VRの安全教育への活用事例5選|メリットや導入時の注意点を紹介

関連技術の進歩やオンラインコミュニケーション需要の高まりなどを背景とし、今後急速に人々の生活や仕事に普及していくと考えられるVR。

広く利用される用途はゲーム・エンタメである一方で、3Dの没入型の体験を提供できる相性の良さから、企業の安全教育への活用も注目を集めています。

 

一方で、「VRを活用した安全教育の具体的な事例を知りたい」、「VRを安全教育に活用することでどのようなメリットがあるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回はVRの安全教育への活用事例5選を4つのメリットや導入における課題とともに分かりやすくご紹介します。

本記事を読めば、自社の安全教育へのVR導入検討へのヒントが得られると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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VRを安全教育に活用する4つのメリット

VRを安全教育に活用する4つのメリット

VRを安全教育に活用するメリットとして以下の4つが挙げられます。

 

  • ①3Dコンテンツによる学習効率の向上
  • ③安全教育訓練の臨場感・没入感の向上
  • ③安全教育・避難情報の視認性の向上
  • ④学習の時間的・地理的制約からの解消

 

それぞれのメリットについて分かりやすく紹介していきます。

①3Dコンテンツによる学習効率の向上

従来の教材は2Dであり、直感的に理解することが困難でした。VRの3Dコンテンツは、生体の臓器の構造や機械の操作方法などの立体的な学習内容の理解を促進することができます。また、3Dコンテンツだけでなく、アニメーションも学習用として活用されています。これにより、学習効率の向上が期待されます。

②訓練の臨場感・没入感の向上

従来はオフィスなどで行われてきた安全教育ですが、実際に事故や災害などが発生している様子を現実世界で再現するのには限界があるという課題が存在します。

 

VR上で実際の災害発生時に近い環境を経験することで、安全意識の向上や、災害発生時の適切な対処に繋がるのではと期待されています。

③安全教育・避難情報の視認性の向上

東日本大震災での津波被害からも分かるように、災害が発生してから迅速に正しい非難行動を取れるかが生死を分けることも多く、普段から居住地や勤務地などでの災害時の避難経路などの情報を理解しておくのは非常に重要です。

 

一方で、従来政府が提供しているハザードマップなどの避難情報は2Dで提供されていることが多く、人々が地形と紐づけて理解しづらいという課題がありました。

 

そこで、都市の3Dモデルを活用した安全教育・避難情報を作成することで、視認性が高く、いざとなった時に行動に移しやすい情報を提供する取り組みが始まっています。

同様の取り組みはオフィスビル内での避難経路情報などにも活用が可能であり、今後は民間企業での活用も進んでいくと考えられています。

④学習の時間的・地理的制約からの解消

VRを活用した安全教育は、いつでもどこからでも参加しやすいという大きなメリットが存在します。本社だけでなく、海外オフィスや出張所、自宅からでも安全教育に参加することができます。
新型コロナウイルス感染の影響で、リモートワークが一般的になるなか、VRなどの先端技術を活用した学校教育・研修現場のアップデートは更に注目を集めそうです。

VRを安全教育に活用する際の2つのポイント

VRを安全教育に活用する際のポイントとして、大きく以下の2つが挙げられます。

 

  • ①​​VRの種類と特長を理解する
  • ②導入方法の違いを把握する

 

それぞれのポイントをわかりやすく解説していきます。

 

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①​​VRの種類と特長を理解する

VRにはいくつかの種類があり、これらの種類とそれぞれの特長を理解することによって安全教育へのVR導入をスムーズに行うことができます。

 

主なVRの種類3つとそれぞれの特長を紹介していきます。

1.スタンドアローンタイプ

このタイプはスマートフォンやPCなどの外部機器を必要とせず、単独で動作を行うことができます。このタイプは外部機器との接続が不要であるため自由に動けて、場所を選ばず利用できる点が特長です。そのため、体を動かすことが多い安全教育ではこのタイプが多く活用されています。価格は5万〜数十万程度です。

2.PC・ゲーム機連動タイプ

PCやゲーム機など、外部の機器と連動するVRゴーグルです。VRに特化したデバイスであり、解像度も高いため、他のタイプよりもはるかに優れた没入感が体験できます。価格はスタンドアローン型と同じく5万〜数十万程度です。

3.スマホセットタイプ

スマートフォンでVRコンテンツを利用するときに使用されるのは、スマホセットタイプのVRゴーグルです。傾きや動きを感知するジャイロ機能が搭載されているスマートフォンがあれば簡単にVRを体験することができます。価格は数百円〜とリーズナブルです。

②導入方法の違いを把握する

VR導入方法には2つの種類があります。

 

  1. 自社オリジナルのコンテンツを作成する
  2. 既存のコンテンツを作成する

 

オリジナルコンテンツを作成するのは実際の具体的な情報を指定できるというメリットがありますが、既存のコンテンツに比べてコストがかかります。安全教育への導入において導入方法の違いを把握し、具体化の必要性とコストパフォーマンスを比較することで最適なVR活用をすることができます。

