作できる、洗練されたUI/UX設計が挙げられますが、Vision ProのUI/UX設計はその集大成となっています。
また、Vision ProのUIがiPhoneやMacBookで用いられるお馴染みのUIであるため、iPhoneやMacbookユーザーの方が、利用開始直後から比較的スムーズに利用できることも、特徴の1つです。
GAFAM各社のメタバース戦略・動向の比較
GAFAM各社はAmazonを除き、メタバース市場に参入しており、研究開発や企業買収、デバイス・サービスのリリースなど積極的な取り組みを行っています。
- Google:リアルに根差したARメタバースにフォーカス
- Apple:XRヘッドセッド”Vision Pro”の発売で満を持して本格参入
- Meta:Questシリーズが2,000万台以上のメガヒットを記録するなど業界を牽引
- Microsoft:toBに特化しリモートワーク向けメタバースなどを提供
それぞれの企業の戦略や動向について分かりやすく紹介していきます。
Googleのメタバース戦略:リアルに根差したARメタバースにフォーカス
GoogleがARに注力する3つの理由
GoogleがARに注力する理由として以下の3つが挙げられます。
- ①AR市場の成長性が高く魅力的だから
- ②リアルの世界に根差した強力な情報網を持っているから
- ③メタバースに注力するMetaやAppleとの差別化を図りたいから
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
①AR市場の成長性が高く魅力的だから
1つ目の理由は、AR市場の成長性が高く魅力的だからです。
ARの市場規模は急速に拡大しています。グローバル市場調査会社であるGrand View Research社のレポートによると、世界のAR市場の規模は2022年には約5.5兆円であり、2023年から2030年の間、年平均成長率39.8%の割合でその規模が拡大していくとのことです。
このようなAR市場の成長性の高さは、Googleをはじめ多くの企業にとって新たなビジネスチャンスにつながる魅力的なものであると考えられます。
※参照:Augmented Reality Market Size, Share & Trends Analysis Report
②リアルの世界に根差した強力な情報網を持っているから
2つ目の理由は、リアルの世界に根差した強力な情報網を持っているからです。
Googleはグーグルマップの地図的な2次元データに加え、専用の車両が世界中の道を走り撮影した世界中の画像データ、また各スポットに対するレビューなど、リアルの世界に関する圧倒的な情報網を持っており、この強みをARに活用しようとしていると考えられます。
③メタバースに注力するMetaやAppleとの差別化を図りたいから
3つ目の理由は、メタバースに注力するMetaやAppleとの差別化を図りたいからです。
MetaやAppleのような他のビッグテックは、主としてメタバースやVRに注力しています。そのため、Googleとしては、これらのビッグテックとの競争を避け、差別化を図るためにARに注力することを選択したと考えられます。
Googleのメタバース領域での6つの取り組み
Googleのメタバース領域での代表的な取り組みとして以下の6つが挙げられます。
- ①2013年:元祖ARグラス”Google Glass”の発売
- ②2017年:企業向けARグラス”Glass EnterPrise Edition”の発売
- ③2013年~現在:新型Google Glass”Project Iris”の開発
- ④2020年、2022年:AR関連スタートアップ2社の買収
- ⑤2023年:3Dビデオ通話向けデバイス”Project Starline”の新型を発表
- ⑥2023年:Project Irisの中止とARアプリやソフトウェアへの注力
それぞれの取り組みについてわかりやすく紹介していきます。
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①2013年:元祖ARグラス”Google Glass”の発売
1つ目の取り組みは、2013年の元祖ARグラスである”Google Glass”のテスト発売です。
ユーザーはGoogle Glassを装着することで、リアルの世界の上に様々なデジタルコンテンツが投影され、スマホのアプリと同様に、Google検索やチャット、マップ機能などが利用できます。
Google Glassは、XRデバイスとして大きく小型軽量化に成功した点や、スマホの次のデバイスとしての期待感などから大きな注目を集めました。
一方で、一部のユーザーに対するテスト販売の結果、盗撮などのプライバシーに関する問題や、わき見運転に関するリスクなどが取り沙汰され、結局一般販売には至らないまま発売中止となってしまいました。
②2017年:企業向けARグラス”Glass EnterPrise Edition”の発売
2つ目の取り組みは、2017年の企業向けARグラス”Glass EnterPrise Edition”の発売です。
こちらのARデバイスは、元々消費者用に開発されていたGoogle Glassを企業の業務効率化というユースケースに切り替えて開発・販売されたものです。
