日本でDXが進まない5つの理由をデータを元に解説|解決策も紹介

コロナウィルスの流行をきっかけにDXという言葉が普及し、多くの日本企業がDXの取り組みを行っています。

 

一方で、依然としてDXの取り組みが進んでいない企業も多く、米国などと比べても日本企業のDX化は遅れている状況です。その理由としては、知識や人材の不足、予算の不足、旧システムの常態化など、様々なものが挙げられます。

 

本記事では、データからわかる日本企業のDX推進の現状、日本においてDXが進まない5つの理由、DXの具体的な進め方、日本企業のDX成功事例、成功のポイントをわかりやすく解説していきます。


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目次

そもそもDXとは?

DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、業務やサービス、ビジネスモデルを変革し、企業の競争優位性を高める取り組みのことです。

 

単なるデジタル化・IT化ではなく、デジタル活用により、業務やサービス、ビジネスモデルを大きく変革していく取り組みであるという点が大きなポイントです。

 

経済産業省は、2018年に発表した「DX推進ガイドライン」において、DXを以下のように定義しています。

 

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

 ー出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0

 

例えば、動画配信大手のNetflixが、宅配型のDVDレンタル事業からサブスクリプション型のオンライン動画配信サービスへとビジネスモデルを変革したのは、DXの代表的な事例といえるでしょう。

 

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日本におけるDX推進の現状をデータに基づき解説

日本でDXに取り組んでいる企業の割合
(出典:IPA「DX動向2024 DXの取組状況(経年変化および米国との比較)」)

情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX動向2024」によると、日本でDXに取り組んでいる企業の割合は、2021年度の55.8%から、2023年度には73.7%に増加しており、DXが着実に企業に浸透していることがわかります。

 

業種別でみると、金融・保険業が97.2%、製造業等が77.0%ととても高いのに対し、サービス業は60.1%と比較的低い割合にとどまっています。

 

DXに取り組まない理由
(出典:IPA「DX動向2024 DXに取組まない理由(従業員規模別)」)

一方で、DXに取り組んでいないと回答した企業のうち87.3%は、「今後も取り組む予定はない」又は「取り組むかどうかわからない」と回答しています。DXに取り組まない理由として、「必要な知識や情報が不足している」と回答した企業の割合が59.0%、「DXに取り組むメリットがわからない」と回答した企業の割合が43.6%となっています。

 

また、DXに取り組んでいる企業の中で、DXによって実際に成果が出ていると回答した企業の割合は、2023年度において64.3%となっています。これに対し、米国においては、2022年度時点で「成果が出ている」と回答した割合は89.0%に達しています。

 

このように、日本においても、DXに取り組む企業は年々増えているものの、DXに取り組まない企業も多く、大きな差が生じています。また、DXの取り組みで実際に成果が出ている企業の割合も増えてはいるものの、米国と比べると圧倒的に低い状況となっています。

 

日本でDXが進まない5つの理由と解決策

日本でDXが進まない5つの理由と解決策

日本でDXが進まない理由として、以下の5つが挙げられます。

 

  • ①DXを推進できる人材の不足
  • ②DXを実現するための予算の不足
  • ③レガシーシステムによる導入余地の不足
  • ④明確な目的やビジョンの不足
  • ⑤社員のITツール活用能力の不足

 

それぞれについて、具体的な解決策とともにわかりやすく紹介していきます。

 

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①DXを推進できる人材の不足

DXを推進できる人材の不足
(出典:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課

日本でDXが進まない理由として真っ先に挙げられるのが、DXを推進できる人材が不足していることです。全社的なDXを推進する場合、最新のテクノロジーを使いこなせるエンジニアはもちろん、ビジネス戦略とデジタル活用の両方に知見をもつリーダーが各部門に必要となります。

 

経済産業省の調査によると、国内のIT人材の需要は拡大し続けるのに対し、供給は2019年をピークに減少しており、2030年にかけて40〜80万人規模で不足すると予想されています。このように、DX人材は新卒・中途問わず争奪戦が続いており、希望通りに採用が進むことは稀という状況です。

 

DX人材を確保するためには、外部からの採用だけに頼らず、研修や勉強会の実施により、社内でDX人材の育成に努めることが重要です。また、すぐにDXを推進したい場合には、外部の専門コンサルタントに依頼することも有効な手段となるでしょう。

 

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②DXを実現するための予算の不足

DXを実現するための予算の不足

DXの推進にはツールの導入や新たなシステム開発などが必要となり、数百万円〜数千万円の費用が必要になることも少なくありません。

 

また、DXは、従来の個別改善型のデジタル化と比べ、業務プロセスやビジネス全体の大規模な変革に取り組むことになるため、比較的高額な初期費用が必要になります。 

 

このように、DXには多額の初期費用が必要になることが、多くの企業がDXに足踏みをする理由の一つとなっています。

  

一方で、数年スパンで見ると大きな成果が期待できるため、中長期的視点に立ち、コスト削減や売上向上の効果を考慮することが重要となります。また、官公庁や自治体は、DXに取り組む企業に向けて補助金や助成金を支給する制度を設けており、このような制度を活用することも有効でしょう。

 

③レガシーシステムによる導入余地の不足

DXの取り組みは、既存のシステムから新しいシステムへの移行を伴うケースが多いです。システムの移行そのものに加え、データのフォーマット変換や新たな業務プロセスの設計、利用する社員への研修など、様々な取り組みが必要となります。

 

