Apple Vision Proの建設業界での活用が注目される3つの理由
2023年6月に、遂にAppleから初のXRデバイスである「Apple Vision Pro」が発表され、魔法のような新たな体験を実現する、同社の長年のプロダクトデザインの集大成として、大きな注目を集めています。
Apple Vision Proはその圧倒的な性能の高さや使いやすさから、建設業界での活用が進むと考えられており、多くの建設業界の企業から注目されています。
そこで今回は、Apple Vision Proの建設業界での活用が注目されている理由を、活用するメリットなどとともに分かりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- Apple Vision Proの概要や注目ポイントを知りたい
- Apple Vision Proが建設業界にもたらす影響を抑えておきたい
- 建設業界のビジネスにどのように活用できるのか知りたい
本記事を読めば、建設業界の視点から抑えておくべき、Apple Vision Proに関する情報・知見を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもApple Vision Proとは?
Apple Vision Proは、2023年6月に発表された、Apple初のゴーグル型XRヘッドセットデバイスです。Appleは、このデバイスをPC、スマートフォンにとって変わる「空間コンピューティング」デバイスとして発表しています。
発表会では、Apple Vision Proを装着して、映画やゲームなどのエンタメ体験だけでなく、デスクワークや製品の設計・シミュレーションなどでの利用が紹介され、日常生活からビジネスユースまで幅広い用途で利用されるデバイスとして開発されていることが伺えます。
Apple Vision Proは、Appleが「MacbookやiPhone、Apple Watchなど、長年開発してきた数々のプロダクトデザインの集大成」と発表しています。
そのため、Meta Questなどの既存のXRデバイスと比べ、圧倒的な性能の高さと使いやすさを実現するのではと、世界中から大きな注目を集めています。
本デバイスの価格は日本円で約50万円で、2024年初頭にアメリカで発売された後、2024年中にその他の国と地域でも販売される予定です。
建設業界でのApple Vision Proの活用が注目されている3つの理由
建設業界でのApple Vision Proの活用が注目されている理由として、主に以下の3つが挙げられます。
- ①施工の効率化・標準化
- ②シミュレーションのリードタイムやコストの削減
- ③メンテナンス・アフターサービスの充実
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①施工の効率化・標準化
Apple Vision Proを施工管理に活用することで、施工の効率化と標準化を図ることが可能です。そもそもどのような計画で施工を行うべきかの検討にシミュレーションを活用したり、施工を進める中での計画の修正に施工の進捗データを基にした分析を活用したりすることができると考えられます。
②シミュレーションのリードタイムやコストの削減
Apple Vision Proの活用により、デジタル上で仮説検証を行うことで、これまで物理的な試作品や試作ライン、物理的な検証に費やしていた時間を最小限に抑え、さらにコストも抑えながらシミュレーションのスピードを向上させることができます。
建物の建築は一度施工してしまうと修正が難しいことや、リアルの世界でモックアップを作ってシミュレーションを行うのには大きなコストや工数がかかるという課題があります。しかし、Apple Vision Proを活用し、バーチャルの世界でシミュレーションを重ねることでそれらの課題を解消することが可能です。
③メンテナンス・アフターサービスの強化
Apple Vision Proを活用することで建設後の製品に関する情報収集、シミュレーションを行う事が可能になると考えられます。これらの情報があれば、仮に建物に問題があったとしても、建設会社は適切なタイミングでメンテナンス・アフターサービスを提供しやすく、お客様のニーズに迅速に対応することができます。これが顧客満足度の向上につながり、LTVの最大化が期待できます。
建設業界でApple Vision Proを活用する3つのメリット
建設業界にApple Vision Proを活用するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ①従来のXRデバイスを圧倒する性能の高さ
- ②使いやすさ・装着負担の小ささ
- ③企業のサービス/システムの開発のしやすさ
それぞれのメリットについて分かりやすく紹介していきます。
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①従来のXRデバイスを圧倒する性能の高さ
