工場におけるAI活用事例25選|不良品検知〜設計の自動化まで

近年、ChatGPTなどの生成AIの登場・普及が世界的に話題となっているように、AIは人々の暮らしや仕事をより便利に・効率的にするツールとして大きな注目を集めています。

 

特に、人手不足に悩まされる工場では、AIを活用した作業の自動化の動きが進んでおり、生産性の大幅な向上を達成している企業もあります。

 

本記事では、工場におけるAIの活用事例について、メリットや注意点などとともにわかりやすくご紹介します。


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目次

工場にAIを導入する3つのメリット

工場にAIを導入する3つのメリット

工場にAIを導入するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①製造/検品/設計の自動化・効率化
  • ②製品の品質の向上・標準化
  • ③作業員の安全性の向上

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①製造/検品/設計の自動化・効率化

オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ
(画像:impresswatch)

AIを導入することで、工場でのあらゆる工程を自動化・効率化することができます。AIを搭載したロボットによる製品の運搬や仕分けのほか、画像認識AIによる検品作業の自動化、生成AIによる設計図書の自動生成などが可能です。

②製品の品質の向上・標準化

AI 製品の品質の向上・標準化 トヨタ
(画像:トヨタ)

AIが製造、検品、設計などを行うことで、人為的なミスが発生するリスクを軽減し、製品の品質を向上させることができます。

 

また、作業員の技術レベルの差により品質にばらつきが生じることを防ぎ、製品の品質を標準化することも可能となります。

③作業員の安全性の向上

JFEスチール:画像認識AIが製鉄所の作業員を検知し安全を確保
(画像:JFEスチール)

AIを搭載したカメラを工場内に設置することで、工場で働く作業員を常時監視し、危険なエリアに立ち入ってしまった場合に警告音を発して生産ラインの稼働を止めることが可能となります。

 

これにより、作業員による事故を未然に防止し、その安全を確保することができます。

工場へのAI導入事例25選

工場へのAI導入事例として、以下の25事例が挙げられます。

 

<製造業務の自動化・効率化>

  • ①ブリヂストン:タイヤ成形をAIが自動化し生産性と品質が大幅に向上
  • ②横河電機:AIにより35日間にわたる化学プラントの自動制御に成功
  • ③神戸製鋼所:AI-OCRの導入によりデータ化入力作業時間を削減
  • ④シーメンス:製造業向けアプリケーション開発を生成AIで効率化
  • ⑤オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ
  • ⑥HPE:自然言語でのロボット操作を生成AIで実現
  • ⑦スプレッド:AIカットロボットでレタスの芯抜き作業を完全自動化
  • ⑧東芝:数日かかっていた品質低下の原因解析にかかる時間を1日に短縮
  • ⑨スカイディスク:鋳造条件をスコアリングするAIを開発

 

<検品業務の自動化・効率化>

  • ⑩トヨタ:鍛造品の磁気探傷検査の自動化により人員を半分に削減
  • ⑪キューピー:いちょう切りニンジンの検査工程をAIで自動化
  • ⑫ダイセル:AI画像解析システムで設備の不具合を事前に検知し、予防
  • ⑬月島食品工業:マーガリンフィルムの外観検査をAIで自動化へ
  • ⑭ナブテスコ:風力発電機の旋回部の検査をAIが実施、故障の回避へ
  • ⑮三井物産グローバルロジスティクス:AIが製品の自動封函の異常を検知するシステムを導入

 

<機械設備メンテナンスの自動化・効率化>

  • ⑯トヨタ:AIで機械の寿命を予測し、部品の交換頻度を必要最小限に
  • ⑰花王:製品製造プロセスの異常をAIが検知、新人オペレータをサポート
  • ⑱前川製作所:冷凍機の故障の兆候をAIが事前に察知し、保守コストの削減

 

<設計業務の自動化・効率化>

  • ⑲パナソニック:電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用
  • ⑳チューリング:自動運転電気自動車を生成AIでデザイン
  • ㉑トヨタ:生成AIを使った車両設計ツールを発表
  • ㉒プロテリアル:ケーブル製品開発にAIが生成した素材の断面図を活用
  • ㉓東洋エンジニアリング:工事遅延を事前に予測し設計計画を最適化

 

