生成AIの社内向けガイドラインの作成方法と5つのポイント

ChatGPT等のサービスの普及をきっかけに、多くの企業や団体で生成AIの利用の動きが広がっています。

 

一方で、生成AIには情報漏洩や著作権侵害等のリスクがあるため、適切に利用するための社内ガイドラインを定め、社員や職員に対し、徹底周知させる必要があります。

 

そこで本記事では、生成AIの社内ガイドラインを作成する方法について、5つのポイントや注意点、参考になるサンプル事例とともにわかりやすくご紹介します。


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目次

生成AIガイドラインとは

生成AIガイドラインとは、生成AIを導入した企業が、社内向けに使い方や注意点などをまとめた規則やルールのことです。

 

生成AIを社内で導入した企業の中には、「生成AIを導入したものの使い方がわからない」「情報流出などのリスクが怖くて使えない」等の理由から、実際に使われないままになってしまうケースも多いです。

 

このような事態を防ぎ、社員全員が生成AIを適切に活用して、業務の効率化やコンテンツの自動作成等により成果を上げられるようにするためには、生成AIに関するルールを定めたガイドラインを規定することが重要となります。

 

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生成AIの社内向けガイドラインを作成する3つのメリット

生成AIの社内向けガイドラインを作成する3つのメリット

生成AIの社内向けガイドラインを作成するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

 

  • ①法令違反やセキュリティリスクを未然に防ぐ
  • ②社員の生成AI利用のリテラシーが高まり生産性が向上
  • ③社員がより積極的に生成AIを利用するようになる

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①法令違反やセキュリティリスクを未然に防ぐ

生成AIを上手に使いこなせば、業務を大幅に効率化することができる一方で、著作権等の法令違反や情報流出等のセキュリティリスクに注意する必要があります。

 

ガイドラインにおいて、利用上のルールやリスクへの対策、実際の法令違反やトラブル事例などを記載し、社員に周知させることで、法令違反やセキュリティリスクを未然に防ぐことができます。

②社員の生成AI利用のリテラシーが高まり生産性が向上

ガイドラインに生成AIに関する基本的な知識や活用方法などのノウハウを記載し、社員がいつでも参照できるようにすることで、社員の生成AI利用のリテラシーが高まり、業務の効率化・自動化、生産性の向上に繋がります。

 

また、ガイドラインにおいて、各社の業務に合わせた基本的な使い方を示すことで、知識のない社員でも一定以上の精度の利用ができるようになります。

③社員がより積極的に生成AIを利用するようになる

生成AIを導入したとしても、「使い方がわからない」「情報漏洩などのリスクが不安で使えない」等の理由で、社員の間に浸透せず、使われないまま終わってしまうというケースもよくあります。

 

ガイドラインにおいて、使い方やリスク管理の方法をわかりやすく説明することで、使い方がわからない社員でも安心して使えるようになり、積極的に生成AIを利用するようになると期待できます。

生成AIの社内向けガイドラインを作成する3つのステップ

生成AIの社内向けガイドラインを作成する3つのステップ

生成AIの社内向けガイドラインを作成するには、以下の3つのステップを踏む必要があります。

 

  • Step1:日本ディープラーニング協会(JDLA)の作成したガイドラインをベースとする
  • Step2:自社特有の想定活用業務やAI活用/データ管理へのポリシーを整理
  • Step3:両者を組み合わせ、自社独自の生成AIガイドラインを作成

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

Step1:日本ディープラーニング協会(JDLA)の作成したガイドラインをベースとする

日本ディープラーニング協会(JDLA)
(画像:JDLA)

ガイドラインを0から作るのは時間も労力もかかるので、既存のガイドラインを参考にして作成するのが効率的です。

 

