【事例10選】VRのビジネスへの活用事例とは?5大メリットも紹介
関連技術の進歩やオンラインコミュニケーション需要の高まりなどを背景とし、今後急速に人々の生活や仕事に普及していくと考えられるVR。
エンタメから製造業まで様々な業界の企業が自社のビジネスへのVR活用を進めています。
一方で、「VRのビジネス活用のイメージが沸かない」、「実際に活用を進めている企業の取り組みをキャッチアップしたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はVRの業界別活用事例をメリットとともに分かりやすく解説します。
本記事を読めば、VRを自社のビジネスに活用するヒントが得られるかと思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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業界別VRのビジネスへの活用の目的と具体事例10選
①小売業界:幅広い顧客へのリーチが可能
小売業界へのVRの活用の目的は、リアルだけではできない幅広い顧客へのリーチが可能である点です。従来のリアルな空間でのプロモーションイベントでは、一定程度ターゲットが密集している都心部など以外で施策を実施しづらいという課題がありました。そこで、メタバース上でマーケティング施策を行うことで、幅広い地域のターゲットにリーチすることが可能です。また、メタバースを活用することで、従来若者世代との接点獲得に苦戦していた企業・商材のマーケティングを加速させることもできます。
具体事例:三越伊勢丹がVR空間上に百貨店を再現
三越伊勢丹は、独自のメタバース上の仮想都市である「レヴ ワールズ」を構築し提供しています。来場者はアバターの姿で、デジタル空間の「バーチャル伊勢丹」での買い物を楽しむことができます。店員のアバターも配置され、チャット機能を使った接客も受けられます。
また、メタバース上ではバーチャルファッションショーを楽しんだりや人気格闘漫画『刃牙』シリーズに登場する“地下闘技場”をモデルとしたイベントスペースが設けられ、アバターとなった一部の人気キャラクターに会えたり、関連するデジタルアイテムを入手したりすることもできます。
現在は婦人服や食品など180ブランドを扱っていますが、今後は家具や日用品にも対象を広げる方針です。友人のアバターと一緒に会話しながら買い物できるようにするなど機能も強化する予定です。他社がメタバース上で開催されるイベントへの出展が中心のなか、三越伊勢丹は既に独自のメタバース空間を構築・提供しており、小売・百貨店業界のメタバース活用をリードする存在といえます。
②ファッション業界:新たな顧客層の獲得による既存事業の売上向上
新型コロナウイルスの影響による外出制限によるオシャレ着需要の低下など、近年ファッション業界は苦境に立たされています。実店舗での新規顧客の獲得がますます難しくなるなか、VRプラットフォームとのコラボレーションやVR上のイベントへの出展により、普段自社のブランドの実店舗を訪れないような顧客層を獲得しようという動きが進んでいます。ファッション業界のマーケティングチャネルがSNSに大きくシフトしたように、今後VRも有力な顧客チャネルの1つに成長する可能性があります。
具体事例:BEAMSがVRイベントへの出展を通じリアル店舗への送客も
ファッション大手であるビームスはVR領域への参入を果たしています。具体的な取り組みとしては、世界最大のVRイベントである「バーチャルマーケット」に4度出展を行っています。バーチャルマーケットとはメタバース上にある会場で、アバターなどのさまざまな 3D アイテムや、リアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いでき、日本はもとより世界中から100万人を超える来場者を誇る世界最大のVRイベントです。
バーチャルマーケットでは、アバター用の洋服であるデジタルアイテムの販売やライブなどのイベントの開催が行われました。アバター用の洋服であるデジタルアイテムは、ビームスの2022年の秋冬商品を3Dモデルに起こした、Tシャツやワンピースなどの全7種類が販売されました。また、ライブでは池田エライザさんがバーチャルライブを開催し、メタバースに着想を得た新曲の発表も行われました。一方でリアルでの商品販売も行われ、バーチャルマーケットの出展を記念したリアルな洋服の商品もビームスの公式オンラインショップにて販売されました。4度目の参加の際には、関西のショップスタッフも含む約50名の社員が交代でバーチャル接客にあたり、VR上での接客を通じてリアル店舗への来客に繋がっている事例も生まれてきているとのことです。
