生成AIに自社データを学習させる3つの方法|選び方も徹底解説
アメリカの売上上位企業500社のうち、80%以上が既に活用を進めている生成AI。
そんな中、自社データを生成AIに学習させて、自社の業務にマッチした独自の生成AIを活用したいと考えている企業様も多いのではないでしょうか?
本記事では、生成AIの活用を検討されている方向けに、生成AIに自社データを学習させる方法やメリット・デメリット、注意点などをまとめてご紹介します。
またAI総研では、AI活用を検討する上で押さえておきたい、AI・ChatGPTの最新活用事例50選の狙いや取り組みをまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
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目次
- 生成AIに自社データを学習させる3つの方法
- 生成AIに自社データを学習させる方法の選び方
- 生成AIに自社データを学習させる3つのメリット
- 生成AIに自社データを学習させる3つのデメリット・リスク
- 生成AIに自社データを学習させる際の6つの注意点
- 自社データを学習させた生成AIを活用する9つの方法
- 【業界別】日本企業の生成AI活用事例10選
- ①パナソニックコネクト:AIアシスタントを導入し1日5000回の利用
- ②オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ
- ③セブンイレブン:生成AIを活用し商品企画の期間を10分の1に
- ④パルコ:広告の動画・ナレーション・音楽を全て生成AIで作成
- ⑤アサヒビール:生成AIを活用し従業員の社内情報検索を効率化
- ⑥LINE:エンジニアが生成AIを活用し1日2時間の業務効率化
- ⑦メルカリ:AIアシスタントが売れやすい商品名や説明文を提案
- ⑧学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
- ⑨大林組:生成AIがスケッチを基に建物の複数のデザイン案を提案
- ⑩SMBCグループ:独自の対話AI開発で従業員の生産性向上へ
- 企業が生成AIを活用するための4つのステップ
- 企業が生成AI活用を成功させるための5つのポイント
生成AIに自社データを学習させる3つの方法
生成AIに自社データを学習させる代表的な方法として以下の3つが挙げられます。
- ①プロンプトエンジニアリング:非エンジニアでも実装可能
- ②RAG(Retrieval-Augmented Generation):膨大なデータからの検索に強み
- ③ファインチューニング:自社の目的・用途に特化した生成AIを構築
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
①プロンプトエンジニアリング:非エンジニアでも実装可能
1つ目の方法は、プロンプトエンジニアリングによるデータの学習です。
そもそもプロンプトエンジニアリングとは、生成AIに入力する質問や指示の内容を工夫することで、適切な回答を引き出すことを指します。
生成AIに入力する質問や指示に、自社データをテキストで入力したり、CSV、PDFファイル、URLなどを添付することで、自社データを学習した回答を得ることができます。
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メリット
- 非エンジニアでも実行可能:プロンプトエンジニアリングには、エンジニアリングの専門知識やスキルが必要ないため、非エンジニアの方でも比較的簡単に、自社データを学習させることができます。
- コストが低い:生成AIへの入力内容を変更するだけなため、追加での料金などはかかりません。
デメリット
- プロンプトエンニアリングスキルが必要:自社データを活用し生成AIから適切な回答を得るためには、質問や指示の設計や記述のフォーマットなどのスキルが必要となります。
- 学習データ量の制限:プロンプトエンジニアリングでは入力できるデータ量に限りがあるため、膨大な顧客とのやりとりや社内データなどを学習させることには向いていません。
②RAG(Retrieval-Augmented Generation):膨大なデータからの検索に強み
2つ目の方法は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)によるデータ学習です。
