参考になる生成AI利用ガイドライン9選|政府〜各企業まで
企業や自治体が生成AIを業務に利用する際には、情報漏洩や著作権侵害などのリスクを抑えて、従業員による適切かつ効果的な生成AI利用を促すため、ガイドラインを作成することが重要です。
本記事では、「生成AIを業務に利用するためにガイドラインを作成したいけど、つくり方がわからない」という方に向けて、参考になる他の団体の生成AIガイドラインをジャンル別に全部で9個ご紹介します。
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目次
参考になる生成AI利用ガイドライン一覧
参考になる生成AI利用ガイドラインの一覧は上の表の通りです。それぞれのガイドラインの要点をわかりやすく紹介していきます。
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ガイドライン作成のひな形として使えるガイドライン
①日本ディープラーニング協会:生成AIの利用ガイドライン
ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力向上を目指す一般社団法人である日本ディープラーニング協会(JDLA)は、生成AIの活用を検討している組織向けに、生成AIの利用ガイドラインのひな形を作成・公表しています。
生成AIの利用を検討している企業や団体は、JDLAのひな形を無料でダウンロードし、活用することができます。
JDLAの理事長であるAI研究の第一人者である松尾豊教授の関与の下で作成されたひな形であるため、信頼できる内容となっています。
外部の企業・組織を対象とするガイドライン
②総務省:AI利活用ガイドライン
総務省が策定したAI利活用ガイドラインは、AI利用による便益の促進とリスクの軽減のために、AIの利活用における注意点やルールをまとめたものです。
AIの利活用を検討している企業やAIサービスを提供している企業などを対象に、AIを安全に利用するための対策を具体的に記載しています。
様々なステークホルダーの意見を集約し、多角的な視点からAI利活用のポイントや注意点を説明しており、AIの導入・活用を検討している担当者は一読しておくべきガイドラインです。
③経産省×総務省:AI事業者ガイドライン
経済産業省と総務省は、生成AIの普及とそれに伴う急激な技術発展に対応するために、AI事業者ガイドラインを策定しました。
AIの安全安心な利用を促進すべく、AIガバナンスの統一的な指針を示したものです。これにより、AIを利用する事業者がAIのリスクを正しく認識し、自主的に対策を実行することを目指しています。
AI開発者、AI提供者、AI利用者それぞれが注意すべき事項を詳細に記載しており、AIを業務に活用するあらゆる企業が参照すべきガイドラインです。
企業が策定した社内向けガイドライン
④富士通:生成AI利活用ガイドライン
富士通は、ChatGPTを基盤とした生成AIを安全に利用できる環境を構築するために、社員向けに生成AI利活用ガイドラインを作成しました。
倫理的・法的な観点から生成AIのリスクと対策方法を解説したものです。富士通の技術部門や事業部門の担当者の意見も取り入れた実用的なものとなっている点が特徴です。
富士通は、他社が参考にできるように本ガイドラインを一般公開しています。
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⑤CYDAS:生成AIの利用ガイドライン
人材プラットフォームを運営する株式会社サイダスは、社員向けに、生成AIの利用に関する社内ガイドラインを公開しています。ChatGPTなどの生成AIを利用する際に社員が注意すべき事項を解説したものです。
個人情報の入力時や生成物の利用に当たっての注意事項など、生成AIの業務利用に伴う基本的なリスクを説明した上で、どのような点に注意すべきか、どのような対策を取るべきかを具体的に説明しています。
⑥東京都デジタルサービス局:文章生成AI利活用ガイドライン
東京とデジタルサービス局は、都の職員向けに文章生成AI利活用ガイドラインを作成・講評しています。
ChatGPT等の文章作成AIの特徴や活用方法などの基本的な知識から、利用上のルールやリスクなどの注意事項、都での利用環境など、職員が文章生成AIを適切かつ効果的に活用するための説明がわかりやすくまとまっています。
自治体が策定した職員向けガイドライン
⑦愛知県:生成AIの利用に関するガイドライン
愛知県は、愛知県職員を対象に、生成AIを業務で安全に利用する際に注意すべき点を解説したガイドラインを作成しました。
文章・画像生成AIの活用を想定し、推奨する活用例や利用条件、禁止事項、プロンプトの例などをわかりやすく解説しています。これにより、全ての職員が安全かつ効果的に生成AIを活用できるようにすることを目指しています。
地方自治体が、生成AIに慣れていない職員に向けて作成したわかりやすいガイドラインであり、生成AI活用を浸透させたいすべての自治体や組織にとって参考になります。
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教育機関向けのガイドライン
⑧文部科学省:初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン
文部科学省は、2023年7月に、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を発表しました。