<作業員の安全確保>

  • ㉔JFEスチール:画像認識AIが製鉄所の作業員を検知し安全を確保
  • ㉕東京エレクトロン:AIカメラで労災を予防するシステムを開発

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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<製造業務の自動化・効率化>

①ブリヂストン:タイヤ成形をAIが自動化し生産性と品質が大幅に向上

ブリヂストン:タイヤ成形をAIが自動化し生産性と品質が大幅に向上
(画像:ブリヂストン)

ブリヂストンは、工場でのタイヤの製造工程の中でも特にボトルネックとなっていたタイヤの成形をAIにより自動化・自動制御することで、品質の担保や生産性向上を実現しています。

 

数百のセンサーによってゴムの形状などのデータを収集し、AIが分析することで高精度なタイヤを成形することに成功しました。万が一の事態に備え、人の手が必要な時には警告音がなるように設定されています。

 

これにより、生産性は2倍に上昇し、品質は15%向上するなど、大きな成果を出しました。

②横河電機:AIにより35日間にわたる化学プラントの自動制御に成功

横河電機:AIにより35日間にわたる化学プラントの自動制御に成功
(画像:横河電機)

横河電機は、2022年3月、AIが化学プラントを35日間、自動制御することに成功したと発表しました。化学プラントでは、様々な化学物質の精製・精錬が行われ、いずれの過程においても化学反応を伴うため、これを制御するためには高い精度・信頼性が求められます。

 

今回の実証実験では、化学物質の品質や液面レベルを適切な状態に保ちつつ、排熱を最大限活用するという複雑な条件をAIが満たしたまま、品質安定化・生産性向上・省エネ制御を達成しました。

 

化学プラントは、外気温の急激な変化などが発生すると、それに対応するために作業員が主導介入しなければならず、これが作業員の負担となり、生産性を妨げていました。AIによる自動制御が完全に実現されれば、手動介入が不要となり、プラントの生産性を大きく向上させられるようになるでしょう。

③神戸製鋼所:AI-OCRの導入によりデータ化入力作業時間を削減

神戸製鋼所:AI-OCRの導入によりデータ化入力作業時間を削減
(画像:AI Inside)

神戸製鋼所では、全国の工場現場において納品書や作業証明書、アンケート内容のデータ化作業を手入力で行っていました。これらの書類は基本的に紙で送られてくるので、従業員が一枚一枚、紙にかかれた手書きの内容をデータ化しなければならず、大きな負担となっていました。

 

この問題を解決するため、神戸製鋼所は、DX SuiteというAI-OCRを導入しました。OCRとは、Optical Character Recognition(光学的文字認識)のことで、活字や手書きの文字を認識し、データ化することができる技術です。AIを搭載することで、擦れた文字や手書きの文字も正確に読み取ることが可能となっています。

 

AI-OCRの導入により、社内アンケートのデータ化入力作業にかかる業務時間を半分以下にまで削減することに成功しました。また、作業証明書のデータ化入力作業についても、1か月あたり3.3時間の短縮効果が出たとのことです。

 

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シーメンス:製造業向けアプリケーション開発を生成AIで効率化

シーメンス:製造業向けアプリケーション開発を生成AIで効率化
(画像:ロイター)

シーメンスは、生成AIとデジタルツイン技術を駆使して、製造業のアプリケーション開発をサポートするサービスを提供しています。

 

本サービスでは、最小限のプログラミング知識でウェブアプリを構築できるツールに生成AIを導入することで、顧客のアプリ開発プロセスを効率化しています。

 

主に製造業での利用を想定しており、エンジニアは生成AIからの提案によって工場の生産性を最大化する部品の組み合わせやサイズの最適化などが可能となります。

⑤オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ

オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ
(画像:impresswatch)

オムロンサイニックエックス(OSX)は、ロボットアームが自然言語の指示に応じて動作する技術の開発に取り組んでいます。

  

この技術は、食材の切り方など、特定の作業動作を学習したAIモデルが生成することで実現されます。

  

このプロジェクトは、人間の思考プロセスを模倣することで、ロボットがより自然な方法でタスクを実行できるようにすることを目指しています。

⑥HPE:自然言語でのロボット操作を生成AIで実現

HPE:自然言語でのロボット操作を生成AIで実現
(画像:MONOist)

Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、生成AIを用いて、産業用ロボットの操作をサポートするシステムのデモを実施しました。

 

