VRの建築業界での活用事例4選|3つのメリットも紹介
関連技術の進歩やMetaやAppleのデバイス発売などに伴い、多くの企業がVRの活用を進めています。
最近では、VRと建築との相性の良さから、東急建設や大林組などの大手企業がVRの活用を始めています。
そこで今回は、建築業界へのVRの活用事例4選を、メリットや成功のポイントなどとともにわかりやすくご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- 建築業界へのVR活用を検討している
- 建築業界へのVRの活用事例を押さえておきたい
- VR活用を成功させるためのポイントを押さえておきたい
本記事を読めば、建築業界へのVR活用を進める上で押さえておきたい知識を、一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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VRを建築業界に活用する3つのメリット
VRの建築業界への活用の代表的なメリットとして、以下の3つが存在します。
- ➀3Dモデルにより完成イメージのギャップを解消
- ②建物の設計シュミレーションのコスト・環境負荷を削減
- ③完成イメージの3D化によりお客様への訴求力向上
それぞれのメリットをわかりやすく説明していきます。
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➀3Dモデルにより完成イメージのギャップを解消
設計時に建物の完成形のイメージをすり合わせる際に、従来の2Dの図面等を用いたアプローチだと、設計時には設計者・施工者・発注者がイメージする建物の完成形がそれぞれ異なっている場合もあり、手戻りの工数発生やトラブルへの発展など様々な問題に繋がっていました。
そこで、建物の設計時に、VR空間上で建物の完成形の3Dモデルを製作することで、建物の細かい設計まで視覚的に確認することができるため、設計者・施工者・発注者の認識のギャップ解消に繋げられるというメリットがあります。
②建物の設計シュミレーションのコスト・環境負荷を削減
設計のシュミレーションをする際に、従来のアプローチだと、実寸大ないしは縮小版の模型を制作し、理想とする建物が建築できそうかを検証するのですが、シュミレーションを行うためには何度も模型を組み替える必要があり、そのために多くの工数やコストが発生していました。また、そのシュミレーションを行うには当然多くの資材が使用されるため環境負荷にも繋がってしまうという問題がありました。
そこで、設計のシュミレーションをVR空間上で行うことで、工数やコストの削減はもちろん、現実の資材を使用することもないので環境負荷を抑えることが可能です。
③完成イメージの3D化によりお客様への訴求力向上
施工・完成前の戸建てやマンションを販売する際に、従来のアプローチだと2Dの設計図を用いた紹介、または完成形のイメージを2Dの形で確認するというのが主流でした。
実際に完成している建物の販売と比べると、お客様が建物の魅力を感じ、安心して購買していただくハードルは非常に高いものとなっていました。
そこで、VR技術を活用することで、建物の完成時のイメージを3Dで可視化しながら販売をすることが可能になります。
この取り組みにより、完成前の建物の販売における訴求力や成約率の向上への貢献が期待できます。
VRの建築業界での活用事例4選
VRの建築業界での活用事例として、以下の4つが挙げられます。
- ①東急建設:建物の完成イメージの共有に活用
- ②ラストマイルワークス:建築に特化したメタバース空間を提供
- ③奥村組:メタバース上で設計・施工のシュミレーション
- ④鹿島建設:建築の全フェーズでデジタルツインを実現
それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。
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①東急建設:建物の完成イメージの共有に活用
東急建設は、設計者や現場の作業員、また外部の発注者など様々な関係者が共通の建物の完成イメージを持つことで、施工の品質や効率を高めるためにHololensの活用を進めています。本取り組みには、Hololens上でAzure Remote Renderingという、3Dモデルをクラウド上でレンダリングし、それをストリーミングすることで、リアルタイムにHoloLensのデバイスに表示できるサービスが活用されています。
この活用により、発注者、設計者、施工者間での認識のズレを防ぐことができ、施工品質の向上や無駄な手戻りの削減による業務効率化を実現することができます。
②ラストマイルワークス:建築に特化したVR空間を提供
2022年1月に、創業以来建築CGやVRコンテンツの制作を行ってきた企業であるラストマイルワークスは建築に特化したメタバース空間である「comony」の提供を開始しました。
conomyのVR空間は、自分自身で閲覧できる建築のポートフォリオとしての活用だけでなく、世界中から招待されたゲストとのコミュニケーションにも利用できます。また、仮想空間上に建てられた世界の有名建築物や、ここでしか見ることのできない未完成建築作品をを24時間365日、見学することができます。
同社は、建築CGやVRコンテンツを制作する中で、3Dの空間情報を正確に伝えることの難しさを痛感してきました。従来の2Dでの図面を介したコミュニケーションでは、完成イメージの共有が不十分であり、設計時と施工時の認識のギャップが多く存在しました。
そこで、デザインプロセス全体により高い精度と正確性を持たせるためのソリューションとしてconomyを企画・開発しました。conomyは3DのVR空間を通じて、作り手と受け手の円滑なコミュニケーションを実現しています。
今後はconomyを盛り上げてくれる建築クリエイターの募集のため、個展や建築コンペ/イベント等を開催予定とのことです。
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③奥村組:VR空間上で設計・施工のシュミレーション
2021年12月に奥村組はVR空間上でのシュミレーションにより設計・施工の工数削減を目指すため、独自のVR空間である「メタバース技術研究所」の構築を発表しました。
メタバース技術研究所の構築にはSynemon社のVR構築サービス「NEUTRANS」が活用されました。
従来は建築用のモックアップを作るのは当たり前のことでしたが、原寸大で製作する場合、多くの産業廃棄物を発生させることになります。また、縮小版で制作する場合も、手戻りが発生した際に膨大な工数が発生するという問題がありました。
そこで、同社の技術研究所内にある実験棟をVR空間化することで、設計や施工の細部の精度を高め、室内環境の際現に必要な施工にかかる工数を削減することができます。
メタバース技術研究所では、4種類の日射条件が室内環境の快適性や省エネルギーに与える影響を検証することができます。仮想空間上で工事関係者の合意形成を行い、実験結果をもとに実際の増改築工事を進めることで、手戻りを減らすことが期待できます。