初代Google Glassに比べ、プロセッサー性能の向上やバッテリー駆動時間の延長などの改良が行われました。
具体的な活用方法として、倉庫での荷物の運搬や保守・メンテナンスなどの現場での業務の効率化・ミスの削減などが挙げられます。
③2013年~現在:新型Google Glass”Project Iris”の開発
3つ目の取り組みは、新型Google Glass”Project Iris”の開発です。
初代Google Glassの失敗後も、新型のARグラスの開発を続けていると、様々なメディアから報道されています。
このProject Irisに関する情報は、Google社内でも厳密に管理されており、入室するのに特別なカードキーと秘密保持契約を必要とする建物内で管理されているとのことです。
このARグラス開発には、既に約300名のコアメンバーが関与しており、今後数百名の雇用を行うともされています。
④2020年、2022年:AR関連スタートアップ2社の買収
4つ目の取り組みは、2020年と2022年の、AR関連スタートアップ2社の買収です。
2020年には、ARグラスを製造するカナダのスタートアップ”North”を、2022年には、AR端末向けディスプレイ技術を有するアメリカのスタートアップ”Raxium”をそれぞれ買収しています。
これらの取り組みからも、現在もGoogleが新型のARグラスの開発を進めていると考えられます。
⑤2023年:3Dビデオ通話向けデバイス”Project Starline”の新型を発表
5つ目の取り組みは、3Dビデオ通話向けデバイス”Project Starline”の新型の発表です。
Project Starlineとは、相手がまるでそこにいるかのように感じられるビデオ会話システムです。
このシステムの特徴は、ユーザーが専用のメガネなどをかける必要がないにも関わらず、本人とほぼ同じサイズの極めてリアルな3D映像が目の前に映し出される点です。
それを実現するのが、通常のディスプレイと異なり、自分の見る角度によって相手の映像がリアルに変わる技術です。この技術は、話している相手の様子を即座に3Dデータとして取り込み、AIを活用し動く3Dモデルとして投影するという画期的な仕組みにより実現しています。
⑥2023年:Project Irisの中止と、ARアプリやソフトウェアへの注力
6つ目の取り組みは、Project Irisの中止と、ARアプリやソフトウェアへの注力です。
Googleは、ARソフトウェアの開発に注力するため、ARグラスである新型Google Glass”Project Iris”の開発を中止すると発表しました。
その代わり、Googleは、ARCoreというARアプリを構築できるソフトウェア開発キットの機能を充実化するための一連の施策を講じることとしています。その一環として、Googleは、2023年5月、3Dコンテンツを目の前に瞬時に表示できるARCore Geospatial APIをARCoreに追加しました。これにより、デバイスが、Google Mapのストリートビューで使用可能な場所であれば、3Dコンテンツをすぐに表示することが可能となりました。
Googleが今後も、ARアプリやソフトウェアの方面に注力し続けるのか、それともARグラスの開発を再開するのかは、AR市場を大きく左右すると考えられるため、その動向をキャッチアップしていくことが重要です。
Metaのメタバース戦略:Questシリーズのデバイスを武器にエコシステム構築を狙う
Metaがメタバースに注力する6つの理由
Metaのメタバースからの撤退の噂が流れている中、MetaのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は、2023年4月の決算説明会にて、メタバースからは撤退しないことを明言しました。Metaが今後もメタバースに注力する理由として、以下の6つが挙げられます。
- ①メタバース市場の魅力度の高さ
- ②メタバース市場での勝算の高さ
- ③ザッカーバーグ氏のメタバースへの想い入れの強さ
- ④Facebook等の既存事業の行き詰まり
- ⑤他社プラットフォーム依存からの脱却
- ⑥Meta社が注力しているAIとメタバースの相性の良さ
それぞれの理由について分かりやすく解説していきます。
①メタバース市場の魅力度の高さ
1つ目の理由は、メタバース市場の魅力度の高さです。メタバース市場は世界的に今後大きな成長を見せると考えられています。
世界のメタバースの市場規模は2022年時点で28兆8,000億円〜43兆2,000億円、2030年には全世界で約720兆円に達する可能性があると予測されています。また、日本国内のメタバースの市場規模は2025年には4兆円程度、2030年には約24兆円に達すると予測されています。
近年の市場成長の要因は、MetaQuestを始めとするVRデバイスの低価格化・小型化が進んでいることや、FortniteやRobloxなどのゲームを中心とするヒットコンテンツの登場が相次いでいることなどが挙げられます。
※関連記事:メタバースの市場規模は?2030年の予測から今後の展望まで解説!
