VRを活用した防災体験4選|3大メリットや成功のカギも解説

関連技術の進歩やMetaやAppleのデバイス発売などに伴い、多くの企業がVRの活用を進めています。

 

最近では、NTTや明治安田生命などの有名企業がVRを活用した防災体験を提供するという新たな試みに取り組んでいます。

 

そこで今回は、VRを活用した防災体験の事例4選を、メリットや活用方法、成功のポイントなどとともにわかりやすくご紹介します。

 

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • VRを活用した防災体験の実施を検討している
  • 他社によるVRを活用した防災体験の事例を押さえておきたい
  • VR活用を成功させるためのポイントを押さえておきたい

 

本記事を読めば、VRを活用した防災体験を進める上で押さえておきたい知識を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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そもそもVRとは?

そもそもVRとは? 三越伊勢丹
(画像:三越伊勢丹)

VRとはVirtual Realityの略称で、別名仮想現実とも呼ばれます。最先端の3DモデリングやVRデバイス、ゴーグル等の技術により、まるでその世界に入り込んでいるかのように感じられる、デジタル上の仮想空間を提供する技術のことを指します。

 

日本バーチャルリアリティ学会ではVRを「みかけや形は原物そのものではないが、本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」と定義しています。すなわち、VRは、現実世界そのものではないが、実質は現実世界とほとんど変わらないという意味です。

 

VRの定義についてはこの他にも色々な考え方がありますが、いずれにしても、本質的には現実とほとんど変わらないというところがポイントになります。

 

様々なユースケースの中でも特にゲームの使用を中心に利用が拡大しており、まるでゲームの世界に入り込んだかのような没入感・臨場感を感じながらプレイすることが出来ます。

 

また、最近ではゲームだけでなく、仮想現実に出店し商品を販売したり、仮想空間上で社員研修や教育を行ったり、建築のシミュレーションを行ったりするなど、様々な分野でVRが活用されています。

 

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VRを防災に活用する3つのメリット

VRを防災に活用する3つのメリット

VRの防災への活用のメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。

  

  • ➀災害に強い都市や建物の設計への活用
  • ②防災・避難情報の視認性の向上
  • ③防災訓練の臨場感・没入感の向上

 

それぞれのメリットをわかりやすく説明していきます。

 

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➀災害に強い都市や建物の設計への活用

近年、異常気象や大規模地震発生リスクの高まりなど、災害に強い都市づくりが注目を集めるなか、デジタルツインなどのVR空間上の3Dモデルを活用した都市・建物設計のシュミレーションへの活用が進んでいます。

 

従来、災害に強い都市や建物の計画・設計を検討する際に、現実世界での物理的な建物や模型を用いたシミュレーションが行われていましたが、それらを仮想空間上で行うことで、シミュレーションの精度向上やコスト削減や、従来行えなかった状況下でのシュミレーションが可能となりました。

 
この領域には政府も力を入れており、2020年度には、都市の3Dモデルを構築・活用し、まちづくりのDX化を推進するプロジェクト「Project  PLATEAU」が始動し、多くの民間企業を巻き込んだ実証実験が進められています。

②防災・避難情報の視認性の向上

東日本大震災での津波被害からも分かるように、災害が発生してから迅速に正しい非難行動を取れるかが生死を分けることも多く、普段から居住地や勤務地などでの災害時の避難経路などの情報を理解しておくのは非常に重要です。

 

一方で、従来政府が提供しているハザードマップなどの避難情報は2Dで提供されていることが多く、人々が地形と紐づけて理解しづらいという課題がありました。

 

そこで、都市の3Dモデルを活用した防災・避難情報を作成することで、視認性が高く、いざとなった時に行動に移しやすい情報を提供する取り組みが始まっています。
同様の取り組みはオフィスビル内での避難経路情報などにも活用が可能であり、今後は民間企業での活用も進んでいくと考えられています。

③防災訓練の臨場感・没入感の向上

災害発生時に備え、学校やマンション、オフィスなどで行われてきた避難訓練ですが、実際に火災や洪水などが発生している様子を現実世界で再現するのには限界があるという課題が存在します。

 

そこで、VR上災害の状況をリアルな3Dコンテンツで再現し、参加者のアバターを介した防災訓練に参加してもらうことで、より臨場感や没入感の高い防災訓練を実施しようという取り組みが始まっています。

 
VR上で実際の災害発生時に近い環境を経験することで、防災意識の向上や、災害発生時の適切な対処に繋がるのではと期待されています。

VRを活用した防災体験の事例4選

VRを活用した防災体験の事例4選

VRを活用した防災体験の事例として、主に以下の4つが挙げられます。

 

  • ①NTT:VR空間上で参加型の水害対策訓練を実施
  • ②明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化
  • ③静岡県:土砂災害の復旧にVRを活用
  • ④仙台市:VRによる体験型の防災学習サービスを提供

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①NTT:VR空間上で参加型の水害対策訓練を実施

NTT:VR空間上で参加型の水害対策訓練を実施
(画像:NTTコミュニケーションズ)

NTTコミュニケーションズは、東京理科大学と共同で、水害リスクの高い地域での防災・減災を実現するために、市民参加型の「デジタル防災訓練」を用いた実証実験を開始すると発表しました。
構築されたVR空間は、国が提供するオープンな都市空間データや独自のデータに基づいて店舗や看板などを3D CGでリアルに再現されたもので、市民はアバターとして水害発生前後の避難行動をシュミレーションし、その行動データをNTTが分析するとのこと。

