百貨店のVR活用事例5選|参入相次ぐ理由や3つのメリットも紹介

コロナウイルス感染拡大の影響で、外出制限や渡航制限による来客数の減少やオシャレ着需要の低迷など、百貨店業界は大きな打撃を受けています。

 

そんななか、オンライン上で顧客に対して新たな購買体験を提供できるVRの活用が、百貨店業界でも注目を集めています。

実は既に、三越伊勢丹や大丸松坂屋などの大手百貨店がVRの活用を進めていることをご存知でしょうか?

 

そこで今回は、百貨店業界でのVRの活用事例5選をご紹介します。

本記事をお読みいただければ、VRを百貨店業界のビジネスに活用するためのヒントが得られるかと思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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そもそもVR(仮想現実)とは

そもそもVR(仮想現実)とは

VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。

 
様々なユースケースの中でも特にゲームの使用を中心に利用が拡大しており、まるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感・臨場感を感じながらプレイすることができます。

大手百貨店のVRへの参入が相次ぐ3つの理由

大手百貨店のVRへの参入が相次ぐ3つの理由

大手百貨店のVRへの参入が相次ぐ理由として以下の3つが挙げられます。

 

  • ①コロナ禍による店頭売上の低迷
  • ②若年層の百貨店離れ
  • ③EC売上比率の低さ

 

それぞれの理由をわかりやすく説明していきます。

 

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①コロナ禍による店頭売上の低迷

百貨店業界は、コロナウイルス感染拡大によって大きな打撃を受けた業界の1つです。感染防止対策による来客数の減少、渡航制限による外国人観光客の来客数の減少、またオシャレ着需要の低下による、衣料品の売上減少などを理由とし、深刻な売り上げ低迷の状況に直面しています。

②若年層の百貨店離れ

購買行動の変化などにより、若者の百貨店離れが加速しています。トレンドが生まれる場所、コーディネートやアイテムの情報を得る場所、実際に購入する場所の全てがオフラインからオンラインにシフトし、購買プロセスの全てをオンラインで完結させる若者も珍しくありません。また、ユニクロやGUなどのプチプラファッションの普及により、比較的高単価の商材を扱う百貨店で買い物をする若者の割合は低下しています。

 

また、ZOZOTOWNやインスタグラム等のレコメンド機能も充実してきており、百貨店の強みである顧客ひとり一人に合わせた商品・スタイルの提案の魅力も相対的に低下してきています。

③EC売上比率の低さ

百貨店の強みが、対面での丁寧な接客を通じた、顧客ひとり一人に合わせた商品・スタイルの提案であることや、後発のアパレル小売店・ブランドに比べEC化への取り組みが遅れたことなどにより、EC売上比率は高まっていません。また、コロナウイルス感染終息後も、オンラインをベースとした購買行動は人々に普及し続けると考えられ、中長期的に見ても重要な経営課題といえます。

百貨店がVRを活用する3つのメリット

百貨店がVRを活用する3つのメリット

百貨店がVRを活用するメリットとして以下の3つが存在します。

 

  • ①若年層の取り込み
  • ②EC化率の向上
  • ③新たな購買体験の提供

 

それぞれのメリットについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①新たな購買体験の提供

新たな購買体験の提供 大丸松坂屋
(画像:大丸松坂屋)

VRを活用した商品の販売は、実店舗・ECに次ぐ第三の販売チャネルとなる可能性を秘めています。VR上の店舗での商品販売は、販売スタッフのアバター姿での接客や、実店舗では実現の難しい体験型のプロモーション施策などを行うことができます。

 

そのため、実店舗とECそれぞれの課題を解消した、新たな販売体験を提供することが出来るのではないかと考えており、各社が顧客に求められる体験構築に向け多数の実証に取り組んでいます。

②若年層の取り込み

若年層の取り込み 阪神阪急HD
(画像:阪神阪急HD)

VR空間上では人気のIPコンテンツとのコラボやゲーミフィケーションを取り入れたプロモーションなど、若年層をターゲットとした多様なプロモーションを行うことができます。

 

既に大手百貨店が主催するVR上でVTuberなどのバーチャルアーティストのライブを開催したり、有名漫画のキャラクターとコラボした特設ブースを設置するなど、百貨店の既存の客層とは異なる若年層の取り込みに向けた動きを見せています。

③EC化率の向上

VR上での商品販売は、購入後商品が自宅へ郵送されるECの形を取ることが多く、百貨店が長年課題としていたEC化率の向上への貢献が期待されています。既にVR上では、販売スタッフがアバター姿で接客するという取り組みが進んでいます。そのため、対面での丁寧な接客を通じた、顧客ひとり一人に合わせた商品・スタイルの提案という従来のECでは発揮できなかった百貨店の強みが活かされるのではと考えられています。

百貨店のVR活用事例5選

百貨店のVR活用事例5選

百貨店のVRの活用事例として以下の5つが挙げられます。

 

  • ①三越伊勢丹:独自のメタバース空間上に百貨店を再現
  • ②大丸松坂屋:VR上の百貨店で600種類の食品を販売
  • ③阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催
  • ④阪急阪神百貨店:VR上の百貨店でVR接客を実施
  • ⑤高島屋:VRを活用した家具のオンライン接客を実施

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①三越伊勢丹:独自のVR空間上に百貨店を再現

三越伊勢丹:独自のVR空間上に百貨店を再現
(画像:三越伊勢丹)

