DX人材に必要な3つのスキルと6つの適性|育成と獲得の方法も紹介
DXを成功に導くための人材は、単にITやデジタル技術に詳しいだけでなく、プロジェクトを推進するリーダーシップやマネジメント力、他部署とうまく連携するコミュニケーションスキルなど、様々な能力が問われます。
経済産業省や情報処理推進機構(IPA)は、DX人材が備えておくべきスキルや適性について参考になる指針を公表しています。これを参考にしながら、適切な方法で育成・採用を進めることで、成果に繋がるDX人材を獲得できるようになるでしょう。
本記事では、優秀なDX人材を求めている担当者の方に向けて、DX人材に必要な3つのスキルと6つの適性、育成・採用のポイントなどとともにわかりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
DX人材とは?
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。そして、DX人材とは、DXを推進するために必要となるスキルを持った人材全般を意味します。
DX人材というと、ITツールに詳しいエンジニアを想起する方も多いかもしれません。しかし、DXを推進するためには、プロジェクトを推進するマネージャーや、データ分析により効果を検証するデータサイエンティストなど、様々なタイプの人材が必要となり、これらの人材もDX人材に含まれます。
特に、全社的なDXを推進する場合、最新のテクノロジーを使いこなせるエンジニアはもちろん、ビジネス戦略とデジタル活用の両方に知見をもつリーダーが各部門に必要となります。
※DX人材を確保する際に必ず押さえておきたい、DXの基礎知識から進め方、ポイントまでをまとめた資料をダウンロード頂けます。
⇒【ゼロから分かる】DX推進まるわかりガイドブックの資料ダウンロードはこちら(無料)
DX人材に必要な3つのスキル

DX人材に求められるスキルとして、主に以下の3つが挙げられます。
- ①デジタルスキル
- ②プロジェクトマネジメントスキル
- ③コミュニケーションスキル
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
※DX人材の育成事例も含む、企業による最新のDX成功事例50選の取り組みや成果をまとめた資料をダウンロード頂けます。
①デジタルスキル
DXにより業務プロセスの変革や新規サービスを創出するためには、デジタル技術を上手に活用する必要があります。そのためには、ITツールやシステムを使いこなすデジタルスキルが必要不可欠です。
社内にこのような人材がいない場合には、外部のコンサル会社やエンジニアに相談することも考えられます。
②プロジェクトマネジメントスキル
DXを推進するためには、プロジェクトを実行するためのマネジメントスキルが欠かせません。
DXプロジェクトのマネージャーは、DX推進のためのスケジュール策定、チーム体制の構築、進捗管理、関係各部署との連携など、プロジェクト全体を俯瞰して、計画通りにプロジェクトが進んでいるかを管理する責任があります。
③コミュニケーションスキル
DXは、既存のビジネスモデルの変革や業務プロセスの刷新を伴う全社的な取り組みです。そのため、複数の部署が連携してプロジェクトを進めていく必要があります。
したがって、DXを推進するためには、関係各部署と密に連携し、協力関係を築いていくコミュニケーションスキルが重要となります。
優秀なDX人材が持っている6つの適性