このガイドラインでは、小中学校の教員の業務や授業における生成AI活用の考え方や注意すべきポイントについてまとめられています。生成AIによる情報漏洩や権利侵害のリスクを回避し、生成AIを適切に活用することによる子供の教育効果の向上、教員の負担軽減を目指すものです。
教育機関だけでなく、生成AIの利用を検討している全ての組織にとって参考になる内容となっています。
⑨上智大学:教育における生成AI利用に関するガイドライン
上智大学の教育における生成AI利用に関するガイドラインは、主に同大学の教職員向けに、上智大学の教育活動における生成AIの利用についての注意点をまとめたものです。生成AIやChatGPTが教育や学びに有用である一方で、学問的誠実性や法的・倫理的な観点から規律ある生成AI利用を促すべく定められました。
同ガイドラインには、学生による生成AI使用の可否・ルール、課題への取り組みに当たっての不正使用への対策、学業への生成AI利用による法的リスクなど、教職員が学生に生成AIの利用を認めるにあたってのルールが定められています。
教育現場での生成AI活用を検討している学校などの教育機関にとって参考になるガイドラインです。
企業が生成AIを安全に利用するための6つの注意点
企業が生成AIを安全に利用するための注意点として以下の6つが挙げられます。
- ①最適な生成AI活用範囲の設定
- ②最適なAIツールの選定・導入
- ③リスクを最小化するデータマネジメント
- ④従業員向けの利用ルール・マニュアルの策定
- ⑤従業員の生成AI活用リテラシーの向上
- ⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①最適な生成AI活用範囲の設定
生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、明確に得意不得意が存在します。
そのため、生成AI活用の成果を最大化し、リスクを最小化するためには、活用する範囲を適切に設定することが極めて重要です。
これにより、不適切な情報生成や不意の法的問題の防止につながります。
②最適なAIツールの選定・導入
各企業の状況や目的に最適なAIツールの選定と導入は、安全かつ効率的なAI活用に向けて非常に重要です。
利用するAIツールは、その機能、性能、セキュリティ対策が自社の要求を満たしているかを評価し、適切なものを選ぶ必要があります。
さらに、AIツールの導入時も、ユーザーが入力した内容を学習させない「オプトアウト」を選択する等の対処を取ることで、自社のリスクを最小化することができます。
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③リスクを最小化するデータマネジメント
生成AIは、入力されたデータに基づいて動作するため、データマネジメントの質がAIの出力品質に直結します。
データの正確性、偏りのなさ、機密性の保持は、リスクを最小化する上で極めて重要です。
適切なデータマネジメントの実施により、データの質を確保し、情報漏洩や不正確な情報生成のリスクを低減します。
④従業員向けの利用ルール・マニュアルの策定
生成AIの効果的な利用とリスクの最小化のためには、企業が従業員向けの明確な利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。
具体的には、社内でのAIの使用目的、使用範囲、倫理ガイドライン、データ取り扱いのルール・マニュアルを策定する必要があります。
⑤従業員の生成AI活用リテラシーの向上
生成AIのポテンシャルを最大限に活用し、同時にリスクを管理するためには、従業員のAIに関する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員が生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが求められます。
⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
生成AIの技術・サービスは日々進化しており、新たな活用方法や利用プロセスが登場し、それに応じて新たなリスクが生じる可能性が高いです。
したがって、国内外の生成AIに関する最新の動向を常に把握し、企業の生成AI活用方法を定期的に見直し、更新することが必要となります。
企業が生成AIを導入するための4つのステップ
企業が生成AIの導入を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。
<Step1:活用方針の検討>
- 最新の市場動向のキャッチアップ
- 自社の活用可能性の整理
- 生成AIの活用目的・ゴールの設定
<Step2:利用環境構築>
- セキュリティ・データ管理体制の強化
- ガイドライン・マニュアルの策定
- 社員向けのAIリテラシー研修
- 社内業務での試験運用
<Step3:試験開発・運用(PoC)>
- PoCを行うユースケースの検討
- 要件定義・プロトタイプ開発
- 運用と評価
<Step4:本開発>
- 本開発を行うユースケースの検討
- 要件定義・本開発
- 運用と評価
- 活用方針・内容の継続的なカイゼン
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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Step1:活用方針の検討
1つ目のステップは、自社として生成AIをどのように活用していくかの大方針の検討です。
生成AIは社内業務効率化や顧客体験の向上、新規事業創出など様々な目的で活用が可能だからこそ、自社の課題にマッチした目的とユースケースで活用することが、投資対効果を大きく左右します。
