3DCG制作大手の積木製作がメタバースに参入する理由とは?|常務取締役 赤崎信也氏
目次
赤崎信也氏プロフィール
1977年生まれ。同志社大学工学部を2000年に卒業後、機械設計のエンジニアとして某機械メーカーに勤務。ハリウッド映画の影響でCG分野に興味を持ち、デジタルハリウッド大学大阪校にて1年間学んだ後、2005年に積木製作にCGクリエイターとしてジョイン。現在常務取締役を務め、顧客と共同の事業開発や海外事業を担当している。
株式会社積木製作 会社紹介
2003年設立の一級建築士事務所であり、従業員数は30名。代表取締役社長は一級建築士の城戸太郎。「全産業の未来(あした)を設計する」というVisionの下で建築業、製造業中心の顧客に対してXR開発やCGアニメーション制作、関連する技術コンサルティング等を行う。代表サービスは「安全体感VRトレーニング」で、300社を超える導入実績を有する。
積木製作のメタバース事業
ー積木製作様の特徴や強みを教えて下さい。
赤崎:建築業や製造業のお客様に対してのCG制作、XR関連事業の開発が主な事業内容です。創業者であり代表取締役の城戸が一級建築士である背景から、元々は建設業のお客様が多かったのですが、10年前から参入したVR事業については建設業に加えて製造業のお客様も多くなっています。我々の強みとしては、開発するCGやVRのグラフィックの美麗さ、安全教育に関する事例の豊富さからくるノウハウの蓄積があります。スーパーゼネコン5社や、東京建物様、野村不動産様などのデベロッパー、デンソ―様やいすゞ様などのメーカーなどに対する幅広い実績があります。
ニーズに応えていった結果、メタバース・VRに参入
ーVR事業に参入された経緯を教えてください。
赤崎:2015年頃に、VRを活用した安全教育を実践したいというお客様からのニーズに応えるために開発を行ったのが参入の経緯です。従業員教育×VR事業に早いタイミングで参入できたこともあり、過去実績が豊富である点と、背景グラフィックが綺麗である点を強みとしています。従業員教育×VR事業では、建築業や製造業以外では松屋フーズ様に提供したVRコンテンツによる調理、接客教育なども実績としてあります。
ーVR事業から転じてメタバース事業に参入する背景はどのようなものですか。
赤崎:複数のアバターがVR・メタバース空間上に同時に存在することは、VR空間の体験の質向上に大きく繋がるため、従来より(VRだけでなくメタバース事業に活用できるような)コンテンツ制作も行っていました。最近になって「メタバース」という言葉の広がりや世の中のニーズの高まりに合わせて、自然と提供するサービスが単なるVR空間からメタバースに変化しているということかと思います。
グラフィックと動作を両立した「高品質」メタバースが積木製作の強み
ーメタバース領域で展開している事業は具体的にどのようなものですか。
赤崎:1つ目は、2023年4月にローンチした美麗な映像体験などの高クオリティなメタバースワールド事業です。具体的には、VR chatのような既存のプラットフォームを用いた、クオリティの高いメタバースワールドの制作事業となります。メタバースで商品を売ったり、ブランディングを行ったり、建築物を表現したりするためには、クオリティの高い映像体験とメタバース内での動作を両立できるワールド制作が求められます。このニーズに対して、積木製作ではUnity Japanのデモの様に軽快な動作と映像の美麗さの両立を実現したクオリティの高いワールド制作を強みとして提供していきたいと考えています。
2つ目は、積木製作の強みである従業員教育分野のノウハウを活かしたメタバース事業です。臨場感の観点から、共同作業が可能であるメタバースを用いることで教育効果が高まると考えています。現在の「安全教育VRトレーニング」は1人での体験が主になっている一方で、メタバース事業ではお客様のニーズに合わせた受託開発を行う形としています。
具体的な事例としては、大林組様の技能者教育のために制作した技能者教育の為の施設である「O-DXルーム」があります。建設業界初の、メタバースにおいて玉掛け共同作業のシミュレーションが行える教育コンテンツであり、5人同時に異なる役割で玉掛け作業を体験できる点が大きな特徴となっております。また、物理シミュレーションを活用することにより、決まったシナリオではなく、メタバース内でのアバターの動きに合わせてリアクションするために、実際の現場での動きにより近い体験が可能となっております。また、5人同時に別の役割が体験できる点について好評をいただいております。