1つ目の理由は、従来のXRデバイスを圧倒する性能の高さです。
Apple Vision Proは、片目だけで4KTVを超える画素数を誇る高精細ディスプレイやユーザーの仮想空間での没入度を調節可能なデジタルクラウンを搭載するなど、HolonesやMeta QuestProなどの従来のXRデバイスを圧倒するスペックを誇っています。
そのため、エンタメやデスクワークでの利用に比べ、より高い性能が求められる、建物の設計や建設のシミュレーションなどでの利用に特に真価を発揮します。
②使いやすさ・装着負担の小ささ
2つ目の理由は、従来のXRデバイスと比較し、使いやすく・装着負担が小さく進化している点です。
従来の製造業の業務におけるXRデバイス活用における課題として、コントローラーにより手が塞がってしまう点やデバイスが重く長時間の使用が難しい点が存在しました。
一方で、Apple Vision Proは、指のジェスチャーや目線、Siriでの音声入力による、直感的な操作が可能です。Questなどの類似デバイスが、コントローラーを両手に持って操作しないといけないのに比べ、優れたUI/UXを提供しています。
また、Apple Vision Proはバッテリーを本体に内蔵するのではなく、コードで繋ぎポケット等に収納するアプローチを取っていることから、類似デバイスであるMeta Quest Proなどと比べ、約40%ほどの軽量化に成功しており、装着負担がかなり軽減されています。
③企業のサービス/システムの開発のしやすさ
3つ目の理由は、企業がApple Vision Pro向けのサービス/システムを開発しやすい環境が整備されていることです。
AppleはVision Proの発売に伴い、新しいOSである「Vision OS」を提供しています。このOSでは、Vision Proに特化した3Dベースでのサービス/システムを開発し、iPhoneなどと同様にAppストアにリリースすることが可能です。
また、世界最大手のゲームエンジンであるUnityとの連携も発表しており、Unityで開発した3Dベースでのサービス/システムをVision Pro向けにリリースすることが可能とのことです。
建設業界でのメタバース/XRの活用事例8選
メタバース/XRの建設業界における活用事例として以下の8つが挙げられます。
- ①大林組:4D施工管理システムを開発
- ②鹿島建設:国内初、建築の全フェーズでメタバースを実現
- ③清水建設:都市デジタルツインの基盤を整備
- ④コマツ:建設現場に生産性向上にむけメタバース/XRを導入
- ⑤奥村組:メタバース上で設計・施工のシミュレーション
- ⑥竹中工務店:プロセス全体にメタバース/XRを活用
- ⑦日立製作所:メタバース/XRによる業務プロセス改善
- ⑧東急建設:BIMを使った仮設計画ツールの運用
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①大林組:4D施工管理システムを開発
大林組は建築物の3Dモデルに建設現場周辺の地形やクレームの位置などの施工現場の状況を、デジタル上のモデルにリアルタイムに反映する「4D施工管理システム」を開発しました。
このシステムは、北海道で2023年3月の開業を控える「エスコンフィールドHOKKAIDO」の建設現場で実証が進められています。この実証では、クレーンに設置したセンサーからの位置や方角のデータを基に、クレーンの動作に関するデータをリアルタイムに収集し、メタバースに反映することで、施工の品質向上はもちろん、各業者の作業の出来高の算出にも活用されています。また、現場に設置された入退場システムから取得した作業員の入退場データを基に、各作業を担当する作業員の工数を測定し、作業の効率化に繋げる試みも行われています。
②鹿島建設:国内初、建築の全フェーズでメタバースを実現
鹿島建設はオービック御堂筋ビルの新築工事において、プロジェクトの全フェーズにおいてBIMによるメタバースを活用することで、プロジェクトの各フェーズにおける建物データの連携・共有を可能にしました。
企画・設計フェーズでは周辺環境へのビル風のシミュレーション、建物内のシミュレーションに、施工フェーズでは工事プロセスのデジタル化と進捗管理、MRの活用による、実際の施工状況の確認に、維持管理フェーズでは、ファシリティマネジメントのデータへの連携、日常の点検から得られた情報を収集し、その後の建築の企画・開発への活用になど、多岐にわたるユースケースでメタバースを活用しました。
メタバースを活用することで、建物自体の高品質化はもちろん、企画・設計から竣工後の管理・運営までの一連の建物にまつわる情報をデジタル化し、お客様に提供することが建物の更なる価値向上に繋がると考えているとのことです。
③清水建設:都市デジタルツインの基盤を整備
清水建設はオートデスクと共に、都市デジタルツインの実装に向け、データ基盤やプラットフォームを整備するプロジェクトを推進しています。都市デジタルツインとは、都市内の建物や道路などの静的データに加え、街での人流や物流、エネルギー―消費などの動的データなどを統合した大規模なデジタルツインのことを指します。
