大学での生成AIの活用事例5選|4つのメリットや注意点も紹介
リリース以降、2ヶ月で1億ユーザーを突破したChatGPTの登場・普及をきっかけにますます注目が集まっている生成AI。
生成AIの文章・画像作成機能や対話機能は、大学での業務効率化や教育の質向上にも活用することができ、すでに多くの大学がChatGPT等の生成AIの試験導入を実施しています。
本記事では、生成AIの活用に関心のある大学の関係者の方に向けて、大学での生成AIの活用事例を、メリットや注意点などとともにわかりやすくご紹介します。
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目次
大学での生成AIの活用事例5選
生成AIの大学での活用事例として、主に以下の5つが挙げられます。
- ①東北大学:全国の大学に先駆けてChatGPTを導入しDX化を推進
- ②立命館大学:英語の授業にChatGPTを試験導入し、英語学習精度向上を目指す
- ③東洋大学:全学生向けにGPT-4を活用させる教育システムを導入
- ④近畿大学:生成AI活用プラットフォームを試験導入し、校務の効率化を目指す
- ⑤武蔵野大学:生成AIによるICT利用ヘルプデスクチャットボットを導入
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①東北大学:全国の大学に先駆けてChatGPTを導入しDX化を推進
東北大学は、全国の大学に先駆けてChatGPTを導入し、業務効率化を推進しています。東北大学では、コネクテッドユニバーシティ戦略と題して、学内のDX化を推進しており、ChatGPTの導入により、DX化を一層加速させることを目指しています。
具体的には、プレスリリース原稿の自動作成、イベント周知のためのキャッチコピーの作成、職員のパソコンの運用・管理業務の自動化などに活用する予定とのことです。
また、導入にあたり、ChatGPT等の生成系AI利用に関する留意事項も作成しており、セキュリティや個人情報保護などのリスクに配慮した対策も実施しています。
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②立命館大学:英語の授業にChatGPTを試験導入し、英語学習精度向上を目指す
立命館大学は、対話型生成AIのChatGPTと機械翻訳を組み合わせた英語学習ツールを英語授業の一部において導入しています。
機械翻訳による出力結果をベースに、ChatGPT搭載のAIチャットボットに解説を担わせることで、英語学習の効率化や理解度の向上につなげる狙いです。
立命館大学は、AI技術を積極的に活用することで、英語をより深く理解できる学習環境を整備し、学生の英語力向上を目指しています。
③東洋大学:全学生向けにGPT-4を活用させる教育システムを導入
東洋大学の情報連携学部は、全学生向けにGPT-4を活用させる教育システム「AI-MOP」を開発・導入しました。
生成AIを利用した自学自習を可能にすることで、学生の教育効果を高めるとともに、生成AI系の開発スキルを学習させることを狙いとしています。
ChatGPT以外の生成AIも取り込んで並列して使えるプラットフォームになるようにデザインされており、最新のAI技術を迅速に取り入れて最適な学習環境を提供できる準備が整っています。
④近畿大学:生成AI活用プラットフォームを試験導入し、校務の効率化を目指す
近畿大学は、GPT-4が使える生成AI活用プラットフォームである「Graffer AI Studio」を試験導入しました。大学職員の業務効率化を狙いとしています。
Graffer AI Studioに学内のデータを取り込み、AIによる質問回答や文章生成をさせるチャットサービスや、学内情報検索システムなどの機能を搭載しています。
これにより、教材作成、経営企画、広報などあらゆる学内業務の効率化や職員のAI・ITスキルの向上を図り、将来的に全学で利用することを目指しています。
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⑤武蔵野大学:生成AIによるICT利用ヘルプデスクチャットボットを導入
武蔵野大学は、国内で初めて、生成AIを搭載したチャットボットの導入を開始しました。学内のICT利用を支援するヘルプデスクチャットボットとして活用されています。
学生や教職員は、生成AIによる自然な対話により、迅速かつ正確に必要な情報を入手することができます。また、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceを利用することでセキュリティ面での安全性にも配慮しています。
将来的には、各学生にパーソナライズされた情報の提供やアドバイスを行うより高精度なAIチャットボットの導入・実装を目指しています。
大学で生成AIを活用する4つのメリット
大学で生成AIを活用するメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- ①学生の教育・学習の効率化
- ②パーソナライズされた学習環境の提供
- ③学内知見・情報の共有の円滑化
- ④学内業務自動化による生産性向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①学生の教育・学習の効率化
教職員が生成AIによる文章自動生成機能を活用すれば、教材やテスト問題の一部を自動で作成してもらったり、授業のカリキュラム案を考案してもらったりするなど、教育をする上での業務を効率化することができます。
また、学生にとっては、学習していてわからないところを生成AIに質問したり、翻訳や文章作成を自動化したりすることで、効率的に学習することができるようになります。
②パーソナライズされた学習環境の提供
生成AIが各学生のこれまでの学習の記録や成績をインプットすることで、各学生に最適な学習アドバイスを提供したり、学習計画を立てることができます。
このように、各学生にパーソナライズされた学習環境を提供することで、学習効果のさらなる向上を実現することができます。
③学内知見・情報の共有の円滑化
学内の知見や情報を生成AIに学習させ、チャットボットとすることで、教職員や学生による学内情報のアクセスが容易になり、知見の共有が円滑になります。
例えば、大学の蔵書や授業に関する情報、各種手続きのマニュアルなどを生成AIに学習させることが考えられます。
④学内業務自動化による生産性向上
生成AIの文章・画像生成機能や対話機能を活用すれば、大学でのあらゆる業務を効率化し、生産性を向上させることができます。
