生成AI活用で注意すべき法律とは?|事例毎にわかりやすく解説
リリース以降、2ヶ月で1億ユーザーを突破したChatGPTを皮切りに、近年ますます注目が高まっている生成AI。
一方で、「生成AIのビジネス活用にあたって、どのような法律に注意すればよいか知りたい」という方も多いのではないでしょうか?
本記事では、生成AIに関する法規制に関心のある方向けに、生成AI活用で注意すべき法律を事例ごとにわかりやすくご紹介します。
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目次
そもそも生成AIとは
生成AIとは、「ジェネレーティブAI(Generative AI)」とも呼ばれ、文章・画像・音声など新たなコンテンツを生成するAIのことを指します。
近年の急速な技術進歩により、簡単な利用方法で、人間が作成したものと同等、あるいはそれ以上の質のコンテンツを自動で生成できるようになったことから、既存のビジネスや業務のあり方を変えていく存在として、大きな注目を集めています。
既に人間の作業をサポートするツールとしての活用が進んでおり、例えば、テキスト生成AIで長文のレポートを要約する、画像生成AIで広告用の独自の画像を作成する等の活用が可能です。
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生成AI活用における法律とは
日本では、生成AI自体を直接規律する法律はありませんが、従来から存在する法律が、生成AI活用においても同様に問題となることが多いです。
例えば、生成AIに個人情報を学習させる場合には個人情報保護法、他人の著作物を模倣したコンテンツを生成した場合には著作権法が問題となります。
また、生成AIは新しい技術・概念であるため、既存の法律では対応できない場面も多いです。そのため、生成AIを活用するにあたっては、政府のガイドラインや各サービスの規約など法律以外のルールや指針にも注意する必要があります。
以下では、生成AIの開発・学習段階と生成AIによる生成物の利用段階に分けて、注意すべき法律を想定される事例とともにわかりやすく紹介していきます。
【事例別】生成AIの開発・学習において注意すべき法律
生成AIツールを開発したり、生成AIにデータを学習させる場面において注意すべき法律としては、個人情報保護法や著作権法が挙げられます。それぞれについて想定される事例とともにわかりやすく紹介していきます。
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事例1:生成AIに個人情報を学習させるときの注意点は?
生成AIに学習させるデータに個人情報が含まれる場合、個人情報保護法に違反しないよう注意する必要があります。
個人情報保護法では、個人データ(多数の個人情報を集め、一定の規則に従って体系化したもの)を第三者に提供する場合には、原則として当該個人の同意を取得する必要があります。また、外国の第三者に提供する場合には、特別な安全管理措置などを講じる必要がある点も注意が必要です。
そのため、ユーザーの個人データを生成AIに学習させる場合には、プライバシーポリシー等にその旨をしっかりと規定し、ユーザーの同意を取得するとともに、生成AIサービスの提供者が個人データを出力以外の目的で利用しないことを事前に確認しておくことが重要です。
事例2:生成AIに他人の著作物を学習させても問題ないか?
生成AIの開発・学習段階において、他人の著作物を利用したとしても、直ちに著作権法違反になるわけではありません。
内閣府によると、一般的にAI開発のような情報解析等において、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用においては 、原則として著作権者の許諾なく利用することが可能とされています。
一方で、情報解析用に販売されているデータベースの著作物を、AI学習目的で複製する場合など、必要と認められる限度を超える場合や著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、著作権者の許諾が必要となります。
【事例別】生成AIによる生成物の利用において注意すべき法律
生成AIが生成したコンテンツを公開・販売するなどして利用した場合には、個人の肖像権・プライバシー権や著作権法などに注意する必要があります。それぞれについて想定される事例とともにわかりやすく紹介していきます。
事例3:生成したコンテンツに実在する人物の画像や記述が含まれていても問題ないか?
生成したコンテンツに実在する人物の画像が含まれている場合、これを公開・販売すると個人の肖像権を侵害する場合があります。肖像権とは、自分の容姿を勝手に他人に公開されない権利のことです。
また、生成したコンテンツに個人情報や個人を特定できるような記述が含まれている場合には、個人情報保護法やプライバシー権侵害に注意する必要があります。
そのため、生成したコンテンツに実在する人物の画像や記述が含まれている場合には、本人から事前に同意を得たり、該当箇所をマスキングして個人を特定できないようにしたりするなどの対策を採ることが重要です。
事例4:他人の著作物を模倣した生成コンテンツを公開・販売できるか?
