研修へのVRの活用事例9選|4大メリットや活用ポイントも紹介
関連技術の進歩やMetaやAppleのデバイス発売などに伴い、多くの企業がVRの活用を進めています。
最近では、VRと研修との相性の良さから、VRを社員研修に活用する企業が増えています。
そこで今回は、研修へのVRの活用事例9選を、活用のメリット、成功のポイントなどとともにわかりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- 研修へのVR活用を検討している
- 他社による研修へのVRの活用事例を押さえておきたい
- VRを研修に活用するメリットが知りたい
本記事を読めば、研修へのVR活用を進める上で押さえておきたい知識を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもVRとは?
VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス、ゴーグル等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。
日本バーチャルリアリティ学会ではVRを「みかけや形は原物そのものではないが、本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」と定義しています。すなわち、VRは、現実世界そのものではないが、実質は現実世界とほとんど変わらないという意味です。
VRの定義についてはこの他にも色々な考え方がありますが、いずれにしても、本質的には現実とほとんど変わらないというところがポイントになります。
様々なユースケースの中でも特にゲームの使用を中心に利用が拡大しており、まるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感・臨場感を感じながらプレイすることが出来ます。
また、最近ではゲームだけでなく、仮想現実に出店し商品を販売したり、仮想空間上で社員研修や教育を行ったり、建築のシミュレーションを行ったりするなど、様々な分野でVRが活用されています。
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VRを研修や社員教育に活用する4つのメリット
VRを研修や社員教育に活用するメリットとして、以下の4点があげられます。
- ①好奇心が刺激され・楽しく学ぶことができる
- ②コンテンツが3Dで表示されるため、学習効率が向上
- ③非常時のシチュエーションを再現することが出来る
- ④学習の時間的・地理的制約から解消される
それぞれについて、わかりやすく解説します。
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①好奇心が刺激され・楽しく学ぶことができる
AR・VRの教育コンテンツは好奇心を持ってもらうのに最適です。思考力や分析力、そして創造力や想像力を養うことができます。さらに、ARを活用することで、教師は生徒とよりインタラクティブなコミュニケーションをとることができ、学習効果を高めることができます。
②コンテンツが3Dで表示されるため、学習効率が向上
従来の2Dの教科書やテキストベースの学習だと、直観的に理解するのが難しい立体的な構造に関連する学習の効率を高めることができます。
例えば、生物における生物の臓器の構造や機械の操作方法などは3Dの教育コンテンツの方が遥かに理解が促進されやすいです。またコンテンツが3D化されることに加え、アニメーションを用いた学習なども可能なため、学習効率の向上が期待されています。
③非常時のシチュエーションを再現することが出来る
VR技術はデジタル上の仮想空間に入り込んだような体験を提供することができます。そのため従来の技術では再現度合いや危険性の面で再現するのが難しかった、または再現できたとしても高額なコストが必要となっていた非常時のシチュエーションを、比較的安価に再現することができます。
④学習の時間的・地理的制約から解消される
仮想空間に学習場所を設定することで、これまで屋外で行わなければならなかった訓練をオフィス内で行ったり、夜間に行う必要があった学習を日中に行ったり、学習の場所や時間をを柔軟に変更することができます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークが普及するなか、AR・VRなどの先端技術を活用した教育・研修現場のアップデートは更に注目を集めそうです。
VRの研修への活用事例9選
VRの研修への活用事例として、代表的なものに以下の9事例が挙げられます。
- ①KFC:店舗の新人研修をVRゲームで実施し時間短縮
- ②JR東日本:VRで鉄道との接触等による事故現場を再現した研修
- ③Audi:物流センターの従業員の研修をVRで実施
- ④ANA:VRを飛行機の機体整備士の危険予知研修に活用
- ⑤AIR DO:新人CAの訓練にVRを活用し理解度が向上
- ⑥ウォルマート:VRで混雑等の状況を再現した研修
- ⑦UCLA:VRにより研修医にリアルな手術研修の機会を提供
- ⑧クボタ:自社商品の販売指導にVRを活用
- ⑨STRIVR:VRを活用した従業員研修プラットフォーム
それぞれについて、わかりやすく紹介していきます。
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①KFC:店舗の新人研修をVRゲームで実施し時間を50%以上短縮
ケンタッキー・フライド・チキンは、従業員教育にVRコンテンツを活用しています。従業員は、ケンタッキーのフライドチキンの揚げ方の研修をVRによって体験しながら受講することができます。