例えば、大学案内のパンフレットやイベントの宣伝の文章を生成AIに作成させたり、大学へのお問い合わせ対応に生成AIチャットボットを導入したりすることが考えられます。
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大学で生成AIを活用する5つのリスク・デメリット
大学で生成AIを活用する際のリスク・デメリットとして、主に以下の5つが挙げられます。
- ①機密情報の漏洩
- ②生成AIの過信による業務ミス
- ③間違ったアウトプットの生成(ハルシネーション)
- ④倫理的に不適切なアウトプットの生成
- ⑤一時的なコスト増加
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①機密情報の漏洩
ユーザーが生成AIに入力したデータは、生成AIが学習し進化するために、基本的にはクラウド上で保管されます。
そのため、大学内部の機密情報や学生の個人情報などを入力してしまうと、生成AIサービス提供者や他のユーザーに機密情報が流出してしまうリスクが存在します。
②生成AIの過信による業務ミス
生成AIは非常に便利なツールであり、適切に利用することで業務生産性を大きく高めることが可能ですが、どのようなシチュエーションでも万能という訳ではありません。
生成AIは入力データに依存して機能するため、そのデータが不完全だったり偏りを持っていたりすると、生成される結果も誤りを含むことがあります。さらに、生成AIは人間の倫理感覚や判断能力を有していないので、提供する情報が常に正確であるわけではありません。
そのため、生成AIによる誤った回答により学生が間違った内容を覚えてしまうなど、教育効果が阻害されるリスクがあります。
③間違ったアウトプットの生成(ハルシネーション)
生成AIの利用方法によっては、事実と異なる誤った情報/アウトプットを真実のように堂々と生成するハルシネーションという現象が起こります。
例えば、高度な専門性を要する分野での回答や定量データの抽出や計算において、ハルシネーションが多く見られる傾向にあります。
④倫理的に不適切なアウトプットの生成
生成AIのアウトプットは学習データの内容に大きく左右されます。
そのため、学習データのボリュームが少なく、内容にバイアスがある場合、人種や性意識に関する差別や憎悪を助長する内容など、倫理的に不適切なアウトプットが生成されてしまうリスクが存在します。
⑤一時的なコスト増加
生成AIの活用により中長期では生産性向上やコスト削減に繋がるものの、導入時には一定のシステム構築やコンサルティング等のコストが発生します。
また、適切な目的や範囲の選定や、大規模導入前のスモールスタートによる有効性の検証などの取り組みを進めないと、投資対効果は低下してしまいます。
大学が安全に生成AIを活用するための6つの注意点
大学が安全に生成AIを活用するための注意点として以下の6つが挙げられます。
- ①最適な生成AI活用範囲の設定
- ②最適なAIツールの選定・導入
- ③リスクを最小化するデータマネジメント
- ④教職員・学生向けの利用ルール・マニュアルの策定
- ⑤教職員・学生の生成AI活用リテラシーの向上
- ⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①最適な生成AI活用範囲の設定
生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、明確に得意不得意が存在します。
そのため、生成AI活用の成果を最大化し、リスクを最小化するためには、活用する範囲を適切に設定することが極めて重要です。
これにより、不適切な情報生成や不意の法的問題の防止につながります。
②最適なAIツールの選定・導入
各大学の状況や目的に最適なAIツールの選定と導入は、安全かつ効率的なAI活用に向けて非常に重要です。
利用するAIツールは、その機能、性能、セキュリティ対策が自分たちの要求を満たしているかを評価し、適切なものを選ぶ必要があります。
さらに、AIツールの導入時も、ユーザーが入力した内容を学習させない「オプトアウト」を選択する等の対処を取ることで、リスクを最小化することができます。
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③リスクを最小化するデータマネジメント
生成AIは、入力されたデータに基づいて動作するため、データマネジメントの質がAIの出力品質に直結します。
データの正確性、偏りのなさ、機密性の保持は、リスクを最小化する上で極めて重要です。
適切なデータマネジメントの実施により、データの質を確保し、情報漏洩や不正確な情報生成のリスクを低減します。
④教職員・学生向けの利用ルール・マニュアルの策定
生成AIの効果的な利用とリスクの最小化のためには、大学が教職員・学生向けの明確な利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。
具体的には、学内でのAIの使用目的、使用範囲、倫理ガイドライン、データ取り扱いのルール・マニュアルを策定する必要があります。
⑤教職員・学生の生成AI活用リテラシーの向上
生成AIのポテンシャルを最大限に活用し、同時にリスクを管理するためには、教職員・学生のAIに関する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的な授業を通じて、教職員・学生が生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが求められます。
⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
生成AIの技術・サービスは日々進化しており、新たな活用方法や利用プロセスが登場し、それに応じて新たなリスクが生じる可能性が高いです。
したがって、国内外の生成AIに関する最新の動向を常に把握し、大学の生成AI活用方法を定期的に見直し、更新することが必要となります。
大学が生成AI活用を成功させるための5つのポイント
大学が生成AI活用を成功させるために抑えるべきポイントは以下の5つです。
- ①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
- ②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
- ③アジャイルアプローチでの開発・導入
- ④システムとルールの両面からのリスク管理
- ⑤研修等での教職員・学生のAI活用リテラシーの向上
