VPSが実現するリアルワールドメタバースがもたらすビジネスチャンスとは

2005年の設立よりAR・XRに関する最先端の技術とアイデアで新たなコンテンツを生み出し続ける株式会社デザイニウム。同社の手がけるARコンテンツはNiantic Lightship Challengeをはじめとした多数の賞を受賞しています。

そんなXR/メタバース業界をリードする同社が注力するのは、「VPS×AR」によるコンテンツ開発やリアルワールドメタバースの実現に向けた取り組みとのこと。

その真意を探るべく、デザイニウム社の秦 優さんに取材の機会を頂きました。VPS技術の可能性やリアルワールドメタバースがもたらすビジネスチャンスをぜひご覧ください。

秦 優 氏 

株式会社デザイニウム 取締役
各種センサーを活用した体験型コンテンツを10年以上前から手掛けており、この数年はxRの中でも特にARでの体験創りを企画して、様々なプロジェクトを推進している。

 

秦 優 氏  株式会社デザイニウム
(画像:株式会社デザイニウム)

リアルワールドメタバースとは

ーリアルワールドメタバースとはどのような概念か?

秦:リアルワールドメタバースとは、ARなどの技術を活用し現実の生活がより便利に拡張された世界のことだと考えています。必ずしもARを活用したものが全てとは思いませんが、デザイニウムとしてはARを活用したリアルワールドメタバース領域に注力しています。

ーリアルワールドメタバースの実現に向けて

リアルワールドメタバースのコアは、ARグラスを装着すれば、現実世界にユーザー一人ひとりが見たい情報を追加し、見たくない情報を取り除くことができるようになることです。この延長線上として、人々が見たい情報/見たくない情報とは何か?という議論が生まれ、様々な活用が進み生活が変わっていくと考えています。

 

リアルワールドメタバースとは デザイニウム
(画像:デザイニウム)

VPSはリアルワールドメタバースを大きく前進させる

ー近年業界で注目を集めるVPSとはどのような技術?

秦:VPSとは、Visual Positioning Systemの略称で、スマホ等のデバイスのカメラから得られた画像情報を基に、自分の位置と向きを判定する技術の事です。GPSでも数メートル単位での判定は可能ですが、VPSは数センチでの判定が可能で精度が遥かに優れています。

この技術はリアルワールドメタバース体験の質を大きく向上させます。例えば、看板の横にバーチャルで吹き出しをピッタリの位置に表示させるということが、GPSだと難しいですが、VPSなら可能です。

ーVPSになぜ注目が集まっている?

秦:Niantic社の提供するLightship VPSなど、近年Googleなど様々な企業が相次いで開発者向けのVPSシステムの提供を始めています。そのため、より多くの人がVPSを活用したサービス開発に取り組み、よりよいサービスが登場する環境が整いつつあります。それを推し進めるNianticなどの取り組みは素晴らしいと思っています。

 

VPSはリアルワールドメタバースを大きく前進させる デザイニウム
(画像:デザイニウム)

リアルワールドメタバースで生まれる新たな不動産の価値

ーデザイニウムが取り組むVPSを活用した大規模な実証について

秦:デザイニウムは昨年、VPSを活用し大型の商業施設内にARコンテンツを投影することで広告として利用するという大規模な実証を行いました。まさにリアルメタバースの実現に向けた取り組みと言えます。

この取り組みが進めば、リアルの不動産/施設の価値を高めることができる可能性があります。既存の不動産ビジネスから得られる収益が頭打ちとなるなか、ARを活用し、集客を行ったり、バーチャル上の広告枠を販売するといった様々な可能性が考えられます。

 

リアルワールドメタバースで生まれる新たな不動産の価値 デザイニウム
(画像:デザイニウム)

ー実証を通じて見えてきた課題とは?

秦:課題としては、リアルの施設へのARコンテンツの投影に関して、ルール・管理方針を定めていく必要があります。具体的には、事業者の意図しないコンテンツが投影されたり、体験するユーザーの安全の確保などが挙げられます。ただ、施設側のルール策定が過度に保守的になってしまえば、メタバースの成長の足かせになりかねないため、バランスは非常に重要です。私たちデザイニウムは今回のような企業のサポートを通じて、ルールの策定などに貢献できればと思っています。

 

リアルの施設へのARコンテンツの投影 デザイニウム
(画像:デザイニウム)

スマホARの限界と今後

ーリアルワールドメタバース実現に向けた課題とは?

秦:最大の課題はスマホでのAR体験に限界があることです。特に、近年大型化するスマホを長時間かざして持ち続けるのはユーザーにとってかなりの負担となります。そのため、現在のAR活用は10~20秒でどのような体験を届けられるかというところに落ち着いてしまっています。一方で、グラス型の軽量なARデバイスが登場すれば、リアルワールドメタバースが実現・普及していく可能性は圧倒的に広がります。そのため、私たちはスマホベースのARだけでなく、グラスベースのARの普及を見据えた技術開発にも取り組んでいます。

リアルワールドメタバースがもたらすビジネスチャンス

ーリアルワールドメタバースがもたらすビジネスチャンスとは?

秦:身近なところで言うと、先程の実証の話でもあったようなARレイヤーでの広告ビジネスや、顧客が手に取った商品に関する情報をARコンテンツとして表示させるコマースの購買支援などが挙げられます。また、業務効率化という観点では、建設業や製造業の型が今まで図面で見ていた情報をリアルタイムで3DのARコンテンツで投影するといった活用により、大きく業務効率化が進む可能性などもあります。

今後は、足元は限られた室内での業務効率化の用途で活用が進み、その後施設内や屋外などで一般ユーザー向けの活用が進む展開が想定されます。

まとめ<デザイニウム 秦様インタビュー>

業界の最前線でご活躍される秦さんから、リアルワールドメタバースが私たちの生活や体験をどう変えていくのかを学ぶことのできた取材でした。

現在広く普及しているメタバースはVR空間をベースとしたメタバースが中心ですが、AR/MRをベースとしたリアルワールドメタバースは私たちの現実世界の生活をより便利に、豊かにしていく大きな可能性を秘めています。

ルールの整備など課題はあるものの、デザイニウムさんの実証のような様々な取り組みが業界として積み重なることで、現実世界の体験がメタバースによって拡張される時代が、そう遠くない将来やってくるかもしれません。

ぜひこの機会に、VPS×ARやリアルワールドメタバースの自社ビジネスへの活用についてご検討されてみてはいかがでしょうか。

今後も業界の注目企業/ビジネスパーソンを取材し、メタバースのビジネス活用の最前線に迫っていきますので、どうぞお楽しみに。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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