また、同社はメタバース技術研究所の取り組みによりSDGs(持続可能な開発目標)を推進するとしています。その理由は、現実の素材を一切使用しないことにあります。
実空間での実験では、さまざまな条件を設定するためにアルミサッシやアルミルーバーを実物大のモックアップとして作りますが、実験後は産業廃棄物と化してしまうという問題点があります。
④鹿島建設:建築の全フェーズでデジタルツインを実現
鹿島建設はオービック御堂筋ビルの新築工事において、プロジェクトの全フェーズにおいてBIMによるデジタルツインを活用することで、プロジェクトの各フェーズにおける建物データの連携・共有を可能にしました。
企画・設計フェーズでは周辺環境へのビル風のシュミレーション、建物内のシュミレーションに、施工フェーズでは工事プロセスのデジタル化と進捗管理、MRの活用による、実際の施工状況の確認に、維持管理フェーズでは、ファシリティマネジメントのデータへの連携、日常の点検から得られた情報を収集し、その後の建築の企画・開発への活用になど、多岐にわたるユースケースでデジタルツインを活用しました。
デジタルツインを活用することで、建物自体の高品質化はもちろん、企画・設計から竣工後の管理・運営までの一連の建物にまつわる情報をデジタル化し、お客様に提供することが建物の更なる価値向上に繋がると考えているとのことです。
建築へのVR活用を成功に導く5つのポイント
建築へのVR活用を成功に導くポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
- ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
- ③ユーザーファーストなUX設計
- ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
- ⑤強力な開発・運用体制の構築
それぞれについて分かりやすく紹介していきます。
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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。
デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。
VR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。
②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案
2つ目のポイントは、VRを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。
現在VR活用に取り組む企業には、VR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。
その結果、活用のPDCAが回らない、VR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。
自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜVRではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。
③ユーザーファーストな企画・UX設計
3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなVRの企画・UX設計です。
現在、多くの企業がVRに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなVRが多く存在します。それらのVRは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。
そのため、「VRならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。
④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。
VR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。
そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。
⑤強力な開発・運用体制の構築
5つ目のポイントは、強力なVR開発・運用体制の構築です。
高いユーザー体験と事業性を両立するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。
企業がVRを活用するための4つのステップ
企業がVRを活用するためのステップとして、大きく以下の4つのステップが挙げられます。
- Step1:市場動向・知見のキャッチアップ
- Step2:戦略/企画の立案
- Step3:事業計画の策定
- Step4:開発・運用
それぞれのステップについて分かりやすく紹介していきます。
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Step1:市場動向・知見のキャッチアップ
1つ目のステップとして取り組むべきは、最先端の市場動向・知見のキャッチアップです。MetaやApple、Microsoftなどのビックテックやユーザーの動向・先行活用事例など、日々変化する市場動向やナレッジへのキャッチアップが必要です。
このステップが、成果に繋がる骨太な戦略/企画策定の基盤となります。
Step2:戦略/企画の立案
2つ目のステップはVR活用の戦略/企画です。活用目的を踏まえ、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方、実現に向けた企画を立案しましょう。
ユーザーバリューと自社の事業性の両方を満たす、質の高い戦略/企画の立案が、成果につながるVR活用の実現に向け最も重要なポイントとなります。
Step3:事業計画の策定
3つ目のステップは事業計画の策定です。事業に期待する成果や開発・運用のアプローチやタイムライン、必要な投資額などを検討しましょう。
VR開発・運用といっても、プロジェクト毎に求められるケイパビリティは様々であるため、自社にマッチするツール・ベンダーの選定が非常に重要です。
Step4:開発・運用
4つ目のステップが開発・運用です。VR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを有効活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完しつつ、ユーザーに届けたい体験を実現するVRの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
4つのステップで取り組むべき35のステップに関しては、以下の関連記事で詳しく解説しています。
※関連記事:メタバースを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ【担当者必見】
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