マイクロソフトはメタバースから撤退するのか?戦略や参入状況を解説

MetaのXRヘッドセットのQuestシリーズが累計販売台数2,000万台を突破し、Appleも初のXRデバイスの発売を発表するなど、近年メタバースへの注目はより一層高まっています。

 

そんななか、GAFAMの一角である、マイクロソフトのメタバース領域での動向を知りたいという方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、マイクロソフトのメタバース領域での戦略から参入状況、今後の展望までを分かりやすくご紹介します。

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • マイクロソフトのメタバース領域での最新動向を知りたい
  • マイクロソフトを含むビックテックのメタバース領域での戦略を知りたい
  • ビックテックが今後のメタバース市場をどのように左右していくのか気になる

  

本記事を読めば、マイクロソフトのメタバース参入状況からメタバース市場の展望まで一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

マイクロソフトのメタバースへの参入状況とは

マイクロソフトのメタバースへの参入状況とは

近年のメタバース業界では、MetaやAppleなどが存在感を増していますが、実はマイクロソフトはGAFAの中でもいち早くメタバースに参入している企業です。

 

これまでのいきさつや戦略、展開事業について要点に絞ってご紹介します。

  • ①GAFAで最も早い2016年にMRデバイスの発売を機にメタバースへ参入
  • ②toB向けメタバースに注力する戦略を徹底
  • ③toBクラウドサービスとリモートワーク向けメタバースを提供

①MRデバイスの発売を機にGAFAの中で最も早くメタバースへ参入

MRデバイスの発売を機にGAFAの中で最も早くメタバースへ参入 マイクロソフト
(画像:Microsoft)

Microsoftは、2016年にMRデバイス”Hololens”の発売を機に、GAFAの中で最も早くメタバースへ参入しています。

XRデバイスの発売という観点では、MetaがVR/MRデバイスを製造販売するOculasを買収したのが2018年、Appleが初のXRデバイスを発売するのが2023年と、業界を大きくリードしていることが分かります。

 

ホロレンズ(HoloLens)とは、マイクロソフトが開発・提供するMR(複合現実)デバイスのことです。ホロレンズは、デバイスを通じて見える現実の世界にバーチャル上の3Dオブジェクトを重ねてみることのできるゴーグル型のMRデバイスです。

また、HololensはPCなどとの接続が不要で、単体で動作し、またコントローラーなどが不要でハンドジェスチャーなどを通じてアプリケーションの操作をすることが可能です。

ホロレンズを装着しながら企業向けのビジネスアプリケーションを活用することで、業務効率化が図れるため、製造業や建設業、物流業や医療現場など幅広い業界での活用が広がっています。

 

※関連記事:【導入事例5選】ホロレンズ(HoloLens)でできることとは?

②toB向けメタバースに注力する戦略を徹底

toB向けメタバースに注力する戦略を徹底 マイクロソフト
(画像:Microsoft)

マイクロソフトは、メタバースを①コンシューマー向け②ハイブリッドワーク向け③インダストリアル向けの3つに分類しており、その中でも②③のtoB向けメタバースに注力しています。 

 

その理由として、マイクロソフトの既存事業との相性の良さが挙げられます。同社はExcelやOutlookなどのOffice製品やMicrofost Azureなどのクラウドサービスに強みを持ち、それらをメタバースによる企業の業務効率化に活用する狙いがあると考えられます。

 

MetaやAppleがエンタメやゲームなどのtoC向けのメタバースに注力するなか、toB向けに注力するマイクロソフトはユニークな戦略を取っていると言えます。

 

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③toBクラウドサービスとリモートワーク向けメタバースを提供

マイクロソフトがtoB向けに展開する主力サービスとして以下の2つが挙げられます。

  • Microsoft Azure:世界最大級のクラウドサービス
  • Microsoft Mesh:リモートワーク向けのメタバース空間

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

Microsoft Azure:世界最大級のクラウドサービス

Microsoft Azure:世界最大級のクラウドサービス
(画像:Microsoft)

Microsoft Azureとは、Amazon Web Serviceに次ぐ、世界第2位のシェアを誇るクラウドサービスです。Microsoft Azureを利用することで、クラウド上でコンピューター処理を行ったり、ストレージを利用したり、IoTデバイスからのデータ収集や遠隔操作などを行ったりすることができます。

 

このサービスは、企業のバリューチェーンの最適化や作業現場のサポートなどへのメタバース活用(インダストリアルメタバース)の際に、メタバースのインフラとして利用することが可能です。

Microsoft Mesh:リモートワーク向けのメタバース空間

Microsoft Mesh:リモートワーク向けのメタバース空間
(画像:Microsoft)

Microsoft Meshとは、まるで対面しているかのような感覚でコミュニケーションや共同作業を行える、リモートワーク向けのメタバ―スサービスです。

 

リモートワーク向けのメタバースサービスは多数存在しますが、同サービスの特徴としてマイクロソフトの誇るOfficeアプリケーションとの連携が可能な点が挙げられます。

 

これにより、ユーザーはメタバース空間上でありながら、PowerPointを投影しながら議論を行うといった、これまでのデスクワークで慣れ親しんだ環境でコラボレーションをすることができます。

