文部科学省の生成AIガイドラインとは?要点をわかりやすく解説
文部科学省は、2023年7月に、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を発表しました。
このガイドラインは、教育機関に向けて、教育現場で生成AIを活用する際のリスクや注意点、ルールをまとめたものです。生成AIの活用を検討しているすべての教育機関が参考にすべきガイドラインとなっています。
本記事では、文部科学省の生成AIガイドラインの要点や教育現場での実際の生成AI利用状況についてわかりやすくご紹介します。
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目次
文部科学省の生成AIガイドラインとは
文部科学省は、2023年7月に、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を発表しました。
このガイドラインでは、小中学校の教員の業務や授業における生成AI活用の考え方や注意すべきポイントについてまとめられています。生成AIによる情報漏洩や権利侵害のリスクを回避し、生成AIを適切に活用することによる子供の教育効果の向上、教員の負担軽減を目指すものです。
教育機関だけでなく、生成AIの利用を検討している全ての組織にとって参考になる内容となっています。
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文部科学省の生成AIガイドラインの5つのポイント
文部科学省は、2023年7月、小中学校での対話型生成AIの活用の指針を示したガイドラインとして、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を策定しました。このガイドラインの主要なポイントは、以下の5つです。
- ①生成AIの教育利用の方向性の暫定的な決定
- ②適切な活用方法と不適切な活用方法の選別
- ③児童・生徒の情報活用能力の育成強化の推進
- ④一部学校の校務での実証的な研究・活用の実施
- ⑤個人情報・著作権等のリスクへの対策の明示
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
①生成AIの教育利用の方向性の暫定的な決定
ガイドラインでは、生成AIを学校教育に活用していくにあたっての基本的な方向性や考え方を暫定的に示しています。
生成AI活用の利便性とリスクのバランスを図るべく、限定的な利用から始めることが適切であること、校務での適切な活用に向けて教員のAIリテラシー向上を図る必要があることなどが謳われています。
②適切な活用方法と不適切な活用方法の選別
ガイドラインでは、子供の発達段階を踏まえた、生成AIの適切な活用方法と不適切な活用方法の例を示しています。
適切な活用方法としては、アイデア出しに新たな視点を取り入れるための活用、英会話の練習相手としての活用、自ら作った文章の校正などが挙げられています。一方、不適切な活用方法としては、生成AIによる生成物をそのまま作品として展示すること、定期テストや学力試験への回答に生成AIの力を借りることなどが上げられています。
それぞれの活用方法が適切か否かは、教育の効果を最大限高めるうえで生成AIの利用が有効か否かという基準で判断されているとのことです。
③児童・生徒の情報活用能力の育成強化の推進
ガイドラインでは、学校外で児童・生徒が生成AIを利用する可能性が高まっていることを背景に、生成AIによる誤情報や不適切な情報の拡散から子供を守るための取組みとして情報活用能力の育成強化を推進していくことを取り決めています。
情報モラルやファクトチェックの重要性など、生成AIの普及でより一層進むと考えられる情報過多から子供を守るために必要な教育を行っていくことが明言されています。
④一部学校の校務での実証的な研究・活用の実施
ガイドラインでは、個人情報や機密情報の保護に注意しつつ、教員の業務効率化や教育の質の向上のために、準備が整った学校から生成AIを試験的に導入していく方針が打ち出されています。
教材・テスト問題のたたき台作成、学校行事の項目案の作成、教員研修資料の作成など様々な校務において生成AI活用の実証研究を行い、教員の働き方改革を推進していくとのことです。
⑤個人情報・著作権等のリスクへの対策の明示
ガイドラインでは、生成AIを教育現場で利用することに伴う個人情報漏洩や著作権侵害等のリスクを留意点として明記しています。
教員と児童・生徒がともに、生成AIのリスクと適切な利用法を理解し、安全に生成AIを利用するための具体的な留意点が記載されています。
教育現場に生成AIを活用する7つのメリット
教育現場に生成AIを活用するメリットとして以下の7つが挙げられます。
- ①生徒の学力や興味にマッチするコンテンツ提供
- ②生徒の学習中のリアルタイムでのアドバイス
- ③生徒の学習意欲の向上
- ④高度な学習機会の提供
- ⑤データ活用による教育の質の向上
- ⑥教師の業務負担軽減
- ⑦教育の低コスト化
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①生徒の学力や興味にマッチするコンテンツ提供
生成AIは個々の生徒の学力や興味を分析し、カスタマイズされた教育コンテンツを提供します。
個別のニーズに合わせた学習計画を作成することで、生徒は自分に適したペースで効果的に学ぶことができます。
このように、生徒一人ひとりに合った教材を提供することで、興味を持続させ、学習効率を向上させます。
②生徒の学習中のリアルタイムでのアドバイス