VRの安全教育への活用事例5選

VRの安全教育への活用事例として以下の5つが挙げられます。

 

  • ①ANA:VRを飛行機の機体整備士の危険予知研修に活用
  • ②JR東日本:VRで鉄道との接触等による事故現場を再現した研修を実施
  • ③セコム:警備業界初となるVRを活用した研修プログラムを導入
  • ④明治:全国の事業所で危険を体感できるVRでの安全教育を実施
  • ⑤坂田建設:VRで工事現場における労災防止に向けた訓練を実施

 

それぞれの事例について分かりやすく紹介していきます。

 

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①ANA:VRを飛行機の機体整備士の危険予知研修に活用

ANA:VRを飛行機の機体整備士の危険予知研修に活用
(画像:ANA)

ANAは労災ゼロを目指し、整備士に向けた安全体験教育にVRコンテンツ「ANA VR Safety Training System」を導入しています。ANA VR Safety Training Systemは、整備士が作業の安全を確保するための危険予知能力を向上させるための研修プログラムです。

 
航空機整備の環境や過去の労働災害事例をもとにコンテンツを作成し、格納庫での整備作業を再現したVRシステムです。受講者が危険を見逃したまま次の行動に移ったり、安全行動の手順を間違えたりすると、VRシステム内で転倒を体験することになります。このとき、ナレーションで行動を振り返り、なぜ参加者が転倒・転落したのかを説明します。

このような手順で実際の作業における危険を予見し、転倒・転落から身を守ることができます。

②JR東日本:VRで鉄道との接触等による事故現場を再現した研修を実施

JR東日本:VRで鉄道との接触等による事故現場を再現した研修を実施
(画像:JR東日本)

JR東日本は鉄道の事故現場のシュミレーションを研修に取り入れ、研修の質の向上に取り組んでいます。鉄道の3大労災である。「触車」、「墜落」、「感電」のうち、「触車」と「墜落」に関する4つの事故を再現しました。高額で準備する手間のかかるHMDを使用せず、スマホを使ってVRコンテンツを体験するため、社員が集合して研修することもないというメリットもあります。

③セコム:警備業界初となるVRを活用した研修プログラムを導入

セコム:警備業界初となるVRを活用した研修プログラムを導入
(画像:セコム)

セコムは、警備業界初となるVRを活用した研修プログラムを導入しています。こちらの研修プログラムでは社員がVRヘッドセットを装着し、VRの体験型コンテンツにより緊急時の対処を学ぶことができます。

 

具体的には、煙が充満する中での避難誘導や、避難器具を使っての高所からの避難訓練などの訓練を実施しているとのことです。

 

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④明治:全国の事業所で危険を体感できるVRでの安全教育を実施

明治:全国の事業所で危険を体感できるVRでの安全教育を実施
(画像:明治)

明治は、全国の事業所で危険を体感できるVRでの安全教育を実施しています。この安全教育には、凸版印刷の提供するVR安全教育ソリューション「安全道場VR」が活用されています。

 

具体的には、社員がVRヘッドセットを装着し、業務中正しくカッターを使用しなかったことによって起こりうる労働災害や本来は複数人で行うべき高所作業を、一人で行ってしまう危険行動などを体験しているとのことです。

⑤坂田建設:VRで工事現場における労災防止に向けた訓練を実施

坂田建設:VRで工事現場における労災防止に向けた訓練を実施
(画像:坂田建設)

坂田建設は、工事現場における労災防止に向けた事故体験・安全教育を実施しています。

従業員は工事現場における重機の事故や土砂崩れ、足場の墜落など様々なシチュエーションをVRで体験することができます。

VRの安全教育への活用における2つの注意点

VRの安全教育への活用における2つの注意点

VRの安全教育への活用における課題として以下の2つが挙げられます。

 

  • ①導入先のITリテラシー
  • ②導入コストの高さ

 

それぞれの課題についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①導入先のITリテラシー

VRを活用した安全教育を実施するためには、VRヘッドマウントディスプレイやVRコンテンツの操作方法などのITリテラシーが必要となります。

 

そのため一部の大企業では導入が進んでいる一方、多くの企業はVRを活用した研修プログラムを導入する際に何から始めればよいのかわからず、活用が進んでいない企業も多く存在します。

②導入コストの高さ

安全教育へのVRの導入にあたって、資金に限りのある中小企業などにとって、導入コストは大きな問題となります。高い没入感のあるVRでの安全教育を行うには、ヘッドマウントディスプレイなどのVR機器が必要です。シンプルな構成の機器であれば数万円程度で購入できますが、複雑な構成になると数十万円以上かかります。

 

また、VRデバイスの購入費用に加えて、VRコンテンツの開発費用も必要で、再現するコンテンツによって金額は異なりますが、数十万円〜数百万円程度のコストがかかります。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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