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①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
生成AI活用の成否を分ける最大のポイントは、生成AIを活用する意義の大きな業務に対して活用することに尽きます。
活用の方針や戦略がないまま活用を進めるのではなく、業務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの程度業務効率やアウトプット向上に繋がるかを試算することが重要となります。
②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいたコンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、明確な得意不得意が存在します。
そのため、業務の現状や生成AIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。
③アジャイルアプローチでの開発・導入
生成AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。
④システムとルールの両面からのリスク管理
大学が生成AIの活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩や著作権侵害などのリスクへの懸念が挙げられます。
確かに、教職員や学生に特段ルールを設けず、一般に公開されている生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。
一方で、入力するデータが学習されないようなシステム構築や使用範囲・機密情報の取扱等の運用ルールの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。
⑤研修等での教職員・学生のAI活用リテラシーの向上
生成AIの特徴として、AIとの対話によってアウトプットを引き出すことが求められるため、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されることが挙げられます。
そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、教職員や学生のAIに対する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、教職員や学生に生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が必要となります。
大学が生成AIを導入するための4つのステップ
大学が生成AIの導入を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。
<Step1:活用方針の検討>
- 最新の市場動向のキャッチアップ
- 活用可能性の整理
- 生成AIの活用目的・ゴールの設定
<Step2:利用環境構築>
- セキュリティ・データ管理体制の強化
- ガイドライン・マニュアルの策定
- 教職員向けのAIリテラシー研修
- 学内業務での試験運用
<Step3:試験開発・運用(PoC)>
- PoCを行うユースケースの検討
- 要件定義・プロトタイプ開発
- 運用と評価
<Step4:本開発>
- 本開発を行うユースケースの検討
- 要件定義・本開発
- 運用と評価
- 活用方針・内容の継続的なカイゼン
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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Step1:活用方針の検討
1つ目のステップは、大学として生成AIをどのように活用していくかの大方針の検討です。
生成AIは学内の業務効率化や学生への教育効果の向上など様々な目的で活用が可能だからこそ、自分たちの課題にマッチした目的とユースケースで活用することが、投資対効果を大きく左右します。
最新の技術や競合の動向をキャッチアップした上で、活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、生成AIをどのような領域で、どの程度ダイナミックに活用していくかの目的やゴールを初期的に設定しましょう。
Step2:利用環境構築
2つ目のステップは、生成AIを安全かつ効率的に活用できる、学内のシステムやルールなどの利用環境の構築です。
大学が生成AI活用に踏み切れない理由として、機密情報漏洩などのセキュリティリスクの懸念が挙げられますが、適切なシステム設計・データ管理やガイドラインの策定などを行うことで、それらのリスクに対処しながら、業務効率化に繋げることが可能です。
教職員や学生に対し、生成AIをリサーチや文書作成などの日常的な学習・業務に安心して活用できる環境を提供することで、大学のどのような業務と生成AIの相性が良いのかという現場からの示唆を得ることができ、プロトタイプ・本開発の企画への重要なインプットとなります。
Step3:試験開発・運用(PoC)
3つ目のステップは、自分たちにマッチするユースケースの検証に向けた、プロトタイプの開発と運用です。
問い合わせ窓口や学内のナレッジ検索、新機能・サービスの実装などの生成AIの幅広いユースケースの中から、自分たちの課題解決にマッチするいくつかのユースケースに絞り込み、プロトタイプを開発し、実際の業務で運用します。
PoCを実施することで、コストを抑えながら生成AI活用のインパクトを検証しつつ、見えてきた改善点から本開発の精度を高めることが可能です。
Step4:本開発と運用
4つ目のステップは、本格的な生成AIを活用したシステムの開発と運用、継続的なカイゼンです。
学内独自のデータ基盤の構築・連携や活用シーンに特化したアウトプット精度の改善などを実施し、自分たちの目的達成に特化した生成AIシステムを開発します。
PoCの結果を踏まえ、本開発を行うユースケースや活用範囲を決定することで、生成AI活用の費用対効果を最大化することが可能です。
また、開発しっぱなしで終わるのではなく、本開発したシステムを運用し上がった成果や改善点、技術進化などを踏まえて、活用方法や内容を継続的にカイゼンしていくことが重要です。
このプロセスを通じ、生成AI活用のポテンシャルを最大限に発揮することで、業務生産性や学生への提供価値の観点から、大きな競争優位性を構築することに繋がります。
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