AIによる売上/需要予測の事例10選|3大メリットや4つの手法も紹介
近年、ChatGPTなどの生成AIの登場・普及が世界的に話題となっているように、AIは人々の暮らしや仕事をより便利に・効率的にするツールとして大きな注目を集めています。
AIのデータ分析力は、製品やサービスの売上げや需要予測にも活用することができ、在庫管理の最適化や効果的な販売戦略の立案に役立てることができます。
本記事では、AIによる売上/需要予測の導入事例について、導入のメリットとともにわかりやすくご紹介します。
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目次
売上/需要予測にAIを活用する3つのメリット
売上/需要予測にAIを活用するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- ①在庫量の最適化による欠品防止や廃棄の削減
- ②予測作業の自動化による業務効率化
- ③予測結果に基づく効果的な販売戦略の実行
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①在庫量の最適化による欠品防止や廃棄の削減
売上/需要予測により将来の販売数を正確に把握できるようになることで、需要に合わせて在庫量を最適化することができます。
これにより、欠品による販売機会の喪失を防止したり、過剰在庫による廃棄を削減することができます。
②予測作業の自動化による業務効率化
売上/需要予測を人間が行う場合、大量のデータの収集・整理・分析をすべて手作業で行わなければならず、相当な時間がかかります。
AIであれば、大量のデータを自動で一気に分析できるため、予測作業にかかる業務を大幅に効率化することができます。
③予測結果に基づく効果的な販売戦略の実行
AIは、大量のデータをもとに各製品の売上げや需要を正確に予測することができます。この予測結果をもとに、大きな売上げが予想される商品を積極的に売り出すなど、効果的な販売戦略を実行できるようになります。
売上/需要予測を行う4つの方法
売上/需要予測を行う方法として、以下の4つが挙げられます。
- ①移動平均法:在庫数が変わるたびに棚卸資産評価額を計算
- ②回帰分析:関係する諸要因を考慮して、期間あたりの平均売上高を予測
- ③指数円滑法:過去の時系列データから最新の売上/需要を予測
- ④機械学習法:大量のデータをもとに高精度の売上/需要予測を実現
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①移動平均法:在庫数が変わるたびに棚卸資産評価額を計算
移動平均法とは、商品の仕入れを行うたびに平均単価を割り出して売上原価とし、棚卸試算の評価額として取り扱う方法です。在庫数に変動があるたびに計算を行うため、計算の手間がかかります。
一方で、棚卸資産の評価額をリアルタイムで把握できるため、市場の変動などの諸要因に柔軟に対応した予測が可能となります。
②回帰分析:関係する諸要因を考慮して、期間あたりの平均売上高を予測
回帰分析は統計アプローチの一般的な手法ですが、売上/需要予測にも使うことができます。過去の販売数量や店舗の面積などの諸要因を用いて、一定期間における売上高の平均値を予測します。
③指数円滑法:過去の時系列データから最新の売上/需要を予測
指数円滑法とは、過去の時系列データをもとに将来の売上/需要を予測する手法です。より新しいデータに重みをおいて計算する加重平均法を採用することで、可能な限り最新の状況を考慮した予測が可能となっています。
④機械学習法:大量のデータをもとに高精度の売上/需要予測を実現
機械学習法とは、AIなどの機械技術に大量のデータを学習させ、販売数と関連のある要因を発見させることで将来の売上/需要を予測する手法です。多くのデータを考慮するため、極めて精度の高い予測が可能となります。
【業界別】売上/需要予測へのAI活用事例10選
売上/需要予測へのAI活用事例として、業界別に以下の10事例が挙げられます。
<小売業界>
- ①ローソン:AIが売上高を予測し、最適な場所へ新規出店の判断
- ②イトーヨーカドー:AI商品発注システムを導入し、発注作業を3割短縮
- ③ライフコーポレーション:AI需要予測システムで発注作業5割削減へ
<飲食業界>
- ④スシロー:寿司の注文数をAIが予測し、食品ロスの削減を実現
- ⑤リンガーハット:緊急事態下での需要も予測するAIシステムを導入
<ファッション業界>
- ⑥Heuritech:SNSの投稿からファッショントレンドを予測するシステムを開発
- ⑦ストライプ:AI需要予測による在庫管理により、大幅な利益改善に成功
<メーカー>
- ⑧キッコーマン:2000種類の商品の需要をAIが予測し、業務時間の大幅短縮を実現
<交通業界>
- ⑨NTTドコモ:タクシー乗車台数を90%以上の精度で予測するAIシステムを開発
<保険業界>
- ⑩ソニー損害保険:AIがコールセンターの入電を予測し、放棄率を改善
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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<小売業界>
①ローソン:AIが売上高を予測し、最適な場所へ新規出店の判断
ローソンは、AIが新規出店を判断するシステムを導入しています。AIが、人口や交通量、学校や病院の配置などのデータをもとに1日当たりの店舗売上高や採算性を予測し、売上が高い場所を探します。
これまでは、人による情報収集と判断で新規出店場所の判断が行われていましたが、AIを用いることで、売上を正確に予測し、最適な場所に店舗を出店できるようになりました。
これにより、効果的に店舗数を増やし、ファミリーマートやセブンイレブンに負けない規模の拡大を目指しています。
