生成AIを教育現場に導入する5大メリット|事例や注意点も紹介
リリース以降、2ヶ月で1億ユーザーを突破したChatGPTの登場・普及をきっかけにますます注目が集まっている生成AI。
生成AIの文書作成能力や質問への回答能力の高さは、教育業界でも注目されており、生徒の教育に生成AIを活用しようとする動きも活発化しています。
すでに、いくつかの学校では、ChatGPTに英作文の添削をさせたり、生徒に学習アバイスを提供する生成AIを導入するなど、積極的な活用が進められています。
一方で、生成AIの教育現場への導入が、生徒の考える力を損なう、成績などのプライバシーが漏洩する、間違った回答が出力されるといった様々なリスクにつながるという指摘もあります。そのため、生成AIの教育現場への導入に慎重になっている学校や教育機関も多いです。
本記事では、生成AIを教育現場に導入することを検討している方に向けて、導入のメリットやデメリット・注意点、実際の事例などをわかりやすくご紹介します。
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教育分野におけるICT化・生成AI活用の現状
近年、学校や学習塾などの教育現場におけるICT化やAI活用の動きが増しており、その背景には、デジタル技術を活用した子供の教育効果の向上や、教師の負担軽減による教育コストの削減などがあると考えられます。
政府や官公庁も、教育分野におけるICT化やAI・生成AI活用を推進するために様々な施策を打ち出しています。
以下では、教育分野におけるICT化・生成AI活用にまつわる政府・官公庁の近時の主要な動きをわかりやすくご紹介します。
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教育のICT化の加速
それまでは紙の教科書やプリントしか使われていなかった授業に、タブレットやパソコン、インターネットを積極的に導入する動きが活発化しています。コロナをきっかけに浸透したオンライン授業もその一環です。
政府は、2020年度の学習指導要領改正で、情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけ、学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実に配慮することを明記しました。
また、2019年には、文部科学省がGIGAスクール構想を打ち出し、子供たち一人一人に個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けた取り組みを開始しました。
このように、教育のICT化は、単に教育コストを削減するだけでなく、子供が情報化社会に対応できる能力を育むために、政府が積極的に推進している取り組みといえます。
教育現場での生成AI活用に関する議論が盛んに
さらに、2022年11月のChatGPTのリリースをきっかけに世界中で生成AIへの注目が高まったことに歩調を合わせ、教育現場でも生成AIを活用する動きが現れ始めました。
一方で、文書作成からリサーチまで何でも一瞬でできてしまう生成AIを子供に使わせることが、子供の考える力や学習能力を損なわないかといった懸念も呈され、教育現場における生成AI活用に関する議論が盛んに巻き起こりました。
そんな中、文部科学省は、2023年7月、小中学校での対話型生成AIの活用の指針を示したガイドラインとして、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を策定しました。
このガイドラインでは、生成AIを学校教育に活用していくにあたっての基本的な方向性や考え方が暫定的に示されており、生成AI活用の利便性とリスクのバランスを図るべく、限定的な利用から始めることが適切であること、校務での適切な活用に向けて教員のAIリテラシー向上を図る必要があることなどが謳われています。
文部科学省の生成AIガイドラインの要点については、以下の記事でわかりやすく紹介しています。
⇒教育現場での生成AI活用方法|文科省ガイドラインの要点も紹介
このように、教育現場における生成AI活用の在り方については、まだまだ議論が続いている段階にあります。今後ますます浸透していくであろう生成AIの知識を早いうちから身に付けることは必要不可欠ですが、生成AIを学習効果の向上に役立てていくためには、現場レベルでの試行錯誤が必要となるでしょう。
生成AIを教育現場に導入する5つのメリット
生成AIを教育現場に導入するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
- ①子供のレベルに応じた学習アドバイスを提供できる
- ②24時間リアルタイムで子供の学習をサポートできる
- ③テスト問題作成・添削作業の一部を自動化・効率化できる
- ④客観的かつ公平に生徒の成績を評価できる
- ⑤教師の負担が減少し、教育を低コスト化できる
