メタバースが実現するリアル店舗を超えた購買体験とは?MESON CEO 小林氏を直撃
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小林さんプロフィール
株式会社MESON 創業者 代表取締役CEO 大学にてネットワーク工学、大学院にてソフトウェア工学を専攻。学業の傍ら、在学中はいくつかのスタートアップでエンジニアとして開発プロジェクトに携わる。大学院卒業後、MESONを創業。 エンジニアのバックグラウンドも活かしながらプロデューサーとして博報堂DYホールディングス様との共同研究プロジェクトを始めとした複数のARプロジェクトに携わる。MESONが主催する日本発のグローバルコミュニティイベント「ARISE」のオーガナイザーも務め、日本におけるXRコミュニティの醸成にも取り組む。
MESON事業紹介
ーMESONの事業について紹介頂けますか。
小林:MESONは、XR Service Companyというふうに自社のことを定義しています。注力しているのはXR技術をメインとして、メタバースやWeb3もかけ合わせた領域になります。XRのビジネス設計や体験デザインをお客様の事業アセットと組み合わせて新たな事業価値創造に取り組んでいます。
基本的には、一般消費者向けのXRコンテンツを制作することが多いです。代表例としては、PORTAL with NrealやPROJECT 「GIBSON」があります。PORTAL with Nrealは、AR/MRグラスを使用したARオンラインショッピング体験です。ARグラスが普及した時代にオンラインショッピングという体験がどのように変化するかを我々で企画し、制作したものになります。PROJECT「GIBSON」は、ARとVRの両方の技術を使って、物理的に異なる空間にいる人同士が同じ空間を共有しているかのようなコミュニケーション体験を可能にする体験です。この体験は将来的には観光やショッピングでの活用も検討しています。
わたしたちは主に広告代理店、通信業者、不動産デベロッパーの企業様と共同で仕事に取り組むことが多いですね。その中でリサーチ、戦略策定、企画設計/体験プランニング・開発実装を一気通貫して行っています。
ー小林さんのMESONを立ち上げるまでの経緯を教えてください。
小林:私はもともと慶應義塾大学の理工学部卒で、その後東京大学の大学院に進学しました。大学院在学中にリクルート社のインターンで新規事業の立ち上げなどを経験した後、MESONを創業しました。現在MESONは6期目で、私自身エンジニアのバックグラウンドもあるのでその知識も活かしながら、現在はCEOとしてMESONの経営をしています。
リアルの店舗を超えた購買体験をメタバースで実現
ー早速ですが、メタバースはリテール分野でどんなユースケースが考えられるでしょうか。
小林:現在のメタバース市場の市場感を見たときに、コロナの影響もあって、客足が遠のき、小売業界でのインバウンド消費が減少したことが挙げられます。ですので、現段階のユースケースとしては来店しなくても店舗での購入ができるという体験(伊勢丹のREV WORLD等)が多いと考えられます。現在一般的になってきているのはゲーム感覚で入ることのできるフォートナイトの様な3Dメタバースです。ARを利用して試着体験を実現し、商品を知ってから購入するといった消費行動に繋げている例もあります。まだサービス化には至っていませんが、ECプラットフォームのShopifyではARとVRを行き来しながらできる購入体験の実験もおこなっています。VR空間上でショッピングを行い、家具を選択すると視界がAR画面に切り替わってリアルの家の中にARモデルとして家具を配置できるようになる、といった具合です。事業者としてはリアルの店舗を持つ必要がない一方で、ユーザーとしては実際に配置したときの感覚が確かめられるなど、相互に利益を得られるWIN-WINなサービスになる可能性もあると思います。
ーMESON様の足元でのメタバース×リテール領域での取り組みを教えて頂けますか。
小林:先程ご紹介したPORTAL with Nrealは実際にいくつかのブランド様からのお声がけもありました。また小田急百貨店との取り組みであるSAINT RAYでは、商品を売るというより百貨店でのショッピング空間を好きになってもらうことにトライしてみました。この取り組みでは現状まだまだAR/VRやメタバースの体験のみでは購買行動にまではつなげることが難しい一方で、既存のメディアを通じてでは伝えられなかったブランドの魅力やストーリーを、AR/VRやメタバースを利用することによって伝えられる可能性を感じました。売上向上に直接繋がるというよりは、店舗での滞在時間とロイヤリティ改善に効果があると見込んでいます。
XRによってリテール企業と顧客の結びつきを深める
ーなぜリテール分野の企業にとってメタバース活用が大きなビジネスチャンスといえるのでしょうか。
小林:実店舗、ECのどちらを軸とするかに関わらず、ブランド/メーカーや小売企業などにとっては、現時点では顧客のロイヤリティ向上やファンの獲得が最大のメリットだと考えられます。具体的には、ブランドストーリーの表現や製造工程の追体験などを没入感を持って顧客に体験させることができるという点で、既存のメディアよりメタバースは優れていると考えられます。小売業でも「広く薄く」の付き合いより「長く深く」付き合う方が大切です。事業者が顧客と「長く深く」の関係性を構築していくうえで、メタバースは有効なアピールの手段といえると思います。
ーそういったいい事例はありますか?
