【事例あり】メタバース・ハラスメントとは?企業の責任や対策も解説

関連技術の発達やコロナによるリモートコミュニケーションの普及により近年大きな注目を集めるようになったメタバース。

一方で、メタバースにおいても、現実世界と同様にセクハラ・パワハラなどのハラスメントの問題が話題になっており、「メタバース・ハラスメント」という言葉も生まれています。

 

そこで今回は、メタバース・ハラスメントとは何かについて、企業の責任や対策とともに分かりやすくご紹介します。

本記事は、以下のような方におすすめの記事となっています。

 

  • メタバースのビジネス活用を検討しているが、ハラスメントの問題が気になっている
  • メタバースにおけるハラスメントの実態が知りたい
  • メタバース・ハラスメントに対して企業が負う責任や対策をおさえておきたい

 

本記事を読めば、メタバース・ハラスメントの実態から企業の責任と対策まで一気にキャッチアップできる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。


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メタバース・ハラスメントとは

メタバース空間上のアバターに対して行われるハラスメントやいじめ、暴力行為のことです。メタバースの普及につれ、メタバース空間上でも、現実世界と同様のハラスメント行為が問題となっています。

 

VRゴーグルを装着して仮想空間に入り込むと、現実と仮想空間の境界がぼやけ、ハラスメントの被害を物理的な経験として感じやすく、影響が現実世界と同様に大きくなる可能性があります。

 

2022年に行われたバーチャルYoutuberの「バーチャル美少女ねむ」による調査では、メタバースユーザーの半数がメタバース・ハラスメントを経験していることが明らかとなり、中でも性的なハラスメントが最も多いと報告されています。

メタバース・ハラスメントの種類と企業の責任

想定されるメタバース・ハラスメントの種類

メタバース空間においても、セクハラやパワハラなど現実世界と同様のハラスメント行為が、アバターを通じて発生します。

 

例えば、メタバース上の店舗の店員(アバター)が、その店舗を訪れた客(アバター)からボディタッチをされたり、性的な言葉を浴びせられたりするケースが想定されます。

 

メタバースでは、相手の名前や姿が見えにくいことから、ハラスメントを行う側が安易に行動できてしまうという特徴があるため、より一層の注意が必要となります。

メタバース・ハラスメントに対する企業の責任

メタバースのプラットフォームを提供する企業は、あくまでメタバース空間という場を提供することにとどまるため、メタバース・ハラスメントが発生したとしても直ちに何らかの法的責任を負うことはないと考えられます。

 

しかし、プラットフォーム上で、ハラスメントが横行している場合、そのメタバース空間に対する信頼性、健全性が損なわれ、ユーザーが減少する事態にもつながり得るため、企業としては、メタバース・ハラスメントを防止する対策を立てることが極めて重要になります。

 

また、メタバース空間において、セクハラ・パワハラが頻発しているなどの事態が生じていたにもかかわらず、プラットフォームを提供する企業がこれをずっと放置していた場合には、プラットフォームを提供する企業として何らかの対策・注意喚起を行う義務に違反したと判断され、損害賠償等の責任を負う可能性はあると考えられます。

データで見るメタバース・ハラスメントの実態

データで見るメタバース・ハラスメントの実態
(画像:Nem×Mila)

2022年9月、バーチャルYoutuberの「バーチャル美少女ねむ」が中心となり、メタバースにおけるハラスメントの実態を明らかにするためのアンケート調査が行われました。

以下では、本調査の概要や結果を以下の項目ごとにわかりやすく紹介していきます。

 

  • ①調査の概要
  • ②メタバース・ハラスメントの経験率
  • ③メタバース・ハラスメントがユーザーの生活にもたらした影響
  • ④ユーザーによるハラスメントへの対処法
  • ⑤ユーザーからプラットフォーム提供者への要望

 

参照:Harassment in Metaverse メタバースでのハラスメント

①調査の概要

本調査は、VRヘッドマウントディスプレイを用いてメタバースを直近1年以内に5回以上使ったユーザーを対象としたネット上でのアンケート形式で行われました。

 

この調査は、メタバース上でのハラスメント経験の有無や種類、プラットフォーム提供者への要望など、ハラスメントに関する様々な質問を通じてメタバース上でのハラスメントの実態を明らかにすることを目的としたもので、調査の結果、世界各国から合計876件の回答が得られました。

②メタバース・ハラスメントの経験率

メタバース・ハラスメントの経験率

メタバース上で何らかのハラスメントを受けたことがあるかという質問に対し、全世界で約57.8%の人が「はい」と回答し、他人が何らかのハラスメントを受けたのを見たことがあるかという質問に対しては、約69%の人が「はい」と回答しました。

 

このように、メタバース・ハラスメントの経験率・目撃率は高く、メタバースプラットフォームを提供する企業としては、決して無視することができない問題といえます。

③メタバース・ハラスメントがユーザーの生活にもたらした影響

メタバース・ハラスメントが、ユーザーの生活にどのような影響を及ぼしたかを調査したところ、日本では、39%のユーザーが「プレイ時間や頻度が下がった」と回答しました。

 

