Apple Vision Proの医療業界での活用が注目される6つの理由
2023年6月に、遂にAppleから初のXRデバイスである「Apple Vision Pro」が発表され、魔法のような新たな体験を実現する、同社の長年のプロダクトデザインの集大成として、大きな注目を集めています。
Apple Vision Proはその圧倒的な性能の高さや使いやすさから、医療業界での活用が進むと考えられており、多くの医療業界の企業から注目されています。
そこで今回は、Apple Vision Proが医療業界での活用が注目される6つの理由を、活用するメリットなどとともに分かりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- Apple Vision Proの概要や注目ポイントを知りたい
- Apple Vision Proが医療業界にもたらす影響を抑えておきたい
- 医療業界のビジネスにどのように活用できるのか知りたい
本記事を読めば、医療業界の視点から抑えておくべき、Apple Vision Proに関する情報・知見を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもApple Vision Proとは?
Apple Vision Proは、2023年6月に発表された、Apple初のゴーグル型XRヘッドセットデバイスです。Appleは、このデバイスをPC、スマートフォンにとって変わる「空間コンピューティング」デバイスとして発表しています。
発表会では、Apple Vision Proを装着して、映画やゲームなどのエンタメ体験だけでなく、デスクワークや製品の設計・シミュレーションなどでの利用が紹介され、日常生活からビジネスユースまで幅広い用途で利用されるデバイスとして開発されていることが伺えます。
Apple Vision Proは、Appleが「MacbookやiPhone、Apple Watchなど、長年開発してきた数々のプロダクトデザインの集大成」と発表しています。
そのため、Meta Questなどの既存のXRデバイスと比べ、圧倒的な性能の高さと使いやすさを実現するのではと、世界中から大きな注目を集めています。
本デバイスの価格は日本円で約50万円で、2024年初頭にアメリカで発売された後、2024年中にその他の国と地域でも販売される予定です。
医療業界でのApple Vision Proの活用が注目されている6つの理由
医療業界でのApple Vision Proの活用が注目されている理由として、以下の6つが存在します。
- ①医師・看護師への研修への活用
- ②遠隔治療への活用
- ③リハビリ患者向けの体験型トレーニングへの活用
- ④アバターを介した診察による心理的障壁の低下
- ⑤患者の自身の健康態理解への活用
- ⑥医療従事者への情報提供への活用
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①医師・看護師への研修への活用
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、対面での研修が制限されていること、先生となるはずの医療従事者がコロナ患者への緊急対応に追われていることなどから、医師・看護師を目指す学生・研修医の学ぶ機会が減少しています。
そこで、Apple Vision Proを活用し、没入感の高い形で患者の治療の際の手技など、現場での実務的な動きを学ぶことができる環境を整備することは、将来の医療を担う学生・研修医や日本の医療業界全体にとって非常に価値のある取り組みになると考えられます。
②遠隔治療への活用
病院を訪れることが難しい地方在住の患者や移動が困難な患者への治療の実現や、手術の効率化など多くのメリットがあり、注目を集めている遠隔医療ですが、実現には様々なハードルが存在しています。そのハードルの解消にApple Vision Proの活用が有効ではないかと考えられています。
例えば、AR・VRを活用し遠隔地から操作を行う医師への情報提供を行うことで、手術中に視線を動かさずに情報を確認したり、現場の助手との連携をスムーズにしたりすることができるようになると考えられます。
③リハビリ患者向けの体験型トレーニングへの活用
Apple Vision Proはその没入感の高さと身体の動きとの連動性から、学校教育や企業研修の分野への活用が始まっていますが、同様の理由でリハビリ患者向けの体験型トレーニングへの活用も期待されています。
リハビリ患者に提供できるリハビリ環境は、そもそも身体が不自由で移動の制約があることから限定的でしたが、視覚や聴覚、触覚など五感を通じた、患者のリハビリの効率化、モチベーション向上に繋がる体験を提供することができます。
また、リハビリサービスを提供する側も、今まではトレーナー個人に留まってしまっていた、リハビリの効果検証をデータを通じて行う事が可能で、リハビリのプログラム自体の改善にも繋げることができると考えられます。
④アバターを介した診察による心理的障壁の低下
これまで病院での病気の診察やメンタルヘルスのカウンセリングは、患者にとって心理的障壁の高いものでした。ただでさえ、身体や心が弱っている時に、自らの健康に関するセンシティブな相談をするのは、かなりの負担を伴うものでした。
そこで、Apple Vision Proの仮想空間上でアバターを通じた診療やカウンセリングを行うことで、お互いの表情や声色を感じ取りつつ、リラックスした状態でのコミュニケーションを実現できるのではないかと期待されています。
⑤患者の自身の健康態理解への活用