RAGとは、生成AIが質問に回答する際に、生成AIのデータベースに加え、膨大な自社のデータベースから情報を検索し、回答させるように自社データを組み込む手法のことを指します。
メリット
- 膨大なデータ量の学習が可能:RAGではプロンプトエンジニアリングと異なり、膨大な量のデータを学習させることができます。そのため、自社データをフル活用した業務効率化やサービス創出が可能となります。
- 最新データに基づく回答:RAGでは生成AIと自社のデータベースが接続されており、常に最新のデータを活用した回答を得ることが可能です
デメリット
- 導入ハードルが高い:RAGには設計と実装に高度なエンジニアリング知識やスキルを有する人材による開発体制が必要となります。
- 回答時間が長い:RAGでは回答の際に、膨大な自社データを検索させることになるため、回答までに長い時間を要する傾向があります。
③ファインチューニング:自社の目的・用途に特化した生成AIを構築
3つ目の方法はファインチューニングによるデータ学習です。
ファインチューニングによる学習では、生成AIの提供するモデルに、自社データを学習させることで、モデル自体を自社専用のものにアップデートします。
これにより、自社の業界や事業領域、特定のタスクに対して精度高く活用可能な自社専用の生成AIを構築することが可能です。
メリット
- 業界やタスクに特化可能:モデル自体をアップデートするため、自社の業界、事業領域や特定のタスクに特化した精度の高い回答を得られるようになります。
- ユーザーが利用しやすい:モデル自体が自社のニーズにカスタマイズされたものになっているため、AIの知識の乏しい社員でも簡単に自社独自の生成AIを利用できるようになります。
デメリット
- 導入ハードルが高い:ファインチューニングには設計と実装に高度なエンジニアリング知識やスキルを有する人材による開発体制が必要となります。
- コストが高い:モデルの学習には膨大なデータを学習させる必要があり、その過程で生成AIのAPIに対して従量課金での支払いをすることとなります。また、学習に用いるデータセットを収集・整理するコストもかかることとなります。
生成AIに自社データを学習させる方法の選び方
生成AIに自社データを活用させる方法を紹介してきましたが、自社にマッチする学習方法を選ぶ際には、以下の図をご参照ください。
図のように、自社の活用目的や内容によって、最適な自社データの学習方法は異なります。
社内のノウハウや顧客データの抽出など膨大なデータから検索・抽出するタイプの活用をする場合は、RAGが適しています。
一方で、AIモデル自体を自社の業界や特定の業務に特化したものに再構築したい場合はファインチューニングが適しています。
また、その両方の場合はRAGとファインチューンングを組み合わせた学習を行うことが適しています。
このように適切な方法を選んで学習をさせることが、生成AI活用の成果を大きく左右することになります。
生成AIに自社データを学習させる3つのメリット
生成AIに自社データを学習させるメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ①特定の業界に専門特化した回答の出力
- ②自社の業態/業務にマッチした高精度な回答の出力
- ③誤った回答が生成されるリスクの軽減
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①特定の業界に専門特化した回答の出力
生成AIにどのデータを学習させるかは、ユーザーが自由に選ぶことができます。特定の業界の専門用語などをまとめて学習させれば、その業界に特化した専門家のような回答を出力する生成AIを作ることができます。
②自社の業態/業務にマッチした高精度な回答の出力
生成AIに自社の顧客情報や取引履歴、ノウハウなど自社独自のデータを学習させることで、自社の業態や業務にマッチした高精度な回答を得ることができるようになります。
これにより、顧客ごとにパーソナライズされたサービスの提供や社内業務の効率化などを実現することができます。
③誤った回答が生成されるリスクの軽減
生成AIの利用方法によっては、誤った回答が出力されるハルシネーションという現象が起こる可能性があります。生成AIに正確なデータを学習させることでこのようなリスクを軽減することができます。
生成AIに自社データを学習させる3つのデメリット・リスク
生成AIに自社データを学習させるデメリットやリスクとして以下の3つが挙げられます。
- ①読み込まれた自社データが漏洩するリスク
- ②処理するデータ量が増加し返答が遅くなるリスク
- ③実装や人員確保に時間的・金銭的コストがかかるリスク
