VRの建築業界での活用事例7選|3大メリットも紹介

関連技術の進歩やMetaやAppleのデバイス発売などに伴い、多くの企業がVRの活用を進めています。

 

最近では、VRと建築業界との相性の良さから、VRを建築業界に活用する企業が増えています。

 

そこで今回は、建築業界へのVRの活用事例7選を、活用のメリット、成功のポイントなどとともにわかりやすくご紹介します。

 

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • 建築業界で自社のVR活用を検討している
  • 他社による建築業界へのVRの活用事例を押さえておきたい
  • VRを建築業界に活用するメリットが知りたい

 

本記事を読めば、研修へのVR活用を進める上で押さえておきたい知識を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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目次

そもそもVRとは?

そもそもVRとは 三越伊勢丹
(画像:三越伊勢丹)

VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス、ゴーグル等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。

 

日本バーチャルリアリティ学会ではVRを「みかけや形は原物そのものではないが、本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」と定義しています。すなわち、VRは、現実世界そのものではないが、実質は現実世界とほとんど変わらないという意味です。

 

VRの定義についてはこの他にも色々な考え方がありますが、いずれにしても、本質的には現実とほとんど変わらないというところがポイントになります。

 

様々なユースケースの中でも特にゲームの使用を中心に利用が拡大しており、まるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感・臨場感を感じながらプレイすることが出来ます。

 

また、最近ではゲームだけでなく、仮想現実に出店し商品を販売したり、仮想空間上で社員研修や教育を行ったり、建築のシミュレーションを行ったりするなど、様々な分野でVRが活用されています。

 

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VRを建築業界に活用する3つのメリット

VRを建築業界に活用する3つのメリット

VRの建築業界への活用の代表的なメリットとして、以下の3つが存在します。

 

  • ➀3Dモデルにより完成イメージのギャップを解消
  • ②建物の設計シミュレーションのコスト・環境負荷を削減
  • ③完成イメージの3D化によりお客様への訴求力向上

 

それぞれのメリットをわかりやすく説明していきます。

 

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➀3Dモデルにより完成イメージのギャップを解消

設計時に建物の完成形のイメージをすり合わせる際に、従来の2Dの図面等を用いたアプローチだと、設計時には設計者・施工者・発注者がイメージする建物の完成形がそれぞれ異なっている場合もあり、手戻りの工数発生やトラブルへの発展など様々な問題に繋がっていました。

 

そこで、建物の設計時に、VR空間上で建物の完成形の3Dモデルを製作することで、建物の細かい設計まで視覚的に確認することができるため、設計者・施工者・発注者の認識のギャップ解消に繋げられるというメリットがあります。

②建物の設計シミュレーションのコスト・環境負荷を削減

設計のシミュレーションをする際に、従来のアプローチだと、実寸大ないしは縮小版の模型を制作し、理想とする建物が建設できそうかを検証するのですが、シミュレーションを行うためには何度も模型を組み替える必要があり、そのために多くの工数やコストが発生していました。また、そのシミュレーションをには当然多くの資材が使用されるため環境負荷にも繋がってしまうという問題がありました。

 

そこで、設計のシミュレーションをVR空間上で行うことで、工数やコストの削減はもちろん、現実の資材を使用することもないので環境負荷を抑えることが可能です。

③完成イメージの3D化によりお客様への訴求力向上

施工・完成前の戸建てやマンションを販売する際に、従来のアプローチだと2Dの設計図を用いた紹介、または完成形のイメージを2Dの形で確認するというのが主流でした。

実際に完成している建物の販売と比べると、お客様が建物の魅力を感じ、安心して購買していただくハードルは非常に高いものとなっていました。

 

そこで、AR/VRなどの技術を活用することで、建物の完成時のイメージを3Dで可視化しながら販売をすることが可能になります。

この取り組みにより、完成前の建物の販売における訴求力や成約率の向上への貢献が期待できます。

VRの建築業界への活用事例7選

VRの建築業界への活用事例7選

VRの建築業界への活用事例として代表的なものに、以下の7事例が挙げられます。

 

  • ①東急建設:建物の完成イメージの共有に活用
  • ②鹿島建設:建築の全フェーズでデジタルツインを実現
  • ③ラストマイルワークス:建築に特化したVR空間を提供
  • ④奥村組:VR上で設計・施工のシミュレーション
  • ⑤坂田建設:VRで工事現場における労災防止に向けた訓練を実施
  • ⑥大林組:共同作業が可能なVRを研修に活用
  • ⑦積木製作:建築業界での安全教育のためのVRコンテンツを提供

 

それぞれについて、わかりやすく紹介します。

 

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①東急建設:建物の完成イメージの共有に活用

東急建設:建物の完成イメージの共有に活用
(画像:東急建設)