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③エンタメ業界:VR領域での新たなビジネスの創出
検索エンジン、EC、SNSに並ぶ次なるキラーサービスになるとも言われているVRですが、多様な業界の企業がVR領域に参入しており、サービス構築を目論んでいます。VRがより人々に普及し、VR上で過ごす時間が増えるようになると、VR領域でのビジネスの市場規模も拡大していくと考えられます。
具体事例:ぴあがバーチャルライブ向けの独自メタバースを構築
ぴあ株式会社は、バーチャルライブプラットフォーム「NeoMe」(ネオミー)をスマートフォンアプリのサービスとして提供開始しました。「NeoMe」は、ユーザーがアバターとなってバーチャル空間に入り、バーチャルライブを中心に、ユーザー同士の交流やアバターのコーディネートを楽しむことができるスマートフォンアプリです。
ぴあは、「NeoMe」を通じて、次世代を担う若手パフォーマーに対して、バーチャルを起点とした新たな表現や活動の場を提供しています。ユーザーやファンは、同じ趣味の人とつながる場を提供し、パフォーマーとユーザーの新たなコミュニティづくりを支援します。
バーチャルライブの第1弾となる「NeoMe Live Vol.1」には、ヤバイTシャツ屋さんが出演しました。
④広告業界:VR市場拡大を受けたビジネス展開
メタバースが人々の生活に普及しより多くの時間を過ごすようになると、Web/SNS広告に比べ、より多くのユーザーデータを獲得できる可能性を秘めています。
具体事例:博報堂がVR空間上での広告枠の販売を開始
博報堂は国内企業としては初となる、VR空間内の広告枠の販売事業を開始しました。博報堂傘下のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)社は、デイリーアクティブユーザー約5000万人を誇る、世界最大級のゲーム型メタバース「Roblox(ロブロックス)」内での広告枠の販売を開始しました。広告主はRoblox内の建物や看板に画像や動画の広告を掲載することが可能です。広告費用は場所やサイズによるものの、2週間の掲載枠が80万円~とのことです。
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⑤製造業界:シュミレーションによるオペレーションの効率化
メタバース上でのデジタルツインなどを活用したシミュレーションは、生産ラインのオペレーション改善にむけた重要なソリューションです。センサーの情報を常時または一定間隔でデジタルツインに送信することにより、トラブルの予測や故障の防止に役立てることができます。
また、現場の状況変化にもシミュレーションで迅速に対応することできるため、最小限の時間とリソースでの対応を可能にします。例えば、設備設計者は、数回のシミュレーションを行うことで、様々な変数が生産量に与える影響を確認し、運用に活かすことができます。
具体事例:日産自動車がVR上での新車発表・試乗会を開催
日産自動車はメタバース上で、新型軽電気自動車「日産サクラ」の発表・試乗会を開催しました。イベントは参加者は世界最大のVR SNSプラットフォーム「VRChat」で開催されました。
発表会では日産副社長のアバターが登場し、ボイスレターが再生されました。
また、試乗会では日本の四季を感じられるドライブコースでバーチャルなサクラを運転することができます。自分で運転席に座って運転したり、後部座席に座ってみたりと、現実の試乗さながらの体験ができ、新車の特徴を確認することができます。メタバース上での試乗は通常の試乗とは違い、書類での手続きなども不要で、いつでもどこからでも体験可能なのが強みです。
このような試験的な取り組みを重ねるなかで、将来的に製品のプロモーションチャネルとしてメタバースが本格的に活用できるユースケースが確立されていくことが期待されます。
⑥不動産業界:業務効率の改善
VR・VRにより、不動産会社は様々な時間的制約を解消することができます。その結果、業務効率を向上させることができます。従来の方法では、不動産会社は顧客を物件に案内する必要がありましたが、VRを利用することで、この時間のかかる作業を省くことができます。不動産会社は「物件訪問」「物件への移動」の時間を省くことで、成約までの工数を大幅に削減することができます
具体事例:東急不動産が複数人での同時参加可能なVRモデルルーム
東急不動産は、複数人が同時に参加できるモデルルームをブランズシティ湘南台マンションギャラリーにて公開しました。こちらのVRモデルルームはVR企画制作を行うハシラス社のVRソリューションである「キネトスケイプ」を活用しています。