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①読み込まれた自社データが漏洩するリスク
生成AIに読み込まれたデータは、生成AIが学習し進化するために、基本的にはクラウド上で保管されます。そのため、会社内部の機密情報や顧客の個人情報などを入力してしまうと、生成AIサービス提供者や他のユーザーに機密情報が漏洩してしまうリスクが存在します。
②処理するデータ量が増加し返答が遅くなるリスク
生成AIにデータを学習させると、処理するデータ量が増加し、自然処理に必要となる時間が長くなります。これにより、回答スピードが低下するリスクが存在します。
そのため、回答スピードの低下リスクを考慮し、学習させるデータを必要な範囲に絞る等の対策が重要となります。
③実装や人員確保に時間的・金銭的コストがかかるリスク
生成AIにデータを学習させるにあたっては、学習データの収集や整理、モデルのトレーニングなど各作業に時間がかかる可能性があります。
また、大量のデータを使用する場合などには、高度なスキルを有するエンジニアの存在が必要となり、人件費等の金銭的コストがかかる可能性があります。
生成AIに自社データを学習させる際の6つの注意点
生成AIに自社データを学習させる際の注意点として、以下の6つが挙げられます。
- ①データ範囲の適切な設定
- ②最適なプラン選定
- ③リスクを最小化するデータマネジメント
- ④従業員向けの利用ルール・マニュアルの策定
- ⑤従業員の生成AI活用リテラシーの向上
- ⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
①データ範囲の適切な設定
生成AIにあまりにも多くのデータを学習させると、情報処理に時間がかかって回答スピードが遅くなったり、情報漏洩の危険性が高まったりするなどのリスクが生じます。
そのため、生成AIに学習させる必要があるデータと必要がないデータを区別し、適切な範囲に絞ることが重要です。
②最適なプラン選定
生成AIサービスの中には、無料プラン、有料プラン、企業向けプランなど複数のプランが用意されているものもあり、プランごとにセキュリティの強さや使える機能が異なります。
そのため、例えば、個人情報や機密情報を学習させる場合にはセキュリティが強化された有料の企業向けプランを利用するなど、自社の目的や学習させるデータの性質に応じて適切なプラン選定を行うことが重要です。
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③リスクを最小化するデータマネジメント
生成AIは、学習したデータに基づいて動作するため、データマネジメントの質が生成AIの出力品質に直結します。
データの正確性、偏りのなさ、機密性の保持は、リスクを最小化する上で極めて重要です。
適切なデータマネジメントの実施により、データの質を確保し、情報漏洩や不正確な情報生成のリスクを低減します。
④従業員向けの利用ルール・マニュアルの策定
生成AIの効果的な利用とリスクの最小化のためには、企業が従業員向けの明確な利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。
具体的には、社内でのAIの使用目的、使用範囲、倫理ガイドライン、データ取り扱いのルール・マニュアルを策定する必要があります。
⑤従業員の生成AI活用リテラシーの向上
生成AIのポテンシャルを最大限に活用し、同時にリスクを管理するためには、従業員のAIに関する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員が生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境を構築することが求められます。
⑥最新動向を踏まえた生成AI活用方法の定期的な見直し
生成AIの技術・サービスは日々進化しており、新たな活用方法や利用プロセスが登場し、それに応じて新たなリスクが生じる可能性が高いです。
したがって、国内外の生成AIに関する最新の動向を常に把握し、企業の生成AI活用方法を定期的に見直し、更新することが必要となります。
自社データを学習させた生成AIを活用する9つの方法
自社データを学習させた生成AIの代表的な活用方法として以下の9つが挙げられます。
- ①リサーチ・翻訳・要約・分析
- ②企画立案・フィードバック
- ③メール・企画書等の文書作成
- ④設計・デザイン案作成
- ⑤ソフトウェア開発・デバッグ
