まちづくりへのAR活用事例5選|6大メリットも紹介
MetaのXRヘッドセットのQuestシリーズが累計販売台数2,000万台を突破し、Appleも初のXRデバイスの発売を発表するなど、近年ARの注目はより一層高まっています。
そんなARですが、近年は、代表的な利用用途であるゲームやSNSとしての利用に留まらず、まちづくり領域へのARの活用が進んでいるのをご存知でしょうか?
そこで今回は、まちづくり領域にARを活用する6つのメリットを最新事例12選とともにご紹介します。
本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。
- まちづくり領域へのARの活用を検討している
- まちづくり領域にAR活用するメリットを知りたい
- まちづくり領域にARを活用している先端事例を抑えておきたい
本記事さえ読めば、まちづくり領域にARを活用するために抑えておくべき情報を一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
そもそもARとは?
ARとはAugumeted Realityの略称で、拡張現実とも呼ばれます。リアルの世界にデジタルの情報/コンテンツを視覚的に重ね合わせることで、リアルの世界を拡張する技術のことを指します。ARには、ゴーグルを装着せずに、スマートフォンやタブレットの画面にデジタルの情報/コンテンツを表示させるものも含みます。
ARを活用することで、「Pokemon Go」のように、リアルの街にポケモンが存在するかのようなゲームを楽しんだり、「GoogleMap」のARナビのように、リアルの街に道順を示す矢印などの情報が表示され、スムーズに目的地にたどり着くことができたりと、私たちの暮らしをより豊かに・便利にすることができます。
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まちづくりへARを活用する6つのメリット
まちづくりへARを活用するメリットとして以下の6つが挙げられます。
- ①まち全体の設計の質向上
- ②防災機能の強化
- ③建設の質・効率の向上
- ④バーチャル内見による居住者の増加
- ⑤新たな体験提供によるまちの魅力向上
- ⑥遠隔地の人々へのPR力向上
それぞれのメリットについて分かりやすく紹介していきます。
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①まち全体の設計の質向上
1つ目のメリットは、ARやデジタルツインを活用した高度なシミュレーションによる、まち全体の設計の質の向上です。
AR・デジタルツインを活用することで、バーチャル空間上に建設予定のまちの様子をほぼ実物同然に再現することができます。そのモデルに、リアルの世界のIoTなどで収集された、物流・人流・車両データなどを取り込むことで、どのような設計が、最も人々が快適かつ効率的に生活できるかを、高度にシミュレーションすることが可能です。
②防災機能の強化
2つ目のメリットは、ARやデジタルツインを活用した高度なシミュレーションや、ARを活用した防災訓練により、まちの防災機能を強化することができます。
1つ目のメリット同様、ARやデジタルツインを活用したモデル上で、大雨や地震の際の災害の建物や人流に与える影響を、高精度でシミュレーションすることで、あらかじめ災害に強いまちの設計が可能です。
また、ARを活用した臨場感のある防災訓練を住民に対し実施することで、住民が災害発生時に適切な対処を行い、災害の被害を最小限に留めることも可能となります。
③建設の質・効率の向上
3つ目のメリットは、建物の建設のシミュレーションや作業現場のサポートにARを活用することによる、建物の質や効率の向上です。
AR・デジタルツインを活用した高度なシミュレーションにより、建物の設計や施工方法を最適化することができます。
また、現場の作業員に対し、XRデバイスを使用してもらうことで、3Dのデジタルガイダンスを行い、従来の2Dの図面等での作業指示よりも正確かつ効率的な施工を実現できます。
④バーチャル内見による居住者の増加
4つ目のメリットは、AR上に再現した住居を内見してもらう、”バーチャル内見”による居住者の増加です。
まちづくりを進め、居住者を募集する際に、バーチャル内見を導入することで、遠隔地の人々に手軽に内見をしてもらい、住居の魅力を訴求することができます。
⑤新たな体験提供によるまちの魅力の向上
5つ目のメリットは、AR/XRを活用した新たな体験提供による、まちの魅力向上です。まちを訪れた人々がスマホやグラス型デバイスを使用し、まちを巡ってもらうことで、リアルの街にバーチャルコンテンツが重なり、従来では実現し得なかったような新たなエンタメ体験を提供することができます。
⑥遠隔地の人々へのPR力向上
6つ目のメリットは、AR上での遠隔地の人々へのPR力向上です。AR上にまちを再現したり、まちの魅力が伝わるブースを開設したりすることで、普段はまちになじみのない遠隔地の人々に対し、魅力をPRすることが可能です。
まちの人々とのインタラクティブなコミュニケーションやゲーム要素を取り入れた設計などにより、従来のwebマーケティングと比べ、強力にまちの魅力を訴求することができます。
まちづくりへのARの活用事例5選
まちづくりへのARの活用事例として、代表的なものとして以下の5事例が挙げられます
- ①奈良県下北山村:人気IPとのコラボで人口の20倍のインプレッション獲得