②メタバース市場での勝算の高さ
2つ目の理由はMetaのメタバース市場での勝算の高さです。既にMeta社はデバイス、ユーザー基盤、コンテンツなど、様々な面において競合優位性を構築しています。
デバイスに関しては、展開するVRヘッドセットのMeta Questシリーズが業界シェア40〜50%を誇るなど、圧倒的な優位性を構築しています。Meta Quest2は累計販売台数1400万台を突破するなど、世界的に大ヒットを記録しています。
また、ユーザー基盤に関しても、Facebookやinstagramなどの各オンラインサービスユーザーの合計は月間30億人、1日に20億人とも言われています。
このように、Metaはメタバース市場での競争を制する、さらに言えばメタバース市場を押し広げることの期待される業界のリーディングカンパニーなのです。
③ザッカーバーグ氏のメタバースへの想い入れの強さ
3つ目の理由は、Metaの創業者でありCEOのザッカーバーグ氏のメタバースへの想い入れの強さです。
ザッカーバーグ氏は近い将来、人々の生活にメタバースが普及する未来を誰よりも信じ、多数の企業買収など多額の投資を続けています。
ザッカーバーグ氏はMetaConnect2022の講演にて、Meta社が提供する主要サービスが「人と人を繋ぐ」ことに重点をおいていることを強調しました。Meta社がFacebookやinstagram等のSNSを通じて人々の繋がりをサポートしてきたのと同様、近い将来メタバースがその役割を担うと期待しているはずです。
④Facebook等の主力事業の行き詰まり
4つ目の理由は、Facebook等の主力事業の行き詰まりです。現在Meta社の主力事業であるFacebookはユーザー数33億人を誇っており、世界最大のSNSの1つとなっています。
一方で、主に以下の3つの理由から、Facebook事業は今後の大きな成長は期待できないと言われています。
- 新規のユーザーの伸びしろが限定的
- 競合サービスの台頭による若者のFacebook離れ
- 個人情報保護の強化による広告事業への影響
それぞれの理由について分かりやすく説明していきます。
新規のユーザーの伸びしろが限定的
1つ目の理由は、既に中国を除いて33億人のユーザーを抱えており、新規のユーザーの伸びしろが限定的という点があります。Facebookのマネタイズポイントは依然として広告が中心であり、収益の成長はユーザー数の成長とほぼ比例関係にあることから、ユーザーの伸びしろが少ないことは、大きなインパクトがあると言えます。
競合サービスの台頭による若者のFacebook離れ
2つ目の理由は、競合サービスの台頭による若者のFacebook離れが進んでいるという点です。中国初の単発動画投稿アプリの「Tiktok」や米国発の動画共有アプリ「Snapchat」などの競合SNSにユーザー数を奪われています。さらに近年では、若者は「Fortnite」や「Roblox」などのオンラインゲームもチャットや音声会話でのコミュニケーションの場となっており、新たな競合となっています。
これらの競合サービスの台頭により、Facebookはもはや「おじさん世代向けのアプリ」という認識が広まりつつあります。実際に、2021年末にFacebookはサービスリリース以来、初のユーザー減を記録しています。
個人情報保護の強化による広告事業への影響
3つ目の理由は、近年Appleを中心に個人情報保護の強化が進んでおり、広告事業に大きな影響が出ているという点があります。2022年よりAppleは、ユーザーへのターゲティング広告を配信する際に、ポップアップ画面を表示しユーザーに許可を求めることを義務づけています。
この新ルールを導入すると一定の利用者が個人情報の追跡を拒否され、ターゲティング広告の精度が下がり、広告出稿者の費用対効果が低下、ひいては広告単価の低下につながると考えられます。そのため、広告収入が収益の大部分を占めるMeta社からすると、大きなインパクトがあると言えます。
これらの理由により、Meta社はFacebookの次なる収益の柱となる事業の構築を目指しており、この筆頭候補としてメタバースに狙いを定めているのです。
⑤他社プラットフォーム依存からの脱却
5つ目の理由は、他社プラットフォーム依存からの脱却です。Meta社の主力事業であるFacebookやinstagramは、AppleやGoogleなどのプラットフォームに大きく依存しているという課題を抱えています。
Facebookやinstagramは、AppleやGoogleの提供するアプリストアからダウンロードされ、各社の提供するスマホ上で利用されます。そのため、ユーザーからの課金に対して30%程度の高額の手数料が徴収されたり、AppleやGoogleらの意向次第では、サービス提供すらままならない不利な立場にあるのです。
実際に、FortniteとAppleがApple側の課金手数料の高さなどを理由に、闘争となり、Appleのプラットフォームから排除されたという事例もあり、Facebookも他社プラットフォームへの依存に強い危機感を抱いていると考えられます。
⑥Meta社が注力しているAIとメタバースの相性の良さ