おすすめは、日本ディープラーニング教会(JDLA)が作成した生成AIの利用ガイドラインで、生成AIの基本からリスクと対策までわかりやすくまとまっています。

これをベースに自社に合わせてカスタマイズすることでガイドライン作成を大幅に効率化することができます。

Step2:自社特有の想定活用業務やAI活用/データ管理へのポリシーを整理

次に、自社で想定される活用方法や自社のシステムに合わせたAI活用・データ管理に関するポリシーを洗い出していきます。

 

すべての社員が生成AIを活用できるようにするために、活用方法は細かい手順まで、丁寧かつ具体的に記載することが重要です。

Step3:両者を組み合わせ、自社独自の生成AIガイドラインを作成

最後に、ベースのガイドラインと自社特有の内容を組み合わせ、自社独自の生成AIガイドラインを完成させていきます。

 

完成したガイドラインは社員全員がいつでもアクセスできるように共有フォルダ等に格納しておきましょう。

生成AIの社内向けガイドラインに記載すべき5つのポイント

生成AIの社内向けガイドラインに記載すべき5つのポイント

生成AIの社内向けガイドラインに記載すべきポイントとして、以下の5つが挙げられます。

 

  • ①利用を許可する/禁止する用途や業務範囲
  • ②データ入力時の注意点
  • ③生成物の利用時の注意点
  • ④ユースケース毎の注意点
  • ⑤社内の利用申請の流れや関連規則

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①利用を許可する/禁止する用途や業務範囲

生成AIは便利な一方で、不適切な使い方をすると情報流出や著作権侵害などのトラブルやリスクに繋がります。

 

そのため、どのような業務範囲でどのような用途が認められ、どのような使用法が認められないかを明確に規定し、リスクを最小限に抑えることが重要です。

②データ入力時の注意点

生成AIにデータを入力する際、個人情報や機密情報を含めてしまうと、生成AIに学習され、情報が流出してしまうおそれがあります。

 

このような注意点を記載することで、社員が誤って機密情報を入力し、情報流出によるトラブルが発生することを未然に防ぐことができます。

③生成物の利用時の注意点

生成AIで作成したコンテンツが、他社の著作物を模倣したものであった場合、これを利用すると著作権侵害に該当するリスクがあります。

 

このような注意点を実際のトラブル事例とともに記載することで、社員が著作権侵害に当たるコンテンツを勝手に利用し、トラブルに進展するのを未然に防ぐことができます。

④ユースケース毎の注意点

生成AIには様々な活用方法があり、ユースケースごとに特有の注意点があります。例えば、画像を生成する場合には著作権を侵害しないか確認する、リサーチをする場合には情報ソースをダブルチェックするなど、ユースケースごとの注意点を記載することが重要です。

 

これにより、様々な業務に従事する社員が適切に生成AIを活用できるようになります。

⑤社内の利用申請の流れや関連規則

生成AIを活用したい社員が、すぐに生成AIを利用できるように、利用申請の手続きの流れをわかりやすく記載したり、関連規則のリンクを貼っておくことも重要です。

 

これにより、生成AIガイドラインを作ったが、結局誰も利用せずに終わってしまうという事態を防ぐことができます。

参考になる生成AIガイドライン4選

参考になる生成AIガイドライン4選

参考になる他の企業や組織の生成AIガイドラインとして、以下の4つが挙げられます。

 

  • ①日本ディープラーニング協会:生成AIの利用ガイドライン
  • ②CYDAS:生成AIの利用ガイドライン
  • ③東京都デジタルサービス局:文章生成AI利活用ガイドライン
  • ④上智大学:教育における生成AI利用に関するガイドライン

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①日本ディープラーニング協会:生成AIの利用ガイドライン

日本ディープラーニング協会:生成AIの利用ガイドライン
(画像:JDLA)

ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力向上を目指す一般社団法人である日本ディープラーニング協会(JDLA)は、生成AIの活用を検討している組織向けに、生成AIの利用ガイドラインのひな形を作成・公表しています。

 

生成AIの利用を検討している企業や団体は、JDLAのひな形を無料でダウンロードし、活用することができます

 