- ⑥チャットボット等による社内知見の検索・業務支援
- ⑦文章/画像等のコンテンツ作成
- ⑧チャットボット等による顧客対応自動化
- ⑨サービス機能・顧客体験の進化
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①リサーチ・翻訳・要約・分析
生成AIを活用することで、webサイトでのリサーチやリサーチ結果の翻訳・要約、分析の大部分を自動化し、大幅に効率化することが可能です。
ChatGPTなどの生成AIサービスは、近年脅威的なスピードで進化を遂げており、最新のwebサイトからの情報の取得や、従来Excelで行っていたような定量分析も、チャット形式の操作で行うことができます。
そのため、リサーチ・分析業務における生成AI活用は、活用すると効率的というフェーズから、活用しないと非効率というフェーズに移行し始めています。
②企画立案・フィードバック
生成AIを活用することで、多様なバリエーションの企画案の幅出しの自動化や、壁打ち相手として自分の企画に対するフィードバックを受けることが可能です。
生成AIの強みは、思考体力が無限にあることであり、人間では不可能な、15分で300通りの企画案を立案するといった活用が可能で、特に幅出しのプロセスで強みを発揮します。
今後多くの業界での企画立案業務が、幅出しはAI、評価・ブラッシュアップは人間という役割分担にシフトしていくと考えられます。
③メール・企画書等の文書作成
メール・企画書などの文章作成は、生成AIが最も得意とするユースケースの1つです。
活用の際は、背景や目的、出力項目などをしっかりと指示することで、スピードはもちろん、人間以上のクオリティの文章を作成することが可能になります。
また、社内稟議用の文章など定型的な文書作成であれば、一度設定してしまえば、作成をほぼ完全に自動化することができます。
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④設計・デザイン案作成
生成AIによる、多様なデザイン案の生成と迅速なプロトタイピングにより、製品開発の時間とコストが削減されます。
これにより、製品の設計・デザインのプロセスが効率化されるとともに、人間ではなかなか思いつかなかったクリエイティブな設計・デザインが可能となります。
⑤ソフトウェア開発・デバッグ
生成AIの活用により、一部のシステム設計とコーディングの自動化が実現され、開発工数とリソースの節約につながります。
これにより、非エンジニアが開発業務の一部を担当したり、エンジニアがより重要な業務にフォーカスすることが可能となります。
⑥チャットボット等による社内知見の検索・業務支援
独自のデータを学習させた生成AIを使ったチャットボットの導入等により、各社員に最適な社内の専門知識をリアルタイムで共有することが可能です。
この取り組みにより、従業員は必要な情報を即座に取得し、業務の質とスピードを向上させます。
⑦文書/画像等のコンテンツ作成
画像や動画生成AIを活用することで、コンテンツ作成を効率化しコストを削減できます。
特に、広告のA/Bテストや消費者へのパーソナライズなどを目的とし、多数のコンテンツが必要な場合、AIの高速かつ効率的な生成能力は、費用対効果の高い選択肢となります。
⑧チャットボット等による顧客対応自動化
生成AIを活用したチャットボット等の導入により、顧客からの問い合わせへの対応の一部が自動化され、24時間365日の迅速なサービス提供が可能になります。
これにより、顧客満足度が向上し、同時にオペレーター等の業務負担も大幅に軽減されます。
⑨サービス機能・顧客体験の進化
生成AIを活用することで、既存サービスの機能や顧客体験をよりユーザー中心のものに進化させることが可能です。
例えば、専属のコンシェルジュのように最適な商品を最適な文脈/文面で提案したり、顧客のサービス利用にあたってのデータ入力の手間を、候補の提案により省略するなどの活用が進んでいます。
この活用により、業務効率化という領域を超え、競合のサービス/事業に対する差別化を図り、競争優位性を構築することが可能です。
【業界別】日本企業の生成AI活用事例10選
業界別の日本企業の生成AI活用事例10選は、以下の通りです。
<製造業界>
- ①パナソニックコネクト:AIアシスタントを導入し1日5000回の利用
- ②オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ
<小売業界>
- ③セブンイレブン:生成AIを活用し商品企画の期間を10分の1に
- ④パルコ:広告の動画・ナレーション・音楽を全て生成AIで作成
