【事例7選】ECサイトにおけるARの活用方法や3大メリットとは?

コロナウイルス感染拡大による行動制限の影響で、EC市場はさらに成長しました。

そんななか、従来のWebサイトに比べ多くのメリットを持つARを活用したECサービスを提供する動きが注目を集めています。

 

一方で、「ARをECに活用する方法がわからない」という方も多いのではないでしょうか?

 

そこで今回は、ECサイトにおけるARの活用方法やメリットを事例とともに分かりやすくご紹介します。

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • ARをECに活用することを検討している
  • ARをECに活用する方法が知りたい
  • ARをECに活用している企業の事例をおさえておきたい

 

本記事を読めば、ECサイトにおけるARの活用方法やメリット、企業による活用事例まで一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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そもそもARとは?

そもそもARとは? ポケモンGO
(画像:ポケモン) 

ARとはAugumeted Realityの略称で、拡張現実とも呼ばれます。リアルの世界にデジタルの情報/コンテンツを視覚的に重ね合わせることで、リアルの世界を拡張する技術のことを指します。ARには、ゴーグルを装着せずに、スマートフォンやタブレットの画面にデジタルの情報/コンテンツを表示させるものも含みます。

 

ARを活用することで、「Pokemon Go」のように、リアルの街にポケモンが存在するかのようなゲームを楽しんだり、「GoogleMap」のARナビのように、リアルの街に道順を示す矢印などの情報が表示され、スムーズに目的地にたどり着くことができたりと、私たちの暮らしをより豊かに・便利にすることができます。

ARをECに活用する3つのメリット

ARをECに活用する3つのメリット

ARをECに活用するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①ユーザーが購入前に商品をしっかりと確認できる
  • ②購買率が向上する
  • ③返品率が低下する

 

それぞれのメリットについてわかりやすく紹介していきます。

①ユーザーが購入前に商品をしっかりと確認できる

ユーザーが購入前に商品をしっかりと確認できる IKEA
(画像:IKEA)

1つ目のメリットは、ユーザーが購入前に商品をしっかりと確認できることです。

通常のECでは、実店舗のように商品を様々な角度から見たり、試着したりすることができないことが最大の欠点でした。

 

しかし、ARにより商品を立体的に映し出すことが可能となり、ユーザーは、商品が目の前に実際に存在するのと同じように、360度どの方向からも見ることができるようになります。また、衣服をオンライン上で試着したり、ARで表示された家具を自分の部屋に試し置きしたりするなど、購入後のイメージを家に居ながらにしてリアルに体験することが可能となります。

②購買率が向上する

2つ目のメリットは、購買率が向上することです。

購買したい商品が返品されてしまうという課題はもちろん、それ以前にそもそもECで商品を購買してくれないという場合も多く存在します。

「サイズ違いで返品することになるのを避けたい」という理由や、「実際に試着してみないとイメージが湧かないので購買意欲が湧かない」という理由でそもそもECでの購入をしない人も多くいます。

そこで、ARアプリの提供やECへのAR機能導入によって、それらの課題を解消し、今までSNSやサイトは訪れてくれていたものの、購買に至っていなかったユーザーへのECでの販売機会を獲得することができます。

③返品率が低下する

3つ目のメリットは、返品率が低下することです。

アパレル業界や家具業界はEC化が進みつつあるものの、「身体や足のサイズと合わなかった」、「家の間取りと合わなかった」などの理由で返品率が非常に高いという課題を抱えています。

そこで、ARアプリの提供やECへのAR機能導入によって、ECでありながら実店舗での商品を確かめながらの購買に近い体験を提供でき、「注文してみたけどイメージと違った」といった事態を防ぎ、返品率を低下させることができます。

返品率が低下した結果として売上の向上はもちろん、返品対応にかかるオペレーションコストや在庫を抱える負担などを軽減することができ、収益改善に大きなインパクトをもたらします。

業界別 ARのECへの活用事例7選

ECへのARの導入事例7選

ARのECへの活用事例として以下の7つが挙げられます。

 

  • ①NIKE:計測された足のサイズから靴をレコメンド
  • ②Warbyparker:ARでいつでもどこでもメガネを試着
  • ③IKEA:自宅の部屋にIKEAの家具を自由にレイアウト
  • ④ニトリ:家具や設置場所を測定しサイズ違いの不安を解消
  • ⑤ZOZOCOSME:自分の顔で化粧品を試せるARメイク
  • ⑥資生堂:複数のアイシャドウを試せるARメイク
  • ⑦ドミノピザ:AR上で世界中のチーズをめぐる旅を体験

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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アパレル業界での活用事例

①NIKE:計測された足のサイズから靴をレコメンド

NIKE:計測された足のサイズから靴をレコメンド
(画像:NIKE)

Nikeは公式アプリ上で足のサイズを測ることのできる機能である「Nike Fit」を提供しています。Nike Fitは最新のAR技術を使って、わずか数秒で両足の13カ所からデータを収集し、足のサイズや幅などの計測を行うことができます。