JDLAの理事長であるAI研究の第一人者である松尾豊教授の関与の下で作成されたひな形であるため、信頼できる内容となっています。

 

こんな方におすすめ

 

  • 生成AIの業務での利用を検討している
  • 生成AIのガイドラインを作成するにあたって、ベースとなるひな形がほしい

②CYDAS:生成AIの利用ガイドライン

CYDAS:生成AIの利用ガイドライン
(画像:株式会社サイダス)

人材プラットフォームを運営する株式会社サイダスは、社員向けに、生成AIの利用に関する社内ガイドラインを公開しています。ChatGPTなどの生成AIを利用する際に社員が注意すべき事項を解説したものです。

 

個人情報の入力時や生成物の利用に当たっての注意事項など、生成AIの業務利用に伴う基本的なリスクを説明した上で、どのような点に注意すべきか、どのような対策を取るべきかを具体的に説明しています。

 

こんな方におすすめ

 

  • 生成AIの社内での活用を検討している企業担当者
  • 情報漏洩や著作権侵害等のリスクを避け、社員に適切な生成AI利用を促すためのルールを設けたい

③東京都デジタルサービス局:文章生成AI利活用ガイドライン

東京都デジタルサービス局:文章生成AI利活用ガイドライン
(画像:東京都デジタルサービス局)

東京とデジタルサービス局は、都の職員向けに文章生成AI利活用ガイドラインを作成・講評しています。

 

ChatGPT等の文章作成AIの特徴や活用方法などの基本的な知識から、利用上のルールやリスクなどの注意事項、都での利用環境など、職員が文章生成AIを適切かつ効果的に活用するための説明がわかりやすくまとまっています

 

こんな方におすすめ

 

  • 文章作成AIの業務利用を検討している企業や自治体の担当者
  • 文章生成AIの効果的な活用方法を社員や職員に周知したい

④上智大学:教育における生成AI利用に関するガイドライン

上智大学:教育における生成AI利用に関するガイドライン
(画像:上智大学)

上智大学の教育における生成AI利用に関するガイドラインは、主に同大学の教職員向けに、上智大学の教育活動における生成AIの利用についての注意点をまとめたものです。生成AIやChatGPTが教育や学びに有用である一方で、学問的誠実性や法的・倫理的な観点から規律ある生成AI利用を促すべく定められました。

 

同ガイドラインには、学生による生成AI使用の可否・ルール、課題への取り組みに当たっての不正使用への対策、学業への生成AI利用による法的リスクなど、教職員が学生に生成AIの利用を認めるにあたってのルールが定められています。

 

こんな方におすすめ

 

  • 教育機関等で、授業での生成AI利用を検討している
  • 生成AIを授業で活用したいが、学生による不正利用や著作権等の法的リスクが不安
  • 学生や生徒に安全に生成AIを利用してもらうためのルールをまとめたい

企業が生成AIの導入を成功させるための5つのポイント

企業が生成AI活用を成功させるための5つのポイント

企業が生成AIの導入を成功させるために抑えるべきポイントは以下の5つです。

 

  • ①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
  • ②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
  • ③アジャイルアプローチでの開発・導入
  • ④システムとルールの両面からのリスク管理
  • ⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算

生成AI活用の成否を分ける最大のポイントは、生成AIを活用する意義の大きな業務に対して活用することに尽きます。 

 

活用の方針や戦略がないまま活用を進めるのではなく、自社の業務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの程度業務効率やアウトプット向上に繋がるかを試算することが重要となります。

②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定

生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいたコンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、明確な得意不得意が存在します。

 

そのため、自社の業務の現状や生成AIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。

③アジャイルアプローチでの開発・導入

生成AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。

 

具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。

④システムとルールの両面からのリスク管理

企業が生成AIの活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩や著作権侵害などのリスクへの懸念が挙げられます。

 

確かに、社員に特段ルールを設けず、一般に公開されている生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。