マイクロソフトがメタバースから撤退すると噂されていた3つの理由

マイクロソフトがメタバースから撤退すると噂されていた3つの理由

マイクロソフトがメタバースから撤退すると噂されていた理由として主に以下の3点が挙げられます。

  • ①MRデバイスHololensの次世代機の開発中止
  • ②産業向けメタバース部門を結成から4カ月で解体
  • ③メタバース関連人材100名以上の競合他社への流出報道

それぞれの理由についてわかりやすく紹介していきます。

①MRデバイスHololensの次世代機の開発中止

MRデバイスHololensの次世代機の開発中止
(画像:The Verge)

1つ目の理由は、MRデバイスHololensの次世代機の開発中止です。

 

2022年初旬に、マイクロソフトのMRデバイスHololensの次世代機である、「Hololens3」の開発が中止となったとの報道がありました。

 

その後、2022年12月15日に、マイクロソフトの公式のブログ記事にて、同社のMR部門の部長である、Scott Evans氏が、「常に新しいデバイスを求める消費者向けと異なり、産業向けのメタバースデバイスは2年毎にデバイスを交換することを望んでいない。そのため、後継機はまだ必要ではない」との旨のコメントを残しています。

②産業向けメタバース部門を結成から4カ月で解体

産業向けメタバース部門を結成から4カ月で解体 マイクロソフト
(画像:Microsoft)

2つ目の理由は、2023年初旬に産業向けメタバース部門が結成から4カ月で解体されたことです。

 

マイクロソフトは、2022年後半からの世界的な経済悪化の流れを受け、AmazonやApple、Metaに追従する形で、全従業員の5%にあたる1万人を解雇しています。この大型解雇の一環として、産業用メタバース部門から約100名の従業員が解雇されました。

 

その結果として、MRソフトウェアの開発ツールキットである、「Mixed Reality Tool Kit」の新規開発も中止となりました。

③メタバース関連人材100名以上の競合他社への流出報道

メタバース関連人材100名以上の競合他社への流出報道 Meta
(画像:Meta)

3つ目の理由は、メタバース関連人材100名以上が、競合他社への流出報道です。

 

2022年末のウォールストリートジャーナルの報道によると、過去1年間にメタバース関連の人材100名以上が、Metaなどの競合他社に引き抜かれており、一部の人材は移籍前の2倍以上の給与を提示されているとのことでした。

マイクロソフトが今後もメタバースに注力すると考えられる3つの取り組み

マイクロソフトが今後もメタバースに注力すると考えられる3つの取り組み

一方で、マイクロソフトが今後もメタバースに注力すると考えられる理由として、主に以下の3つの取り組みが挙げられます。

  • ①Hololens2の生産とサポートの継続
  • ②マイクロソフトの各種サービスのMeta Questとの連携
  • ③リモート会議ツールTeamsへのメタバース機能の追加

それぞれの取り組みについてわかりやすく紹介していきます。

①Hololens2の生産とサポートの継続

Hololens2の生産とサポートの継続
(画像:Microsoft)

1つ目の取り組みは、マイクロソフトのMRデバイスHololens2の生産とサポートの継続です。これは、2023年2月に同社の公式ブログにて発表されたものです。

 

これにより、同社はtoBメタバースに注力するという戦略通り、今後も企業の業務効率化に向けたメタバースビジネスを展開していくと考えられます。

②マイクロソフトの各種サービスのMeta Questとの連携

マイクロソフトの各種サービスのMeta Questとの連携
(画像:Meta)

2つ目の取り組みは、マイクロソフトの各種サービスのMetaQuestとの連携です。マイクロソフトは、2022年10月のMeta社のカンファレンスにて、競合であったMetaと提携し、同社のXRデバイスMeta Questシリーズで、マイクロソフトのMeshやOffice製品を利用可能とすると発表しました。

 

この提携は、世界で2,000万台のメガヒットを記録するMeta Questのデバイスでも、マイクロソフトのメタバースサービスを利用可能とすることで、より多くのユーザーを獲得する狙いがあると考えられ、同社がメタバース領域でのサービス展開に積極的な姿勢を見せていることが伺えます。

③リモート会議ツールTeamsへのメタバース機能の追加

リモート会議ツールTeamsへのメタバース機能の追加
(画像:Microsoft)

3つ目の取り組みは、リモート会議ツールTeamsへのメタバース機能の追加です。

マイクロソフトは、自社のリモート会議ツールであるTeams上で、アバターを介したコミュニケーションを行える「Mesh for Teams」を、2022年にリリースしました。

 

これにより、Teamsを利用する多くのユーザーに対し、自社のメタバースソリューションを提供し、リモートワーク向けのメタバースの領域でも、事業拡大を狙っていると考えられます。

メタバース市場におけるGAFAMのエコシステム構築戦略

メタバース市場におけるGAFAMのエコシステム構築戦略

今後加速度的に普及・発展していくと考えられているメタバースにおいて、AppleやMetaなどのビッグテックら各社は、自社プラットフォーム上でのエコシステム構築を目指し投資を加速させています。エコシステム内で参入企業数・サービス数・ユーザー数が連鎖的に増加することで、市場全体が加速度的に成長していくと考えられます。