 

これにより、避難行動の可視化、防災意識の向上、安全な避難のための対策検討などに役立てることができます。また、デジタルツインの構築における技術的な課題を明らかにする予定です。

 
同社は、本実証実験のデータをもとに、企業や行政機関へ防災・減災のための提言を行うとともに、企業や行政などの共創パートナーとともに新しいサービスを開発していきたいと考えているとのことです。

②明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化

明治安田生命:VRを活用し防災訓練をDX化
(画像:スペースリー)

明治安田生命は、VRクラウドソフトを提供するスペースリー社と共同で、VRコンテンツを活用した防災訓練を実施しました。

 
経緯としては、コロナ禍による行動制限下において、防災訓練を実施する手段としてVRの活用を検討したとのことです。

 
加えて、実施してみると従来の訓練よりも、リッチな情報を3D空間で理解できたり、ゲーミフィケーションを取り入れながら楽しんで訓練ができた、訓練の所要時間が半減できたなどと様々な効果が得られたとのことです。

③静岡県:土砂災害の復旧にVRを活用

静岡県:土砂災害の復旧にVRを活用
(画像:静岡県)

静岡県は、まちの3次元点群データをオープンデータ化し、災害復旧や自動運転、街づくりに役立てる「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル しずおか)」構想を推進しています。

 

防災へ具体的に活用されたケースとしては、2021年の静岡県熱海市で土砂災害の発生時に、災害発生前の山の斜面などのデジタルツインを再現し、災害発生後の現場の点群データの比較分析を行いました。結果として、どれくらいの土砂が流れたかを正確に把握し、原因分析することができ、復旧に向けた対策に役立てることができました。

④仙台市:VRによる体験型の防災学習サービスを提供

仙台市:VRによる体験型の防災学習サービスを提供
(画像:河北新報)

仙台市は、VRによる災害体験を通じた体験型の防災学習サービス「せんだい災害VR」を提供しています。地域や団体の防災研修会等に専門のスタッフを派遣し、VRを用いて地震や津波など各種災害を疑似的に体験させ、災害への備えや対処法を説明する取り組みです。

 

東日本大震災での経験を踏まえ、より多くの人にリアルな災害の状況を体験させることで、防災への意識を高める狙いがあります。

 

せんだい災害VRは、地域の学校や集会所、市民センターなどで利用され、市民の防災意識向上に役立てられています。

VRを活用した防災体験を成功に導く5つのポイント

VRを活用した防災体験を成功に導く5つのポイント

VRを活用した防災体験を成功に導くポイントとして以下の5つが挙げられます。

 

  • ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
  • ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
  • ③ユーザーファーストなUX設計
  • ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
  • ⑤強力な開発・運用体制の構築

 

それぞれについて分かりやすく紹介していきます。

 

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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ

1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。

デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。

 

VR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。

②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案

2つ目のポイントは、VRを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。

現在VR活用に取り組む企業には、VR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。

 

その結果、活用のPDCAが回らない、VR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。

 

自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜVRではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。

③ユーザーファーストな企画・UX設計

3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなVRの企画・UX設計です。

現在、多くの企業がVRに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなVRが多く存在します。それらのVRは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。

 

そのため、「VRならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。

④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進

4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。

VR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。

 

そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。

⑤強力な開発・運用体制の構築

5つ目のポイントは、強力なVR開発・運用体制の構築です。

高いユーザー体験と事業性を両立するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。

 

VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。

VRを活用を進めるための4つのステップ

VRを活用を進めるための4つのステップ

VRの活用を進めるためのステップとして、大きく以下の4つのステップが挙げられます。

 

  • Step1:市場動向・知見のキャッチアップ
  • Step2:戦略/企画の立案
  • Step3:事業計画の策定
  • Step4:開発・運用

 

それぞれのステップについて分かりやすく紹介していきます。

 

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Step1:市場動向・知見のキャッチアップ

1つ目のステップとして取り組むべきは、最先端の市場動向・知見のキャッチアップです。MetaやApple、Microsoftなどのビックテックやユーザーの動向・先行活用事例など、日々変化する市場動向やナレッジへのキャッチアップが必要です。

 

このステップが、成果に繋がる骨太な戦略/企画策定の基盤となります。

Step2:戦略/企画の立案

2つ目のステップはVR活用の戦略/企画です。活用目的を踏まえ、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方、実現に向けた企画を立案しましょう。

 

ユーザーバリューと自社の事業性の両方を満たす、質の高い戦略/企画の立案が、成果につながるVR活用の実現に向け最も重要なポイントとなります。

Step3:事業計画の策定

3つ目のステップは事業計画の策定です。事業に期待する成果や開発・運用のアプローチやタイムライン、必要な投資額などを検討しましょう。

 

VR開発・運用といっても、プロジェクト毎に求められるケイパビリティは様々であるため、自社にマッチするツール・ベンダーの選定が非常に重要です。

Step4:開発・運用

4つ目のステップが開発・運用です。VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを有効活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完しつつ、ユーザーに届けたい体験を実現するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。 

 

4つのステップで取り組むべき35のステップに関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。

 

※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ【担当者必見】

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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