計測結果をもとに、ユーザーに最適なシューズがレコメンドされ、サイズ違いで返品しなければならなくなる事態を防ぐことができます。また、このデータはアプリに保存されるので、ナイキの実店舗に行ったときや、オンラインで次のキックを注文するときにも、QRコードを使ってすぐに店員にサイズを伝えることができます。

②Warbyparker:ARでいつでもどこでもメガネを試着

Warby Parker | Virtual Try-On
(動画:Warby Parker)

アメリカのメガネブランドであるWarbyparkerは、いつでもどこでもARを活用して眼鏡を試着できるサービスを提供しています。

こちらのサービスでは、iPhoneのFace ID等に活用されるカメラ機能を用いて、自分の顔にメガネをかけるとどうなるかをリアルにシミュレーションすることができます。

家具業界での活用事例

③IKEA:自宅の部屋にIKEAの家具を自由にレイアウト

IKEA:自宅の部屋にIKEAの家具を自由にレイアウト
(画像:IKEA)

IKEAは自宅の部屋にIKEAの家具をレイアウトしコーディネートできるアプリ「IKEA Studio」を発表しました。IKEA Studioは、LiDARを搭載したiPhone 12 Proおよび12 Pro Max向けのアプリケーションで、部屋の形状を測定し、窓やドアを認識し、必要に応じて家具やオブジェクトを配置し、床に転がっているおもちゃなどのオブジェクトを消したり、白く塗ったりすることも可能です。

また、壁紙の色を変えたり、様々なIKEAの家具を置いたりして、実際にどのように見えるかを確認することができます。また、オブジェクトを重ねることができるのも特徴です。例えば、ARで表示されるイスの上に、ランプや植木鉢のオブジェを置くことができるのです。IKEA Studioはβ版のみのリリースとなっており、スペインとスウェーデン、韓国のみで利用可能となっています。

④ニトリ:家具や設置場所を測定しサイズ違いの不安を解消

ニトリ:家具や設置場所を測定しサイズ違いの不安を解消
(画像:ニトリ)

ニトリは公式アプリ上で、家具やそれらの設置場所のサイズをスマホのAR機能を使って計測できるサービスを提供しています。顧客はこのサービスを活用することで、家具や家電を選ぶ際に重要なサイズの計測が簡単にできるようになり、サイズ違いの心配をすることなく家具をECで購入できるようになりました。

顧客は公式アプリを起動した状態でスマホカメラで家具や設置場所を撮影すると、大きさなどが記載された画像が生成され、その画像は編集・保存ができメモとしても活用できます。

化粧品業界での活用事例

⑤ZOZOCOSME:自分の顔で化粧品を試せるARメイク

ZOZOCOSME:自分の顔で化粧品を試せるARメイク
(画像:ZOZOTOWN)

ZOZOTOWNはZOZOTOWN上のコスメ専門モール「ZOZOCOSME」でバーチャルにメイクアップアイテムを試せる新機能「ARメイク」を提供しています。
ZOZOTOWNの「ARメイク」機能は、商品詳細ページからワンタップで起動し、簡単な操作で顔にメイクを施すシミュレーションを行うことができます。

「ARメイク」機能では、メイクの濃淡を調整したり、メイクのオンオフを切り替えることができ、実際にコスメアイテムを使用した際の色や質感を容易に想像することができます。また、「ARメイク」画面下部の「カートに入れる」ボタンから直接商品の購入に進むことができます。

⑥資生堂:複数のアイシャドウを試せるARメイク

資生堂:複数のアイシャドウを試せるARメイク
(画像:資生堂)

資生堂は、自社の総合美容サイト「ワタシプラス」内でARを活用したメイクのシミュレーション機能を導入しました。

 

様々なブランドのアイシャドウを組み合わせてシミュレーションすることができ、手持ちの商品との相性なども、店舗を訪れずに手軽に確認できます。

食品業界での活用事例

⑦ドミノピザ:AR上で世界中のチーズをめぐる旅を体験

ドミノ・ピザ l ワールド10チーズ・クワトロ – ドミノ ”世界のチーズをめぐる旅”AR​ 体験動画
(動画:ドミノピザ)

ドミノピザ社は、AR上で世界のチーズをめぐる旅を体験してもらいながら、チーズピザの購買に繋げるというプロモーションを行いました。

 

チラシや特設サイトからARカメラ起動ページにアクセスすると、目の前に地球儀が登場し、世界中のチーズの名産地が表示されます。ユーザーは各産地のチーズの特徴や楽しみ方を確認することができました。

ARをECに活用する際の5つの注意点

ARをECに活用する際の5つの注意点

ARをECに活用する際の注意点として、以下の5つが挙げられます。

 

  • ①ユーザーのAR利用時の負担軽減
  • ②分かりやすいチュートリアルの作成
  • ③質の高いデジタルコンテンツの表示
  • ④購入へのスムーズな導線設計
  • ⑤ユーザーのプライバシーの保護

