MRとは?VR/ARとの違いやメリット・事例6選を紹介

近年注目を集めるVR、ARとともにたびたび耳にするようになった「MR」。

MRという言葉を聞きなれない方も多いかもしれませんが、実は、製造業や建設業など幅広い業界でMRのビジネスへの活用が進んでいます。

 

一方で、「MRについてざっくりとしたイメージしか湧かない」、「どのようにビジネスの現場で活用が進んでいるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、MRの概要をVR/ARとの違いや活用事例とともに分かりやすくご紹介します。 

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • そもそもMRとは何かよくわからない
  • MRをビジネスに活用するメリットがよくわからない
  • MRをビジネスに活用している事例についてキャッチアップしたい

 

本記事を読めば、MRの基礎知識について効率良くキャッチアップできると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

MR(複合現実)とは

MR(複合現実)とは Meta
(画像:Meta)

MRとはMixed Realityの略称で、別名複合現実とも呼ばれます。

ARとVRをかけあわせた概念で、リアルの世界にデジタルのオブジェクト(情報/コンテンツ)が表示された上で、手などを使ってオブジェクトを直観的に操作できる技術のことを指します。名前の通り、現実世界と仮想世界がミックスされたような体験をすることができます。そのため、MRはVRやARに比べ、医師の手術の支援や工場での作業支援など、より業務寄りの活用がなされる傾向にあります。

 

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MRとVR・ARとの違いとは

MRとVR・ARとの違いとは

VR、MR、ARの違いは上の図のように整理できます。VR・ARそれぞれとの違いについて分かりやすく紹介していきます。

MRとVRの違いとは

VRとMRは同時に紹介されることが多いものの、両者は異なる概念です。

VRはデジタル上のバーチャルの世界がベースで、現実世界に目を向けることはなく、まるでバーチャルの世界に入り込んでいるような感覚を提供する技術です。

 

一方で、MRはあくまでリアルの世界がベースで、視覚・音声等の情報を追加したり、ユーザーのハンドジェスチャーによりデジタルのオブジェクトを操作できる技術です。

そのため、MRはVRに比べ、医師の手術の支援や工場での作業支援などより業務寄りの活用がなされる傾向にあります。

MRとARの違いとは

ARとMRは同時に紹介されることが多く、両者は似ているのですが、両者は異なる概念です。ARでは操作することができずあくまで情報が追加されるだけです。

 
一方で、MRではデバイスによりユーザーの手の動きがトラックされ、リアルの世界の上に重ねられたデジタルのオブジェクトを直観的に操作したり、情報を書き変えたりすることができます。

MRのビジネス活用が注目される2つの理由

MRのビジネス活用が注目される理由として主に以下の2つが挙げられます。

 

  • ①MR関連技術の進歩
  • ②コロナによるコミュニケーション/業務の非対面化

 

それぞれの理由についてわかりやすく紹介していきます。

①MR関連技術の進歩

1つ目の理由は、MR関連技術の進歩です。近年MRを構成する様々な要素技術の進歩により、業務効率化などの場面でより大きなビジネスインパクトをもたらすようになりました。
具体的には通信技術の向上やコンピューターの処理性能の向上、MRデバイスの性能の向上などが挙げられます。

②コロナによるコミュニケーション/業務の非対面化

2つ目の理由は、コロナによるコミュニケーション/業務の非対面化です。感染拡大防止のため、多くの企業が社内外のコミュニケーションや業務をできるだけ非対面で行える環境の構築を進めています。そんななか、遠隔地の相手と3Dの立体モデルを共有しながらコミュニケーションや業務を行えるMRは、非対面化に向けたソリューションとして注目を集めています。

MRをビジネスに活用する3つのメリット

MRをビジネスに活用する3つのメリット

MRをビジネスに活用するメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。

 

  • ①研修・教育の効率化
  • ②リモートでの議論/業務指示の円滑化
  • ③現場での作業の効率化

 

それぞれのメリットについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①社員研修・教育の効率化

MRを活用し、社員に様々なシチュエーションを再現した、インタラクティブな3Dの教育コンテンツを提供することで、社員研修や教育の効率化を進めることができます。MRはVRと違い、現実世界の上に情報を付与したり、社員の手の動きをトラックすることができるため、より効率良い研修・教育環境の構築が可能です。