これまでのVRモデルルームは体験人数が1人に限定されていましたが、こちらのソリューションを活用することにより、複数人で同時にVRを視聴することが可能になり、ご家族と話をしながらのリアルな内見さながらの体験をすることが可能です。こちらの物件は若い世代がターゲットであることから、VRでの物件提案が有効と考え導入を決定したとのこと。今後も他のマンションギャラリーへの活用を進める方針です。
⑦医療業界:物理的・心理的障壁の低下
病院を訪れることが難しい地方在住の患者や移動が困難な患者など物理的障壁を持つ患者への治療の実現や、手術の効率化などにメタバースを活用することができます。
さらに、これまで病院での病気の診察やメンタルヘルスのカウンセリングは、患者にとって心理的障壁の高いものでした。そこで、VR空間上でアバターを通じた診療やカウンセリングを行うことで、お互いの表情や声色は感じ取りつつ、リラックスした状態でのコミュニケーションを実現できるのではないかと期待されており、既に国内でもサービスが開発・提供されて始めています。
具体事例:comatsunaがアバターを介した対話によるメンタルケアサービスを提供
デジタルヘルスケア・産業保健事業を手がけるcomatsuna社は先ごろ、VR/メタバースを活用した法人向け社員メンタル支援サービス「メンサポドクター」をリリースしました。メンズサポートドクターは、アバターを介したオンラインでのコミュニケーションによりメンタルヘルスの改善を図るもので、人見知りや対面でのコミュニケーションに抵抗のある方にも、気軽に利用できるメンタルヘルスケアサービスを提供することを目的とし開発されました。アバターを介したコミュニケーションが、対面での対話に比べ、人々の緊張を和らげ、より早く心を開いてもらい、悩みを相談しやすくすることができると考えているとのことです。
企業もこのサービスを導入することで、社員の潜在的な不満や不安、問題点をいち早く検出することができるとともに、社員のメンタル不調予防、離職予防に繋げることができます。
⑧観光業界:リアルでの観光客の動員
メタバース空間上に観光客を呼び込むメリットは新たな収益機会の獲得に留まりません。一度メタバースを訪れることで、その観光地の魅力を知った方が、その後実際にその観光地を訪れるきっかけに繋がることが期待されます。
具体事例:大日本印刷がVR空間上に「バーチャル秋葉原」をオープン
大日本印刷とAKIBA観光協議会は、現実世界と仮想世界を融合させた地域共創型XR街づくりプロジェクトとして、2022年4月に「バーチャル秋葉原」をオープンしました。生活者は、PC用アプリケーションやVRゴーグル、Webブラウザなどを通じて、世界のどこからでもいつでも秋葉原の魅力を楽しむことができます。仮想空間には、ショッピングができる店舗やギャラリースペース、広告看板などが設置されており、コンテンツホルダーをはじめとする様々な企業が、情報発信や販促活動を行う「第3のチャネル」として利用することができます。
秋葉原の特徴である商標の看板等も地元企業の協力のもと、バーチャルリアリティ上で再現します。一部のバーチャル店舗の中には、商品などを展示するスペースがあり、ECサイトへ誘導して購入に繋げることができます。
バーチャル秋葉原は、ユーザーの分身であるアバターが集まり、動画視聴や商品購入、バーチャルゲームへの参加などを同時に行うことができる空間です。現実の特性を踏まえ、企業はコンテンツを提供・実施するだけでバーチャル秋葉原の世界に参加できます。
また、クリエイターが同一IPの二次創作を行い、スペース内で展示・販売できるよう、新たなビジネススキームを準備しています。コンテンツはNFTで管理し、クリエイティブビジネスの健全な循環を実現するとのことです。
⑨自治体:地方創生の手段として活用
メタバース上に観光名所などを再現することで、いつでもどこからでも気軽に観光を楽しんでもらい、地方の魅力を発信することができます。
また、メタバース上での観光体験だけでなく、その後現地を訪れてもらうきっかけとする取り組みも、多くの地方自治体で進められています。
さらに、地方自治体に収益の還元されるNFTを販売することで、地方自治体にとっての新たな収益源や他地域に住む多様な人材との繋がりを獲得することができます。
具体事例:吉本興行×養父市がかつての日本一の鉱山をVR上に再現
吉本興業は人口約2万人、兵庫県北部に位置する養父市の観光名所を再現したVR空間をリリースしました。
ユーザーは、かつて日本一のすず鉱山として栄えた明延鉱山の坑道後を観光したり、吉本興行所属のタレントコラボした採掘ゲームを楽しんだり、市役所を訪れ、デジタル住民票交付してもらったりすることができます。
バーチャル養父のオープニングイベントには、吉本興業所属のお笑い芸人である、野生爆弾くっきー!さんやとろサーモンの村田さんらが参加し、その様子は吉本の映像配信サービス「FANCY」によってライブ配信されました。