6つ目の理由は、Meta社が注力しているAIとメタバースの相性が良い点です。Meta社は、AIを活用し、会話の生成や翻訳などが可能な大規模言語モデルである「Llama 2(ラマツー)」を発表するなど、近年、AIの開発に注力しています。
そして、AIはメタバースと掛け合わせることにより、AIの自己学習によるパーソナライズされたユーザー体験の実現、AIの画像認識技術による没入感の向上、自然言語処理能力によるアバターとの自然なコミュニケーションなど様々な相乗効果が生まれます。
このようなAIとメタバースの相性の良さから、Metaは、AIとメタバースを組み合わせて、より質の高いメタバースサービスを提供しようとしていると考えられます。
Metaのメタバース領域での4つの取り組み
Meta社はメタバースでのエコシステムを確立することで覇権を握りたいと考えており、幅広い領域での取り組みを進めています。Meta社の主要な取り組みをエコシステムの構成要素毎に紹介していきます。
- ①ハードウエア:Oculasの買収を筆頭に、買収・自社開発に積極投資
- ②ソフトウェア:独自OSや屋内外のARマップの構築へ
- ③開発者:メタバースクリエイターの育成に向け約10億円を投資
- ④サービス:メタバースオフィスやVRゲームなどのサービスを提供
それぞれの取り組みについて分かりやすく紹介していきます。
①ハードウエア:Oculasの買収を筆頭に、買収・自社開発に積極投資
Meta社は人々がメタバースにアクセスするための幅広いハードウェアを提供すべく、相次ぐ企業買収と自社での研究開発に多額の資金を投入しています。
その筆頭が2014年に2200億円超で行ったOculas社の買収です。Oculasは2012年創業のベンチャー企業で、ゲーム好きを利用者を明確なターゲットとしたことで、それまでに存在したVRHMDを遥かに超えるコストパフォーマンスを実現したOculas Riftの開発に成功しました。Meta社はOculas社の買収後も改良を重ねリリースしたMeta Quest2は累計販売台数1400万台を突破するなど、VR/メタバース市場を大きく牽引する存在となっています。
またHMD以外にも、脳からの筋肉信号と電気信号によりコンピューターに指示を出すリストバンドの開発を行うコントロール・ラボ社の買収やAR環境でジェスチャーや動きを命令として読み取るAIを搭載したリストバンドの研究開発など、幅広いハードウェアの提供に向け取り組みを進めています。
②ソフトウェア:独自OSや屋内外のARマップの構築へ
Meta社は2017年から、VR/ARデバイス向けの独自OSである「XR OS」の開発を約300人体制で進めているとされています。2021年末の一部報道では、チーム責任者のMark Lucovsky氏がメタ社を辞任していたことから、プロジェクトが注視になったのではと噂されていますが、同社はそれらを否定しています。
また、ARサービスの提供に必要な現実世界の3Dマップである「LiveMaps」の構築にも力をいれています。ARサービスの提供には、現実世界の建物や設備の3Dモデルを位置情報とともに構築する必要があります。そのため、Meta社は映像解析技術を使って路上の画像を解析し、センチメートル単位の精度を持つ3Dマップを作成する技術を持つスケープ・テクノロジーズ社とマピラリー社を買収しました。
さらに、最近はオフィスやビル内の3Dマップも構築するため業界大手のマターポート社と提携を行いました。
③開発者:メタバースクリエイターの育成に向け約10億円を投資
Meta社は、サービス・コンテンツの充実によりメタバース空間の魅力を高めるため、メタバースクリエイターの育成に向けた様々な取り組みを行っています。
代表的な取り組みとして、Horizon World Creator Fundと呼ばれるメタバースクリエイター向けの基金に1000万ドルを投資しており、それらの資金は優れたクリエイターへの賞金やトレーニングプログラム等に使われるとのことです。
④サービス:メタバースオフィスやVRゲームなどのサービスを提供
toB向けの代表的なサービスとして、VR空間で一緒に働くことができる「Horizon Workrooms」を提供しています。Horizon Workroomsとは、VR空間内でアバターの姿でミーティングや共同作業ができるサービスです。メタバース空間内に複数のディスプレイやホワイトボードを表示させたり、自分の持っているキーボードを持ち込めたりと様々な機能が充実しています。
一方で、toC向けのVRゲームの有力タイトルをリリースしている企業の買収にも積極的です。例えば、音楽に合わせて飛んでくるブロックを剣で切りつけるリズムゲーム「ビートセイバー」を提供するビートゲームズ社や、20年には高い評価を得たVRゲーム「アスガーズ・ラス」をリリースしたばかりのサンザルゲームズ社を買収しています。
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Microsoftのメタバース戦略:toBに特化しリモートワーク向けメタバースなどを提供
マイクロソフトは、メタバースを①コンシューマー向け②ハイブリッドワーク向け③インダストリアル向けの3つに分類しており、その中でも②③のtoB向けメタバースに注力しています。