これまで、患者自身が健康状態を理解するのは、口頭、文書ベースでの医師からの診断や、文書ベースでの健康診断の結果など、身体の中で何が起こっているのかをイメージするのが難しいことばかりでした。
そこで、Apple Vision Proの仮想空間上に患者自身の身体のモデルを作成し、体内の臓器などの状態を3Dで再現することで、患者自身のリアルな健康状態を視覚的に理解することができます。
これにより、自身の健康状態が理解しきれないことによる心理的負担の改善や健康への危機意識の高まりによる生活習慣の改善などが期待できます。
⑥医療従事者への情報提供への活用
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、MRの方々が医療従事者の方に対面で情報提供を行う場が減少しています。もちろん、メールやZOOMなどでのコミュニケーションの方が、効率的で適している場面もありますが、一方で、対面ならではの信頼関係構築やその場での偶然な出会いなどの機会は失われつつあります。
そこで、Apple Vision Proの仮想空間上でMRの方や医療従事者の方が交流できる場を提供することで、コロナ以前にあったコミュニケーションの機会を再現する取り組みが行われると考えられます。
医療業界でApple Vision Proを活用する3つのメリット
医療業界でApple Vision Proを活用するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ①従来のXRデバイスを圧倒する性能の高さ
- ②使いやすさ・装着負担の小ささ
- ③企業のサービス/システムの開発のしやすさ
それぞれのメリットについて分かりやすく紹介していきます。
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①従来のXRデバイスを圧倒する性能の高さ
1つ目の理由は、従来のXRデバイスを圧倒する性能の高さです。
Apple Vision Proは、片目だけで4KTVを超える画素数を誇る高精細ディスプレイやユーザーの仮想空間での没入度を調節可能なデジタルクラウンを搭載するなど、HolonesやMeta QuestProなどの従来のXRデバイスを圧倒するスペックを誇っています。
そのため、エンタメやデスクワークでの利用に比べ、より高い性能が求められる、建物の設計や建設のシミュレーションなどでの利用に特に真価を発揮します。
②使いやすさ・装着負担の小ささ
2つ目の理由は、従来のXRデバイスと比較し、使いやすく・装着負担が小さく進化している点です。
従来の製造業の業務におけるXRデバイス活用における課題として、コントローラーにより手が塞がってしまう点やデバイスが重く長時間の使用が難しい点が存在しました。
一方で、Apple Vision Proは、指のジェスチャーや目線、Siriでの音声入力による、直感的な操作が可能です。Questなどの類似デバイスが、コントローラーを両手に持って操作しないといけないのに比べ、優れたUI/UXを提供しています。
また、Apple Vision Proはバッテリーを本体に内蔵するのではなく、コードで繋ぎポケット等に収納するアプローチを取っていることから、類似デバイスであるMeta Quest Proなどと比べ、約40%ほどの軽量化に成功しており、装着負担がかなり軽減されています。
③企業のサービス/システムの開発のしやすさ
3つ目の理由は、企業がApple Vision Pro向けのサービス/システムを開発しやすい環境が整備されていることです。
AppleはVision Proの発売に伴い、新しいOSである「Vision OS」を提供しています。このOSでは、Vision Proに特化した3Dベースでのサービス/システムを開発し、iPhoneなどと同様にAppストアにリリースすることが可能です。
また、世界最大手のゲームエンジンであるUnityとの連携も発表しており、Unityで開発した3Dベースでのサービス/システムをVision Pro向けにリリースすることが可能とのことです。
医療業界でのメタバース/XRの活用事例7選
メタバース/XRの医療業界での活用事例として以下の7つが挙げられます。
- ➀アステラス製薬:バーチャルMRを活用した医療従事者への講演会
- ②イマクリエイト:VRを活用した注射手技の研修
- ③メディカロイド:MRを活用した手術支援ロボの操作
- ④comatsuna:アバターを介した対話によるメンタルケア
- ⑤mediVR:VRを活用したリハビリのサポート
- ⑥株式会社サムライト:メタバースで介護予防
- ⑦IBM×順天堂大学:VRを用いた医療サービス構築へ
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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➀アステラス製薬:バーチャルMRを活用した医療従事者への講演会
2022年1月にアステラス製薬は、メタバースを活用した先進的な情報提供方法の構築を開始しました。フェーズ1では「仮想空間上での研究会・講演会」を試験的に実施し、フェーズ2では仮想世界と現実世界の融合など、新しいオンラインコミュニケーション手法を検討する予定です。
MRの領域では、コロナ禍で時間や場所に制限のないコミュニケーションへの移行が進むなかで、双方向性・対面でのコミュニケーションの重要性も明らかになり始めています。そこで、メタバースを活用することで、新たな双方向でのコミュニケーションの実現を目指す狙いがあるとのことです。具体的には、試験的に実施する仮想空間上での研究会・交流会では参加者同士の偶発的な情報交換など、コロナ以前にあった現場でのリアルなコミュニケーションの再現を目指しています。