 

彼らにとってエコシステムの構築が重要なのは、AppleやGoogleがスマホ市場においてエコシステムの構築に成功し、高額の手数料を徴収するなど、大きな利益を得ることができたことからも明らかといえます。

(前提)メタバース市場でのエコシステムを構成する5つの要素

前提として、メタバース/XR市場でのエコシステムを構成する要素は以下の5つです。

  • ①ハードウェア:Vision ProなどのXRデバイス
  • ②ソフトウェア:Vision OSなどのXRデバイス向けOSや開発ツール
  • ③開発者:XRデバイス向けのサービス/コンテンツを開発する企業やエンジニア
  • ④サービス/コンテンツ:XRデバイスで利用できるアプリケーションやコンテンツ
  • ⑤ユーザー:XRデバイスを通じてサービスやコンテンツを利用する一般ユーザー

今後のメタバース/XR市場でのエコシステムの発展の仕組み

Step1:多くの開発者を惹きつける魅力的なハード・ソフトウェアを提供

AppleやMetaは開発者がサービス/コンテンツを提供しやすいハードウェア・ソフトウェアのプラットフォームを提供することで、多くの開発者を惹きつけようとしています。また、Appleが提供するプラットフォームなら、今後多くのユーザーを集めるだろうという期待感もそれに貢献するでしょう。

Step2:多数の開発者が豊富なサービス/コンテンツをリリース

AppleやMetaのプラットフォームに魅力を感じた多くの開発者は、AppleやMetaのプラットフォーム上で豊富なサービス/コンテンツを開発し、リリースします。

Step3:多くのユーザーがAppleやMetaのプラットフォームを利用

ユーザーがどのXRデバイスを購入するかを検討する際に、どれだけ魅力的なサービスやコンテンツを利用できるのかは非常に重要であり、結果として多くの人々がAppleやMetaの販売するXRデバイスを購入する流れが生まれると考えられます。

Step4:多くのユーザーを求め、より多数の開発者がサービス/コンテンツをリリース

Step3で多くのユーザーを集めたAppleやMetaのプラットフォームは、開発者にとってより魅力的な選択肢となり、より多くの開発社がサービス/コンテンツをリリースするようになります。

このように、自社のプラットフォーム上で開発者・サービス/コンテンツ・ユーザーのポジティブスパイラルを生み出し、先行者ならではの競争優位性を築き上げることで、メタバース/XR市場の覇権を握ろうとしているのです。

メタバースの普及がもたらす3つのビジネスチャンス

メタバースの普及がもたらす3つのビジネスチャンス

メタバースの普及がもたらすビジネスチャンスとして以下の3つが挙げられます。

 

  • ①新規事業の創出
  • ②マーケティング・ブランディングの強化
  • ③企業の社内業務の効率化

 

それぞれのビジネスチャンスを分かりやすく紹介していきます。

①新規事業の創出

新規事業の創出 バンダイナムコ
(画像:バンダイナムコ)

1つ目のビジネスチャンスは、メタバースサービスやイベントなどの新規事業の創出です。

メタバースを活用し新たなサービスを構築することで、ユーザーに対し現実に存在するもの/しないものを含め、仮想空間上に3Dの世界を構築することができるというメタバースならではの特徴を活かし、ユニークな体験を提供するサービスを提供することができます。

 

また、メタバース上でアーティストや企業を集めたイベントをすることで、入場券やデジタルコンテンツの販売など収益性の高い新たなビジネスを展開できることが挙げられます。

②マーケティング・ブランディングの強化

マーケティング・ブランディングの強化 三越伊勢丹
(画像:三越伊勢丹)

2つ目のビジネスチャンスは、メタバースを活用したマーケティング・ブランディングの強化です。

メタバースが人々の生活に普及するにつれ、オフラインからオンラインへ、WebからSNSへと起こってきたのと同様の顧客接点のシフトが、メタバースでも起こると考えられます。

 

メタバースをマーケティング・ブランディングに活用することで、従来はオンラインでの実施が難しかった商品・サービスの販促やメタバースならではの体験を通じた強力なブランディングを行うことができます。メタバースは従来のWebページや動画と比べ伝えられる情報がリッチかつインタラクティブな体験を提供可能なため、ユーザーを惹きつけやすく幅広い業種での活用が進んでいます。

③企業の社内業務の効率化

企業の社内業務の効率化 DHL
(画像:DHL)

3つ目のビジネスチャンスは、企業の社内業務の効率化です。

メタバース・デジタルツインを社内業務の効率化に活用することで、バリューチェーン全体や工程全体の最適化社員の作業のサポート、研修の効率化をすることができます。

 

メタバース上で現状存在しない施設や設備を設計し、シミュレーションを行うことで、最適な製造ラインや運用方法を特定したり、メタバースの特徴である3Dでの情報の表示により、AR/MRグラスで現場の作業員の作業をサポートしたり、VRグラスにより様々なシチュエーションを想定した研修を行ったりと多岐にわたる活用方法が存在します。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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