 

一方で、入力するデータが学習されないようなシステム構築や使用範囲・機密情報の取扱等の運用ルールの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。

⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上

生成AIの特徴として、AIとの対話によってアウトプットを引き出すことが求められるため、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されることが挙げられます。

 

そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。

 

研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員に生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が必要となります。

企業が生成AIを導入するための4つのステップ

企業が生成AIを活用するための4つのステップ

企業が生成AIの導入を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。

 

<Step1:活用方針の検討>

  • 最新の市場動向のキャッチアップ
  • 自社の活用可能性の整理
  • 生成AIの活用目的・ゴールの設定

 

<Step2:利用環境構築>

  • セキュリティ・データ管理体制の強化
  • ガイドライン・マニュアルの策定
  • 社員向けのAIリテラシー研修
  • 社内業務での試験運用

 

<Step3:試験開発・運用(PoC)>

  • PoCを行うユースケースの検討
  • 要件定義・プロトタイプ開発
  • 運用と評価

 

<Step4:本開発>

  • 本開発を行うユースケースの検討
  • 要件定義・本開発
  • 運用と評価
  • 活用方針・内容の継続的なカイゼン

 

それぞれについてわかりやすく紹介していきます。

 

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Step1:活用方針の検討

1つ目のステップは、自社として生成AIをどのように活用していくかの大方針の検討です。

 

生成AIは社内業務効率化や顧客体験の向上、新規事業創出など様々な目的で活用が可能だからこそ、自社の課題にマッチした目的とユースケースで活用することが、投資対効果を大きく左右します。

 

最新の技術や競合の動向をキャッチアップした上で、自社の活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、生成AIをどのような領域で、どの程度ダイナミックに活用していくかの目的やゴールを初期的に設定しましょう。

Step2:利用環境構築

2つ目のステップは、生成AIを安全かつ効率的に活用できる、社内のシステムやルールなどの利用環境の構築です。

 

企業が生成AI活用に踏み切れない理由として、機密情報漏洩などのセキュリティリスクの懸念が挙げられますが、適切なシステム設計・データ管理やガイドラインの策定などを行うことで、それらのリスクに対処しながら、業務効率化に繋げることが可能です。

  

社員に対し、生成AIをリサーチや文書作成などの日常的な業務に安心して活用できる環境を提供することで、自社のどのような業務と生成AIの相性が良いのかという現場からの示唆を得ることができ、プロトタイプ・本開発の企画への重要なインプットとなります。

Step3:試験開発・運用(PoC)

3つ目のステップは、自社にマッチするユースケースの検証に向けた、プロトタイプの開発と運用です。

 

顧客対応支援や社内のナレッジ検索、新機能・サービスの実装などの生成AIの幅広いユースケースの中から、自社の経営課題解決にマッチするいくつかのユースケースに絞り込み、プロトタイプを開発し、実際の業務で運用します。

  

PoCを実施することで、コストを抑えながら生成AI活用のインパクトを検証しつつ、見えてきた改善点から本開発の精度を高めることが可能です。

Step4:本開発と運用

4つ目のステップは、本格的な生成AIを活用したシステムの開発と運用、継続的なカイゼンです。

 

自社独自のデータ基盤の構築・連携や活用シーンに特化したアウトプット精度の改善などを実施し、自社の目的達成に特化した生成AIシステムを開発します。

 

PoCの結果を踏まえ、本開発を行うユースケースや活用範囲を決定することで、生成AI活用の費用対効果を最大化することが可能です。

 

また、開発しっぱなしで終わるのではなく、本開発したシステムを運用し上がった成果や改善点、技術進化などを踏まえて、活用方法や内容を継続的にカイゼンしていくことが重要です。

 

このプロセスを通じ、生成AI活用のポテンシャルを最大限に発揮することで、業務生産性や顧客への提供価値の観点から、大きな競争優位性を構築することに繋がります。

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