<飲料業界>
- ⑤アサヒビール:生成AIを活用し従業員の社内情報検索を効率化
<IT業界>
- ⑥LINE:エンジニアが生成AIを活用し1日2時間の業務効率化
- ⑦メルカリ:AIアシスタントが売れやすい商品名や説明文を提案
<教育業界>
- ⑧学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
<建築業界>
- ⑨大林組:生成AIがスケッチを基に建物の複数のデザイン案を提案
<銀行業界>
- ⑩SMBCグループ:独自の対話AI開発で従業員の生産性向上へ
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①パナソニックコネクト:AIアシスタントを導入し1日5000回の利用
パナソニック コネクトでは、社内データベースを連携させたAIアシスタントによる業務効率化のプロジェクトを進めています。
この取り組みにより、自社業務や現場の個別課題に対応した回答生成が可能となり、社外秘情報にも対応する自社特化AIの運用開始も予定しています。
導入後3カ月で、想定の5倍以上の約26万回の利用があり、日々約5000回もの質問がAIに投げかけられているとのことです。
②オムロン:生成AIを活用した言語指示で動くロボットの開発へ
オムロンサイニックエックス(OSX)は、ロボットアームが自然言語の指示に応じて動作する技術の開発に取り組んでいます。
この技術は、食材の切り方など、特定の作業動作を学習したAIモデルが生成することで実現されます。
このプロジェクトは、人間の思考プロセスを模倣することで、ロボットがより自然な方法でタスクを実行できるようにすることを目指しています。
③セブンイレブン:生成AIを活用し商品企画の期間を10分の1に
セブンイレブン・ジャパンは、商品企画の時間を大幅に削減するために生成AIの活用を始めました。
この取り組みにより、店舗の販売データやSNS上での消費者の反応を分析し、新商品に関する文章や画像を迅速に作成することが可能になります。
生成AIの導入により、商品企画にかかる時間が最大で90%削減され、市場のトレンドや顧客のニーズに迅速に応える、新たな商品を提供できる見込みとのことです。
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④パルコ:広告の動画・ナレーション・音楽を全て生成AIで作成
パルコは、最先端の画像生成AIを駆使したファッション広告として、「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」広告を制作・公開しました。
この広告では、実際のモデル撮影は行わず人物から背景にいたるまで、プロンプトから構成され、グラフィック・ムービーの他、ナレーション・音楽も全て生成AIにて作成しています。
人間のモデルではなく生成AIが作成したモデルを起用することで、モード感のある新しいファッション広告を実現しています。
⑤アサヒビール:生成AIを活用し従業員の社内情報検索を効率化
アサヒビールは、研究開発部門を中心に生成AIを活用した社内情報検索システムの開発に取り組んでいます。
このシステムは、ビール醸造技術や商品開発に関連する技術情報の要約と検索を効率化することを目的としています。
開発者は、このシステムにより、従業員が必要な情報に素早くアクセスできるようになり、研究開発のスピードと効率が向上することを期待しています。
⑥LINE:エンジニアが生成AIを活用し1日2時間の業務効率化
LINEヤフーは、生成AIを全面的にソフトウェア開発に導入し、エンジニアの作業時間を1日当たり約2時間削減しています。
具体的には、米マイクロソフトの子会社であるギットハブの「GitHub Copilot」を利用し、エンジニアが実装したい機能や動作に必要なコードを自動生成し、開発時間を短縮しています。
これにより、約7000人のエンジニアが新サービスの考案など高付加価値の業務に集中できるようになり、企業の競争力向上への寄与が期待されます。
⑦メルカリ:AIアシスタントが売れやすい商品名や説明文を提案
メルカリは、生成AIを活用して出品者のサポートを強化する「メルカリAIアシスト」機能の提供を開始しました。
本機能では、出品済みの商品情報を分析し、売れ行きを良くするための商品名や説明文を自動生成して提案します。
本取り組みは、フリマアプリ内で商品が購入者の目に留まりやすくすることを目的としており、取引の活性化に寄与することが期待されます。
⑧学研:生成AIを活用した個別アドバイスを提供