その理由として、マイクロソフトの既存事業との相性の良さが挙げられます。同社はExcelやOutlookなどのOffice製品やMicrofost Azureなどのクラウドサービスに強みを持ち、それらをメタバースによる企業の業務効率化に活用する狙いがあると考えられます。
MetaやAppleがエンタメやゲームなどのtoC向けのメタバースに注力するなか、toB向けに注力するマイクロソフトはユニークな戦略を取っていると言えます。
Microsoftのメタバース領域での3つの取り組み
Microsoftのメタバース領域での主な取り組みとして以下の3つが挙げられます。
- ①業務用MRデバイス「HoloLens」の販売
- ②toB向けクラウドサービスをメタバースのインフラとして提供
- ③リモートワーク向けメタバース「Microsoft Mesh」を提供
それぞれの取り組みについて分かりやすく紹介していきます。
①業務用MRデバイス「HoloLens」の販売
Microsoftは、業務用MRデバイスであるホロレンズ(HoloLens)を開発・提供しています。ホロレンズは、デバイスを通じて見える現実の世界にバーチャル上の3Dオブジェクトを重ねてみることのできるゴーグル型のMRデバイスです。
また、HololensはPCなどとの接続が不要で、単体で動作し、またコントローラーなどが不要でハンドジェスチャーなどを通じてアプリケーションの操作をすることが可能です。
ホロレンズを装着しながら企業向けのビジネスアプリケーションを活用することで、業務効率化が図れるため、製造業や建設業、物流業や医療現場など幅広い業界での活用が広がっています。
②toB向けクラウドサービスをメタバースのインフラとして提供
Microsoftは、Amazon Web Serviceに次ぐ、世界第2位のシェアを誇るクラウドサービスであるMicrosoft Azureを提供しています。Microsoft Azureを利用することで、クラウド上でコンピューター処理を行ったり、ストレージを利用したり、IoTデバイスからのデータ収集や遠隔操作などを行ったりすることができます。
このサービスは、企業のバリューチェーンの最適化や作業現場のサポートなどへのメタバース活用(インダストリアルメタバース)の際に、メタバースのインフラとして利用することが可能です。
③リモートワーク向けメタバース「Microsoft Mesh」を提供
Microsoft Meshとは、まるで対面しているかのような感覚でコミュニケーションや共同作業を行える、リモートワーク向けのメタバ―スサービスです。
リモートワーク向けのメタバースサービスは多数存在しますが、同サービスの特徴としてマイクロソフトの誇るOfficeアプリケーションとの連携が可能な点が挙げられます。
これにより、ユーザーはメタバース空間上でありながら、PowerPointを投影しながら議論を行うといった、これまでのデスクワークで慣れ親しんだ環境でコラボレーションをすることができます。
企業がApple Vision Proをビジネスに活用する3大メリット
企業がApple Vision Proをビジネスに活用するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ①社内業務の効率化
- ②既存事業の収益拡大
- ③新規事業の創出
それぞれのメリットについて分かりやすく紹介していきます。
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①社内業務の効率化
1つ目のメリットは、社内業務の効率化です。Apple Vision Proを活用することで、リモートでの会議・コラボレーションを円滑化したり、様々なシチュエーションを想定した実践的な研修を行ったり、工場などの現場の作業員の作業を視覚・音声情報でサポートしたりするなど、様々な社内業務を効率化することができます。
Apple Vision Proは、コントローラー不要のハンドジェスチャー等での操作が可能、類似スペックのデバイスに対して軽量などの特徴を持つため、より業務への活用と相性が良いデバイスとして注目を集めています。
②既存事業の収益拡大
2つ目のメリットは、既存事業の収益拡大です。
PCやスマホ向けに提供していたサービス/コンテンツを提供する企業が、それらをVision Proでも利用可能とすることで、既存事業を生かした新たな収益機会を獲得することができます。
例えば、エンタメ業界では、ウォルトディズニー社がVision Pro向けのコンテンツを提供することを発表しています。
具体的には、定額制の動画配信サービスDisney+をVision Proの発売当日から利用可能になる予定とのことです。
③新規事業の創出
3つ目のメリットは、新規事業の創出です。
Apple Vision Proは、 AppleのMacやiPhoneなどの長年のプロダクトデザインの集大成としてリリースされており、今後「スマホの次なるデバイス」として、多くの人々に日常的に利用されるようになるのではないかと言われています。