②リモートでの議論/業務指示の円滑化

コロナ感染拡大の影響で、多くの企業でリモートワークが導入されている一方で、立体的なイメージを共有しながらのコミュニケーションが求められる製造業界や建設業界などの企業は導入に苦戦しています。そこで、MRを活用することで、認識のズレを無くし、議論や業務指示を効率的に行うことができます。

③現場での作業の効率化

現場での作業員への作業指示を2Dの図面などではなく、MRを活用し3Dのデジタルオブジェクトで行うことで、作業ミス削減やスピード向上などの効率化を図ることができます。特に製造業界や建設業界の現場では立体的な作業を求められる事が多く、導入により大きな成果を挙げています。

MRのビジネスへの活用事例6選

MRのビジネスへの活用事例6選

MRのビジネスへの活用事例として以下の6つが挙げられます。

 

  • ①東急建設:建物の完成イメージの共有に活用
  • ②TOYOTA:車両整備の研修・効率化に活用
  • ③ベンツ:トレーニングセンターに100台以上を導入
  • ④サントリー:研修や現場での作業の効率化に活用
  • ⑤メディカロイド:遠隔での手術の実現に活用
  • ⑥東芝デジタルソリューションズ:溶接作業の効率化に活用

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①東急建設:建物の完成イメージの共有に活用

東急建設:建物の完成イメージの共有に活用
(画像:東急建設)

東急建設は、設計者や現場の作業員、また外部の発注者など様々な関係者が共通の建物の完成イメージを持つことで、施工の品質や効率を高めるためにHololensの活用を進めています。本取り組みには、Hololens上でAzure Remote Renderingという、3Dモデルをクラウド上でレンダリングし、それをストリーミングすることで、リアルタイムにHoloLensのデバイスに表示できるサービスが活用されています。

 

この活用により、発注者、設計者、施工者間での認識のズレを防ぐことができ、施工品質の向上や無駄な手戻りの削減による業務効率化を実現することができます。

②TOYOTA:車両整備の研修・効率化に活用

TOYOTA transforms its business with Microsoft HoloLens
(動画:TOYOTA)

トヨタ自動車は、全国56の販売店で車両整備の研修・作業のサポートにHololens2の導入を行いました。

従来の作業整備の研修や作業時に参考にする情報は、2Dの図面などによって共有されていましたが、立体的な作業が求められる現場には不十分でした。そこで、Hololens2を活用することで、車両の各所に合わせて表示されるデジタルオブジェクトを参考にしながら点検・修理作業を行うことで、作業ミスの抑制や作業の効率化を実現しました。

 

また、Hololens2の導入により、円滑な遠隔地と現場のコミュニケーションが行えるため、専門家が遠隔地の現場に対して作業指示を出すなどの連携も可能になりました。

③ベンツ:トレーニングセンターに100台以上を導入

ベンツ:トレーニングセンターに100台以上を導入
(画像:ベンツ)

ベンツは、研修の学習効率向上やコスト削減のため、自社のトレーニングセンターに100台以上のHololensを導入しています。

 

ベンツのトレーニングセンターでは、修理作業員の修理技術の取得や販売員の新車の特徴の理解のために、Hololensを通じたMR教育コンテンツを活用しています。このコンテンツを利用することで、車両の内部構造を3Dのデジタルオブジェクトとして確認でき、複雑な構造を直観的に理解することができるとのことです。

④サントリー:研修や現場での作業の効率化に活用

サントリー:研修や現場での作業の効率化に活用
(画像:サントリー)

サントリーは新入社員の研修や現場での作業の効率化にHololensを活用する試みを進めています。

 

サントリーは商品需要の増加による多くの新入社員のスキルアップと、複雑化する作業工程への対応を進める必要がありました。そこで、Hololensを活用することで200段階に渡る作業手順をMRで学ぶことのできるアプリケーションを新入社員向けに実証的に開発しました。実証の成果として、従業員がタスクを習得するまでの時間を最大で70%削減する可能性があるとのことです。

⑤メディカロイド:遠隔での手術の実現に活用

メディカロイド:遠隔での手術の実現に活用
(画像:メディカロイド)

2020年、川崎重工業とシスメックスの合弁会社であるメディカロイド社が初の国産遠隔手術支援ロボットである「hinotori」を実用化しました。同年12月に前立腺がん手術の1例目が行われ、その後も実績を積み上げています。