学研ホールディングスは、オリジナル学習システム「GDLS」でChatGPTを活用し、個別に最適な学習アドバイスを提供するベータ版を開始しました。
このシステムは、生徒の学習履歴や理解度の変化に基づいて各生徒に対して適切な学習アドバイスを提供し、学習効果を最大化します。
学研オリジナル学習システム(GDLS)は、生徒が毎日ログインする習慣を促し、学習への意欲を高めます。さらに、学研メソッドはこれまでもAIを活用し、正答率に合わせた問題出題などを行っており、GDLSはその発展形となっています。
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⑨大林組:生成AIがスケッチを基に建物の複数のデザイン案を提案
大林組は、初期段階の設計業務の効率化が可能な生成AIを活用したツールを開発しました。
このツールを用いると、建物の大まかな形状を描いたスケッチや、コンピュータで作成した3Dモデルを基にして、建物の外観デザインを複数の提案を受けることが可能です。
その結果、迅速なデザイン生成を可能にし、設計者が手作業で行っていた時間のかかるプロセスを省略。
これにより、設計者は、顧客の要望をすぐに形にし、顧客との意見のすり合わせをスムーズに行え、最終的なデザインへの合意を迅速に進めることができます。
⑩SMBCグループ:独自の対話AI開発で従業員の生産性向上へ
三井住友フィナンシャルグループは、「SMBC-GPT」という、ChatGPT活用し開発した、AIアシスタントツールの実証実験を開始しました。
本ツールは、SMBCグループ専用環境上で動作し、文章の作成、要約、翻訳、ソースコード生成など多岐にわたる業務を支援し、従業員の生産性向上を図ります。
また、AIアシスタントツールの回答内容の正確性を従業員が判断し、外部AIの利用禁止などの規制も順次見直していく予定です。
企業が生成AIを活用するための4つのステップ
企業が生成AI活用を進めるための流れとして、以下の4つのステップがあげられます。
<Step1:活用方針の検討>
- 最新の市場動向のキャッチアップ
- 自社の活用可能性の整理
- 生成AIの活用目的・ゴールの設定
<Step2:利用環境構築>
- セキュリティ・データ管理体制の強化
- ガイドライン・マニュアルの策定
- 社員向けのAIリテラシー研修
- 社内業務での試験運用
<Step3:試験開発・運用(PoC)>
- PoCを行うユースケースの検討
- 要件定義・プロトタイプ開発
- 運用と評価
<Step4:本開発>
- 本開発を行うユースケースの検討
- 要件定義・本開発
- 運用と評価
- 活用方針・内容の継続的なカイゼン
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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Step1:活用方針の検討
1つ目のステップは、自社として生成AIをどのように活用していくかの大方針の検討です。
生成AIは社内業務効率化や顧客体験の向上、新規事業創出など様々な目的で活用が可能だからこそ、自社の課題にマッチした目的とユースケースで活用することが、投資対効果を大きく左右します。
最新の技術や競合の動向をキャッチアップした上で、自社の活用可能性の幅出し・整理を行います。その上で、生成AIをどのような領域で、どの程度ダイナミックに活用していくかの目的やゴールを初期的に設定しましょう。
Step2:利用環境構築
2つ目のステップは、生成AIを安全かつ効率的に活用できる、社内のシステムやルールなどの利用環境の構築です。
企業が生成AI活用に踏み切れない理由として、機密情報漏洩などのセキュリティリスクの懸念が挙げられますが、適切なシステム設計・データ管理やガイドラインの策定などを行うことで、それらのリスクに対処しながら、業務効率化に繋げることが可能です。
社員に対し、生成AIをリサーチや文書作成などの日常的な業務に安心して活用できる環境を提供することで、自社のどのような業務と生成AIの相性が良いのかという現場からの示唆を得ることができ、プロトタイプ・本開発の企画への重要なインプットとなります。
Step3:試験開発・運用(PoC)
3つ目のステップは、自社にマッチするユースケースの検証に向けた、プロトタイプの開発と運用です。
顧客対応支援や社内のナレッジ検索、新機能・サービスの実装などの生成AIの幅広いユースケースの中から、自社の経営課題解決にマッチするいくつかのユースケースに絞り込み、プロトタイプを開発し、実際の業務で運用します。
