デジタルツインの建設業界での活用事例8選|メリットや活用法も紹介
近年IoTやAIなどの関連技術の進化やコロナによる行動制限などを背景に、デジタルツインの活用が幅広い業界から注目を集めています。
デジタルツインの活用には、設備・製品の品質・効率向上はもちろん、技術継承や新たな収益機会の獲得など様々なメリットが存在します。
一方で、「建設業界のビジネスにデジタルツインの活用を検討している」、「建設業界で具体的にどのような活用が進んでいるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、建設業界におけるデジタルツインの活用事例をメリットや活用法とともにわかりやすく紹介します。
本記事を読めば、建設業界におけるデジタルツインの活用の全体像を効率良くキャッチアップできると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
デジタルツインとは
デジタルツインとは一言でいうと、リアル空間から収集したデータをもとに、バーチャル空間上に全く同じ環境をまるで双子のように再現する技術のことです。
建物や設備に搭載されたIoTなどから集約した様々なデータをもとに、リアル空間に存在する都市全体や建物、設備をバーチャル空間上に再現し、AIなどを用いた分析を行うことで、効率的かつ正確なシミュレーションを行うことができます。
デジタルツインは幅広い対象や用途で活用が進んでおり、都市や建物、製品などの計画/設計・製造・運用・アフターフォローといった各プロセスのシミュレーションに活用されています。
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デジタルツインを建設業界に活用する5つのメリット
デジタルツインを建設業界に活用するメリットとして主に以下の5つが挙げられます。
- ①品質の向上・リスクの削減
- ②施工の効率化・標準化
- ③シュミレーションのリードタイムやコストの削減
- ④アフターサービスの充実
- ⑤技術の継承
それぞれのメリットについてわかりやすく解説していきます。
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①建物の品質向上・リスクの削減
デジタルツインを活用しバーチャルな世界で設計や施工のシミュレーションを重ねることで、建物の品質向上やリスクの削減が可能です。
デジタルツインを活用することで、従来の2Dの図面や現実世界のモックを基にしたシミュレーションに比べ、幅広いシチュエーションのシミュレーションを数多く行うことができます。
②施工の効率化・標準化
デジタルツインを施工管理に活用することで、施工の効率化と標準化を図ることが可能です。そもそもどのような計画で施工を行うべきかの検討にシミュレーションを活用したり、施工を進める中での計画の修正に施工の進捗データを基にした分析を活用したりすることができます。
③シュミレーションのリードタイムやコストの削減
デジタルツインの活用により、デジタル上で仮説検証を行うことで、これまで物理的な試作品や試作ライン、物理的な検証に費やしていた時間を最小限に抑え、さらにコストも抑えながらシュミレーションのスピードを向上させることができます。
建物の建築は一度施工してしまうと修正が難しいことや、リアルの世界でモックアップを作ってシミュレーションを行うのには大きなコストや工数がかかるという課題がありますが、デジタルツインを活用し、バーチャルの世界でシミュレーションを重さねることでそれらの課題を解消することが可能です。
④メンテナンス・アフターサービスの強化
デジタルツインを活用することで建設後の製品に関する情報収集、シュミレーションを行う事が可能です。これらの情報があれば、仮に建物に問題があったとしても、建設会社は適切なタイミングでメンテナンス・アフターサービスを提供しやすく、お客様のニーズに迅速に対応することができます。これが顧客満足度の向上につながり、LTVの最大化が期待できます。
⑤技術の継承
デジタルツインを活用し、優れた施工技術を持つ作業員が遠隔地から作業指示を行ったり、優れた設計士のアプローチをデジタルツインのモデルに集約したりと、各作業員の仕事の進め方のデータが可視化・集約されることで、今まで共有されていなかった価値あるノウハウを、デジタルツインを通じて会社全体に継承していくことができます。
デジタルツインを建設業界に活用する6つの方法
デジタルツインを製造業に活用する方法として主に以下の6つが挙げられます。
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①調達の効率化
建物の設計データをデジタルツインで活用することで、自動で調達資材の見積もりが完了するといった活用が進んでいます。
この活用により、調達する材料の種類・数量・タイミングをデータに基づき最適化することができます。
②建物の設計のシミュレーション