生成AIで他社の著作物を模倣したコンテンツを公開・販売する場合には、基本的には通常の著作権侵害の検討が適用されます。
生成されたコンテンツに、既存のコンテンツとの類似性や依拠性が認められれば、著作権侵害として著作権者から損害賠償請求・差止請求がなされる可能性があるほか、刑事罰の対象となりえます。
法律を遵守して生成AIを活用するための3つのポイント
法律を遵守して生成AIを活用するためのポイントとして以下の3つが挙げられます。
- ①生成AIサービスの利用規約の確認
- ②従業員向けの利用ルール・マニュアルの作成
- ③従業員の生成AI・法律リテラシーの向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①生成AIサービスの利用規約の確認
生成AIサービスを活用するにあたっては、事前にサービスの利用規約等を確認する必要があります。
具体的な確認ポイントとしては、当該サービスが定めている利用ルール、学習させた情報が出力以外の目的に利用されないか、秘密保持に関する定めがしっかりと規定されているかなどが挙げられます。
②従業員向けの利用ルール・マニュアルの作成
生成AIを従業員に活用させる場合には、従業員向けの明確な利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。
具体的には、社内でのAIの使用目的、使用範囲、倫理ガイドライン、データ取り扱いのルール・マニュアルを策定することで、従業員に対し、法律を遵守した活用を促すことができます。
③従業員の生成AI・法律リテラシーの向上
法律を遵守しつつ、生成AIのポテンシャルを最大限活用するためには、AIに関する知識とスキル及びAIに関する法律知識を従業員にしっかりと学ばせ、リテラシーを高めることが不可欠です。
研修や実践トレーニングを通じて、従業員が生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連する法律・リスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが求められます。
企業が生成AI活用を成功させるための5つのポイント
企業が生成AI活用を成功させるために抑えるべきポイントは以下の5つです。
- ①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
- ②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
- ③アジャイルアプローチでの開発・導入
- ④システムとルールの両面からのリスク管理
- ⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
生成AI活用の成否を分ける最大のポイントは、生成AIを活用する意義の大きな業務に対して活用することに尽きます。
活用の方針や戦略がないまま活用を進めるのではなく、自社の業務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの程度業務効率やアウトプット向上に繋がるかを試算することが重要となります。
②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいたコンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、明確な得意不得意が存在します。
そのため、自社の業務の現状や生成AIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。
③アジャイルアプローチでの開発・導入
生成AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。
④システムとルールの両面からのリスク管理
企業が生成AIの活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩や著作権侵害などのリスクへの懸念が挙げられます。
確かに、社員に特段ルールを設けず、一般に公開されている生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。
一方で、入力するデータが学習されないようなシステム構築や使用範囲・機密情報の取扱等の運用ルールの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。
⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上
生成AIの特徴として、AIとの対話によってアウトプットを引き出すことが求められるため、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されることが挙げられます。
そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員が生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が必要となります。
企業が生成AIを活用するための4つのステップ
企業が生成AI活用を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。
<Step1:活用方針の検討>
- 最新の市場動向のキャッチアップ
- 自社の活用可能性の整理
- 生成AIの活用目的・ゴールの設定
<Step2:利用環境構築>
- セキュリティ・データ管理体制の強化
- ガイドライン・マニュアルの策定
- 社員向けのAIリテラシー研修
- 社内業務での試験運用
<Step3:試験開発・運用(PoC)>
- PoCを行うユースケースの検討
- 要件定義・プロトタイプ開発
- 運用と評価
<Step4:本開発>
- 本開発を行うユースケースの検討
- 要件定義・本開発
- 運用と評価
- 活用方針・内容の継続的なカイゼン
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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Step1:活用方針の検討
1つ目のステップは、自社として生成AIをどのように活用していくかの大方針の検討です。
生成AIは社内業務効率化や顧客体験の向上、新規事業創出など様々な目的で活用が可能だからこそ、自社の課題にマッチした目的とユースケースで活用することが、投資対効果を大きく左右します。
最新の技術や競合の動向をキャッチアップした上で、自社の活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、生成AIをどのような領域で、どの程度ダイナミックに活用していくかの目的やゴールを初期的に設定しましょう。
Step2:利用環境構築
2つ目のステップは、生成AIを安全かつ効率的に活用できる、社内のシステムやルールなどの利用環境の構築です。
企業が生成AI活用に踏み切れない理由として、機密情報漏洩などのセキュリティリスクの懸念が挙げられますが、適切なシステム設計・データ管理やガイドラインの策定などを行うことで、それらのリスクに対処しながら、業務効率化に繋げることが可能です。
社員に対し、生成AIをリサーチや文書作成などの日常的な業務に安心して活用できる環境を提供することで、自社のどのような業務と生成AIの相性が良いのかという現場からの示唆を得ることができ、プロトタイプ・本開発の企画への重要なインプットとなります。
Step3:試験開発・運用(PoC)
3つ目のステップは、自社にマッチするユースケースの検証に向けた、プロトタイプの開発と運用です。
顧客対応支援や社内のナレッジ検索、新機能・サービスの実装などの生成AIの幅広いユースケースの中から、自社の経営課題解決にマッチするいくつかのユースケースに絞り込み、プロトタイプを開発し、実際の業務で運用します。
PoCを実施することで、コストを抑えながら生成AI活用のインパクトを検証しつつ、見えてきた改善点から本開発の精度を高めることが可能です。
Step4:本開発と運用
4つ目のステップは、本格的な生成AIを活用したシステムの開発と運用、継続的なカイゼンです。
自社独自のデータ基盤の構築・連携や活用シーンに特化したアウトプット精度の改善などを実施し、自社の目的達成に特化した生成AIシステムを開発します。
PoCの結果を踏まえ、本開発を行うユースケースや活用範囲を決定することで、生成AI活用の費用対効果を最大化することが可能です。
また、開発しっぱなしで終わるのではなく、本開発したシステムを運用し上がった成果や改善点、技術進化などを踏まえて、活用方法や内容を継続的にカイゼンしていくことが重要です。
このプロセスを通じ、生成AI活用のポテンシャルを最大限に発揮することで、業務生産性や顧客への提供価値の観点から、大きな競争優位性を構築することに繋がります。
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