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①子供のレベルに応じた学習アドバイスを提供できる
(画像:学研)
生成AIを搭載したチャットボットは、本物の人間のような自然な会話をすることができます。このチャットボットに教材の中身と生徒の成績データを学習させることで、生徒のレベルに応じた最適な学習アドバイスを提供することが可能となります。
画一的な授業よりも、生徒一人一人のレベルに合わせてカスタマイズされた学習アドバイスの方が、生徒の理解が促進され学習効果が高まるでしょう。
②24時間リアルタイムで子供の学習をサポートできる
生成AIを搭載したチャットボットは、人間の教師と異なり、24時間いつでも生徒の質問に答えることができます。
生徒の疑問点に対してすぐに回答・フィードバックができるため、学習の効率化、成績の向上につながるでしょう。
③テスト問題作成・添削作業の一部を自動化・効率化できる
生成AIは、文章理解や文章作成などあらゆる言語処理タスクに優れています。テストの問題を作成したり、生徒の答案を添削したり、生徒の作文を校正することも可能であり、これらのタスクを大幅に自動化・効率化することができます。
④客観的かつ公平に生徒の成績を評価できる
生成AIはデータの分析能力にも優れています。生徒の成績や素行に関するデータを学習させ、一定の基準で成績評価をつけるようにプログラムすることで、データに基づく客観的で公正な評価が可能となります。
⑤教師の負担が減少し、教育を低コスト化できる
生成AIの活用により、テスト問題作成、答案添削、成績評価、生徒からの質問への対応などあらゆる仕事を自動化・効率化できるようになり、教師の負担が大きく減少します。
これにより、教師への残業手当や休日手当などにかかる金額が減少し、コストを削減することができます。
また、教師は、生徒とのコミュニケーションや授業計画の策定など、より本質的な業務に集中できるようになり、教育の質の向上にもつながると考えられます。
生成AIを教育現場に導入する5つのデメリット・注意点
生成AIを教育現場に導入するデメリットや注意点として、以下の5つが挙げられます。
- ①誤った回答が生成される場合がある
- ②使い方を誤ると子供の考える力を損なうおそれがある
- ③生成AIの思考プロセスが不透明でわかりづらい
- ④生徒の個人情報が漏洩するリスクがある
- ⑤著作権を侵害するリスクがある
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①誤った回答が生成される場合がある
生成AIといえども全知全能の万能ツールではなく、回答に間違いが入り込むこともあります。生成AIが間違った回答を出力する現象をハルシネーションといい、生成AIにおける大きな問題点の一つとなっています。
特に教育の現場では、生成AIによる間違った回答を真実だと生徒が勘違いし、誤った内容を学習してしまうリスクがあります。
そのため、生成AIの回答を鵜呑みにするのではなく、自分でも良く調べて回答の正否をしっかりと確認するとともに、生徒に対しても生成AIの回答が絶対的に正しいものではないことを認識させることが重要です。
②使い方を誤ると子供の考える力を損なうおそれがある
生成AIは、文章の作成や質問への回答など、あらゆるタスクを自動で行える便利なツールですが、使い方を誤ると子供の考える力を損なうおそれがあります。
生成AIの正しい使い方を生徒に教えつつも、生成AIの回答が正しいかどうかを生徒に確認させたり、他の視点からの回答がないかを生徒自身にも考えさせるなどして、できる限り生徒に自分で考えてもらう機会を作ることが重要です。
③生成AIの思考プロセスが不透明でわかりづらい
生成AIに対して質問を入力してから回答が出力されるまでの間の思考過程はブラックボックス化しており、その全容を理解することは極めて困難です。
ある問題に対して、生成AIがなぜこのような結論を下したのか、どのような思考プロセスを経てその回答に至ったのかを理解しないまま結果だけを参照するのでは、本質的にその問題を理解したとは言えないでしょう。
一方で、生成AIに対して、その回答に至った思考過程を教えてと尋ねれば、一定の思考プロセスを示してくれる場合もあります。いずれにしても、生成AIは、あくまで物事を理解するための一つの手段に過ぎないことを肝に銘じておくことが重要です。
④生徒の個人情報が漏洩するリスクがある
生成AIに入力した情報は、生成AIが学習するために、基本的にはクラウド上で保管されます。
そのため、生成AIに生徒の個人情報などを入力してしまうと、サービス提供者や他のユーザーに情報が流出してしまうリスクが存在します。
そのため、生成AIに、生徒の個人情報などは入力しないように注意しましょう。どうしても生徒の情報を生成AIに読み込ませたい場合には、匿名加工を施すなどして、個人を特定できないように処理をする必要があります。
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⑤著作権を侵害するリスクがある
