進化が加速する実写の3Dアバターがもたらすビジネスチャンスとは?
目次
シェーさんプロフィール
2003年に来日し、早稲田大学で画像処理についての研究で博士号を取得。同大学教員を経て、2010年MEDIATEKに入社、その後2012年サムスン日本研究所に移籍。画像処理の研究を続けていたが、より社会に貢献するサービス構築をしたいと独立。2016年に株式会社VRCを設立。
株式会社VRC会社紹介
2016年5月創業。誰でも使える3Dフォトリアルなアバターと人間の身体に関する情報を取得するソリューション、及び様々な分野のサービスに直結するプラットフォーム事業とハードウェアを含めた環境構築を提供。取得したアバター及び身体データは、シームレスに様々なサービスに入れることができ、エンタメ、アパレル、ヘルスケア、フィットネス等の分野に活用できるプラットフォームになっている。また、メタバースの入り口としてこのソリューションを活用することもでき、仮想空間にフォトリアルな自分が入り込む体験を作り出すことができる。そしてこれらの様々な分野のビジネスは国内のみならず、海外にもすでに展開しておりビジネス化を加速中。今後は、数千万〜数億単位の会員基盤を抱えるプラットフォームを拡大していき、グローバルに展開する社会インフラを目指す。CEATEC AWARD2016、J-TECH STARTUPなど、様々なAWARDを受賞。
単なる技術屋ではなく、顧客へのトータルソリューションを提供
ーVRCの会社紹介をお願いしても宜しいでしょうか。
シェー:私達の会社は、人体の3Dアバター化に関する技術開発を基盤としながら、トータルソリューションを提供するサービスを展開しています。3Dアバターを撮影するだけでなく、データを安全に管理するクラウド環境やセキュリティ管理機能などのバックエンド技術も含めたご提供を行っております。VRCでは、曖昧な定義のアバターという言葉をデジタルツイン、アバター、ボディデータという3つの定義に分けたうえで、主なデータの利用法である①健康・ヘルスケア分野②アパレル分野③エンターテイメント④観光等の分野、全てをカバーする形で事業を行っています。データを3つの分類に定義づけすることによって、事業ごとに必要なデータがどのようなものであるか、どのようにデータを加工すべきかを考えることができます。
ー具体的なユースケースを教えてください。
シェー:ボディデータとデジタルツインのデータを利用することで、ヘルスケアの分野では身体の寸法を可視化し、健康意識を高める取り組みを行うことができます。例えば、フィットネスジムで期待できるビフォーアフターを自分の体や姿を用いて行うことができます。実際にフィットネスジムに通うことで自分の身体がどのように変わるのか。体重が1kg減った際に自分の見た目がどのように変わるのか。未来の変化を可視化することで、健康意識の改善を図ることができます。他には、広告の分野でもアバターやデジタルツインのデータを活用することで、より消費意欲促進に繋げることができると言われています。具体例として、ランニングシューズの広告でシューズを履いた自分がボルトと一緒にオリンピックの決勝で100M走を走るという体験をメタバース上で実現するなどです。他にも、大量製造・大量消費がSDGsの観点から問題となっているアパレル業界において、バーチャル試着を行い収集したデータを基に生産計画の”カイゼン”を図る取り組みも実現可能です。
3Dアバター活用を推進し日常をエンパワーメントしたい
ー最先端を走る立場として、これからの5~10年の実写×3Dアバターの活用ビジョンをどう考えていますか。
シェー:未来を考える上で、世界は加速度的にエンパワーメントされているということを大前提として認識しておく必要があります。具体的には、インターネット検索機能の普及、個人の検索履歴やアクセス履歴のトレースによるパーソナライズ化された広告、それに付随したネットショッピングやネットマーケティングの普及により、私達の生活が格段に便利になった、こうした流れが今後も加速し、より便利に、より豊かにというトレンドが進んでいくと考えています。私達の領域の中で考えると、物理的なボディデータを現在の検索履歴やアクセス履歴と同レベルで収集・活用することによって3Dアバターによる経済圏を広げ、日常のエンパワーメントにつなげていきたいと考えています。ボディデータによるマーケティング事業は現在進行中ですが、加えて弊社は筐体(ハードウェア)を利用したビジネスも展開しています。
ーフィジカルデータについてのセキュリティについてはどの様にお考えですか。
シェー:私自身、情報系の研究を行う立場から、よく情報セキュリティに関しての意識が高いと言われており、弊社の事業を推進する際にも特にセキュリティ面での工夫をしてまいりました。ここで2点挙げさせていただくと、1点目は、個人情報保護の観点から、収集されたエンドユーザーのIDやデータそのものを販売する類の事業を行っていない点です。収集されるデータの所有権は等しくエンドユーザーにあり、VRCを含めてすべての企業はあくまでエンドユーザーに対してサービスを提供する「権利」を持つという仕組みになっています。日本の個人情報保護法と、EUにおける個人情報保護のための規則であるGDPR(General Data Protection Regulation)の考え方と完全に一致しています。2点目は、収集したデータは、データの所在国で保管する仕組みにしている点です。日本のデータは日本で、シンガポールのデータはシンガポールでローカルに保存することにしています。プラットフォームをWeb3.0に沿った形で設計しているため、ハッキングやサイバー攻撃に強い、セキュリティの強いものにできています。ちなみに、Web3.0に沿ったアバター管理プラットフォームは、グローバル的に見てもかなり珍しいと評価いただいております。
各事業の専門家と協業し、より良いサービスを
ーこの展望を踏まえて、実写と3Dアバターの活用としてどんな取り組みを進めていくべきだと考えていますか。
シェー:私たちはあくまで3Dアバターの専門家なので、この技術をそれぞれの分野に応用して事業化する上では、その専門家達と共に新しい事業を創出していきたいというのが我々の考えです。例えば、フィットネスジム事業一つとっても、ボディデータを活用することによりエンドユーザーの個人に合わせたパーソナルトレーニングに近いメニューをより多くのユーザーに提供するなどが考えられますが、これにはフィットネスジム事業の知見が中心となります。その上で、3Dアバター関連の技術やノウハウ等各事業毎に足りない部分をVRCが補完する形で事業を作り上げるといった具合です。われわれのデータは先程申し上げた通り筐体を購入いただかなくてもサービスへの利用が可能な形態ですので、イニシャルコストも限定的ですし、スモールスタートが可能となっています。3Dアバターやメタバース導入を考えているが、技術的なネックがありお困りという場合には是非一度お話させて頂ければと思います。
社会のインフラとして、文化の架橋に
ー最後に、会社としての今後の目標や展望を教えてください。
シェー:私達は、最終的には社会のインフラとして誰でも簡単にアクセスができ、誰でも利用することができてかつ面白い、といった社会になくてはならないような地位を確立していきたいと思います。それにプラスして既に進出している海外市場にも注力していきたいです。その為にデータは各国に保管して情報セキュリティの面でも海外に対して展開しやすい設計にしていますし、日本と海外をつなぐ、クロスボーダービジネスとして社会にも貢献していきたい、と思っています。私たちの目指す世界観を実現するためにも、現在パートナーシップは鋭意募集中ですし、人材としても、デジタルプラットフォーム戦略や関連する技術分野に知見をもち、興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひ協力していただきたいと思っております。
ー今回はお忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。今後も業界の注目企業/ビジネスパーソンを取材し、メタバースのビジネス活用の最前線に迫っていきますので、どうぞお楽しみに。
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