このシステムでは、自然言語および画像を用いた対話で、工場作業員がロボットと効率的にコミュニケーションを取れるように設計されています。

 

AIアシスタントは、数百ページのマニュアルを用いたトレーニングを受け、作業者の質問に自然言語で対応し、ロボット操作の効率と安全性を大きく向上させるとしています。

 

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⑦スプレッド:AIカットロボットでレタスの芯抜き作業を完全自動化

スプレッド:AIカットロボットでレタスの芯抜き作業を完全自動化
(画像:ロビット)

植物工場を運営するスプレッドは、食品のカットを自動化するため、AIカットロボットを導入しました。このロボットは、画像認識技術を搭載しており、野菜などの不定形物の切断や不可食部の除去を自動で行うことができます。

 

レタスの芯の位置を推定して適切な歩留まりでカットしたり、衝撃に弱いまいたけの株を形を崩さずに処理したりと、人間が手作業で行うのと同等かそれ以上の正確さとスピードでカットすることができました。

 

これにより、本来8人の人手が必要とされるレタスの芯抜き作業の完全自動化を実現しました。

⑧東芝:数日かかっていた品質低下の原因解析にかかる時間を1日に短縮

東芝:数日かかっていた品質低下の原因解析にかかる時間を1日に短縮
(画像:東芝)

東芝は、半導体工場などの製造現場での品質低下の原因解析にAIを活用することで、数日かかっていた解析結果の精査時間を1日に短縮できるAIを開発しました。統計数理研究所との共同で開発したものです。

 

製品の品質低下は工場の生産性に大きな影響を与えるため、速やかに原因を解析して、対策を打つ必要があります。

 

今回の取り組みでは、AIに過去の品質低下の原因や現場技術者の知見を学習させることで、製品の品質低下の原因を自動で検知することを可能にしました。半導体のような複雑な製品には、検査項目が数百もあります。AIがこれらの項目を迅速に検査することで、品質低下原因の解析を大幅に効率化できるようになりました。

⑨スカイディスク:鋳造条件をスコアリングするAIを開発

スカイディスク:鋳造条件をスコアリングするAIを開発
(画像:スカイディスク)

スカイディスクは、ダイカストの鋳造波形から鋳造条件をスコアリングするAIを開発しました。AIが自動で点数を算出し、それをもとに人間が鋳造条件の正常・異常を判断します。

 

鋳造波形と採点ルールをAIに学習させ、自動スコアリング可能なAIモデルを作成することで実現しました。これまでは目視で行っていた採点作業を自動化し、即座に鋳造条件の異常性を判断できるようになっていたことで、欠陥品を直ちに是正することが可能となりました。

 

また、波形データの採点には、数十種類もの異常パターンを把握しておく必要があり、高い技能が必要でした。今回、この作業がAIにより自動化されたことで、熟練者不足を解消することもできました。

<検品業務の自動化・効率化>

⑩トヨタ:鍛造品の磁気探傷検査の自動化により人員を半分に削減

トヨタ:鍛造品の磁気探傷検査の自動化により人員を半分に削減

トヨタは、自動車用の鍛造品の検査工程において、磁気探傷検査を自動化するためにAIを導入しました。鍛造品とは、金属をハンマーなどで叩いたり、圧縮したりして成型した製品のことです。

 

トヨタは、製造した鍛造品に細かい傷がついていないかを確認するために、人の目で磁気探傷検査を行っていました。しかし、これには熟練した技能を要し、検査に時間もかかるため、従業員の負担になっていました。

 

そこで、AIに鍛造品の画像を大量に学習させ、磁気探傷検査を自動化しました。これにより、検査工程に関わる従業員の数を1/2にまで削減することに成功しました。

 

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⑪キューピー:いちょう切りニンジンの検査工程をAIで自動化

AI 製品や設備の異常検知 キューピー
(画像:キューピー)

キューピーは、惣菜の原料となるカット野菜の検査にAIを搭載した原料検査装置を導入しています。これにより、いちょう切りにしたニンジンの検査工程を自動化しました。

 

いちょう切りにしたニンジンの検査工程では、規定外の形状のものや変色したものを除去します。これまでは、人の目で行われていましたが、大量のニンジンを人の目でチェックするのは負担が大きく、見逃しのリスクもありました。AI検査装置の導入により、検査工程が自動化されたことで、作業員の負担が大きく減少しました。

 