また、イベントで養父市市長がアバター姿で登場し、「メタバースには無限の可能性があると思います。世界中どこからでも来ていただけるので、いろんな国の方々に来てもらって、養父市の自然や観光名所を楽しみ、市民とも交流してもらいたい。そして、ゆくゆくは現実世界でも体験しに来ていただければ。バーチャルでは100万人都市を目指しています」とコメントしました。
⑩金融業界:新たな営業チャネルとしての活用
メタバースの金融業界での活用目的として、新たな営業チャネルとしての活用できる点が挙げられます。メタバース空間上に仮想店舗を設置し、現実の店頭で行っていたような営業活動を行ったり、メタバースならではの体験を通じたプロモーションへの活用が想定されます。
具体事例:みずほ銀行がVR空間上に店舗を開設し、決済機能提供などを検討
みずほフィナンシャルグループは、2022年8月に開かれる世界最大のVRイベントである「バーチャルマーケット2022」への出展を発表しました。
銀行店舗をイメージした出店ブースでは、ボルダリング体験やオリジナル3Dモデルの配布をはじめ、ゲストを招いた金融知識に関する座談会が行われる予定です。座談会では、金融知識を有するみずほ社員と、アバターを介したコミュニケーションを取ることも可能となっています。
同社は、将来的にはVR空間上の店舗にて資産形成の相談や商談を実施したり、決済手段の提供などを含めたVR空間上での新たな経済活動に対するソリューションの提供を目指すとのことです。また、現状VR空間には統一された決済手段が存在しないため、みずほの決済サービス「Jコインペイ」の技術を応用した決済サービスの提供が検討されています。
VRが企業にもたらす5つのメリット
VRが企業にもたらすメリットとして以下の5つが挙げられます。
- ①VR領域での新たなビジネスの創出
- ②VRから得られたデータの活用による商品・サービスの改善
- ③新たな顧客接点の獲得
- ④社内コミュニケーションの円滑化
- ⑤研修への活用による社員のスキル向上
それぞれのメリットを分かりやすく解説していきます。
①VR領域での新たなビジネスの創出
1つ目のメリットはVR領域での新たなビジネスの創出です。検索エンジン、EC、SNSに並ぶ次なるキラーサービスになるとも言われているVRですが、多様な業界の企業がVR領域に参入しており、サービス構築を目論んでいます。VRがより人々に普及し、VR上で過ごす時間が増えるようになると、VR領域でのビジネスの市場規模も拡大していくと考えられます。
②VRから得られたデータの活用による商品・サービスの改善
2つ目のメリットはVRから得られたデータの活用による商品・サービスの改善です。VR上の人々の行動データはWebサイトやSNS上のものに比べ圧倒的にリッチになると考えられています。VR上ではいつ、誰と、どのような行動を取っていたかはもちろん、ウェアラブルデバイスの発展によりどのような感情になっていたかなどの多様なデータを取得できるようになると考えられています。
そのため、VR上のユーザーに商品やサービスを試してもらい、その反応をデータとして収集することで、商品やサービスの改善につなげることが可能です。
③新たな顧客接点の獲得
3つ目のメリットは新たな顧客接点の獲得です。VR空間にはいつでもどこからでもアクセスできるという特徴があり、コロナウイルス感染拡大の影響で実店舗での顧客との繋がりが希薄化するなか、新たな顧客接点としての活用が期待されています。
VRの特徴である、3Dのコンテンツで、スタッフが説明しながら商品やサービスを訴求できるという点を活かし、今までEC化に苦戦していた業界の企業にとって、貴重なオンラインでの接点になり得ると考えられます。
④社内コミュニケーションの円滑化
4つ目のメリットは社内コミュニケーションの円滑化です。コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの企業がリモートワークへの移行を進めています。
一方で、リモートワーク環境下ではホワイトボードを用いた共同作業ができない、相手の細かな表情や声色が読み取れずコミュニケーションが停滞する、自然発生的なコミュニケーションが減ってしまうなどの課題が存在します。
それらの課題をVR空間上のオフィス「VRオフィス」で一緒に働くことで解決することができるのではないかと期待されています。
⑤研修への活用による社員のスキル向上
5つ目のメリットは研修への活用による社員のスキル向上です。VRを企業の研修に活用することで、コンテンツが3Dで表示されるため学習効率が向上する、非常時のシチュエーションを簡単に再現できる、学習の時間的・地理的制約から解消されるなどのメリットがあり、社員のスキル向上に繋げることができます。
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