建物の設計を従来の2Dの図面ベースではなく、CADなどをベースとする3Dモデルベースで行い、VRやMRを用いて、遠隔地のメンバーと3Dモデルを共有しながら設計を行ったり、デジタルツイン上で耐震や耐熱性能、人流などのシミュレーションを行ったりする活用が進んでいます。
この活用により、従来のシミュレーションよりも幅広いシチュエーションのシミュレーションを数多く行うことができます。
③施工のシミュレーション
工場建設の際にどのような施工計画で施工を進め、進捗に応じて修正すべきかといった検討へのデジタルツインの活用が進んでいます。施工の修正に関しては、実際に施工が進むなかで取得された各種データがバーチャルな施工計画のモデルに取り込まれ、算出された最適な施工計画をリアルな施工現場に適用し、また効果測定が行われるというループにより、常に最適化が行われるという仕組みを構築することも可能です。
この活用により、一度建設してしまうと修正の難しい施工現場の精度向上やコストやリードタイムを最小化する施工を実現することができます。
④作業員への3Dでの施工指示
従来の現場での作業指示は2Dの図面を用いて行うというものでした。一方でデジタルツイン・MRなどを活用して、3Dのデジタルガイダンスを基に作業を行うという活用が進んでいます。
この活用により、個人の経験や能力の差に依存せず、作業を標準化し、施工のクオリティコントロールを行うことが可能になります。
⑤建物のメンテナンス・アフターサービス
デジタルツインを活用することで、施工後の建物・設備の不備のリスクを事前に予測したり、遠隔地からアフターサービスを実施するといった活用がすすんでいます。
この活用により、適切なタイミングでコストを抑えながらメンテナンス・アフターサービスを提供することが可能になります。
⑥バリューチェーン全体の最適化
調達・設計・施工・アフターサービスというバリューチェーンの一連のデータをデジタルツイン上で統合・分析を行うことで、バリューチェーン全体での設計や運用の最適化を図るといった活用が進んでいます。
この活用により、各プロセス単位での最適化に留まっていた取り組みを、バリューチェーン全体での最適化に発展させることが可能になります。
デジタルツインの建設業界における活用事例8選
デジタルツインの建設業界における活用事例として以下の8つが挙げられます。
- ①大林組:4D施工管理システムを開発
- ②鹿島建設:国内初、建築の全フェーズでデジタルツインを実現
- ③清水建設:都市デジタルツインの基盤を整備
- ④コマツ:建設現場に生産性向上にむけデジタルツインを導入
- ⑤奥村組:メタバース上で設計・施工のシュミレーション
- ⑥竹中工務店:プロセス全体にデジタルツインを活用
- ⑦日立製作所:デジタルツインによる業務プロセス改善
- ⑧東急建設:BIMを使った仮設計画ツールの運用
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①大林組:4D施工管理システムを開発
大林組は建築物の3Dモデルに建設現場周辺の地形やクレームの位置などの施工現場の状況を、デジタル上のモデルにリアルタイムに反映する「4D施工管理システム」を開発しました。
このシステムは、北海道で2023年3月の開業を控える「エスコンフィールドHOKKAIDO」の建設現場で実証が進められています。この実証では、クレーンに設置したセンサーからの位置や方角のデータを基に、クレーンの動作に関するデータをリアルタイムに収集し、デジタルツインに反映することで、施工の品質向上はもちろん、各業者の作業の出来高の算出にも活用されています。また、現場に設置された入退場システムから取得した作業員の入退場データを基に、各作業を担当する作業員の工数を測定し、作業の効率化に繋げる試みも行われています。
②鹿島建設:国内初、建築の全フェーズでデジタルツインを実現
鹿島建設はオービック御堂筋ビルの新築工事において、プロジェクトの全フェーズにおいてBIMによるデジタルツインを活用することで、プロジェクトの各フェーズにおける建物データの連携・共有を可能にしました。
企画・設計フェーズでは周辺環境へのビル風のシュミレーション、建物内のシュミレーションに、施工フェーズでは工事プロセスのデジタル化と進捗管理、MRの活用による、実際の施工状況の確認に、維持管理フェーズでは、ファシリティマネジメントのデータへの連携、日常の点検から得られた情報を収集し、その後の建築の企画・開発への活用になど、多岐にわたるユースケースでデジタルツインを活用しました。
デジタルツインを活用することで、建物自体の高品質化はもちろん、企画・設計から竣工後の管理・運営までの一連の建物にまつわる情報をデジタル化し、お客様に提供することが建物の更なる価値向上に繋がると考えているとのことです。
③清水建設:都市デジタルツインの基盤を整備
清水建設はオートデスクと共に、都市デジタルツインの実装に向け、データ基盤やプラットフォームを整備するプロジェクトを推進しています。都市デジタルツインとは、都市内の建物や道路などの静的データに加え、街での人流や物流、エネルギー―消費などの動的データなどを統合した大規模なデジタルツインのことを指します。