東急建設は、設計者や現場の作業員、また外部の発注者など様々な関係者が共通の建物の完成イメージを持つことで、施工の品質や効率を高めるためにHololensの活用を進めています。本取り組みには、Hololens上でAzure Remote Renderingという、3Dモデルをクラウド上でレンダリングし、それをストリーミングすることで、リアルタイムにHoloLensのデバイスに表示できるサービスが活用されています。

 

この活用により、発注者、設計者、施工者間での認識のズレを防ぐことができ、施工品質の向上や無駄な手戻りの削減による業務効率化を実現することができます。

②鹿島建設:建築の全フェーズでデジタルツインを実現

鹿島建設:建築の全フェーズでデジタルツインを実現
(画像:鹿島建設

鹿島建設はオービック御堂筋ビルの新築工事において、プロジェクトの全フェーズにおいてBIMによるデジタルツインを活用することで、プロジェクトの各フェーズにおける建物データの連携・共有を可能にしました。

 

企画・設計フェーズでは周辺環境へのビル風のシミュレーション、建物内のシミュレーションに、施工フェーズでは工事プロセスのデジタル化と進捗管理、MRの活用による、実際の施工状況の確認に、維持管理フェーズでは、ファシリティマネジメントのデータへの連携、日常の点検から得られた情報を収集し、その後の建築の企画・開発への活用になど、多岐にわたるユースケースでデジタルツインを活用しました。

 

デジタルツインを活用することで、建物自体の高品質化はもちろん、企画・設計から竣工後の管理・運営までの一連の建物にまつわる情報をデジタル化し、お客様に提供することが建物の更なる価値向上に繋がると考えているとのことです。

③ラストマイルワークス:建築に特化したVR空間を提供

ラストマイルワークス:建築に特化したVR空間を提供
(画像:ラストマイルワークス株式会社)

2022年1月に、創業以来建築CGやVRコンテンツの制作を行ってきた企業であるラストマイルワークスは建築に特化したVR空間である「comony」の提供を開始しました。

 
conomyのVR空間は、自分自身で閲覧できる建築のポートフォリオとしての活用だけでなく、世界中から招待されたゲストとのコミュニケーションにも利用できます。
また、仮想空間上に建てられた世界の有名建築物や、ここでしか見ることのできない未完成建築作品をを24時間365日、見学することができます。

 

従来の2Dでの図面を介したコミュニケーションでは、完成イメージの共有が不十分であり、設計時と施工時の認識のギャップが多く存在しました。

そこで、デザインプロセス全体により高い精度と正確性を持たせるためのソリューションとしてconomyを企画・開発しました。conomyは3DのVR空間を通じて、作り手と受け手の円滑なコミュニケーションを実現しています。

 
今後はconomyを盛り上げてくれる建築クリエイターの募集のため、個展や建築コンペ/イベント等を開催予定とのことです。

 

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④奥村組:VR上で設計・施工のシミュレーション

奥村組:VR上で設計・施工のシミュレーション
(画像:奥村組)

2021年12月に奥村組はVR上でのシミュレーションにより設計・施工の工数削減を目指すため、独自のVR空間である「VR技術研究所」の構築を発表しました。

VR技術研究所の構築にはSynemon社のVR構築サービス「NEUTRANS」が活用されました。

 

従来は建築用のモックアップを作るのは当たり前のことでしたが、原寸大で製作する場合、多くの産業廃棄物を発生させることになります。また、縮小版で制作する場合も、手戻りが発生した際に膨大な工数が発生するという問題がありました。

 

そこで、同社の技術研究所内にある実験棟をVR化することで、設計や施工の細部の精度を高め、室内環境の際現に必要な施工にかかる工数を削減することができます。

⑤坂田建設:VRで工事現場における労災防止に向けた訓練を実施

坂田建設:VRで工事現場における労災防止に向けた訓練を実施
(画像:坂田建設)

坂田建設は、工事現場における労災防止に向けた事故体験・安全教育を実施しています。

従業員は工事現場における重機の事故や土砂崩れ、足場の墜落など様々なシチュエーションをVRで体験することができます。

 

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⑥大林組:共同作業が可能なVRを研修に活用

大林組:共同作業が可能なVRを研修に活用
(画像:大林組)

大林組は、「O-DXルーム」を新設し、建設現場の玉掛け作業の社員研修にVRを活用しています。社員は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着することで、没入感のある環境で研修を受けることができます。

 

本コンテンツは、建設業界で初めてバーチャル空間での共同作業が可能なコンテンツであるほか、全てのユーザーの行動を保存し振り返り確認が可能である点が特長になっています。建設業界全体の高齢化により、生産性向上に伴う省人化や危険な現場のリスク回避が課題となっています。

 

