デジタルツインの医療への活用事例4選|5大メリットや活用法も解説
近年IoTやAIなどの関連技術の進化やコロナによる行動制限などを背景に、デジタルツインの活用が幅広い業界から注目を集めています。
デジタルツインの活用には、設備・製品の品質・効率向上はもちろん、技術継承や新たな収益機会の獲得など様々なメリットが存在します。
そんななか、「医療分野のビジネスにデジタルツインの活用を検討している」、「医療分野で具体的にどのような活用が進んでいるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- 医療分野でのデジタルツインの活用を検討している
- 医療分野でデジタルツインを活用するメリットを知りたい
- 医療分野でデジタルツインを活用している先端事例を抑えておきたい
本記事を読めば、医療分野におけるデジタルツインの活用の全体像を効率良くキャッチアップできると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもデジタルツインとは
デジタルツインとは一言でいうと、リアル空間から収集したデータをもとに、バーチャル空間上に全く同じ環境をまるで双子のように再現する技術のことです。
建物や設備に搭載されたIoTなどから集約した様々なデータをもとに、リアル空間に存在する都市全体や建物、設備をバーチャル空間上に再現し、AIなどを用いた分析を行うことで、効率的かつ正確なシミュレーションを行うことができます。
デジタルツインは幅広い対象や用途で活用が進んでおり、都市や建物、製品などの計画/設計・製造・運用・アフターフォローといった各プロセスのシミュレーションに活用されています。
医療分野においても、デジタルツインの活用が期待されています。例えば、病院のCTやレントゲンなどの検査機器などを通して取得される医療データに加え、スマートウォッチなどウェアラブルデバイスを通して、患者の血圧、体温、脈拍、睡眠パターンなどの情報を日常的に収集することで、患者の身体情報をデジタル上に再現することが可能となります。
こうした医療ビッグデータを活用し、患者の日常的な健康管理や生活習慣病の予防、病気の早期発見など、患者の様々なヘルスケアのパーソナライズに役立てることが可能です。
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医療分野にデジタルツインを活用する5つのメリット
医療分野にデジタルツインを活用するメリットとして主に以下の5つが挙げられます。
- ①病気の予防・早期診断の実現
- ②患者ごとにパーソナライズ化した治療の提供
- ③病院運営の効率化
- ④医療機器の故障予防
- ⑤新薬開発の生産性向上
それぞれについて、わかりやすく解説します。
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①病気の予防・早期診断の実現
1つ目は病気の予防・早期診断の実現です。過去の診断・治療データや、ウェアラブルデバイスによって取得した生活習慣データに加え、遺伝子情報のデータにより、個人のデジタルツインを構築することで、その人が将来どのような病気になりやすいかをシミュレーションすることができ、病気のリスク予測が可能となります。
将来の病気リスクを予測することで、適切な予防を行うことや、病気の早期発見・治療が可能となります。
②患者ごとにパーソナライズ化した治療の提供
2つ目は、患者ごとにパーソナライズ化した治療の提供です。デジタルツインによって、個々の患者に最適化した治療や投薬を行うことができるようになります。
デジタルツインが単なるシミュレーションと大きく異なるのは、「40代男性」のような一般的なモデルではなく、個々の患者に細かくパーソナライズされた仮想モデルを作成可能であることだと言われています。
③病院運営の効率化
3つ目は、病院運営の効率化です。デジタルツインによって、医療施設や組織全体を、動的なオペレーションやプロセスとともにシミュレーションすることができるようになります。
例えば、医師の診断速度や患者数などのデータを収集し、季節ごとの患者数の変化を予測することで、医療需要が高まる季節に多くの医師・看護師の人員を割くといったリソース調整ができます。経験則ではなく、データに基づいて客観的に判断することで病院運営の効率化を実現できます。
④医療機器の故障予防
4つ目は、医療機器の故障予防です。機器の温度上昇や起動回数、電圧などのデータを収集し、機械学習のモデルを組み合わせたデジタルツインを用いることで、医療機器の寿命を予測することができます。さらに、故障につながる原因のパターンを特定することで、メンテナンスの実施等の事前の対策を行うことができます。
⑤新薬開発の生産性向上
5つ目は、新薬開発の生産性向上です。新規の医療療法や薬剤のテストを実際の患者に実施するには、リスクが大きく多大な時間がかかるケースがありますが、人体のデジタルツイン構築によりコンピューター上でのテストができるようになります。そうすることで、新薬開発の効率化・生産性向上を期待でき、1品の新薬開発に100億円以上かかる製薬会社にとって大きなメリットとなります。
医療分野にデジタルツインを活用する3つの方法
医療分野にデジタルツインを活用する方法として主に以下の3つが挙げられます。
- ①患者の健康状態の把握・シミュレーション
- ②投薬・手術のシミュレーション
- ③医療機器・医療施設全体の稼働状況の把握・最適化
それぞれについて、わかりやすく解説します。
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①患者の健康状態の把握・シミュレーション
1つ目は、患者の健康状態の把握・シミュレーションです。デジタルツインによって患者の健康状態を再現することで、病気の早期発見や予防医療への活用が期待できます。患者からセンサーで日常的に生体データを取得することで、生活習慣病などの健康リスクを判定し、患者に合わせた病気の発症予測も可能になります。
②投薬・手術のシミュレーション
2つ目は、投薬・手術のシミュレーションです。人体のデジタルツイン構築により、投薬治療に対する反応性をシミュレーションしたり、手術で使う器具を仮想空間に再現し手術のシミュレーションをするという活用方法が考えられます。
中でも、高難度手術への応用が期待されています。患者の脳や心臓、その他の臓器など生死にかかわる部位は、治療リスクが高いという課題がありますが、患者の心臓などの部位をデジタルツインで再現することで、患者にリスクを負わせずに手術や治療のシミュレーションができます。
③医療機器・医療施設全体の稼働状況の把握・最適化
3つ目は、医療機器・医療施設全体の稼働状況の把握・最適化です。医療機器・施設の稼働状況や、人員リソースをデジタルツイン上でモデル化し、日々のオペレーションの最適化を図るという活用方法が考えられます。