今回使われたAI検査装置の特徴は、AIに正しいニンジンの形状・色のパターンを学習させ、それ以外のパターンのニンジンを不良品として排除するようにしたことです。これにより、様々な不良のパターンに対応することが可能となりました。 

⑫ダイセル:AI画像解析システムで設備の不具合を事前に検知し、予防

ダイセル:AI画像解析システムで設備の不具合を事前に検知し、予防
(画像:日立製作所、ダイセル)

ダイセルは、日立製作所と共同で、製造現場における作業員の異常な動きやライン設備の動作不具合などの予兆を検出し、品質改善や生産性向上を支援するAI画像解析システムを開発しました。

 

この画像解析システムを製造実行管理システムと連動させることで、不具合の兆候が見られたときに直ちに予防措置を講じることが可能となり、トラブルや事故の未然防止に繋がっています。

 

今後は、海外の各工場にも本システムを導入し、グローバルに情報を統合することで、異常検知の精度を高めていくとのことです。

⑬月島食品工業:マーガリンフィルムの外観検査をAIで自動化へ

月島食品工業:マーガリンフィルムの外観検査をAIで自動化へ
(画像:月島食品工業)

月島食品工業は、マーガリンのフィルムの外観検査にAIを導入しました。搬送中のフィルム包装マーガリンの上部と両側面をカメラで撮影し、その画像をAIが認識してNG判定を行います。

 

フィルムの折込部分の折れ・嚙み込みや上部のマーガリン付着の有無をAIが検査し、NG判定された製品は自動で排除されます。

 

これにより、検査作業の自動化・省力化、目視でチェックしていた作業員の負担軽減などを目指します。

⑭ナブテスコ:風力発電機の旋回部の検査をAIが実施、故障の回避へ

ナブテスコ:風力発電機の旋回部の検査をAIが実施、故障の回避へ
(画像:ナブテスコ)

精密機器メーカーであるナブテスコは、風力発電機のヨー旋回部の故障回避のために、AIが異常検査を自動化するシステムを導入しました。ヨー旋回部は、風力発電のタービンを回す起点となる非常に重要な部位であり、この部分の故障を回避することが発電機全体の寿命を左右します。

 

PoCによりAI検査システムが良好な結果を示したため、導入に至りました。これにより、ヨー旋回部の検査作業を自動化するとともに、リアルタイムの可視化や過去の異常状態の詳細履歴の確認もできるようになりました。

 

今後は、ヨー旋回部だけでなく、風力発電機全体の検査にAIを導入することを目指しています。

⑮三井物産グローバルロジスティクス:AIが製品の自動封函の異常を検知するシステムを導入

三井物産グローバルロジスティクス:AIが製品の自動封函の異常を検知するシステムを導入
(画像:CRC) 

三井物産グローバルロジスティクスは、商品発送用のパッケージに自動で封をする際の異常を検知できるAIを導入しています。

 

三井物産グローバルロジスティクスの物流倉庫では、商品を顧客に発送する業務を行っており、作業効率化のため、商品を自動で封函する機械も導入しています。しかし、不適切な状態で封函される事態が発生することがしばしばあったため、AIによる異常検知システムの導入に至りました。

 

これにより、異常検知にかかる時間を大幅に短縮し、商品発送業務の効率化を実現しています。

<機械設備メンテナンスの自動化・効率化>

⑯トヨタ:AIで機械の寿命を予測し、部品の交換頻度を必要最小限に

トヨタ:AIで機械の寿命を予測し、部品の交換頻度を必要最小限に
(画像:トヨタ)

トヨタは、建設機械メーカーのコマツが提供するAI予知保全システムを工場に導入しています。

 

このシステムは、AIが機械部品の寿命を予測し、壊れる前に通知します。また、市場の機会から劣化時・故障時のデータを収集し、AIに学習させることで、AIが機械設備の劣化部位を判定することも可能です。

 

これにより、自動車製造に必要な機械設備の部品交換頻度を必要最小限に抑えることが可能となり、保守費用の削減や保全業務の効率化を実現しました。

 

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⑰花王:製品製造プロセスの異常をAIが検知、新人オペレータをサポート

花王:製品製造プロセスの異常をAIが検知、新人オペレータをサポート
(画像:花王)

花王は、製品製造過程でのプロセス異常を正確に検知するため、AIを搭載した異常予兆検知システムを導入しました。

 

