VRの防災への最新活用事例3選|3つのメリットも解説
関連技術の進歩とともに近年多くの注目を集めるVRですが、実は、VRは、元々パイロットのトレーニング用のシュミレーターから始まったことをご存知でしょうか?
その起源からも分かるように、VRはゲームなどの用途だけでなく、シュミレーションに基づく防災訓練と非常に相性が良いものなのです。
一方で、「防災にどのようにVRを活用するのかイメージが沸かない」、「具体的にどのような活用事例があるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、VRの防災への活用事例をメリットとともに分かりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- 防災へのVRの活用を検討している
- 防災にVRを活用するメリットが知りたい
- 実際に防災にVRを活用している事例をおさえておきたい
本記事を読めば、VRの防災領域へのビジネス活用のヒントが得られると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもVRとは?
VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス、ゴーグル等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。
日本バーチャルリアリティ学会ではVRを「みかけや形は原物そのものではないが、本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」と定義しています。すなわち、VRは、現実世界そのものではないが、実質は現実世界とほとんど変わらないという意味です。
VRの定義についてはこの他にも色々な考え方がありますが、いずれにしても、本質的には現実とほとんど変わらないというところがポイントになります。
様々なユースケースの中でも特にゲームの使用を中心に利用が拡大しており、まるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感・臨場感を感じながらプレイすることが出来ます。
また、最近ではゲームだけでなく、仮想現実に出店し商品を販売したり、仮想空間上で社員研修や教育を行ったり、建築のシミュレーションを行ったりするなど、様々な分野でVRが活用されています。
防災へのVRの活用が注目を集める3つの理由
防災へのVRの活用が注目を集める理由として、以下の3つが挙げられます。
- ①VR技術の進歩
- ②コロナによるリモートコミュニケーションの普及
- ③若年層を中心とするVRコンテンツの普及
それぞれの理由についてわかりやすく紹介していきます。
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①VR技術の進歩
1つ目の理由は、VR技術が進歩したことです。
通信技術の向上やコンピューターの処理性能の向上、小型軽量のVRデバイスの登場などによりVR関連技術は大きく進歩しており、以前と比べると、VR体験をよりスムーズに、より没入感のある形で楽しむことができるようになりました。
また、MetaやAppleなどのビッグテック企業をはじめとする多くの企業が相次いでVR事業に参入しています。
VR技術の進歩やビッグテックの参入をうけて、今後も幅広い業界の企業がVR領域へ参入し始めると考えられ、VR業界全体が大きく盛り上がっています。
②コロナによるリモートコミュニケーションの普及
2つ目の理由は、コロナによるリモートコミュニケーションの普及です。コロナウイルス感染拡大の影響で、人々のコミュニケーションの機会が対面からリモートに移行し、プライベートはもちろん仕事上でのコミュニケーションも、SlackなどのチャットやZOOMなどのビデオ会話によって行われるのが当たり前の時代となりました。
デジタルを介したコミュニケーションの需要が拡大しているのはもちろん、人々が抵抗感なくデジタルコミュニケーションを利用するようになっているというのが非常に大きなポイントといえます。
③若年層を中心とするVRコンテンツの普及
3つ目の理由は、若年層を中心とするVRコンテンツの普及です。
近年MetaQuestやPlayStationVRなどの大ヒットの影響もあり、VRゲームなどのVRコンテンツが普及し始めています。現在では新しいものに寛容な傾向がある若年層を中心に利用が進んでいますが、デバイスの進化やコンテンツの充実に伴い、中高年世代にもVRコンテンツが普及していくと考えられます。
このように、VRを利用する人が増え、人々の生活に浸透してきていることも、VRの防災への活用が注目されるようになった背景として存在します。
VRを防災に活用する3つのメリット
VRの防災への活用のメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
- ➀災害に強い都市や建物の設計への活用
- ②防災・避難情報の視認性の向上
- ③防災訓練の臨場感・没入感の向上
それぞれのメリットをわかりやすく説明していきます。
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➀災害に強い都市や建物の設計への活用
近年、異常気象や大規模地震発生リスクの高まりなど、災害に強い都市づくりが注目を集めるなか、デジタルツインなどのVR空間上の3Dモデルを活用した都市・建物設計のシュミレーションへの活用が進んでいます。
従来、災害に強い都市や建物の計画・設計を検討する際に、現実世界での物理的な建物や模型を用いたシミュレーションが行われていましたが、それらを仮想空間上で行うことで、シミュレーションの精度向上やコスト削減や、従来行えなかった状況下でのシュミレーションが可能となりました。
この領域には政府も力を入れており、2020年度には、都市の3Dモデルを構築・活用し、まちづくりのDX化を推進するプロジェクト「Project PLATEAU」が始動し、多くの民間企業を巻き込んだ実証実験が進められています。
②防災・避難情報の視認性の向上
東日本大震災での津波被害からも分かるように、災害が発生してから迅速に正しい非難行動を取れるかが生死を分けることも多く、普段から居住地や勤務地などでの災害時の避難経路などの情報を理解しておくのは非常に重要です。
一方で、従来政府が提供しているハザードマップなどの避難情報は2Dで提供されていることが多く、人々が地形と紐づけて理解しづらいという課題がありました。
そこで、都市の3Dモデルを活用した防災・避難情報を作成することで、視認性が高く、いざとなった時に行動に移しやすい情報を提供する取り組みが始まっています。