生成AIを活用することで、生徒が学習している最中にもリアルタイムで適切なアドバイスやサポートを提供できます。
学習の進捗を瞬時に評価し、必要な時に即座に指導することで、生徒の理解度を深め、学習の障壁を速やかに解消します。
この即時フィードバックにより、学習効率が大幅に向上します。
③生徒の学習意欲の向上
生成AIが提供するパーソナライズされた学習体験により、生徒は自分の興味や好奇心に合った内容で学習することができ、学習意欲が自然に高まります。
興味深い教材やインタラクティブな活動は、学びを楽しくし、生徒が主体的に学習に取り組むことを促します。
④高度な学習機会の提供
生成AIを通じて、地理的な制約に関係なく、高品質な教育リソースへのアクセスを実現します。
これにより、都市部だけでなく、遠隔地に住む生徒にも同等の教育機会を提供し、知識と学習の機会を平等にします。
⑤データ活用による教育の質の向上
大量の教育データを分析することにより、生成AIは教育の質を継続的に向上させることができます。
教材の効果を客観的に評価し、教育プログラムを改善することで、生徒に最適な学習環境を提供します。
⑥教師の業務負担軽減
AIの導入によって、出席の管理、試験の監督、採点などのルーチン業務を自動化し、教師の負担を大幅に軽減します。
これにより、教師は授業の質を高めたり、生徒一人ひとりにより集中した指導を提供するための時間を増やすことができます。
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⑦教育の低コスト化
生成AIを活用することで、教育の運営コストを削減し、高品質な教育をより多くの生徒に手頃な価格で提供できるようになります。
コスト削減により、より多くの生徒が良質な教育を受ける機会を得ることができます。
教育現場への生成AIの活用事例5選
教育現場への生成AIの活用事例として以下の5つが挙げられます。
- ①つくば市立みどりの学園義務教育学校:生成AIを調べ物に活用
- ②長崎北高校:英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
- ③愛媛大学教育学部附属中学校:教師と生成AIが協働し教育の質と効率を両立
- ④ベネッセ:生成AIが自由研究のテーマ選びをサポート
- ⑤学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①つくば市立みどりの学園義務教育学校:生成AIを調べ物に活用
つくば市立みどりの学園義務教育学校は「生成AIパイロット校」の一つとして、AIを活用した授業を展開しています。
中学社会科の授業では、Bingチャットを使って生徒たちが地域課題について質問し、調査を行いました。
この授業では、AIが提供する情報を用いながら、生徒たちは教科書を参照し、情報の正確性を確認しながら、ニュース原稿の制作に取り組みました。
本授業により、生徒たちは情報リテラシーと批判的思考力を養い、AIを効果的に活用する方法を学び、学力向上につながる可能性が見られました。
②長崎北高校:英作文の添削に生成AIを活用。活用ルール作りにも挑戦
長崎北高校では、英語学習の一環として対話型AI「ChatGPT」の活用が進められています。生徒たちは、英作文の添削や長文読解のサポートとしてAIを活用し、自分の弱点を把握し、学力向上に役立てています。
AIの活用により、生徒たちは文法や表現方法など、自分では気づけなかった点を瞬時に指摘され、学習効率の向上につながっています。
こちらの事例の特徴は、AIを使った授業で生徒たちが自ら活用法を実験・検討し、ガイドライン作成に挑戦している点です。
生徒たちは、AIのメリットだけでなくデメリットも理解し、便利さを最大化するためのルール作りに積極的に参加しています。こうした取り組みは、AIとの付き合い方を考え、問題解決能力を養う貴重な機会となっています。
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③愛媛大学教育学部附属中学校:教師と生成AIが協働し教育の質と効率を両立
愛媛大学教育学部附属中学校では、授業の「振り返り」を効率化するために、対話型AI「CHATGPT」の導入を試験的に行っています。
生徒たちはタブレット端末を使用して、授業で学んだ内容や疑問点を入力し、AIが即座にフィードバックを提供します。
これにより、従来は教師が行っていた時間を要するコメント作成作業が効率化され、教師の負担が軽減されています。
この事例では、教師がChatGPTのコメントをダブルチェックし、学習内容や生徒の理解度に応じた適切なフィードバックを提供することで、教育の質と業務効率性の両立が実現されています。
このバランスの取れた活用方法により、AIの利点を最大限に活かしつつ、生徒へのきめ細かな対応も維持されています。
④ベネッセ:生成AIが自由研究のテーマ選びをサポート
ベネッセは、小学生とその親をターゲットに「自由研究おたすけAI」をリリースしました。
このサービスは、生成AI「ChatGPT」の技術を利用し、自由研究のテーマ選定を支援し、子供たちの疑問に対してアドバイスを提供します。
子供たちは、自由研究にかけられる時間や興味のあるジャンルを入力することで、ラボリーから具体的なテーマやアイデアを受け取ることができます。
ベネッセのこの取り組みは、デジタルリテラシー教育においても保護者から好意的な反応を得ており、子供たちの学習をサポートする新しい形として注目されています。
⑤学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