AIが製造プロセスのデータを蓄積し、生産設備の正常な振る舞いを学習します。これに基づき、正常な振る舞いとの微小な違いを検知します。

 

これにより、経験の浅いオペレータでもAIの力を借りて、正確に設備の監視を行うことができるようになりました。また、AIモデルの作成過程で、新人のオペレータが監視のノウハウを学習するなど、技術継承にも役立ちました。

⑱前川製作所:冷凍機の故障の兆候をAIが事前に察知し、保守コストの削減

前川製作所:冷凍機の故障の兆候をAIが事前に察知し、保守コストの削減
(画像:前川製作所)

産業用冷凍機や食品加工機械などの製造販売を手掛けている前川製作所は、産業用冷凍機の保守作業にAIを導入しました。

 

冷凍機が故障を起こすと、その中の食材や薬品などの物質が劣化し、大きな損失が発生します。そのため、前川製作所は、冷凍機の故障を予防するために頻繁に部品交換等を行っていましたが、保守にかかるコストが問題となっていました。

 

冷凍機の各部にセンサを設置し、そこから得られるデータをAIが分析することで、故障の兆候を事前に察知。故障の兆候が現れた部品のみを交換することで、保守コストの削減に成功しました。

 

また、早期に故障の兆候を察知することで、システムダウンによる製造機会のロス発生を防止することにも役立っています。

<設計業務の自動化・効率化>

パナソニック:電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用

パナソニック:電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用
(画像:パナソニック)

パナソニック ホールディングスは、電動シェーバー「LAMDASH」シリーズに、AIがゼロベースで設計した新構造のモーターの採用を検討しています。

 

 この生成AIが設計したモーターは、熟練技術者による最適設計と比較して、出力が15%高いことが特徴です。

 

同社はAI設計の有効性を確認したとして、今後は電動工具や車載用のモーター、さらにシーリングファンなどにも適用する方針とのことです。

 

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⑳チューリング:自動運転電気自動車を生成AIでデザイン

Turingコンセプトカー
(動画:チューリング)

2030年の販売目標10,000台の「完全自動運転EV」のコンセプトカーを公開しました。

 

このコンセプトカーのスケールモデルや走行アニメーションは、画像生成AIであるStable Diffusionにより作成されたデザインを元に制作されています。

 

また、エンブレムデザインや工場のネーミングにも生成AIが活用されるなど、AI技術を様々なビジネス展開の中心に据えています。

㉑トヨタ:生成AIを使った車両設計ツールを発表

トヨタ:生成AIを使った車両設計ツールを発表
(画像:トヨタ)

トヨタは、生成AIがテキストから画像を生成し、車両設計をサポートするツールを発表しました。

 

トヨタの持つ自動車工学の知見と生成AIの画像生成技術を組み合わせることで、空気抵抗や車高などの諸条件をしっかりと考慮した物理法則に即した画像を生成できるようになりました。

 

このシステムにより、効率的かつ効果的なデザイン開発を実現しながら、デザイナーがより創造性を発揮できるようになると期待されています。

㉒プロテリアル:ケーブル製品開発にAIが生成した素材の断面図を活用

プロテリアル:ケーブル製品開発にAIが生成した素材の断面図を活用
(画像:株式会社プロテリアル)

プロテリアルは、ケーブル素材製品の開発に生成AIによる原料合成の疑似実験の活用を始めました。

試作した素材の断面図のデータを生成AIに学習させ、生成AIが特定の原料を組み合わせた素材の断面図を疑似的に作成します。そして、そのデータに基づいて実際に原料合成などの実験を行い、素材を開発します。

 

従来のシミュレーションでは予測しにくい原料の配合などを予測することが可能で、将来的に新素材の開発期間を従来比10分の1程度にすることを目指しています。

㉓東洋エンジニアリング:工事遅延を事前に予測し設計計画を最適化

東洋エンジニアリング:工事遅延を事前に予測し設計計画を最適化
(画像:HEROZ)

東洋エンジニアリングは、工事におけるスケジュール遅延リスクを設計段階で検知するシステムを導入しました。

 

従来は、設計段階における工期の予測はエンジニアの経験に依存していたため、工期を正確に予測して最適な設計を行うことは困難でした。

 