- ②NTT西日本:ARを活用して京橋駅周辺の街中全体をミュージアム化
- ③MESON:ARを活用してユーザーが都市づくりを体験
- ④東急住宅リース:内見にARを活用し顧客への訴求力向上
- ⑤国交省:都市づくりのDXを推進
それぞれについて、わかりやすく紹介します。
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①奈良県下北山村:人気IPとのコラボで人口の20倍のインプレッション獲得
奈良県下北山村は、凸版印刷社の「まちなかAR」を活用して、人気IPとコラボすることで新たな観光資源を開発しまちづくりに活かしています。まちなかARとは、交通、観光、ゲームなどの情報をスマホでチェックできるARアプリケーションを開発・提供するサービスです。
従来の課題は、国内最大の総貯水容量を持つダムや、豊富な自然などポテンシャルある観光資源を活用できていないことでした。そこで「まちなかAR」を活用し、人気IPコンテンツの『貞子』とコラボすることにより高さ110mのダムに現れる巨大貞子や、貞子とARフィルターで記念撮影できるスポットを複数設け、観光振興を図りました。
地元のTV番組に取り上げられたほか、X(旧Twitter)でのインプレッション数は1.6万を超え、人口815人の村の行った施策としては大成功となっています。
②NTT西日本:ARを活用して京橋駅周辺の街中全体をミュージアム化
NTT西日本は、ビーブリッジ社、京阪電鉄と共同でまちおこしの取り組みとして大阪府の京橋駅周辺をAR技術を活用してミュージアム化しました。
ユーザーは自身のスマートフォンから、「coconey」アプリを起動し、特定の3か所のエリアでスマホをかざすことで、AR化されたアートを鑑賞することができます。AR化されたコンテンツは、人気アニメ「ルパン三世&キャッツ・アイ」「週末のワルキューレ」、漫画「北斗の拳」関連の作品や、一般公募によるアート作品、伊藤園社の自動販売機と連動した動画コンテンツなど70点以上です。
NTT西日本はこの取り組みを通じて、ユーザーに新しい体験を、クリエイターに新たな創作展示の場を、まちには「賑わい・人流創出」を、事業者には「新たな広告媒体化(広告ビジネス)」の新たな可能性を提案するとのことです。
③MESON:ARを活用してユーザーが都市づくりを体験
MESONは、ユーザーが街づくりを体験できる「AR City」を神戸市のイベントで展示しました。ユーザーは、タブレットを通じて未来の神戸市を他のユーザーと共同で制作することが可能です。
これまで街づくりは自治体やデベロッパー主体で行われ、市民が参加する事は困難でしたが、AR Cityにより市民も街づくりに参加しやすくなり、より身近に感じてもらえたとのことです。
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④東急住宅リース:内見にARを活用し顧客への訴求力向上
東急住宅リースは、同社が管理する賃貸マンションにおいて、ARを活用した内見サービス「AR内見」の実証実験を開始しました。同社では、内見客に本サービスを利用してもらい、成約が増えれば本格的な導入に踏み切る考えです。x garden社のメガネ型デバイス「AR glasses」を使い、家具などのバーチャル映像を内見する部屋に重ね合わせることで、家具のレイアウトや入居後の生活スタイルがイメージしやすくなります。
将来的にメタバースの活用が進むと、物件を探す顧客は、まずはARでのオンライン内見で内見の候補を絞込み、実際に物件を訪れた際は上記のようなAR内見により、生活スタイルをイメージできる内見を行うといった流れで物件を決定するよになるかもしれません。
⑤国交省:都市づくりのDXを推進
2020年度より国土交通省は、「ProjectPLATEAU」で都市づくりのDXを推進しています。日本全国の都市で3D都市モデルを構築し、オープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市データにアクセスし、防災やまちづくり、AR/ARなどさまざまな用途に活用できるようになります。
都市の3Dモデルは、都市計画・開発の様々な場面で利用することができます。例えば、交通の流れやバス停の混み具合、駐車場の空き状況、建物や公共施設に必要なスペースの把握、交通システムから排出されるCO2の量、自然災害の評価など、都市空間が持つさまざまなデータ・機能・特徴を把握することができるのです。
2021年には全国都市の3D都市モデルの整備が完了し、そのモデルを様々な地方公共団体や民間企業が活用し、数多くの未来のまちづくりにむけた実証実験が行われています。
ARのまちづくりへの活用を成功させるための5つのポイント
ARのまちづくりへの活用を成功させるためのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
- ②活用目的の明確化と骨太な戦略策定
- ③ユーザーファーストなUX設計
- ④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
- ⑤強力な開発・運用体制の構築
それぞれについて分かりやすく紹介していきます。
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①最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップ
1つ目のポイントは、最先端の市場動向・ノウハウのキャッチアップです。
デバイスの進化やユーザーの動き、各領域の先進事例をキャッチアップし、自社が取り組むべき活用方法や成果に繋がる活用のポイントを抑えた上で活用に着手しましょう。
AR活用には取り組むのに一定の予算や工数が必要となるため、自社にとって重要な最新動向や活用のノウハウを抑えておくことが、成功確度の高い戦略・企画立案の大前提となります。
②活用目的の明確化と骨太な戦略の立案
2つ目のポイントは、ARを活用する目的の明確化と骨太な戦略の策定です。
現在AR活用に取り組む企業には、AR活用の取り組みが単発で終わってしまっている企業が見受けられます。
その結果、活用のPDCAが回らない、AR活用が小粒な施策の1つに留まってしまうなど大きな収益機会の獲得に繋がらないという結果に終わってしまいます。
自社の経営課題を踏まえ、「活用によりどのような経営課題を解決したいのか?」「課題解決の打ち手としてなぜARではないといけないのか?」といった明確な活用目的を整理した上で、中長期で目指す事業の姿や自社の強みの活用の仕方などの実現に向けた戦略を立案しましょう。
③ユーザーファーストな企画・UX設計
3つ目のポイントは、自社のターゲットにとってユーザーファーストなARの企画・UX設計です。
現在、多くの企業がARに参入を進めていますが、そのなかには、企業側の都合のみでサービス・体験が設計されたようなARが多く存在します。それらのARは、ユーザーに利用されず、企業の活用の目的を達成できない結果に終わってしまいます。
そのため、「ARならではの高い体験価値を届けられているか」や「ユーザーの利用にあたっての手間や負担が大きくないか」といった観点を踏まえたUX設計が重要です。
④アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進
4つ目のポイントは、アジャイルアプローチによるプロジェクトの推進です。
AR市場は今後大きな成長が予想されているものの、いまだ成長期にあり、様々な業界の企業が中長期的な収益最大化に向け、最適な活用を模索している段階にあります。
そのため、計画と実行のプロセスを短いスパンで回し、仮説立案・実行・検証・施策立案のサイクルを何度も繰り返すことが、プロジェクトを机上の空論で終わらせないために重要です。
⑤強力な開発・運用体制の構築
5つ目のポイントは、強力なAR開発・運用体制の構築です。
高いユーザー体験と事業性を両立するARの開発とマーケティングを含めた運用を実施しましょう。
AR開発・運用には幅広い領域の知見や技術スタックが求められるため、外部のベンダーなどを活用し、不足するケイパビリティやリソースを補完することも有効です。
AR活用を進めるための4ステップ
AR活用を進める上では、大きく4つのフェーズと以下の35ステップを抑える必要があります。
- Phase1:業界動向・知見のキャッチアップ
- ARの基礎知識
- ①ユーザー・企業ができること/メリット
- ②注目を集める背景・歴史
- ③XRデバイス・Web3等の関連テクノロジー
- ④今後の普及・発展への展望
- 市場/ユーザー動向
- ⑤ビックテックなどの戦略・取り組み
- ⑥主要ARプラットフォーム
- ⑦各業界における大手企業の取り組み
- ⑧国内外のユーザーの動向
- AR活用手法・先行事例
- ⑨AR活用手法の全体像
- ⑩自社と類似する業界における国内外の事例
- ⑪自社が検討する活用手法の国内外の事例
- ARの基礎知識
- Phase2:戦略/企画の立案
- 自社が取り得る活用の方向性の洗い出し
- ⑫ターゲットとする経営課題と活用目的の明確化
- ⑬目的達成に向けた活用手法候補の幅出し
- 目的達成に向けた活用の方向性の評価
- ⑭自社の目的に合わせた評価軸の設定
- ⑮評価軸に沿った活用の方向性の評価
- AR戦略の立案
- ⑯自社の強み・アセットの活かし方を検討
- ⑰中長期で目指す姿と企画のコンセプトの立案
- ⑱ビジネスモデルの設計
- 詳細な先行事例ベンチマーク
- ⑲企画コンセプトに類似する国内外の事例ベンチマーク
- ⑳企画の立案・具体化に向けた示唆出し
- 企画の立案・具体化
- ㉑コアターゲット像と提供価値
- ㉒ユーザー体験/コンテンツ案
- ㉓活用チャネル/プラットフォーム案
- 自社が取り得る活用の方向性の洗い出し
- Phase3:事業計画の策定
- 事業計画の策定
- ㉔期待する成果/主要KGI・KPIの設定
- ㉕開発・運用アプローチ(活用ツール・ベンダー等)の設計
- ㉖必要なリソース(コスト・人員等)の算出
- ロードマップ策定
- ㉗開発・運用のタイムラインの設定
- ㉘主要マイルストーンの設定
- ㉙想定されるリスクと対処方法の検討
- 事業計画の策定
- Phase4:開発・運用
- 開発
- ㉚不足するケイパビリティやリソースの補完
- ㉛要件定義・システムの基本設計
- ㉜開発の実行
- 運用
- ㉝ARへの集客/マーケティング
- ㉞運用・保守の実施
- ㉟効果測定と運用方法の見直し
- 開発
それぞれのフェーズとステップの詳細については以下の記事をご覧ください。
※関連記事:ARを活用した事業を作る方法|全4フェーズと35ステップ
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