この都市デジタルツインを活用することで、より人が暮らしやすい都市開発が可能になると考えられています。
今後は、この都市デジタルツインをスタートアップなどの企業に提供することで、豊洲エリアのスマートシティ化を推進しつつ、そのノウハウを他都市の開発計画に対しても展開していく予定です。
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④コマツ:建設現場に生産性向上にむけメタバースを導入
総合機械メーカーであるコマツは、建築現場での生産性向上にむけメタバースを導入しています。コマツのメタバースは、資材、建設機械、資材、作業員の位置・稼働データと建物の図面データを組み合わせた遠隔管理システムです。これらのデータをPCの画面上に表示するように表示します。施工管理者などは、現地事務所や本社、支店から現場の隅々まで状況を確認することができます。
この取り組みにより、少人数での工事現場の効率的な管理や資材・機材を現場で探す時間やレンタル費用の削減、車両の待ち時間削減などの実現を期待しています。
同社は、これらの取り組みにより、日本の直面する課題である少子高齢化による労働人口の減少、また世界的な課題であるCO2排出量の増加の解消に貢献できるとしています。
⑤奥村組:メタバース上で設計・施工のシミュレーション
奥村組はメタバース上でのシミュレーションにより設計・施工の工数削減を目指すため、独自のメタバース空間である「メタバース技術研究所」の構築を発表しました。
メタバース技術研究所の構築にはSynemon社のVR構築サービス「NEUTRANS」が活用されたました。
従来は建築用のモックアップを作るのは当たり前のことでしたが、原寸大で製作する場合、多くの産業廃棄物を発生させることになります。また、縮小版で制作する場合も、手戻りが発生した際に膨大な工数が発生するという問題がありました。
そこで、同社の技術研究所内にある実験棟をメタバース化することで、設計や施工の細部の精度を高め、室内環境の際現に必要な施工にかかる工数を削減することができます。
メタバース技術研究所では、4種類の日射条件が室内環境の快適性や省エネルギーに与える影響を検証することができます。仮想空間上で工事関係者の合意形成を行い、実験結果をもとに実際の増改築工事を進めることで、手戻りを減らすことが期待できます。
また、同社はメタバース技術研究所の取り組みによりSDGs(持続可能な開発目標)を推進するとしています。その理由は、現実の素材を一切使用しないことにあります。
⑥竹中工務店:プロセス全体にメタバースを活用
竹中工務店は、ビルの営業から設計、生産準備、施工、維持保全までのプロセス全体をカバーするように複数のメタバースを構築し活用しています。
メタバースの機能を持つ主なシステムとしては、データ活用基盤の「建設デジタルプラットフォーム」やビル運用のシステムである「ビルコミュニケーションシステム」などがあります。
具体的には、メタバースを活用し、施工の予測とシミュレーションを行うことで、施工計画を立てる際の意思決定をサポートしたり、現場の状況をリアルタイムで把握し、施工現場での作業を最適化することができます。さらに、建物の維持保全の点に関しては、設備や機器の点検・修理のタイミングをメタバースを活用して判断することで、メンテナンスの計画を立てることができます。
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⑦日立製作所:メタバースによる業務プロセス改善
日立製作所の開発した「都市・建物向け XRトータルソリューション」は地図や建物・設備のBIM、点群データなどを活用し、仮想空間に、現実世界の空間情報とひもづいたメタバースを構築することが可能です。また、メタバースに架空のオブジェクトをXR技術で可視化し、複数ユーザー間の共有やユーザーごとの表示制御ができます。オブジェクトは、ユーザーが簡単な操作で配置や移動、削除、サイズ変更を行うことが可能です。
メタバースの活用によって、業務プロセスの改善や現場の可視化を実現し、製造業のDXを推進しています。
⑧東急建設:BIMを使った仮設計画ツールの運用
東急建設株式会社は、BIMを使った仮設計画ツールの運用を開始しました。BIMとは、建物を実際に建設する前に、現実と同じ建物の立体モデルをコンピューター上で作成することです。
同社は、設計施工案件において基本設計モデルに本ツールを活用し、「初期施工計画モデル」を作成しました。その後、新たな情報を付加しながら共通データ環境下で運用を続け、施工段階における「実施施工計画モデル」に進化させることができます。
さらに、作業所・社内各部署・専門工事会社などが共通データ環境下で相互に連携できるため、現実の施工と同じような状態を作り出すことができ、仮設計画におけるメタバースによる施工計画業務の効率化が可能となりました。
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