②イマクリエイト:VRを活用した注射手技の研修
イマクリエイトの提供する「VRワクチン注射シミュレーター」は、VR内に表示される模型に従うだけで、筋肉注射の手順を感覚的に習得することができる研修用のサービスです。座学や教材を用いた事前学習にシミュレーターを加えることで、手順の間違いや抜けを防ぐことが期待されます。
実際の患者さんに注射の処置を行えるようになるためには、十分な準備が必要です。しかし、定期的にトレーニング用品を補充する必要があることや、多数の生徒が同時に練習することが困難であり、医療現場での悩みの種となっています。
そこでイマクリエイトは「実生活と同じように自分の身体を使って練習する」というコンセプトのもと、このバーチャルトレーニングシステムを開発しました。医学生は施設や設備の有無にかかわらず、いつでも、何度でもトレーニングが可能になりました。
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③メディカロイド:MRを活用した手術支援ロボの操作
2020年、川崎重工業とシスメックスの合弁会社であるメディカロイド社が初の国産手術支援ロボットである「hinotori」を実用化しました。同年12月に前立腺がん手術の1例目が行われ、その後も実績を積み上げています。
Hitonoriは4本のロボットアーム、内視鏡カメラ、手術器具を搭載した手術ユニットで構成されており、医師は3D画像を見ながら、内視鏡カメラと手術器具を搭載したアームをコントローラーで遠隔操作します。
手術支援ロボットを活用した手術は患者側、医師側双方に多く存在します。患者側のメリットとしては手術の出血や手術後の少なさ、感染症のリスクの低さなどが挙げられ、医師側のメリットとしては直観的な操作が可能、手術部位を拡大して確認できる、手の震えが伝わらないなどのメリットが挙げられます。
④comatsuna:アバターを介した対話によるメンタルケア
2022年5月にデジタルヘルスケア・産業保健事業を手がける株式会社comatsunaは先ごろ、メタバースを活用した法人向け社員メンタル支援サービス「メンサポドクター」をリリースしました。
メンズサポートドクターは、アバター介したオンラインでのコミュニケーションによりメンタルヘルスの改善を図るもので、人見知りや対面でのコミュニケーションに抵抗のある方にも、気軽に利用できるメンタルヘルスケアサービスを提供することを目的に作られました。アバターを介したコミュニケーションが、対面での対話に比べ、人々の緊張を和らげ、より早く心を開いてもらい、悩みを相談しやすくすることができると考えているとのことです。
企業もこのサービスを導入することで、社員の潜在的な不満や不安、問題点をいち早く検出することができるとともに、社員のメンタル不調予防、離職予防をすることができます。
⑤mediVR:VRを活用したリハビリのサポート
mediVRの提供するリハビリサポートサービスであるmediVRカグラは、姿勢の崩れや不安定さを抱える患者さんが、仮想現実空間に表示された物体に向かって手を伸ばす動作(リーチング動作)を繰り返すことで、姿勢バランスや重心移動のコツをつかむことができるリハビリテーション用医療機器です。歩行特性を改善することを目的としています。
このサービスの特徴として立ったまま歩行することが困難な方でも取り組める点やこれまで曖昧だったリハビリの指示や評価が明確に行える点、視覚・聴覚・触覚からのフィードバックにより、脳の報酬系を刺激することでモチベーション向上が期待できる点などが挙げられます。また、同社は2018年に経済産業省が主催するジャパンヘルスケアビジネスコンテストで最優秀賞を受賞。J-Startupに選出されています。
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⑥株式会社サムライト:メタバースで介護予防
株式会社サムライトは、メタバース領域での介護予防に革新的な取り組みを行っています。この会社は、ITと人を組み合わせたシニア向けのさまざまなサービスを提供しています。その中の1つである「脳若トレーニング」は、地域コミュニティに定期的に参加することで、コミュニティの形成を促進し、「介護予防」につながるという考えに基づいて、ITを活用して人と人をつなぐことを目的としたトレーニングです。
株式会社サムライトは、メタバースで「脳若トレーニング」を試行するために、株式会社シティアスコムのメタバース(地域貢献スペース)を利用して、「メタバース脳若」の体験イベントを開催しました。シニア向けにシンプルな操作で利用でき、昭和レトロな空間を楽しみながらコミュニケーションが取れます。
介護予防で大切な継続を実現するために、楽しく交流できる場を作るメタバースの活用は、非常に効果的だと言えます。
より詳しく知りたい方はこちらの公式HPをご覧ください。
⑦IBM×順天堂大学:VRを用いた医療サービス構築へ
日本IBMと順天堂大学は「メディカル・メタバース共同研究講座」を設置し、産学連携の取り組みを開始しました。同共同研究講座では、VR/メタバース技術の活用による時間と距離を超えた新たな医療サービスの研究・開発に取り組むとのこと。
具体的には、患者や家族が来院前にバーチャルで病院を体験できる環境や外出が困難な入院患者が病院の外の仮想空間で家族や友人と交流できる「コミュニティ広場」の構築、メタバース空間での活動によるメンタルヘルス等の疾患の改善の実証などを検討しています。
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