PoCを実施することで、コストを抑えながら生成AI活用のインパクトを検証しつつ、見えてきた改善点から本開発の精度を高めることが可能です。
Step4:本開発と運用
4つ目のステップは、本格的な生成AIを活用したシステムの開発と運用、継続的なカイゼンです。
自社独自のデータ基盤の構築・連携や活用シーンに特化したアウトプット精度の改善などを実施し、自社の目的達成に特化した生成AIシステムを開発します。
PoCの結果を踏まえ、本開発を行うユースケースや活用範囲を決定することで、生成AI活用の費用対効果を最大化することが可能です。
また、開発しっぱなしで終わるのではなく、本開発したシステムを運用し上がった成果や改善点、技術進化などを踏まえて、活用方法や内容を継続的にカイゼンしていくことが重要です。
このプロセスを通じ、生成AI活用のポテンシャルを最大限に発揮することで、業務生産性や顧客への提供価値の観点から、大きな競争優位性を構築することに繋がります。
企業が生成AI活用を成功させるための5つのポイント
企業が生成AI活用を成功させるために抑えるべきポイントは以下の5つです。
- ①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
- ②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
- ③アジャイルアプローチでの開発・導入
- ④システムとルールの両面からのリスク管理
- ⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上
それぞれについてわかりやすく紹介していきます。
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①業務内容の棚卸しと活用インパクトの試算
生成AI活用の成否を分ける最大のポイントは、生成AIを活用する意義の大きな業務に対して活用することに尽きます。
活用の方針や戦略がないまま活用を進めるのではなく、自社の業務内容・フローをしっかりと棚卸しした上で、どの程度業務効率やアウトプット向上に繋がるかを試算することが重要となります。
②投資対効果の高い課題/目的と活用方法の選定
生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、膨大なデータに基づいたコンテンツ制作は得意だが、複雑な問いに対して正確な答えを出すのは苦手といった、明確な得意不得意が存在します。
そのため、自社の業務の現状や生成AIの特徴を踏まえた上で、どのような課題/目的に対して、どのようなアプローチ/範囲/ツールで活用を進めるかを、検討・選定するステップがプロジェクトの投資対効果を左右する、極めて重要なプロセスとなります。
③アジャイルアプローチでの開発・導入
生成AIは、一度開発・導入して終わりという進め方ではなく、何度もモデル・学習データ・利用方法等を細かくカスタマイズしなおすことで、より理想とする活用を実現することができます。
具体的には、初期仮説に基づいた簡易的なプロトタイプを構築し実際に利用してみる、というサイクルを、1サイクル数週間の期間で何度も繰り返し、ブラッシュアップしていくという、アジャイル開発のアプローチを取ることが適しています。
④システムとルールの両面からのリスク管理
企業が生成AIの活用に踏み切れない最大の理由として、機密情報漏洩や著作権侵害などのリスクへの懸念が挙げられます。
確かに、社員に特段ルールを設けず、一般に公開されている生成AIを活用させた場合、様々な問題が発生する可能性は存在します。
一方で、入力するデータが学習されないようなシステム構築や使用範囲・機密情報の取扱等の運用ルールの策定により、リスクをマネジメントし最小化することが可能です。
⑤研修等での社員のAI活用リテラシーの向上
生成AIの特徴として、AIとの対話によってアウトプットを引き出すことが求められるため、使い手のリテラシーによって成果が大きく左右されることが挙げられます。
そのため、生成AIのポテンシャルを最大限に活用するためには、従業員のAIに対する理解とスキル、すなわちAIリテラシーを向上させることが不可欠です。
研修プログラムや実践的なトレーニングを通じて、従業員が生成AIの基本的な知識、適切な使用方法、関連するリスクを理解してもらい、効率的かつ責任ある方法で使用できる環境の構築が必要となります。
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