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2020年5月に公表した「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」では、DX人材が備えておくべき6つの特性について規定しています。
- ①不確実な未来への創造力
- ②臨機応変/柔軟な対応力
- ③社外や異種の巻き込み力
- ④失敗したときの姿勢/思考
- ⑤モチベーション/意味づけする力
- ⑥いざというときの自身の突破力
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。DX人材の育成やDX推進方法の検討の仕方などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
①不確実な未来への創造力
不確実な未来への創造力とは、DXの取り組みとして自身が集中する領域を自ら定め、新分野への挑戦もいとわない姿勢のことです。
現在は、VUCA(「Volatility=変動性」、「Uncertainty=不確実性」、「Complexity=複雑性」、「Ambiguity=曖昧性」)の時代とも呼ばれ、新しい技術の急速な進歩や市場環境の激しい変化により、未来のことが全くわからない時代に突入しています。
そのような中で重要なのは、今まで挑戦したことがない分野にも果敢に挑み、自ら未来を切り開いていく力です。DXは、全く新しいデジタル技術を積極的に取り入れ、業務プロセスやビジネスモデルを変革していく取り組みであり、まさに未来を創造していくスキルが問われる分野と言えます。
②臨機応変/柔軟な対応力
臨機応変/柔軟な対応力とは、計画通りのマネジメントではなく、市場環境や顧客動向などの外部の状況変化を踏まえて、目標を見失わず、適切にピボットしながら進んでいく姿勢のことです。
変化の激しい時代においては、顧客のニーズや競合の状況も絶え間なく移り変わります。そのため、DXのプロジェクトを推進するにあたっても、当初の計画に縛られず、絶えず状況の変化に応じて方向性を修正していく柔軟性が求められるのです。
このような、周りの変化に応じて方向性ややり方を修正していくことをアジャイルと呼び、このような形でプロダクトやシステムの開発をしていくことをアジャイル開発と呼びます。DXにおいては、このアジャイル開発を前提としたプロジェクトが主流となっています。
③社外や異種の巻き込み力
社外や異種の巻き込み力とは、対立する周囲のメンバーを巻き込むだけでなく、外部の人とも関係を構築し、自己成長や変化の糧にできる受容力を言います。
DXは、既存のビジネスの変革を伴うものであり、単一部門ではなく、全社的に取り組んでいくべき施策になります。そのため、DXを実現するには、他の部署との連携が必要不可欠であり、自分と異なる考えを持った他者とも協力していく必要があります。
そのため、DX人材には、どのような相手とも上手にコミュニケーションをとり、協力体勢を構築していくコミュニケーション能力が求められます。
④失敗したときの姿勢/思考
DXという未知の領域に挑戦するからには失敗もつきものです。仮に失敗したとしても、立ち止まらず、そこから学べることを吸収して改善を重ねていく姿勢が重要となります。
DXにおけるよくある失敗として、既存の古いシステムから移行ができない、DX人材を十分に確保できない、従業員のITリテラシーが不足しているなどといった例が挙げられます。
これらの失敗は誰もが経験していることであり、このような失敗に直面してでも前進を続けるか、プロジェクトを中止するかで、中長期的な会社としての強さは大きく変わってくるでしょう。
⑤モチベーション/意味づけする力
モチベーション/意味づけする力とは、自ら解決したい課題を明確にし、自らの言葉で話し、前向きに取り組む姿勢のことです。主体性や好奇心とも言い換えられます。
DXの推進に当たっては、DXで何を解決したいのかを明確にすることが何よりも重要となります。これが不明確なまま闇雲にプロジェクトを進めても、成果に繋がる施策にはなりません。
自ら課題を設定し、それを解決するための戦略や計画を主体的に作成するリーダーシップも、DXにおいては重要となるのです。
⑥いざというときの自身の突破力
自身の突破力とは、解決困難な状況に陥った時でもあきらめずに様々な方法を探索し、壁を突破するためにリーダーシップを発揮する姿勢のことです。
自ら取り組むと決めた施策に対して、最後まで責任をもってやり通すことは、DX人材に限らず、マネジメント的な立場を務めるすべての人がもつべき姿勢と言えるでしょう。
特に、DXという未知の領域では、前例のない解決困難な課題に直面する可能性が高いです。そのような状況でも、冷静に頭を使い、柔軟に解決策を導いていく突破力が、DX人材には必要なのです。
経産省が掲げるDX人材の5つのタイプ

経済産業省は、DX人材の重要性を踏まえて、企業のデジタル人材確保・育成の指針として「デジタルスキル標準」を策定しています。これによると、DX人材は、大きく以下の5つのタイプにわかれるとされています。
タイプ | 概要/役割 |
---|---|
ビジネスアーキテクト | DX推進の目的の設定関係者間のマネジメント含む、プロジェクト全体の進捗管理 |
デザイナー | ビジネス視点と顧客視点を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発プロセスを策定それらに沿った製品・サービスのデザイン検討 |
データサイエンティスト | データを活用した業務変革・新規ビジネスの創出に向けて、データ収集・解析の仕組みづくりデータから得られた示唆を踏まえた製品・サービスのアイデア検討 |
ソフトウェアエンジニア | デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステム・ソフトウェアの設計・運用新技術やツールを起点とした製品・サービスのアイデア検討 |
サイバーセキュリティ | 業務プロセスの基盤となるデジタル環境におけるセキュリティリスク対策の実行セキュリティルールやプライバシーポリシーの策定 |
デジタルスキル標準では、DX推進のためには、上記5つのタイプの人材が、様々な場面で協働関係を構築することが重要であるとしています。
DX人材を獲得する3つの方法