同様の取り組みはオフィスビル内での避難経路情報などにも活用が可能であり、今後は民間企業での活用も進んでいくと考えられています。
③防災訓練の臨場感・没入感の向上
災害発生時に備え、学校やマンション、オフィスなどで行われてきた避難訓練ですが、実際に火災や洪水などが発生している様子を現実世界で再現するのには限界があるという課題が存在します。
そこで、VR上災害の状況をリアルな3Dコンテンツで再現し、参加者のアバターを介した防災訓練に参加してもらうことで、より臨場感や没入感の高い防災訓練を実施しようという取り組みが始まっています。
VR上で実際の災害発生時に近い環境を経験することで、防災意識の向上や、災害発生時の適切な対処に繋がるのではと期待されています。
VRの防災への活用事例3選
VRの防災への代表的な活用事例として以下の3つが挙げられます。
- ①国交省:災害に強いまちづくりに3D都市モデルを活用
- ②NTT:VR空間上で参加型の水害対策訓練を実施
- ③明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①国交省:災害に強いまちづくりに3D都市モデルを活用
2020年度から国土交通省がスタートしたProject PLATEAUは、スマートシティをはじめとする都市開発のDX化を目的とし、都市の3Dモデルの整備・活用を推進するプロジェクトのことです。
地方自治体や民間企業を巻き込みながら、3D都市モデルのデータ整備、ユースケース開発、3D都市モデルの整備・利活用ムーブメントの惹起とオープンデータ化に取り組んでいます。
近年の自然災害の深刻化・頻発化に伴い、平時から災害リスクを認識した上で、河川氾濫時の危険箇所や避難場所などの情報を的確に提供することが重要となっています。
一方で、現在のハザードマップは、2次元の地形図に洪水浸水域を重ね合わせて作成されており、地図に慣れていない子供や土地勘のない観光客にとっては分かりにくい場合が多いことが問題となっています。
そこで、Project PLATEAUでは、3D都市モデルの三次元であり、視覚的に理解しやすいという特徴を活かし、災害ハザード情報をわかりやすく表示する取り組みを実施しました。
具体的には、全国48都市を対象に、構造浸水想定区域のマップ等を3D都市モデルに重ね合わせ、人々に直観的・視覚的に理解しやすい形で表現しました
②NTT:VR空間上で参加型の水害対策訓練を実施
NTTコミュニケーションズは、東京理科大学と共同で、水害リスクの高い地域での防災・減災を実現するために、市民参加型の「デジタル防災訓練」を用いた実証実験を開始すると発表しました。
構築されたVR空間は、国が提供するオープンな都市空間データや独自のデータに基づいて店舗や看板などを3D CGでリアルに再現されたもので、市民はアバターとして水害発生前後の避難行動をシュミレーションし、その行動データをNTTが分析するとのこと。
これにより、避難行動の可視化、防災意識の向上、安全な避難のための対策検討などに役立てることができます。また、デジタルツインの構築における技術的な課題を明らかにする予定です。
同社は、本実証実験のデータをもとに、企業や行政機関へ防災・減災のための提言を行うとともに、企業や行政などの共創パートナーとともに新しいサービスを開発していきたいと考えているとのことです。
③明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化
明治安田生命は、VRクラウドソフトを提供するスペースリー社と共同で、VRコンテンツを活用した防災訓練を実施しました。
経緯としては、コロナ禍による行動制限下において、防災訓練を実施する手段としてVRの活用を検討したとのことです。
加えて、実施してみると従来の訓練よりも、リッチな情報を3D空間で理解できたり、ゲーミフィケーションを取り入れながら楽しんで訓練ができた、訓練の所要時間が半減できたなどと様々な効果が得られたとのことです。
企業がVR活用を進めるための4つのフェーズ
企業のVR活用の進める流れとして、大きく以下の4つのフェーズが挙げられます。
- Phase1:市場動向・知見のキャッチアップ
- Phase2:戦略/企画の立案
- Phase3:事業計画の策定
- Phase4:開発・運用
それぞれのフェーズについて分かりやすく紹介していきます。
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Phase1:市場動向・知見のキャッチアップ
1つ目のPhaseとして取り組むべきは、最先端の市場動向・知見のキャッチアップです。MetaやApple、Microsoftなどのビックテックやユーザーの動向・先行活用事例など、日々変化する市場動向やナレッジへのキャッチアップが必要です。
このフェーズが、成果に繋がる骨太な戦略/企画策定の基盤となります。
Phase2:戦略/企画の立案
2つ目のPhaseはVR活用の戦略/企画です。活用目的を踏まえ、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方、実現に向けた企画を立案しましょう。
ユーザーバリューと自社の事業性の両方を満たす、質の高い戦略/企画の立案が、成果につながるVR活用の実現に向け最も重要なポイントとなります。
Phase3:事業計画の策定
3つ目のPhaseは事業計画の策定です。事業に期待する成果や開発・運用のアプローチやタイムライン、必要な投資額などを検討しましょう。
VR開発・運用といっても、プロジェクト毎に求められるケイパビリティは様々であるため、自社にマッチするツール・ベンダーの選定が非常に重要です。
Phase4:開発・運用
4つ目のPhaseが開発・運用です。VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを有効活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完しつつ、ユーザーに届けたい体験を実現するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
4つのフェーズで取り組むべき35のステップに関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。
※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ【担当者必見】
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