小林:ZEPETOの中でもいい事例は沢山出てきていると思います。世界観の中で遊んだり、端々でそのブランドを感じることのできるコンテンツが生まれています。Portal with Nrealでも世界観やブランドストーリーを伝えることに注力しています。
メタバースが当たり前になる未来を描きながら、今できる取り組みを
ーリテール企業のメタバース活用の方向性として将来的にはどのようなものが考えられますか?関連デバイスやテクノロジーの真価が進むといわれる5〜10年後の未来という前提ではどうでしょうか。
小林:そういった中長期的な話で言うと、メタバースを介した買い物は当たり前のものとなると思います。オンラインとオフラインの境界が消滅し、家からでも店舗で接客を受けているような接客が受けられたり、店舗で買い物をしているかのような体験ができるようになると思います。
同時に、今はリアルでの販売がメインとなっている家や貴金属、高級ブランドといったいままでECショップに載らなかったような高単価の商材や情報量が多い商品もオンラインで買うのが当たり前になるでしょう。
また、今以上に商材単一ではなく体験を含めたサービス設計に変わってくると思います。メタバース空間においても、自社の商品を魅力的に見せるために実店舗の商品レイアウトや空間作りを行うVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の様な考え方が必要になってくると思います。
ー足元のアクションとして、日本の企業はどんな取り組みを進めていくべきでしょうか。
小林:メタバース市場はまだ立ち上がり段階にあって先行きの不透明性も高いので、どの会社も何から始めていいか苦戦している状況にあります。実際私達も正解がわかっているわけではなく、実験を繰り返しながらメタバースそのものやメタバース市場に対する解像度を上げていっている段階です。顧客との接点を持ち、顧客のニーズを掴み、その上で企業の担当者が何をするべきか段々わかってくるのだと思います。
あくまでもメタバースは手段でしかなく、顧客のニーズに対する打ち手の幅が広がると捉えることが正しいメタバースの捉え方だと思います。どんな価値を提供したくて、そのためにメタバースが最善の手段となるのかどうかを考える必要があると思います。
今後はメタバースにもAI技術が必須に
ー最後に、今後の展望や取り組んでいきたいことを教えてください。
小林:われわれはポストスマートフォンとして、AR/VRやメタバースが当たり前に受け入れられると見据えてMESONを経営しています。
AR/VRやメタバースが当たり前に受け入れられるということは一般消費者が日々増えるインターフェースが変化するタイミングであり、この変化に日本企業が対応できるかどうかは、日本が世界で打ち勝っていけるかどうかを占うことになると思っています。
また、私達は日本だけに留まるのではなく、世界を代表するような事例を作っていきたいと考えています。そしてここ最近は世の中が想像していたよりもテクノロジー、特にAIの進化のスピードは速く、AI技術がAR/VRやメタバースの体験にとっても今後不可欠なものになっていくと思っています。
AIが当たり前にあることを前提にしたAR/VRやメタバースの体験構築を、様々な企業さまと取り組んでいきたいと思っています。
ー今回はお忙しいところ貴重なお話をありがとうございました。今後も業界の注目企業/ビジネスパーソンを取材し、メタバースのビジネス活用の最前線に迫っていきますので、どうぞお楽しみに。
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