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

①ユーザーのAR利用時の負担軽減

1つ目の注意点は、ユーザーのAR利用時の負担を軽減することです。

現状ECへのAR活用は、アプリ上での機能提供が主流であり、公式アプリをダウンロードしていないユーザーに対してはダウンロードの負担を強いることとなります。

そのため、ユーザーにとってより負担の少ないWebブラウザ上で機能を提供することが望ましいです。また、仮にアプリ上で提供する場合には、ユーザーがアプリダウンロードの手間をかけても試してみたいと思えるような、顧客体験を提供することが重要になります。

②分かりやすいチュートリアルの作成

2つ目の注意点は、分かりやすいチュートリアルを作成することです。

 

ARは、多くの人にとってまだなじみのない技術であるため、使い方に慣れていないユーザーも多いと考えられます。そのため、ARを活用する方法や活用するメリットを分かりやすく説明したチュートリアルを用意するなどして、ユーザーにARのメリットを実感してもらうことが重要です。

③質の高いデジタルコンテンツの表示

3つ目の注意点は、表示されるデジタルコンテンツの質を高いものとすることです。

 

ARによって表示される商品の画質が悪かったり、現実の空間とうまくマッチングしていなかったりすると、実際よりも商品が劣って見え、ユーザーの購入意欲をそいでしまう可能性があります。

 

そのため、ARにより表示されるデジタルコンテンツの質を十分に保てるような通信環境や機器のスペックを確保しておくことに注意する必要があります。

④購入へのスムーズな導線設計

4つ目の注意点は、購入へのスムーズな導線を設計することです。

アプリ上でのAR機能を通じて、ユーザーの購買意欲が高まったとしても、実際に購買に至るプロセスがシンプルかつ分かりやすくないと購買まで至らずに終わってしまう場合が考えられます。そのため、アプリやWebサイトの購買導線、UI/UXを通常のECサイト以上にスムーズで洗練されたものにする必要があります。

⑤ユーザーのプライバシーの保護

5つ目の注意点は、ユーザーのプライバシーを保護することです。

ARにより商品を表示するにあたり、カメラや位置情報を利用する場合、ユーザーの所在地や部屋の中の様子など、プライバシーに関わる情報を取得することになります。

 

そのため、これらのプライバシーに関わる情報をしっかりと保護し、漏えいや流出といった事態が起きないように適切に管理することが重要です。

企業がAR活用を進めるための4つのフェーズ

企業がAR活用を進めるための4つのフェーズ

企業のAR活用の進める流れとして、大きく以下の4つのフェーズが挙げられます。

 

  • Phase1:市場動向・知見のキャッチアップ
  • Phase2:戦略/企画の立案
  • Phase3:事業計画の策定
  • Phase4:開発・運用

 

それぞれのフェーズについて分かりやすく紹介していきます。

Phase1:市場動向・知見のキャッチアップ

1つ目のPhaseとして取り組むべきは、最先端の市場動向・知見のキャッチアップです。MetaやApple、Microsoftなどのビックテックやユーザーの動向・先行活用事例など、日々変化する市場動向やナレッジへのキャッチアップが必要です。

このフェーズが、成果に繋がる骨太な戦略/企画策定の基盤となります。

Phase2:戦略/企画の立案

2つ目のPhaseはAR活用の戦略/企画です。活用目的を踏まえ、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方、実現に向けた企画を立案しましょう。

ユーザーバリューと自社の事業性の両方を満たす、質の高い戦略/企画の立案が、成果につながるAR活用の実現に向け最も重要なポイントとなります。

Phase3:事業計画の策定

3つ目のPhaseは事業計画の策定です。事業に期待する成果や開発・運用のアプローチやタイムライン、必要な投資額などを検討しましょう。

AR開発・運用といっても、プロジェクト毎に求められるケイパビリティは様々であるため、自社にマッチするツール・ベンダーの選定が非常に重要です。

Phase4:開発・運用

4つ目のPhaseが開発・運用です。AR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを有効活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完しつつ、ユーザーに届けたい体験を実現するARの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。 

 

4つのフェーズで取り組むべき35のステップに関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。

 

※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ【担当者必見】

企業がAR活用で成果を上げるための5つのポイント

企業がAR活用で成果を上げるための5つのポイント

企業がAR活用で成果を上げるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。

 

  • ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
  • ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
  • ③ユーザーファーストなUX設計
  • ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
  • ⑤強力な開発・運用体制の構築

 

それぞれについて分かりやすく紹介していきます。

①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ

1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。

デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。

 

AR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。

②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案

2つ目のポイントは、ARを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。

現在AR活用に取り組む企業には、AR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。

 

その結果、活用のPDCAが回らない、AR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。

 

自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜARではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。

③ユーザーファーストな企画・UX設計

3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなARの企画・UX設計です。

現在、多くの企業がARに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなARサービスが多く存在します。それらのARサービスは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。

 

そのため、「ARならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。

④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進

4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。

AR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。

 

そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。

⑤強力な開発・運用体制の構築

5つ目のポイントは、強力なAR開発・運用体制の構築です。

高いユーザー体験と事業性を両立するARの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。

 

AR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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