②イトーヨーカドー:AI商品発注システムを導入し、発注作業を3割短縮
イトーヨーカドーは、全国の店舗にAIを使った商品発注システムを導入しました。カップ麵やお菓子などの加工食品、冷凍食品、アイス等の合計約8000品目を対象に、AIが発注の提案を行います。
価格や天候情報、過去の客数などの情報をAIが分析し、最適な販売数を予測します。店舗の発注担当者は、AIの予測を踏まえて、最終的な発注判断を行います。
テスト運用では、発注作業にかかる時間を平均3割短縮でき、在庫数の最適化も実現するなど、大きな効果が上がりました。
③ライフコーポレーション:AI需要予測システムで発注作業5割削減へ
スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションは、AI需要予測による自動発注システムを導入しました。
過去の販売実績や気象情報などのデータをもとに、AIが各店舗における商品発注数を自動で予測・算出します。
これにより、発注にかかる作業時間を5割削減するとともに、食品ロスや欠品の削減を目指しています。
<飲食業界>
④スシロー:寿司の注文数をAIが予測し、食品ロスの削減を実現
回転ずしチェーンのスシローは、AIが寿司の注文数を正確に予測するシステムを導入しました。
スシローでは、一つ一つの皿にICタグが付けられており、どのネタがどれくらい食べられたかが全てデータとして記録されています。このデータをAIが分析して、各ネタの需要を正確に予測します。
これにより、どの種類のネタがどのくらい注文されるかを正確に把握し、適切な量の在庫を用意することができるようになり、食品ロスの削減を実現することができました。
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⑤リンガーハット:緊急事態下での需要も予測するAIシステムを導入
リンガーハットは、シリコンバレー発のAI企業と共同で、消費者の需要を予測するAIシステムを導入しました。
このAIシステムは、通常時の消費者の需要だけでなく、地震や台風等の自然災害や感染症などのパンデミックなど、あらゆる緊急事態のもとでの消費者の需要を予測できます。
これにより、適切な発注数の算出や在庫管理を行い、サプライチェーンの無駄を減らすことを目指しています。
<ファッション業界>
⑥Heuritech:SNSの投稿からファッショントレンドを予測するシステムを開発
フランスのスタートアップHeuritechは、SNSやブログなどのソーシャルメディアの投稿を分析し、ファッショントレンドを予測するシステムを開発しました。
ソーシャルメディアに投稿された写真やテキストデータから、ブランドに関する情報を抽出し、ファッショントレンドを予測するシステムであり、ルイヴィトンやDiorなどの有名ブランドにも導入されています。
これにより、在庫数の最適化や効果的な販売戦略の遂行が可能となり、スカートの売り上げが12%増加した例もあるとのことです。
⑦ストライプ:AI需要予測による在庫管理により、大幅な利益改善に成功
ファッションブランドを展開するストライプインターナショナルは、AI需要予測による在庫圧縮の試みを実験的に開始しました。「earth music&ecology」という同社のブランドの在庫管理にAIを活用する取組みです。
実験の結果、値引き率が14ポイント改善され54%となり、タイムセール時間も4割減るなどの成果が上がりました。また、店舗ごとの商品配分も、今までは都市型と郊外型の2種類しかありませんでしたが、AIによる分析の結果、8種類まで細分化しました。
ストライプは、この取組みを国内全ブランドに拡大し、在庫を8割まで引き下げ、仕入高を350億円まで削減する計画を立てています。
<メーカー>
⑧キッコーマン:2000種類の商品の需要をAIが予測し、業務時間の大幅短縮を実現
しょうゆメーカーのキッコーマンは、AI需要予測システムを導入し、約2000種類の商品の需要予測に活用しています。
キッコーマンでは、7人の受給担当者が、約2000種類もの商品の需要を分担して予測していました。これには大量の時間がかかり、また、予測は過去の経験に基づいていたため、担当者ごとに予測にばらつきがありました。
AI需要予測システムを導入したことで、予測精度が大幅に向上するとともに、予測にかかる業務時間を大幅に削減することに成功しました。
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<交通業界>
⑨NTTドコモ:タクシー乗車台数を90%以上の精度で予測するAIシステムを開発
NTTドコモは、タクシーの乗車台数を予測するAIシステムを開発しました。
このシステムでは、携帯電話の電波からリアルタイムで予測した各地域の人口と、過去の運行データや気象データを組み合わせ、それぞれのエリアにおけるタクシー需要を正確に予測します。
予測は10分単位で更新され、30分先までの乗車台数の予測を93~95%の精度で実現しました。これにより、1台当たり年間約28万円の売上向上が見込まれるとのことです。
<保険業界>
⑩ソニー損害保険:AIがコールセンターの入電を予測し、放棄率を改善
ソニー損害保険は、コールセンターにおける入電数をAIが予測するシステムを導入しました。各日・時間帯ごとの入電予測を行い、オペレーターのシフト配置を決定しています。
これまでは担当者の知見をもとに予測を行っていましたが、AIを導入することではるかに高精度で入電数を予測することが可能となりました。
これにより、顧客からの電話を受けられない確率(放棄率)が低下するとともに、オペレーターの最適なシフト配置による人件費の節約も実現しました。
企業がAI活用を成功させるための5つのポイント
企業がAI活用を成功させるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①中長期でのAI活用戦略の策定