生成AIに著作権のある画像や小説などの文章等を読み込ませたり、既存の作品と類似するコンテンツを生成してしまうと、著作権を侵害してしまうリスクがあります。
そのため、生成AIを使ってテスト問題を作成したり、生徒が生成AIによって創った作品を展示したりする場合には、それが他人の著作権を侵害していないかをチェックするようにしましょう。
また、生成AIに画像や文章を学習させる場合にはフリー素材やオープンデータを用いるのが安全です。
教育現場への生成AIの導入事例5選
教育現場への生成AIの導入事例として以下の5つが挙げられます。
- ①つくば市立みどりの学園義務教育学校:生成AIを調べ物に活用
- ②長崎北高校:英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
- ③愛媛大学教育学部附属中学校:教師と生成AIが協働し教育の質と効率を両立
- ④ベネッセ:生成AIが自由研究のテーマ選びをサポート
- ⑤学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①つくば市立みどりの学園義務教育学校:生成AIを調べ物に活用
つくば市立みどりの学園義務教育学校は「生成AIパイロット校」の一つとして、AIを活用した授業を展開しています。
中学社会科の授業では、Bingチャットを使って生徒たちが地域課題について質問し、調査を行いました。
この授業では、AIが提供する情報を用いながら、生徒たちは教科書を参照し、情報の正確性を確認しながら、ニュース原稿の制作に取り組みました。
本授業により、生徒たちは情報リテラシーと批判的思考力を養い、AIを効果的に活用する方法を学び、学力向上につながる可能性が見られました。
②長崎北高校:英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
長崎北高校では、英語学習の一環として対話型AI「CHATGPT」の活用が進められています。生徒たちは、英作文の添削や長文読解のサポートとしてAIを活用し、自分の弱点を把握し、学力向上に役立てています。
AIの活用により、生徒たちは文法や表現方法など、自分では気づけなかった点を瞬時に指摘され、学習効率の向上につながっています。
こちらの事例の特徴は、AIを使った授業で生徒たちが自ら活用法を実験・検討し、ガイドライン作成に挑戦している点です。
生徒たちは、AIのメリットだけでなくデメリットも理解し、便利さを最大化するためのルール作りに積極的に参加しています。こうした取り組みは、AIとの付き合い方を考え、問題解決能力を養う貴重な機会となっています。
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③愛媛大学教育学部附属中学校:教師と生成AIが協働し教育の質と効率を両立
愛媛大学教育学部附属中学校では、授業の「振り返り」を効率化するために、対話型AI「CHATGPT」の導入を試験的に行っています。
生徒たちはタブレット端末を使用して、授業で学んだ内容や疑問点を入力し、AIが即座にフィードバックを提供します。
これにより、従来は教師が行っていた時間を要するコメント作成作業が効率化され、教師の負担が軽減されています。
この事例では、教師がCHATGPTのコメントをダブルチェックし、学習内容や生徒の理解度に応じた適切なフィードバックを提供することで、教育の質と業務効率性の両立が実現されています。
このバランスの取れた活用方法により、AIの利点を最大限に活かしつつ、生徒へのきめ細かな対応も維持されています。
④ベネッセ:生成AIが自由研究のテーマ選びをサポート
ベネッセは、小学生とその親をターゲットに「自由研究おたすけAI」をリリースしました。
このサービスは、生成AI「ChatGPT」の技術を利用し、自由研究のテーマ選定を支援し、子供たちの疑問に対してアドバイスを提供します。
子供たちは、自由研究にかけられる時間や興味のあるジャンルを入力することで、ラボリーから具体的なテーマやアイデアを受け取ることができます。
ベネッセのこの取り組みは、デジタルリテラシー教育においても保護者から好意的な反応を得ており、子供たちの学習をサポートする新しい形として注目されています。
⑤学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
学研ホールディングスは、オリジナル学習システム「GDLS」でChatGPTを活用し、個別に最適な学習アドバイスを提供するベータ版を開始しました。
このシステムは、生徒の学習履歴や理解度の変化に基づいて各生徒に対して適切な学習アドバイスを提供し、学習効果を最大化します。
学研オリジナル学習システム(GDLS)は、生徒が毎日ログインする習慣を促し、学習への意欲を高めます。さらに、学研メソッドはこれまでもAIを活用し、正答率に合わせた問題出題などを行っており、GDLSはその発展形となっています。
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