本システムの導入により、AIが工事中に起こりうる事故やトラブルを察知し、事前に設計に組み込むことで工事の遅延を事前に防ぐことが可能となりました。これにより、スケジュール通りに工事を完了させ、顧客に引き渡すことができるようになり、顧客満足度が高まると考えられます。

<作業員の安全確保>

JFEスチール:画像認識AIが製鉄所の作業員を検知し安全を確保

JFEスチール:画像認識AIが製鉄所の作業員を検知し安全を確保
(画像:JFEスチール)

JFEスチールは、画像認識AIを工場に設置し、人物検知をさせることで作業員の安全を確保する新たなシステムを導入しました。

 

NECの画像認識技術を活用することで、照明が暗く作業員の動きも複雑な製鉄所内で、正確に人物を検知することに成功しました。作業員が立ち入り禁止のエリアに入るとAIが警報音を発し、工場ラインを停止させます。

 

このような作業員の安全確保のためのAI活用は、製造現場でAIを活用する重要な方法の一つとなっています。

 

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㉕東京エレクトロン:AIカメラで労災を予防するシステムを開発

東京エレクトロン:AIカメラで労災を予防するシステムを開発
(画像:HACARUS)

半導体製造を手掛ける東京エレクトロンは、AIにより製造現場での労災防止を図るシステムの開発に取り組んでいます。

 

カメラにAIを搭載して、製造現場の様子を24時間リアルタイムで撮影した画像をAIが解析。事故の予兆をリアルタイムで検知して、作業員に警告します。警告の前後の映像は録画されるため、事後的な振り返りが可能であり、今後の対策検討に繋がります。

 

これにより、人手をかけずに製造現場を常時監視し、作業員の安全性の向上を実現することができます。

工場でAIを安全に活用するための6つの注意点

企業がAIのリスクに対して取るべき6つの対応策

工場でAIを安全に活用するための注意点として、以下の6つが挙げられます。

 

  • ①最適なAI活用範囲の設定
  • ②最適なAIツールの選定・導入
  • ③リスクを最小化するデータマネジメント
  • ④従業員向けの利用ルール・マニュアルの策定
  • ⑤従業員のAI活用リテラシーの向上
  • ⑥最新動向を踏まえたAI活用方法の定期的な見直し

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

①最適なAI活用範囲の設定

AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、明確に得意不得意が存在します。

 

そのため、AI活用の成果を最大化し、リスクを最小化するためには、活用する範囲を適切に設定することが極めて重要です。

 

これにより、不適切な情報の利用や不意の法的問題の防止につながります。

②最適なAIツールの選定・導入

最適なAIツールの選定・導入 ChatGPT
(ChatGPTの入力データを学習させない設定をする画面)

各企業の状況や目的に最適なAIツールの選定と導入は、安全かつ効率的なAI活用に向けて非常に重要です。

 

利用するAIツールは、その機能、性能、セキュリティ対策が自社の要求を満たしているかを評価し、適切なものを選ぶ必要があります。

 

さらに、AIツールの導入時も、ユーザーが入力した内容を学習させない「オプトアウト」を選択する等の対処を取ることで、自社のリスクを最小化することができます。

 

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③リスクを最小化するデータマネジメント

AIは、学習したデータに基づいて動作するため、データマネジメントの質がAIのパフォーマンスに直結します。

 

データの正確性、偏りのなさ、機密性の保持は、リスクを最小化する上で極めて重要です。

 

適切なデータマネジメントの実施により、データの質を確保し、情報漏洩や不正確な分析・情報生成のリスクを低減します。

④従業員向けの利用ルール・マニュアルの策定

AIの効果的な利用とリスクの最小化のためには、企業が従業員向けの明確な利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。

 

具体的には、社内でのAIの使用目的、使用範囲、倫理ガイドライン、データ取り扱いのルール・マニュアルを策定する必要があります。

⑤従業員のAI活用リテラシーの向上

AIのポテンシャルを最大限に活用し、同時にリスクを管理するためには、従業員のAIに関する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。

 

研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員がAIに関する基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが求められます。

⑥最新動向を踏まえたAI活用方法の定期的な見直し

AIの技術・サービスは日々進化しており、新たな活用方法や利用プロセスが登場し、それに応じて新たなリスクが生じる可能性が高いです。

 