この都市デジタルツインを活用することで、より人が暮らしやすい都市開発が可能になると考えられています。
今後は、この都市デジタルツインをスタートアップなどの企業に提供することで、豊洲エリアのスマートシティ化を推進しつつ、そのノウハウを他都市の開発計画に対しても展開していく予定です。
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④コマツ:建設現場に生産性向上にむけデジタルツインを導入
総合機械メーカーであるコマツは、建築現場での生産性向上にむけデジタルツインを導入しています。コマツのデジタルツインは、資材、建設機械、資材、作業員の位置・稼働データと建物の図面データを組み合わせた遠隔管理システムです。これらのデータをPCの画面上に表示するように表示します。施工管理者などは、現地事務所や本社、支店から現場の隅々まで状況を確認することができます。
この取り組みにより、少人数での工事現場の効率的な管理や資材・機材を現場で探す時間やレンタル費用の削減、車両の待ち時間削減などの実現を期待しています。
同社は、これらの取り組みにより、日本の直面する課題である少子高齢化による労働人口の減少、また世界的な課題であるCO2排出量の増加の解消に貢献できるとしています。
⑤奥村組:メタバース上で設計・施工のシュミレーション
奥村組はメタバース上でのシュミレーションにより設計・施工の工数削減を目指すため、独自のメタバース空間である「メタバース技術研究所」の構築を発表しました。
メタバース技術研究所の構築にはSynemon社のVR構築サービス「NEUTRANS」が活用されたました。
従来は建築用のモックアップを作るのは当たり前のことでしたが、原寸大で製作する場合、多くの産業廃棄物を発生させることになります。また、縮小版で制作する場合も、手戻りが発生した際に膨大な工数が発生するという問題がありました。
そこで、同社の技術研究所内にある実験棟をメタバース化することで、設計や施工の細部の精度を高め、室内環境の際現に必要な施工にかかる工数を削減することができます。
メタバース技術研究所では、4種類の日射条件が室内環境の快適性や省エネルギーに与える影響を検証することができます。仮想空間上で工事関係者の合意形成を行い、実験結果をもとに実際の増改築工事を進めることで、手戻りを減らすことが期待できます。
また、同社はメタバース技術研究所の取り組みによりSDGs(持続可能な開発目標)を推進するとしています。その理由は、現実の素材を一切使用しないことにあります。
⑥竹中工務店:プロセス全体にデジタルツインを活用
竹中工務店は、ビルの営業から設計、生産準備、施工、維持保全までのプロセス全体をカバーするように複数のデジタルツインを構築し活用しています。
デジタルツインの機能を持つ主なシステムとしては、データ活用基盤の「建設デジタルプラットフォーム」やビル運用のシステムである「ビルコミュニケーションシステム」などがあります。
具体的には、デジタルツインを活用し、施工の予測とシミュレーションを行うことで、施工計画を立てる際の意思決定をサポートしたり、現場の状況をリアルタイムで把握し、施工現場での作業を最適化することができます。さらに、建物の維持保全の点に関しては、設備や機器の点検・修理のタイミングをデジタルツインを活用して判断することで、メンテナンスの計画を立てることができます。
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⑦日立製作所:デジタルツインによる業務プロセス改善
日立製作所の開発した「都市・建物向け XRトータルソリューション」は地図や建物・設備のBIM、点群データなどを活用し、仮想空間に、現実世界の空間情報とひもづいたデジタルツインを構築することが可能です。
また、デジタルツインに架空のオブジェクトをXR技術で可視化し、複数ユーザー間の共有やユーザーごとの表示制御ができます。オブジェクトは、ユーザーが簡単な操作で配置や移動、削除、サイズ変更を行うことが可能です。デジタルツインの活用によって、業務プロセスの改善や現場の可視化を実現し、製造業のDXを推進しています。
⑧東急建設:BIMを使った仮設計画ツールの運用
東急建設株式会社は、BIMを使った仮設計画ツールの運用を開始しました。BIMとは、建物を実際に建設する前に、現実と同じ建物の立体モデルをコンピューター上で作成することです。
同社は、設計施工案件において基本設計モデルに本ツールを活用し、「初期施工計画モデル」を作成しました。その後、新たな情報を付加しながら共通データ環境下で運用を続け、施工段階における「実施施工計画モデル」に進化させることができます。
さらに、作業所・社内各部署・専門工事会社などが共通データ環境下で相互に連携できるため、現実の施工と同じような状態を作り出すことができ、仮設計画におけるデジタルツインによる施工計画業務の効率化が可能となりました。
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