また、このハラスメントが自身の現実世界にも影響を及ぼしたと回答した日本人は、軽い影響から重度な影響を合わせて40%以上に達しました。

 

このように、メタバース・ハラスメントの横行は、ユーザーの減少につながるおそれがあるため、プラットフォームを提供する企業としては、自社プラットフォームのユーザー数を維持するためにもメタバース・ハラスメントを予防し、実際にハラスメントが起こった後に適切に対処する仕組みを構築ことが重要です。

④ユーザーによるハラスメントへの対処法

ユーザーがメタバース・ハラスメントに対してどのように対処しているかを尋ねたところ、「ブロックする」または「ログアウトしたり別のワールドへ移動して逃げる」と回答した人が最も多く、約60%でした。その他の対処法としては、管理者に報告する、アバターを非表示にするなどの回答がありました。

 

このことから、ユーザーはメタバースハラスメントに対して立ち向かうより、そのプラットフォームから離脱するという選択を行う傾向が強いことがわかります。そのため、管理者側が通報によって把握できるよりも多くのハラスメントが実際には発生している可能性があります。

⑤ユーザーからプラットフォーム提供者への要望

メタバース・ハラスメントに対して、プラットフォーム提供者に対して具体的にどのような要望があるかを調査したところ、以下のような回答がありました。

 

  • あるユーザーがブロックしたユーザーを、自身の画面上でも非表示にするシステムの構築など、ユーザーが柔軟に自己防衛できる仕組みをつくってほしい
  • 繰り返しハラスメントを行う悪意のあるユーザーをブロックする仕組みをつくってほしい
  • 過度に自由を妨げ、VR体験をつまらなくするようなルールは追加しないでほしい
  • 窓口サポートを強化してほしい
  • コンテンツのフィルタリング機能を強化してほしい

 

メタバースプラットフォームを提供する企業にとって、ユーザーによる生の声は、今後のメタバースプラットフォームの安全かつ健全な運用に当たって大いに参考になると考えられます。

企業がメタバース・ハラスメントを防ぐためにとるべき対策3選

企業がメタバース・ハラスメントを防ぐためにとるべき対策3選

企業がメタバース・ハラスメントを防ぐためにとるべき対策は以下の通りです。

 

  • ①ユーザー向けの利用規約/ガイドラインの作成・周知徹底
  • ②ハラスメント防止機能の導入
  • ③ハラスメント被害者のための相談窓口の設置

 

それぞれの対策についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①ユーザー向けの利用規約/ガイドラインの作成・周知徹底

1つ目の対策は、ユーザー向けの利用ルール/ガイドラインの作成及び周知徹底です。

 

メタバースのプラットフォームを提供する企業としては、メタバース上でのハラスメントが禁止されるものであること、ハラスメント行為の程度がはなはだしい場合にはアカウントの停止措置等を講じることなどの注意事項を利用規約やガイドラインに記載しておくことで、ユーザーに対し、注意喚起をすることが重要です。

 

また、利用ルールやガイドラインを策定したとしても、これらをしっかりと読まずにサービスの利用を開始するユーザーも多いと考えられます。

 

そのため、単に利用規約やガイドラインに定めるだけでなく、ユーザーがいつも目にする画面にも注意書きを表示する、チュートリアルに説明を追加するなどして、ハラスメントへの注意をユーザーに確実に認識させることが重要です。

②ハラスメント防止機能の導入

ハラスメント防止機能の導入 Meta
(画像:Meta)

2つ目の対策は、ハラスメント防止機能の導入です。

ハラスメント行為を行ったユーザーをブロックしたり通報したりすることができる機能や、モデレーターやAIがハラスメント的な言動を監視する機能を備えておくことは、ハラスメント行為をなくす上で効果が高いと考えられます。

 

また、Meta社のメタバース事業部門であるReality Labsは、VRプラットフォームの「Horizon Worlds」や「Horizon Venues」に個人境界線(パーソナルバウンダリー)を導入しました。個人境界線とは、メタバース空間内でアバター同士が設定した距離内に近づくことを防ぎ、望まない交流を避けられるようにする機能です。メタバース空間上でのハラスメントへの有効な自己防衛機能といえます。

③ハラスメント被害者のための相談窓口の設置

3つ目の対策は、ハラスメント被害者のための相談窓口の設置です。

実際にハラスメント被害に遭った、あるいはハラスメントを目撃したユーザーがいつでも相談できる窓口を用意しておくことは、ユーザーがメタバースサービスを安全かつ安心して利用するために欠かせないものです。

 

また、メタバースには全世界からユーザーが参加することが想定されるため、なるべく多くの言語に対応可能な窓口を備えておくことも重要です。

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このナレッジの著者

メタバース総研 代表取締役社長

今泉 響介

株式会社メタバース総研(現・CREX)代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。学生起業した事業を売却後、日本企業の海外展開/マーケティングを支援する株式会社Rec Loc を創業・社長就任を経て、現職に。メタバースのビジネス活用に特化した国内最大級の読者数を誇るメディア「メタバース総研」の運営やメタバースに関するコンサルティング及び開発サービスの提供を行っている。著書に『はじめてのメタバースビジネス活用図鑑』(中央経済社)

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