したがって、国内外のAIに関する最新の動向を常に把握し、企業のAI活用方法を定期的に見直し、更新することが必要となります。

工場でのAI活用を成功させるための5つのポイント

企業がAI活用を成功させるための5つのポイント

工場でのAI活用を成功させるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。

 

  • ①中長期でのAI活用戦略の策定
  • ②投資対効果の高い活用目的・方法の選定
  • ③アジャイルアプローチでの開発・導入
  • ④システムとルールの両面からのリスク管理
  • ⑤研修等での社員のAI活用リテラシー向上

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①中長期でのAI活用戦略の策定

AIの性能進化が加速しているこれからの時代、足元の取り組みはもちろん、3年・5年スパンでAIをどこまでダイナミックに活用できるかが、企業の競争優位性に直結します。

 

また、AI活用のレベルは、比較的簡単な作業のAIによる自動化から、AI活用による工場での生産プロセス革新、顧客向けサービスの進化、新サービス/商品の創出まで様々です。

 

そのため、中長期で目指すAI活用の姿を見据え、その実現に向け逆算したロードマップや、まず足元進めるべき活用を設計することが重要です。

②投資対効果の高い活用目的・方法の選定

AIは人間と同様、全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいた分析や対応、コンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、得意不得意が明確に存在します。

 

そのため、自社の業務の現状やAIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。

③アジャイルアプローチでの開発・導入

AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。

 

具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間~数ヶ月の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。

④システムとルールの両面からのリスク管理

企業がAI活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩などのリスクへの懸念が挙げられます。

 

確かに、特段のルールを設けず、一般に公開されているAIツールを導入するなどの場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。

 

一方で、セキュリティ対策を行ったシステム構築や、社員向けのAIの使用ルールやガイドラインの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。

⑤研修等での社員のAI活用リテラシー向上

AI(特に生成AI)を活用するにあたっては、同じAIを利用していても、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されるという点に注意が必要です。

 

そのため、AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解とスキル、すなわちAI活用リテラシーを向上させることが不可欠です。

 

そこで、研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員がAIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が重要となります。

工場でのAI活用を進めるための4つのステップ

企業がAIを導入するための4つのステップ

工場でのAI活用を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。

 

<STEP1:活用業務の選定>

  • 最新の市場動向のリサーチ
  • 自社での活用対象業務の幅出し・選定
  • AI活用の目的・目標の設定

 

<STEP2:活用範囲と業務プロセスの決定>

  • 対象業務の棚卸し・効率化余地の検討
  • AIを活用する業務範囲の決定
  • AIと人間の役割分担の設計

 

<STEP3:試験開発・運用(PoC)>

  • 要件定義・プロトタイプ開発
  • 試験運用
  • フィードバック収集・評価

 

<STEP4:本開発・運用>

  • PoCを踏まえた本開発
  • 運用・評価
  • 活用方針・方法の継続的なカイゼン

 

各ステップについてわかりやすく紹介していきます。

 

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STEP1:活用業務の選定

AIは、定型的な作業の効率化から新規製品のデザインまで幅広い業務に活用可能だからこそ、AI活用の投資対効果が高い業務を適切に選定することが最も重要となります。

  

最新の技術や競合の活用動向をキャッチアップした上で、自社工場での活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、AIをどのような業務・目的・成果目標で導入するかを設定しましょう。

STEP2:活用範囲と業務プロセスの決定

大きなポテンシャルを持つAI活用ですが、人間と同様、どのようなシチュエーション・任せ方でも万能というわけではありません

 

そのため、活用業務の現状・課題と、AI・人間の得意/不得意を踏まえた上で、どの範囲の業務をどのように人間と協業しながら任せるかを決定することが重要になります。

STEP3:試験開発・運用(PoC)

いきなり大規模な導入を進めるのではなく、比較的小規模な試験開発・運用(PoC)により、その有効性を確かめることで、AI活用全体の投資対効果を大きく高めることが可能です。

 

検証したい仮説を事前に明確にした上で、実際にプロトタイプでの試験運用を行い、活用業務や方法の改善ポイントを洗い出しましょう。

STEP4:本開発・運用

PoCで得られた改善ポイントに基づき、自社の経営課題・業務の現状にベストマッチするAI活用の内容やシステムの要件を再度設計し、本開発を行います。

 

また、本開発後も継続的に成果や活用状況を評価し、継続的なカイゼンを行うことで、自社でのAI活用のインパクトを最大化することができます。

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