学研ホールディングスは、オリジナル学習システム「GDLS」でChatGPTを活用し、個別に最適な学習アドバイスを提供するベータ版を開始しました。
このシステムは、生徒の学習履歴や理解度の変化に基づいて各生徒に対して適切な学習アドバイスを提供し、学習効果を最大化します。
学研オリジナル学習システム(GDLS)は、生徒が毎日ログインする習慣を促し、学習への意欲を高めます。さらに、学研メソッドはこれまでもAIを活用し、正答率に合わせた問題出題などを行っており、GDLSはその発展形となっています。
教育現場に生成AIを活用する7つのリスク・注意点
教育現場に生成AIを活用する際の代表的なリスク・注意点として以下の7つが挙げられます。
- ①機密情報の漏洩
- ②プロンプトインジェクション
- ③著作権・商標権などの権利侵害
- ④ディープフェイク
- ⑤間違ったアウトプットの生成(ハルシネーション)
- ⑥倫理的に不適切なアウトプットの生成
- ⑦生成AIの過信による業務ミス
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①機密情報の漏洩
教員や生徒が生成AIに入力したデータは、生成AIが学習し進化するために、基本的にはクラウド上で保管されます。
そのため、生徒の個人情報や学校の機密情報などを入力してしまうと、生成AIサービス提供者や他のユーザーに機密情報が流出してしまうリスクが存在します。
②プロンプトインジェクション
プロンプトインジェクションとは、悪意あるユーザーが、ChatGPTなどの対話型AIに、特殊な指示や質問を入力することで、本来公開すべきでない機密情報やデータを引き出すサイバー攻撃の一種です。
2023年2月には、米国の大学生がマイクロソフト社のBingに搭載される生成AI検索エンジンに対し、プロンプトインジェクションを行い、非公開の指示やBingチャットの開発用コードネームを引き出すことに成功したなど、実際に機密情報が流出する事例も存在します。
③著作権・商標権などの権利侵害
生成AIの既存の著作物を学習データとして活用することは、原則として著作権者の許諾なく可能とされています。
一方で、生成AIによって生成された作品をコンクール等で一般に公開する際には、基本的には通常の著作権侵害の検討が適用されます。
生成された作品/コンテンツに、既存のコンテンツとの類似性や依拠性が認められれば、著作権者は著作権侵害として損害賠償請求・差止請求が可能であるほか、刑事罰の対象となりえます。
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④ディープフェイク
ディープフェイクとはディープラーニング技術を活用し、実際に存在しない、人物の動画や画像を生成する技術です。
この技術により、人間が見ても区別がつかないほど高精度なメディアが作成可能となり、そのリアルさから、詐欺やフェイクニュースの拡散などに悪用され、子供に被害をもたらす危険性があります。
⑤間違ったアウトプットの生成(ハルシネーション)
生成AIの利用方法によっては、事実と異なる誤った情報/アウトプットを真実のように堂々と生成するハルシネーションという現象が起こります。
ハルシネーションは、生徒の理解の誤りにつながり、学力の向上を妨げる要因となる可能性があります。
⑥倫理的に不適切なアウトプットの生成
生成AIのアウトプットは学習データの内容に大きく左右されます。
そのため、学習データのボリュームが少なく、内容にバイアスがある場合、人種や性意識に関する差別や憎悪を助長する内容など、教育上不適切なアウトプットが生成されてしまうリスクが存在します。
⑦生成AIの過信による業務ミス
生成AIは非常に便利なツールであり、適切に利用することで業務生産性を大きく高めることが可能ですが、どのようなシチュエーションでも万能という訳ではありません。
生成AIは入力データに依存して機能するため、そのデータが不完全だったり偏りを持っていたりすると、生成される結果も誤りを含むことがあります。さらに、生成AIは人間の倫理感覚や判断能力を有していないので、提供する情報が常に正確であるわけではありません。
例えば、生成AIを利用してテスト問題や教材を作成した場合、誤った内容が含まれてしまうことも考えられます。これにより、生徒の理解の誤り、学力の低下に繋がるリスクがあります。
教育現場での生成AIのリスクに対して取るべき6つの対応策
教育現場での生成AIのリスクに対して取るべき代表的な対応策として以下の6つが挙げられます。
- ①最適な生成AI活用範囲の設定
- ②最適なAIツールの選定・導入
- ③リスクを最小化するデータマネジメント
- ④教員や生徒向けの利用ルール・マニュアルの策定
- ⑤教員・生徒の生成AI活用リテラシーの向上
- ⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①最適な生成AI活用範囲の設定
生成AIは全ての業務・校務に対して万能という訳ではなく、明確に得意不得意が存在します。
そのため、生成AI活用の成果を最大化し、リスクを最小化するためには、活用する範囲を適切に設定することが極めて重要です。
これにより、不適切な情報生成や不意の法的問題の防止につながります。
②最適なAIツールの選定・導入
各教育機関の状況や目的に最適なAIツールの選定と導入は、安全かつ効率的なAI活用に向けて非常に重要です。
利用するAIツールは、その機能、性能、セキュリティ対策が十分なものかを評価し、適切なものを選ぶ必要があります。