- ②投資対効果の高い活用目的・方法の選定
- ③アジャイルアプローチでの開発・導入
- ④システムとルールの両面からのリスク管理
- ⑤研修等での社員のAI活用リテラシー向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①中長期でのAI活用戦略の策定
AIの性能進化が加速しているこれからの時代、足元の取り組みはもちろん、3年・5年スパンでAIをどこまでダイナミックに活用できるかが、企業の競争優位性に直結します。
また、AI活用のレベルは、比較的簡単な各社員のAIツール利用による生産性向上から、AI活用による業務プロセス革新、顧客向けサービスの進化、新サービス/商品の創出まで様々です。
そのため、中長期で目指すAI活用の姿を見据え、その実現に向け逆算したロードマップや、まず足元進めるべき活用を設計することが重要です。
②投資対効果の高い活用目的・方法の選定
AIは人間と同様、全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいた分析や対応、コンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、得意不得意が明確に存在します。
そのため、自社の業務の現状やAIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。
③アジャイルアプローチでの開発・導入
AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間~数ヶ月の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。
④システムとルールの両面からのリスク管理
企業がAI活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩などのリスクへの懸念が挙げられます。
確かに、社員に特段ルールを設けず、一般に公開されているAIツールを使用させるなどの場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。
一方で、セキュリティ対策を行ったシステム構築や、社員向けのAIの使用ルールやガイドラインの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。
⑤研修等での社員のAI活用リテラシー向上
AI(特に生成AI)を活用するにあたっては、同じAIを利用していても、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されるという点に注意が必要です。
そのため、AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解とスキル、すなわちAI活用リテラシーを向上させることが不可欠です。
そこで、研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員がAIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が重要となります。
企業がAIを導入するための4つのステップ
企業がAI導入を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。
<STEP1:活用業務の選定>
- 最新の市場動向のリサーチ
- 自社での活用対象業務の幅出し・選定
- AI活用の目的・目標の設定
<STEP2:活用範囲と業務プロセスの決定>
- 対象業務の棚卸し・効率化余地の検討
- AIを活用する業務範囲の決定
- AIと人間の役割分担の設計
<STEP3:試験開発・運用(PoC)>
- 要件定義・プロトタイプ開発
- 試験運用
- フィードバック収集・評価
<STEP4:本開発・運用>
- PoCを踏まえた本開発
- 運用・評価
- 活用方針・方法の継続的なカイゼン
各ステップについてわかりやすく紹介していきます。
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STEP1:活用業務の選定
AIは、定型的な社内業務の効率化から新規事業創出まで幅広い業務に活用可能だからこそ、AI活用の投資対効果が高い業務を適切に選定することが最も重要となります。
最新の技術や競合の活用動向をキャッチアップした上で、自社の活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、AIをどのような業務・目的・成果目標で導入するかを設定しましょう。
STEP2:活用範囲と業務プロセスの決定
大きなポテンシャルを持つAI活用ですが、人間と同様、どのようなシチュエーション・任せ方でも万能というわけではありません。
そのため、活用業務の現状・課題と、AI・人間の得意/不得意を踏まえた上で、どの範囲の業務をどのように人間と協業しながら任せるかを決定することが重要になります。
STEP3:試験開発・運用(PoC)
いきなり大規模な導入を進めるのではなく、比較的小規模な試験開発・運用(PoC)により、その有効性を確かめることで、AI活用全体の投資対効果を大きく高めることが可能です。
検証したい仮説を事前に明確にした上で、実際にプロトタイプでの試験運用を行い、活用業務や方法の改善ポイントを洗い出しましょう。
STEP4:本開発・運用
PoCで得られた改善ポイントに基づき、自社の経営課題・業務の現状にベストマッチするAI活用の内容やシステムの要件を再度設計し、本開発を行います。
また、本開発後も継続的に成果や活用状況を評価し、継続的なカイゼンを行うことで、自社でのAI活用のインパクトを最大化することができます。
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