最新の技術や競合の動向をキャッチアップした上で、自社の活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、生成AIをどのような領域で、どの程度ダイナミックに活用していくかの目的やゴールを初期的に設定しましょう。
Step2:利用環境構築
2つ目のステップは、生成AIを安全かつ効率的に活用できる、社内のシステムやルールなどの利用環境の構築です。
企業が生成AI活用に踏み切れない理由として、機密情報漏洩などのセキュリティリスクの懸念が挙げられますが、適切なシステム設計・データ管理やガイドラインの策定などを行うことで、それらのリスクに対処しながら、業務効率化に繋げることが可能です。
社員に対し、生成AIをリサーチや文書作成などの日常的な業務に安心して活用できる環境を提供することで、自社のどのような業務と生成AIの相性が良いのかという現場からの示唆を得ることができ、プロトタイプ・本開発の企画への重要なインプットとなります。
Step3:試験開発・運用(PoC)
3つ目のステップは、自社にマッチするユースケースの検証に向けた、プロトタイプの開発と運用です。
顧客対応支援や社内のナレッジ検索、新機能・サービスの実装などの生成AIの幅広いユースケースの中から、自社の経営課題解決にマッチするいくつかのユースケースに絞り込み、プロトタイプを開発し、実際の業務で運用します。
PoCを実施することで、コストを抑えながら生成AI活用のインパクトを検証しつつ、見えてきた改善点から本開発の精度を高めることが可能です。
Step4:本開発と運用
4つ目のステップは、本格的な生成AIを活用したシステムの開発と運用、継続的なカイゼンです。
自社独自のデータ基盤の構築・連携や活用シーンに特化したアウトプット精度の改善などを実施し、自社の目的達成に特化した生成AIシステムを開発します。
PoCの結果を踏まえ、本開発を行うユースケースや活用範囲を決定することで、生成AI活用の費用対効果を最大化することが可能です。
また、開発しっぱなしで終わるのではなく、本開発したシステムを運用し上がった成果や改善点、技術進化などを踏まえて、活用方法や内容を継続的にカイゼンしていくことが重要です。
このプロセスを通じ、生成AI活用のポテンシャルを最大限に発揮することで、業務生産性や顧客への提供価値の観点から、大きな競争優位性を構築することに繋がります。
企業が生成AI活用を成功させるための5つのポイント
企業が生成AI活用を成功させるために抑えるべきポイントは以下の5つです。
- ①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
- ②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
- ③アジャイルアプローチでの開発・導入
- ④システムとルールの両面からのリスク管理
- ⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
生成AI活用の成否を分ける最大のポイントは、生成AIを活用する意義の大きな業務に対して活用することに尽きます。
活用の方針や戦略がないまま活用を進めるのではなく、自社の業務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの程度業務効率やアウトプット向上に繋がるかを試算することが重要となります。
②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいたコンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、明確な得意不得意が存在します。
そのため、自社の業務の現状や生成AIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。
③アジャイルアプローチでの開発・導入
生成AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。
④システムとルールの両面からのリスク管理
企業が生成AIの活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩や著作権侵害などのリスクへの懸念が挙げられます。
確かに、社員に特段ルールを設けず、一般に公開されている生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。
一方で、入力するデータが学習されないようなシステム構築や使用範囲・機密情報の取扱等の運用ルールの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。
⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上
生成AIの特徴として、AIとの対話によってアウトプットを引き出すことが求められるため、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されることが挙げられます。
そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員に生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が必要となります。
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