さらに、AIツールの導入時も、教員や生徒が入力した内容を学習させない「オプトアウト」を選択する等の対処を取ることで、情報漏洩等のリスクを最小化することができます。
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③リスクを最小化するデータマネジメント
生成AIは、入力されたデータに基づいて動作するため、データマネジメントの質がAIの出力品質に直結します。
データの正確性、偏りのなさ、機密性の保持は、リスクを最小化する上で極めて重要です。
適切なデータマネジメントの実施により、データの質を確保し、情報漏洩や不正確な情報生成のリスクを低減します。
④教員や生徒向けの利用ルール・マニュアルの策定
生成AIの効果的な利用とリスクの最小化のためには、教員や生徒向けの明確な利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。
具体的には、校内でのAIの使用目的、使用範囲、倫理ガイドライン、データ取り扱いのルール・マニュアルを策定する必要があります。
⑤教員・生徒の生成AI活用リテラシーの向上
生成AIのポテンシャルを最大限に活用し、同時にリスクを管理するためには、教員や生徒のAIに関する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、教員や生徒に生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが求められます。
⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
生成AIの技術・サービスは日々進化しており、新たな活用方法や利用プロセスが登場し、それに応じて新たなリスクが生じる可能性が高いです。
したがって、国内外の生成AIに関する最新の動向を常に把握し、教育現場での生成AI活用方法を定期的に見直し、更新することが必要となります。
教育現場での生成AI活用を成功させるための5つのポイント
教育現場での生成AI活用を成功させるために抑えるべきポイントは以下の5つです。
- ①校務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
- ②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
- ③アジャイルアプローチでの開発・導入
- ④システムとルールの両面からのリスク管理
- ⑤教員・生徒のAI活用リテラシーの向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①校務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
生成AI活用の成否を分ける最大のポイントは、生成AIを活用する意義の大きな校務に対して活用することに尽きます。
活用の方針や戦略がないまま活用を進めるのではなく、校務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの程度作業効率やアウトプット向上に繋がるかを試算することが重要となります。
②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
生成AIは全ての校務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいたコンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、明確な得意不得意が存在します。
そのため、自分たちの校務の現状や生成AIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。
③アジャイルアプローチでの開発・導入
生成AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。
④システムとルールの両面からのリスク管理
教育機関が生成AIの活用に踏み切れない最大の理由として、個人情報漏洩や著作権侵害などのリスクへの懸念が挙げられます。
確かに、校内で特段ルールを設けず、一般に公開されている生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。
一方で、入力するデータが学習されないようなシステム構築や使用範囲・個人情報の取扱等の運用ルールの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。
⑤教員・生徒のAI活用リテラシーの向上
生成AIの特徴として、AIとの対話によってアウトプットを引き出すことが求められるため、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されることが挙げられます。
そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、教員や生徒のAIに対する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的な授業を通じて、教員と生徒がともに生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解し、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが必要となります。
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