メタバースを五感で体験するための技術とは?現在地から展望まで解説

関連技術の進歩やオンラインコミュニケーション需要の高まりなどを背景とし、今後急速に人々の生活や仕事に普及していくと考えられるメタバース。

現在、MetaQuestなどのVRヘッドマウントディスプレイの性能向上により、メタバースに没入しているかのような体験が人々から人気を集めています。

 

そんななか、よりメタバースへの没入感を高めるべく、視覚・聴覚以外の触覚や嗅覚などの再現に関する研究・開発がMeta社などの大手企業や研究機関によって進められています。

 

一方で、「メタバースを五感で体験するための技術としてどんなものがあるのか知りたい」、「各技術の最新の動向や今後の展望を抑えておきたい」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、メタバースを五感で体験するための技術をわかりやすくご紹介します。

本記事をお読みいただければ、メタバースに関する最先端の技術の動向について効率良くキャッチアップできるかと思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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メタバースを五感で体験できることの重要性とは

次世代技術の進化により、メタバースを視覚・聴覚のみならず触覚や嗅覚などの五感をもって体験できるようになると、メタバース上での体験と現実世界での体験の区別が難しくなるほど没入感の高い体験ができるようになると考えられています。

 

メタバース上での体験の価値は、どの程度メタバース空間への没入感を感じられるかが非常に重要な要素であり、そのためにメタバースを五感で体験できることは非常に重要です。

 

また、メタバース上では現実世界と比べ物理的な制約や予算的な制約が少ないため、圧倒的に多様でリッチな体験が構築できると考えられます。

そのため、関連技術の進化に伴い、買い物やスポーツ、ライブなどあらゆる娯楽から仕事まで、あらゆる体験がメタバース上に移行していくと考えられます。

 

その先には、映画「レディプレイヤー1」で描かれた世界観のように「睡眠と食事以外は全てメタバース上で行う時代」がやってくるかもしれません。

 

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メタバースを五感で体感するための技術5選

メタバースを五感で体感するための技術5選

メタバースを五感で体感するための技術として以下の5つが挙げられます。

 

  • ①視覚・聴覚:VRヘッドマウントディスプレイ
  • ②触覚:ハプティクス技術
  • ③嗅覚:嗅覚ディスプレイ
  • ④味覚:味覚ディスプレイ
  • ⑤五感全体:BMI(ブレインマシーンインターフェイス)

 

それぞれの技術についてわかりやすく紹介していきます。

①視覚・聴覚:VRヘッドマウントディスプレイ

視覚・聴覚:VRヘッドマウントディスプレイ
(画像:Meta)

メタバースの視覚と聴覚での体験を実現するのが、MetaQuestに代表されるVRヘッドマウントディスプレイです。VRヘッドマウントディスプレイは、ユーザーの視覚と聴覚を刺激することでメタバース空間に没入しているかのような体験を提供するデバイスです。

 

近年の関連技術の進化により、ディスプレイの画質向上や、スピーカーの立体音響への対応など、よりメタバースに入り込んでいるような体験ができるようになっています。

 

このような体験価値の向上がユーザーに受け、2022年末までに世界で累計3,000万台のVRヘッドマウントディスプレイが出荷される見込みとの予測も立っているほどです。

 

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②触覚:ハプティクス技術

触覚:ハプティクス技術
(画像:Meta)

メタバースの触覚での体験を実現するのが、ハプティクス技術です。ハプティクス技術とは、メタバース空間での体験と連動した振動や圧力、動きを皮膚に与えるテクノロジーのことで、手に装着するグローブ型のデバイスや、全身に装着するボディスーツ型のデバイスなどが研究されています。

 

既に足元で普及している例としては、2022年10月にMeta社から発売されたMetaQuestProのコントローラーには、メタバース上での体験と連動し振動する機能が搭載されており、ユーザーはゲームなどのメタバース上での体験に没入できるようになりました。

 

また、中長期的な展望としては、Meta社が約7年ほどグローブ型のハプティクスデバイスの研究に取り組んでおり、将来的な実用化を目指しています。同社CEOのマークザッカーバーグ氏は、メタバースへの没入感において触覚は視覚や聴覚と同程度重要な感覚だと考えており、リアルな触覚をユーザーに伝えるためのグローブの開発に取り組んでいます。

③嗅覚:嗅覚ディスプレイ

嗅覚:嗅覚ディスプレイ
(画像:OVR Technology)

メタバースの嗅覚での体験を実現するのが、嗅覚ディスプレイです。嗅覚ディスプレイとは、メタバース空間での体験と連動した香りの粒子を放出する鼻付近に装着するデバイスのことです。嗅覚は視覚・聴覚と比べると再現技術の進化が遅れているものの、世界中の大学や企業などが研究を進めており、一定の成果が上がっています。

 

研究事例として、東京工業大学が複数の成分を調合することで多様な香りを再現する嗅覚ディスプレイの研究を進めており、2022年4月にディスプレイの開発に成功したとの発表がありました。

④味覚:味覚ディスプレイ

味覚:味覚ディスプレイ
(画像:明治大学 宮下研究室)

メタバースの味覚での体験を実現するのが、味覚ディスプレイです。味覚ディスプレイとは、メタバース空間での体験と連動した味の成分を再現するデバイスのことです。味覚は視覚・聴覚と比べるとかなり再現技術の進化が遅れており、味覚を直接刺激するのではなく、嗅覚や脳への電気信号を活用した再現が現実的ではないかと考えられています。

 

それでも研究に取り組む事例は存在しており、明治大学の宮下芳明教授は、デジタルコンテンツ技術の展示会「DCEXPO 2021」で、ディスプレイに映った料理の味を再現して出力できる「Taste The TV」を出展しました。

 

このTaste The TVは、ディスプレイと食塩水やグルタミン酸水溶液などが入った約10本のカートリッジで構成されています。これらの成分を調合することでできた味成分をシートの上に載せ、味わえる仕組みとなっています。現状の再現度は再現対象の食品によって様々とのことですが、今後の研究の進展に注目が集まっています。

⑤五感全体:BMI(ブレインマシーンインターフェイス)

五感全体:BMI(ブレインマシーンインターフェイス)
(画像:WIRED)

メタバースに五感丸ごと没入しているかのような体験を実現するのが、BMI(ブレインマシーンインターフェイス)です。ブレインマシンインターフェースとは、その名の通り脳と機械を繋ぐシステムのことで、脳波を利用して機械を操作したり、逆にカメラ映像などを脳への直接刺激によって目や耳を介さずに入力することを可能にする技術のことです。

 

大人気SF映画「マトリックス」ではこのBMIが前提となった世界が描かれており、多くの人がBMIの概念を知るきっかけとなりました。

 

研究の段階としてはいまだ研究開発の域にあるものの、近年イーロンマスク氏が率いるニューラリンク社やMeta社が積極的に実証実験や臨床試験を行っており、世界中から注目が集まっています。

 

もしこの技術が実用化に至れば、人々はメタバースの世界に完全に入り込むことができ、人々の生活やビジネスはもちろん、人間の在り方自体を根底から覆し得る、極めて大きなインパクトをもった技術といえます。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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