VR研修の導入により、実際のキッチンで行うと25分程度かかるトレーニングが10分まで時間短縮できたという成果が得られました。また、コンテンツにはゲーム的な要素を多分に盛り込んでおり、楽しみながら研修を行うことができます。
②JR東日本:VRで鉄道との接触等による事故現場を再現した研修
JR東日本は鉄道の事故現場のシュミレーションを研修に取り入れ、研修の質の向上に取り組んでいます。鉄道の3大労災である。「触車」、「墜落」、「感電」のうち、「触車」と「墜落」に関する4つの事故を再現しました。
高額で準備する手間のかかるHMDを使用せず、スマホを使ってVRコンテンツを体験するため、社員が集合して研修することもないというメリットもあります。
③Audi:物流センターの従業員の研修をVRで実施
アウディは、従業員の研修にVRを導入しています。従業員はVRグラスを装着することで、実際の工場を模した仮想空間で業務のシミュレーション体験を行うことができます。
VR研修には、難易度によって業務へのサポート度合いが変化するようになっています。また、英語だけでなく、ドイツ語やスペイン語など工場の所在地の言語で受講できます。
スペースと時間、コストが節約できるほか、VRでのゲームのようなアプローチによって研修に対するモチベーションと集中力が高まっているとのことです。
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④ANA:VRを飛行機の機体整備士の危険予知研修に活用
ANAは労災ゼロを目指し、整備士に向けた安全体験教育にVRコンテンツ「ANA VR Safety Training System」を導入しています。ANA VR Safety Training Systemは、整備士が作業の安全を確保するための危険予知能力を向上させるための研修プログラムです。
航空機整備の環境や過去の労働災害事例をもとにコンテンツを作成し、格納庫での整備作業を再現したVRシステムです。受講者が危険を見逃したまま次の行動に移ったり、安全行動の手順を間違えたりすると、VRシステム内で転倒を体験することになります。このとき、ナレーションで行動を振り返り、なぜ参加者が転倒・転落したのかを説明します。
このような手順で実際の作業における危険を予見し、転倒・転落から身を守ることができます。
⑤AIR DO:新人CAの訓練にVRを活用し理解度が向上
航空会社のAIRDOは、客室乗務員への安全訓練にVRを活用しています。
AIRDOの安全訓練は、実際の飛行機を使用できる機会が乏しいことと、AIRDOが自社に訓練施設を所持していないことによる臨場感の低さが課題でした。この解決策として、安全訓練にVRコンテンツを導入しました。
従来のイメージしにくい紙ベースの教材から疑似体験を行えるVR教材になったことで、受講生の理解度が向上しました。また、機内の機材に関する他部署とのコミュニケーションがスムーズになったそうです。
AIRDOは今後、訓練生以外の現役の客室乗務員や一般社員に対してもVR研修を導入する予定とのことです。
⑥ウォルマート:VRで混雑等の状況を再現した研修
世界的なスーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、接客のトレーニングにVRを導入しています。従業員にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着させ、ブラックフライデーなどの販売イベント時に大勢のお客様に対応するためのトレーニングを行っています。
従来の研修とは異なり、現実には再現が困難な状況を実際に体験しているかのような研修を行うことができます。
この研修を行うため、ウォルマートは1万7000台のOculas Questを約4700店舗に準備するなど大規模な投資を行っています。
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⑦UCLA:VRにより研修医にリアルな手術研修の機会を提供
UCLAは、同校の医学部でVRを外科手術の実践研修に導入し、研修医の実践経験に活用しています。
医療業界では、研修医が十分な実戦経験を積むことが難しいという課題がありました。そこでCGを用いた外科シミュレーションVRコンテンツを活用することで、従来より精緻にかつ豊富な手術の体験を行うことが可能になりました。
同校による調査では、従来の研修と比べて230%もの効率化を実現できたとのことです。
⑧クボタ:自社商品の販売指導にVRを活用
農業機械メーカーのクボタは、販売会社向けに自社製品のマニュアルをVRコンテンツとして提供しています。
販売会社は、クボタから提供されたVRコンテンツを活用して顧客に対してクボタ製品の使用法や安全面での注意点に関するレクチャーを行うことができます。
農業機械は、前方だけでなく360°に注意が必要であるため、VRコンテンツを活用することでより実践的なレクチャーが可能になったとのことです。
⑨STRIVR:VRを活用した従業員研修プラットフォーム
STRIVRはVRを活用し従業員に様々な研修を実施できるプラットフォームです。VRの特徴を活かし、日常業務から緊急時の対応まで幅広いシチュエーションを再現した研修が可能です。
また、研修を経て得られたデータを分析し、学習効率を高める機能などを搭載しており、既にウォルマートなどの多くの導入先で大きな成果を挙げています。
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研修や社員教育へのVR活用で成果を上げるための5つのポイント
研修へのVR活用を成功させるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
- ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
- ③ユーザーファーストなUX設計
- ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
- ⑤強力な開発・運用体制の構築
それぞれについて分かりやすく紹介していきます。
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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。
デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。
VR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。
②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案
2つ目のポイントは、VRを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。
現在VR活用に取り組む企業には、VR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。
その結果、活用のPDCAが回らない、VR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。
自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜVRではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。
③ユーザーファーストな企画・UX設計
3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなVRの企画・UX設計です。
現在、多くの企業がVRに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなVRが多く存在します。それらのVRは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。
そのため、「VRならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。
④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。
VR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。
そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。
⑤強力な開発・運用体制の構築
5つ目のポイントは、強力なVR開発・運用体制の構築です。
高いユーザー体験と事業性を両立するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。
VR活用の進め方の4フェーズ
VR活用を進める上では、大きく4つのフェーズと以下の35ステップを抑える必要があります。
<Phase1:業界動向・知見のキャッチアップ>
- VRの基礎知識
- ①ユーザー・企業ができること/メリット
- ②注目を集める背景・歴史
- ③XRデバイス・Web3等の関連テクノロジー
- ④今後の普及・発展への展望
- 市場/ユーザー動向
- ⑤ビックテックなどの戦略・取り組み
- ⑥主要VRプラットフォーム
- ⑦各業界における大手企業の取り組み
- ⑧国内外のユーザーの動向
- VR活用手法・先行事例
- ⑨VR活用手法の全体像
- ⑩自社と類似する業界における国内外の事例
- ⑪自社が検討する活用手法の国内外の事例
<Phase2:戦略/企画の立案>
- 自社が取り得る活用の方向性の洗い出し
- ⑫ターゲットとする経営課題と活用目的の明確化
- ⑬目的達成に向けた活用手法候補の幅出し
- 目的達成に向けた活用の方向性の評価
- ⑭自社の目的に合わせた評価軸の設定
- ⑮評価軸に沿った活用の方向性の評価
- VR戦略の立案
- ⑯自社の強み・アセットの活かし方を検討
- ⑰中長期で目指す姿と企画のコンセプトの立案
- ⑱ビジネスモデルの設計
- 詳細な先行事例ベンチマーク
- ⑲企画コンセプトに類似する国内外の事例ベンチマーク
- ⑳企画の立案・具体化に向けた示唆出し
- 企画の立案・具体化
- ㉑コアターゲット像と提供価値
- ㉒ユーザー体験/コンテンツ案
- ㉓活用チャネル/プラットフォーム案
<Phase3:事業計画の策定>
- 事業計画の策定
- ㉔期待する成果/主要KGI・KPIの設定
- ㉕開発・運用アプローチ(活用ツール・ベンダー等)の設計
- ㉖必要なリソース(コスト・人員等)の算出
- ロードマップ策定
- ㉗開発・運用のタイムラインの設定
- ㉘主要マイルストーンの設定
- ㉙想定されるリスクと対処方法の検討
<Phase4:開発・運用>
- 開発
- ㉚不足するケイパビリティやリソースの補完
- ㉛要件定義・システムの基本設計
- ㉜開発の実行
- 運用
- ㉝VRへの集客/マーケティング
- ㉞運用・保守の実施
- ㉟効果測定と運用方法の見直し
それぞれのフェーズとステップの詳細については以下の記事をご覧ください。
※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ
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