三越伊勢丹は、独自のVR上の仮想都市である「レヴ ワールズ」を構築し、専用アプリから提供しています。利用者はアバターを登録し、デジタル空間の「バーチャル伊勢丹」での買い物を楽しむことができます。店員のアバターも配置され、チャット機能を使った接客も受けられます。

 

また、VR上ではバーチャルファッションショーを楽しんだりや人気格闘漫画『刃牙』シリーズに登場する“地下闘技場”をモデルとしたイベントスペースが設けられ、アバターとなった一部の人気キャラクターに会えたり、関連するデジタルアイテムを入手したりすることもできます。

 

β版のリリースから1年ほどが経過する「レヴ ワールズ」ですが、百貨店の強みである「デパ地下」や「ギフト」への関心の高さが確認できているとのことです。

現在は婦人服や食品など180ブランドを扱っていますが、今後は家具や日用品にも対象を広げる方針です。友人のアバターと一緒に会話しながら買い物できるようにするなど機能も強化する予定です。

 

他社がVR上で開催されるイベントへの出展が中心のなか、三越伊勢丹は既に独自のVR空間を構築・提供しており、百貨店業界のVR活用をリードする存在といえます。

②大丸松坂屋:VR上の百貨店で600種類の食品を販売

大丸松坂屋:VR上の百貨店で600種類の食品を販売
(画像:大丸松坂屋)

大丸松坂屋は、世界最大のVR/VRのイベント「バーチャルマーケット」への出展を発表しました。大丸松坂屋は専用のブースであるニューヨークの街並みを再現した空間に、「バーチャル大丸・松坂屋」を出展します。来場者は百貨店内で600種類以上のグルメの買い物を楽しんだり、大丸松坂屋の400年の歴史を体感できるアトラクションを楽しんだりすることができます。

 

食品ブースでは、来場者が自由に店内をまわり、食品3Dモデルを手に取って商品の形状を確認したり、バーチャルカタログで詳細を見たり、商品を購入することが可能です。夏に食べたい「しろくまアイス」や「盛岡冷麺」などのグルメを600点以上が販売される予定です。購入した商品は、後日自宅に届きます。

 

また、今回のイベント開催に伴い、「VR上で働くアルバイト」を初めて採用。バーチャル接客の経験があり、商品知識を身につけたスタッフが商品の魅力を伝えます。

③阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催

阪神阪急HD:VR上での音楽フェスを主催
(画像:阪神阪急HD)

大手関西私鉄である阪神阪急HDは、VR上での音楽フェスである「JM梅田ミュージックフェス」を開催しました。JM梅田ミュージックフェスは、阪急阪神HDが百貨店を含む大阪・梅田の街を忠実に再現したVR空間上で実施されるオンライン音楽祭です。

 

当イベントでは、メタ―バース空間となった大阪梅田を舞台に、VTuber等のバーチャルキャラクターによる音楽フェスが実施されました。アバターの姿で参加する来場者は、コンサートの参加、グッズ販売などのコンテンツが提供された他、バーチャルな梅田を高い没入感で体感できました。音楽フェスには30名を超えるVTuberなどのバーチャルアーティストが参加し、来場者数は8万人以上を記録する盛況となりました。

 

同社は、100年以上続けてきた「街づくり」のノウハウをVR領域でのビジネス展開に活用できるのではと考えています。

 

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④阪急阪神百貨店:VR上の百貨店でアバター接客を実施

阪急阪神百貨店:VR上の百貨店でアバター接客を実施
(画像:阪急阪神百貨店)

阪急阪神百貨店は、世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」への出展を発表しました。来場者は自身のアバターの姿で、百貨店内を自由に歩き回り、洋服や食品、家電などの買い物を楽しむことができます。

 

洋服コーナーでは、実在する靴下を愛する阪神百貨店のスタッフが、アバターの姿で接客を担当し、来場者ひとり一人にピッタリの靴下をレコメンドしてくれます。実物の靴下をECから購入できるのはもちろん、実物と同様のデザインのアバターが着用できるデジタルアイテムとしての靴下も購入可能です。

 

食品コーナーでは、関西の名物グルメである「551HORAI」「阪神名物いか焼き」「クラブハリエ」「フジマル醸造所」などのショップが、阪神梅田本店内のショップをイメージした内装でVRに登場。ECサイトとも連携しており、購入後日本全国に発送可能です。

 

家電コーナーでは、人気の生活家電ブランド「バルミューダ」のコーヒーメーカーやケトルなどを3DCGで再現します。ケトルを手に持って好きな角度から眺めたり、椅子に座るなど人気のインテリアアイテムをバーチャル上で試すことが可能です。

⑤高島屋:VRを活用した家具のオンライン接客を実施

高島屋はVRを活用した家具のバーチャル売り場を構築している。家具売り場の一角に設けられたVR体験スペースでは、来客がVRヘッドセットを着用し、仮想空間上に構築された12部屋のモデルルームに配置された家具を体感することができます。12部屋の内の1つは本店に実在するバラショップの部屋で、バラを飾った生活を体験し、気に入った場合は購入をすることも可能です。こちらのバーチャル家具売り場と連携する取引先を2022年には3倍にも拡大する予定です。

 

従来の家具販売では、スペースの関係で限られた家具しか置けないなか、バーチャル空間上で多数のモデルルームや家具を体感してもらいながら接客をすることで、百貨店の強みがより活かされるとしています。今後は、家具だけでなく百貨店の取り扱う生活全般の提案にVRが活用できないか検討していくとのことです。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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