そのため、iPhoneの普及に伴い、あらゆる業界でスマホをベースとしたサービス/ビジネスが立ち上がったのと同様に、今後Apple Vision ProなどのARデバイスをベースとしたサービス/ビジネスが立ち上がっていくことが予想されます。
Apple Vision Proの活用を成功させるための5つのポイント
Apple Vision Proの活用を成功させるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①Vision Proの最新知見やメタバース/XR市場動向のキャッチアップ
- ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
- ③Apple Vision Proの特徴を活かした企画・UX設計
- ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
- ⑤強力な開発・運用体制の構築
それぞれについて分かりやすく紹介していきます。
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①Vision Proの最新知見やメタバース/XR市場動向のキャッチアップ
1つ目のポイントは、Apple Vision Proの最新知見やメタバース/XR市場動向のキャッチアップです。
Apple Vision Proを最大限に活かすためには、Vision Proの機能・スペックや用途、Meta Questなど他のデバイスとの違いなどの最新の知見をキャッチアップすることが重要です。
また、Apple Vision Proのビジネス活用を検討する際には、現状のメタバース/XR市場の動向や先行事例が非常に参考になります。
Vision Proの活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や知見を押さえておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。
②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案
2つ目のポイントは、Apple Vision Proを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。
現在メタバース活用に取り組む企業の中には、メタバース活用の取り組みが打ち上げ花火的に単発で終わってしまっている企業が見受けられます。
その結果、「活用のPDCAが回らない」「メタバース活用が小粒な施策の1つに留まってしまう」など大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。Vision Proの活用においても、同様の結果に終わってしまう可能性があります。
そのため、自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜVision Proではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案することが重要です。
③Apple Vision Proの特徴を活かした企画・UX設計
3つ目のポイントは、Apple Vision Proの特徴を活かしたユーザーファーストな企画・UX設計です。
Apple Vision Proの活用に当たって想定される失敗として、企業側の都合のみでサービス・体験を設計した結果、ユーザーに利用されず企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまうことが考えられます。
これを避けるためには、Apple Vision Proの特徴や既存のXRデバイスとの違いを踏まえたUX設計を心掛けることが重要です。「Vision Proならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を考慮して設計に取り組みましょう。
④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。
Apple Vision Proを取り巻くメタバース/XR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。
このような新たな市場で勝負するにあたっては、最初から100点を取ることはできない前提で、完璧主義にならずにサービス開発を進める必要があります。計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。
⑤強力な開発・運用体制の構築
5つ目のポイントは、強力なApple Vision Pro開発・運用体制の構築です。
高いユーザー体験と事業性を両立するApple Vision Pro向けアプリ/コンテンツの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。
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