例えば、患者の受付から検査を終えて退出するまでの流れをデジタル上で可視化することによって、最も時間がかかっている場所を特定し、所要時間を短縮するための最適化を行えます。同様に、需要が大きい季節・時間帯を特定することによって、人員リソースの調整を行うといった活用方法も考えられます。
医療分野でのデジタルツインの活用事例4選
医療分野のデジタルツインの活用事例として以下の4つが挙げられます。
- ①富士通:病院・患者の状態を仮想空間上に再現
- ②コニカミノルタ:内視鏡手術のシミュレーション
- ③武田薬品工業:デジタルツインで患者の身体情報を再現
- ④オプティム:手術ロボットの稼働情報・手術室の映像をリアルタイム取得
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①富士通:病院・患者の状態を仮想空間上に再現
2022年に富士通は、医療分野での共同研究に向け東北大学と包括提携を発表しました。病院や患者の状態を仮想空間上に再現するデジタルツイン開発を目指しています。
富士通はトップシェアを持つ電子カルテのノウハウを活かし、診療情報や病院職員の勤務状況、医療機器の稼働情報などを統合し、病床の稼働状況の把握や将来の状況のシミュレーションを行うことで運営の最適化を図ります。
また、ウェアラブルデバイスを通して取得した患者の状態もデジタル上で再現し、投薬や手術に活用する予定です。
②コニカミノルタ:内視鏡手術のシミュレーション
コニカミノルタは、2018年から内視鏡を用いた脊椎手術を仮想空間でシミュレーションできるデジタルツインのアプリケーション「Plissimo XV」を提供しています。このアプリケーションに医療機関で撮影した画像を読み込ませることで、仮想空間でのシミュレーションが可能になります。
脊髄そのものの再現に加えて、手術で使う内視鏡視点の画像やドリルなどの器具も仮想空間に再現し、手術のシミュレーションが可能になります。
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③武田薬品工業:デジタルツインで患者の身体情報を再現
武田薬品工業は、2019年からPwCコンサルティングと、デジタルツイン技術を活用してクローン病(消化管の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こす疾患)に関するシミュレーションツールの開発を開始しました。
人体の生理機能をデータで表現し、臨床症状や投薬情報を用いてデジタルツインを作成し、個々人に合わせた様々なシミュレーションが可能になります。今後はシミュレーションモデルを、学術論文などのデータや臨床試験データを用いて比較し、精度の向上を図っていく予定です。
④オプティム:手術ロボットの稼働情報・手術室の映像をリアルタイム取得
オプティムは、手術支援ロボットシステムに搭載された各種センサー情報や内視鏡映像および手術室全体の映像といった情報をリアルタイムで収集、解析、提供できるオープンプラットフォーム「MINS」の開発を行っています。
オプティムのプラットフォームを活用することで、手術ロボットの稼働状況・エラー情報を収集してトラブル対応に活かしたり、手術室の映像配信により手術室の状況を正確に把握したりすることが可能になります。
企業がデジタルツイン活用で成果を上げるための5つのポイント
企業がデジタルツイン活用で成果を上げるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
- ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
- ③目的から逆算したシンプルなモデル設計
- ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
- ⑤強力な開発・運用体制の構築
それぞれについて分かりやすく紹介していきます。
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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。
各領域における先進的なデジタルツイン活用事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。
デジタルツイン活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。
②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案
2つ目のポイントは、デジタルツインを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。
現在デジタルツイン活用に取り組む企業には、デジタルツイン活用によって解決したい課題・目的を明確にしないまま取り組みが進んでしまっている企業が見受けられます。
その結果、活用のPDCAが回らないなど大きな効果に繋がらないという結果に終わってしまいます。
自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜデジタルツインではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。
③目的から逆算したシンプルなモデル設計
3つ目のポイントは、目的から逆算したシンプルなモデル設計を行うことです。
デジタルツイン利用の目的から逆算されたミニマムのモデル設計が行えないと、現実世界を忠実に再現するために必要な莫大なデータが必要となり、そのデータの収集にかかるリソース不足によって企画倒れとなってしまう懸念があります。また、過剰なデータ分析や複雑なモデル構築により、シミュレーションに非常に時間がかかる可能性もあります。
そのため、まずは目的を明確にし、必要なデータの種類と粒度を定義してシンプルなモデルを構築することが重要です。それがクリアできた上でより高度化されたモデルに移行していきましょう。
④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。
デジタルツインは今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が最適な活用を模索している段階にあります。
そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。
⑤強力な開発・運用体制の構築
5つ目のポイントは、強力なデジタルツイン開発・運用体制の構築です。
迅速な意思決定を可能にするとともに、高いスケーラビリティを実現するデジタルツインの開発・運用を実施しましょう。
デジタルツインの開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。
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