DX人材を獲得する方法として、以下の3つが挙げられます。
- ①社内でDX人材を育成する
- ②DX人材を採用する
- ③DXコンサルティングを依頼する
それぞれについてわかりやすく解説していきます。
※300事例の分析に基づく、企業によるDX人材育成から推進方法まで、王道13パターンと成功事例をまとめた資料をダウンロード頂けます。
①社内でDX人材を育成する
現時点で社内にDX人材がいなかったとしても、研修や勉強会を開催することでDX人材を育成し、将来のDX人材の獲得につなげることができます。
例えば、空調機メーカーのダイキンは、社内にダイキン情報技術大学を開設し、希望する社員に対して2年間のICT教育を実施しています。
また、社内で研修や勉強会、プログラムを計画・実行することが難しい場合には、外部の研修・勉強会サービスを活用することもおすすめです。
②DX人材を採用する
社内でDX人材を育成する方法は中長期的なものであり、足元のDX人材獲得には繋がりません。すぐにDX人材がほしい場合には、外部からDX人材を新たに採用する必要があります。
DX人材を採用する上で重要なポイントとして、DX人材の中でもどのタイプの人材がほしいのかを明確にすることが挙げられます。この点を明確にしておかないと、自社の課題解決にマッチしないスキルをもった人材を雇うことになり、採用コストが無駄になってしまうので注意しましょう。
③DXコンサルティングを依頼する
DX人材が不足している中、外部から新たにDX人材を採用するのも簡単ではありません。DX人材の育成・採用に代わる方法として、DXコンサルティングに依頼する方法があります。
DX推進を専門とするコンサルティング会社に依頼することで、自社に知見がなくても、効率的にDXを進めることができます。
DX人材を採用・育成する際の3つの注意点

DX人材を採用・育成する際の注意点として、主に以下の3つが挙げられます。
- ①どのような人材がほしいのかを明確にする
- ②DX人材を適切な部署に配置する
- ③最新知識を継続的にキャッチアップする
それぞれの注意点について分かりやすく解説していきます。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。DX人材の育成・採用や自社に合った推進方法、検討の進め方などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
①どのような人材がほしいのかを明確にする
一口にDX人材と言っても、プロジェクト全体のマネジメントをするマネージャー、ITツールに詳しいエンジニア、データ分析を得意とするデータサイエンティストなど、様々なタイプが存在します。
そのため、自社にどのようなスキル・知見が不足しているのかを確認した上で、必要な人材像を明確にすることが重要です。
このステップを踏まないと、自社の課題解決・目的達成にマッチしない人材を雇うこととなり、採用コストが無駄になるという自体に繋がりかねません。
②DX人材を適切な部署に配置する
獲得したDX人材を適切な部署に配置し、適切な役割を与えることも重要です。通常は、企業のDX推進室や経営企画部などに配置することが多いですが、DX推進の目的や獲得した人材の役割・スキルによっては、別の部署に配置した方がうまく回る可能性もあります。
DX人材を配置するにあたっては、既存の枠組みにとらわれず、部署同士の関係も踏まえ、各人材が最も働きやすい環境で働けるように取り計らう必要があります。
③最新知識を継続的にキャッチアップする
AIやIoTをはじめとするデジタル技術の進化とそれに伴う各種ITツールのアップデート・趨勢は目まぐるしく変化しています。
継続的に最新知識をキャッチアップしておかないと、自分がもっているスキルも陳腐化し、使い物にならなくなってしまう可能性があります。
そのため、「DX人材を獲得して終わり」とするのではなく、継続的に最新情報の収集や学び直しを行い、知識をアップデートしていくことが重要です。
DXを成功させるための5つのポイント

DXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
※300事例の分析に基づく、DXの成功に向けて外せない25のポイントをまとめた資料をダウンロード頂けます。
⇒DX成功へのチェックリストの資料ダウンロードはこちら(無料)
①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。自社に合った推進方法や進め方などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
DXに関する活用個別無料相談会実施中
DX総研では、DXに関する個別無料相談会を実施しています。
各社様のご要望に合わせ、最新の市場動向や具体的な活用アイデアなどを、個別のオンラインMTGにて、無料でご紹介させていただきます。
以下のようなお悩みをお持ちのご担当者様は、この機会にぜひお申込みください。
- 自社がデジタルを活用してどんなことができるか知りたい
- DXをどのように進めれば良いか分からない
- 自社にデジタル活用の経験や知識のある人がおらず困っている