ー積木製作様の「高品質」なメタバースワールドはビジネスにどの様な変化をもたらすとお考えでしょうか。
赤崎:教育の観点でいうと、できる限り現場での実地訓練に近く、もっといえば実地訓練を超えて現場で作業をしている感覚になれる臨場感によって教育の効果が改善し、社員教育にかける時間や費用などのリソースを削減できるということが大きいかと思います。
その為にグラフィックにこだわっていて、実際の景色に近い視覚体験の中でトレーニングを行うことで、より実際の感覚に近い緊張感や感覚でトレーニングでき、教育効果が高まっていくと考えています。
武器は20年のビジネスで培った「あきらめの悪さ」
ー動作とグラフィックを両立させている秘訣は、どの様なものになるのでしょうか。
赤崎:強いて挙げるなら20年間でCG制作会社として培ってきたノウハウによるもの、でしょうか。たしかに、メタバースではネットワークに負担がかかるのでグラフィックのクオリティを上げられない、という悩みを持つ企業は多いと思います。しかし、私達の現時点での答えとしては、「やれば、できますよ」ということです。実際、ゲーム業界では美麗なグラフィックの中で多数のプレイヤーが同時に参加することは当たり前になっています。色んな制約がある中でも、クオリティの追及を諦めないこと、その思考錯誤を積み重ねた結果として、「高品質」なメタバース制作が実現できているということかと思います。抽象的な話になってしまって申し訳ないですが。
次の展開のキーワードは「双方向」と「海外展開」
ー今後の積木製作様の事業展開の展望についても、伺えますか。
赤崎:事業展開では、今後もVRトレーニングに注力していきたいと考えています。特に安全教育を武器に、海外を狙いつつ国内にもまだまだ拡大していきたいです。コストが嵩みがちなVRコンテンツですが、積木製作のパッケージでは1本あたり30万円~50万円から提供可能と価格的競争力を持てている状態なので、安全教育VRを武器に戦っていきたい想いを持っています。
海外展開に関しては、安全体験VRトレーニングを多言語対応しています。メジャー言語以外のタガログ語やインドネシア語にも対応しており、現在タイ語対応を進めています。理想はアジア各国に1社ずつパートナーがいて、それぞれの国のローカル企業にまでサービスの拡大を進めていくことです。
ーVRトレーニングのコンテンツ以外の新規サービスなどもあるのでしょうか。
新規サービスについても取り組みを進めています。2022年にVR専用のe-learningのプラットフォームをローンチしました。このサービスを通じて、受託開発した個社専用のコンテンツもプラットフォームにアップして、ユーザー様に使って頂くことも構想しています。加えて、お客様の中で内製したコンテンツもプラットフォームにアップロードして他のお客様に使ってもらうといった、双方向型のプラットフォームに育てていきたいとの想いがあります。
さらに、Unityなどのメタバース制作サービスを一切使わずにコンテンツを内製できるようなツールを現在開発中で、このツールを使って頂くことでプラットフォームの利用も増やせると考えております。このプラットフォームもいずれは複数人体験のメタバースに対応できるものとしていく予定です。
ー今回はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。
読者の皆さんも、ぜひこの機会に、積木製作の「高品質」メタバースコンテンツの自社ビジネスへの活用をご検討されてみてはいかがでしょうか。
今後も業界の注目企業/ビジネスパーソンを取材し、メタバースのビジネス活用の最前線に迫っていきますので、どうぞお楽しみに。
メタバース/XR活用の個別無料相談会実施中
メタバース総研では、メタバース/XR活用の個別無料相談会を実施しています。
各社様のメタバース/XR活用に関する課題解決に向け、最新の市場動向や具体的な活用アイデアなどを、個別のオンラインMTGにて、無料でご紹介させていただきます。
以下のようなお悩みをお持ちのご担当者様は、この機会にぜひお申込みください。
- 興味はあるが、そもそも活用するかどうか迷っている
- 自社に合った活用方法へのアドバイスが欲しい
- 自社の企画の参考になる活用事例を知りたい
- どのように活用を進めていけば良いか分からず困っている