 
Hitonoriは4本のロボットアーム、内視鏡カメラ、手術器具を搭載した手術ユニットで構成されており、医師は3D画像を見ながら、内視鏡カメラと手術器具を搭載したアームをコントローラーで遠隔操作します。

 
手術支援ロボットを活用した手術は患者側、医師側双方に多く存在します。患者側のメリットとしては手術の出血や手術後の少なさ、感染症のリスクの低さなどが挙げられ、医師側のメリットとしては直観的な操作が可能、手術部位を拡大して確認できる、手の震えが伝わらないなどのメリットが挙げられます。

⑥東芝デジタルソリューションズ:溶接作業の効率化に活用

東芝デジタルソリューションズ:溶接作業の効率化に活用
(画像:東芝デジタルソリューションズ)

東芝デジタルソリューションズの提供する工場の現場での作業効率化に向けたMRソリューションが自動車メーカーに活用されています。

 

例えば、溶接作業において、従来は溶接箇所に穴を開けた紙を重ね合わせて、溶接箇所がずれていないかを手作業で確認する必要がありました。また、設計に変更があった場合にも、紙を作り直した上で再度確認する必要がありました。

 

そこで、MRを活用することで、設計変更のたびに用紙を作り直す手間を省くことができます。また、現場の作業員はデジタルガイダンスを見ながら、直感的に溶接箇所が正しいかどうかを確認することができます。その結果、溶接作業のスピードと精度の向上に繋がっています。

企業がMR活用を進めるための4つのフェーズ

企業のMR活用の進める流れとして、大きく以下の4つのフェーズが挙げられます。

 

  • Phase1:市場動向・知見のキャッチアップ
  • Phase2:戦略/企画の立案
  • Phase3:事業計画の策定
  • Phase4:開発・運用

 

それぞれのフェーズについて分かりやすく紹介していきます。

 

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Phase1:市場動向・知見のキャッチアップ

1つ目のPhaseとして取り組むべきは、最先端の市場動向・知見のキャッチアップです。MetaやApple、Microsoftなどのビックテックやユーザーの動向・先行活用事例など、日々変化する市場動向やナレッジへのキャッチアップが必要です。

 

このフェーズが、成果に繋がる骨太な戦略/企画策定の基盤となります。

Phase2:戦略/企画の立案

2つ目のPhaseはMR活用の戦略/企画です。活用目的を踏まえ、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方、実現に向けた企画を立案しましょう。

 

ユーザーバリューと自社の事業性の両方を満たす、質の高い戦略/企画の立案が、成果につながるMR活用の実現に向け最も重要なポイントとなります。

Phase3:事業計画の策定

3つ目のPhaseは事業計画の策定です。事業に期待する成果や開発・運用のアプローチやタイムライン、必要な投資額などを検討しましょう。

 

MR開発・運用といっても、プロジェクト毎に求められるケイパビリティは様々であるため、自社にマッチするツール・ベンダーの選定が非常に重要です。

Phase4:開発・運用

4つ目のPhaseが開発・運用です。MR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを有効活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完しつつ、ユーザーに届けたい体験を実現するMRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。 

 

4つのフェーズで取り組むべき35のステップに関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。

 

※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ【担当者必見】

企業がMR活用で成果を上げるための5つのポイント

企業がMR活用で成果を上げるための5つのポイント

企業がMR活用で成果を上げるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。

 

  • ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
  • ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
  • ③ユーザーファーストなUX設計
  • ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
  • ⑤強力な開発・運用体制の構築

 

それぞれについて分かりやすく紹介していきます。

 

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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ

1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。

デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。

 

MR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。

②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案

2つ目のポイントは、MRを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。

現在MR活用に取り組む企業には、MR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。

 

その結果、活用のPDCAが回らない、MR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。

 

自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜMRではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。

③ユーザーファーストな企画・UX設計

3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなMRの企画・UX設計です。

現在、多くの企業がMRに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなMRが多く存在します。それらのMRは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。

 

そのため、「MRならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。

④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進

4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。

MR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。

 

そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。

⑤強力な開発・運用体制の構築

5つ目のポイントは、強力なMR開発・運用体制の構築です。

高いユーザー体験と事業性を両立するMRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。

 

MR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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