VRを活用することで現場研修のリスクや費用を抑えつつ、研修の効果や効率を向上させることが期待されています。

⑦積木製作:建築業界での安全教育のためのVRコンテンツを提供

積木製作:建築業界での安全教育のためのVRコンテンツを提供
(画像:積木製作)

積木製作は、建築業界向けの研修コンテンツ『安全体感VRトレーニング』を制作・販売しています。このサービスにより、ユーザーは現場作業にかかわる安全教育を安全な場所でリアルに受講することができます。

 

従来のVR研修コンテンツでは、ユーザーの身体の個人差に対応できず、十分な研修体験ができない場合がありました。積木製作では、コンテンツ開始時に自動的に身長を計測し、ユーザーに合わせたコンテンツ設計を行う機能を実装しました。

 

また、安全に考慮して設計された専用スツールを独自開発したことにより、安全かつ臨場感のある研修体験が可能となったとのことです。

建築業界へのVR活用を成功に導く5つのポイント

建築業界へのVR活用を成功に導く5つのポイント

企業がVR活用で成果を上げるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。

 

  • ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
  • ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
  • ③ユーザーファーストなUX設計
  • ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
  • ⑤強力な開発・運用体制の構築

 

それぞれについて分かりやすく紹介していきます。

 

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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ

1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。

デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。

 

VR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。

②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案

2つ目のポイントは、VRを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。

現在VR活用に取り組む企業には、VR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。

 

その結果、活用のPDCAが回らない、VR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。

 

自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜVRではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。

③ユーザーファーストな企画・UX設計

3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなVRの企画・UX設計です。

現在、多くの企業がVRに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなVRが多く存在します。それらのVRは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。

 

そのため、「VRならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。

④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進

4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。

VR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。

 

そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。

⑤強力な開発・運用体制の構築

5つ目のポイントは、強力なVR開発・運用体制の構築です。

高いユーザー体験と事業性を両立するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。

 

VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。

建築業界へのVR活用を進めるための4つのステップ

建築業界へのVR活用を進めるための4つのステップ

VR活用を進める上では、大きく4つのフェーズと以下の35ステップを抑える必要があります。

 

<Phase1:業界動向・知見のキャッチアップ>

  • VRの基礎知識
    • ①ユーザー・企業ができること/メリット
    • ②注目を集める背景・歴史
    • ③XRデバイス・Web3等の関連テクノロジー
    • ④今後の普及・発展への展望
  • 市場/ユーザー動向
    • ⑤ビックテックなどの戦略・取り組み
    • ⑥主要VRプラットフォーム
    • ⑦各業界における大手企業の取り組み
    • ⑧国内外のユーザーの動向
  • VR活用手法・先行事例
    • ⑨VR活用手法の全体像
    • ⑩自社と類似する業界における国内外の事例
    • ⑪自社が検討する活用手法の国内外の事例

  

<Phase2:戦略/企画の立案>

  • 自社が取り得る活用の方向性の洗い出し
    • ⑫ターゲットとする経営課題と活用目的の明確化
    • ⑬目的達成に向けた活用手法候補の幅出し
  • 目的達成に向けた活用の方向性の評価
    • ⑭自社の目的に合わせた評価軸の設定
    • ⑮評価軸に沿った活用の方向性の評価
  • VR戦略の立案
    • ⑯自社の強み・アセットの活かし方を検討
    • ⑰中長期で目指す姿と企画のコンセプトの立案
    • ⑱ビジネスモデルの設計
  • 詳細な先行事例ベンチマーク
    • ⑲企画コンセプトに類似する国内外の事例ベンチマーク
    • ⑳企画の立案・具体化に向けた示唆出し
  • 企画の立案・具体化
    • ㉑コアターゲット像と提供価値
    • ㉒ユーザー体験/コンテンツ案
    • ㉓活用チャネル/プラットフォーム案

  

<Phase3:事業計画の策定>

  • 事業計画の策定
    • ㉔期待する成果/主要KGI・KPIの設定
    • ㉕開発・運用アプローチ(活用ツール・ベンダー等)の設計
    • ㉖必要なリソース(コスト・人員等)の算出
  • ロードマップ策定
    • ㉗開発・運用のタイムラインの設定
    • ㉘主要マイルストーンの設定
    • ㉙想定されるリスクと対処方法の検討

  

<Phase4:開発・運用>

  • 開発
    • ㉚不足するケイパビリティやリソースの補完
    • ㉛要件定義・システムの基本設計
    • ㉜開発の実行
  • 運用
    • ㉝VRへの集客/マーケティング
    • ㉞運用・保守の実施
    • ㉟効果測定と運用方法の見直し

 

それぞれのフェーズとステップの詳細については以下の記事をご覧ください。

 

※関連記事:VRを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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