特に、複雑化・ブラックボックス化が進みレガシー化してしまったシステムからの移行に取り組む場合、その技術的・工数的なハードルはかなり高く、現場が難色を示すということは少なくありません。

 

一方で、移行の難易度が高くなっていることは、そのシステムを利用し続けるための運用コストやリスクが大きくなっていることを意味する場合が多いため、移行に取り組む意義はより大きいと言えます。

 

解決策としては、ITに詳しい外部のエンジニアに委託したり、コンサルティング会社に相談することが考えられます。

 

④明確な目的やビジョンの不足

DXが進まない理由として、経営者や管理職層に明確な目的やビジョンが存在しないことが挙げられます。

 

目的やビジョンがない状態でDXの取り組みを進めても、計画倒れに終わったり、全く成果に繋がらないままコストだけを無駄に浪費してしまう事態になりかねません。

 

そのため、同業他社の事例を参考にしたり、外部のコンサルティング会社に相談するなどして、自社においてどのような目的・ビジョンのもとでDXに取り組んでいくかを明確にすることが重要です。

 

⑤社員のITツール活用能力の不足

DXにより、ITツールを導入しても、それが実際に現場の社員に使われないと意味がありません。ところが、社員のITツール活用能力の不足により、せっかくツールが導入されたのに使われないまま終わってしまうという事態が生じることが少なくありません。

 

社員が正しく効果的にITツールを活用できるように、研修や勉強会を開催したり、ガイドラインやマニュアルを策定することが重要です。

 

近年では、DXを専門とする企業が、外部向けにセミナーや研修サービスを提供していることもあり、このようなサービスを利用することも有効です。

 

現状を脱却してDXを進めるための6つのステップ

DXの進め方|具体的な6つのステップ

DXが進まない現状を脱却してDXを進めるためには、大きく6つのステップを踏む必要があります。

それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。

 

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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する
(出典:経済産業省「DXレポート2.1」

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。

 

「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。

 

本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。

自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。

 

例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。

 

ステップ2:自社の現状と課題を把握する

DX ステップ2:自社の現状と課題を把握する
(出典:独立行政法人情報処理推進機構「「DX 推進指標」とそのガイダンス」

続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。

 

本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のDX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。

 

それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。

 

ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する
(出典:独立行政法人情報処理推進機構「「DX 推進指標」とそのガイダンス」

前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。

 

検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。

 

デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。

 

そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。

 

例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。

 

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ステップ4:DX推進チームを構築する

ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。

 

そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。

 

また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。

  • プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
  • テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
  • UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
  • エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
  • データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当

 

これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。

 

DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。

 

ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる

これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。

 

ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。

 

そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。

 

前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。

 

これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。

 

ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

DX ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。

 

これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。

 

さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。

 

DXを成功させるための5つのポイント

DXを成功させるための5つのポイント

DXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。

 

  • ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
  • ②自社ならではのDX戦略を策定する
  • ③十分なDX人材を確保する
  • ④スモールスタートクイックウィンを実現する
  • ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

 

それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。

 

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①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む

DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。

 

そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。 

 

具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。

 

一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。

 

②自社ならではのDX戦略を策定する

自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。

 

その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。

 

そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。

 

③十分なDX人材を確保する

DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。

 

本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。

 

また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。

 

そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。

 

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④スモールスタートクイックウィンを実現する

DX スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。

 

そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。

 

そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。

 

取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。

 

これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。

 

⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

DX ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。 

 

そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。

 

一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。

 

もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。

 

DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。

 

日本企業のDXの成功事例5選

経済産業省によりDXグランプリ企業として表彰された、DX成功事例の中から、特に注目すべき5社の取り組みをご紹介します。

 

  • ①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
  • ②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
  • ③【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
  • ④【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
  • ⑤【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現

 

それぞれの事例についてわかりやすく紹介していきます。

 

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①【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築

【ダイキン】空調機の効率的な稼働を実現するIoTシステムの構築
(画像:ダイキン)

ダイキン工業は、空調機や化学製品の製造を手掛ける大阪に本拠を置く世界的なメーカーです。同社は、2021年より「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始し、IoTにより空調機をクラウド環境に接続して一括管理を可能にし、業務やエネルギー消費の効率化を実現しています。

 

【課題・背景】

  • オフィス空調設備のエネルギー消費量を最適化し、コスト削減と環境負荷の低減を目指す顧客企業のニーズが増加していた
  • 多くの顧客企業が、設備管理者の人手不足に伴い、オフィス空調設備の運用・制御を効率化する必要性に迫られていた

 

【具体的な取り組み】

  • 空調設備をインターネットでつなぐ「オールコネクテッド戦略」というプロジェクトを開始
  • 各拠点の空調設備をつなぐクラウド型の空調コントロールシステム「DK-CONNECT」の構築

 

【得られた成果】

  • 100万台以上のエアコンの接続と分単位のデータ取集・リアルタイム制御を実現
  • スマホやタブレットから空調設備の監視・運用が可能となり、オフィスを巡回する手間をカット、業務時間の短縮を実現
  • 部屋単位で空調を制御したり、人数に応じて自動で設定温度を調整するなど、空調設備の運用最適化によるエネルギー消費量の削減

 

②【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上

【アシックス】デジタル上の顧客接点を強化しEC/D2C売上比率を大幅に向上
(画像:アシックス)

アシックスは、スポーツ用のシューズやウェアなどを製造・販売する日本を代表するスポーツ用品メーカーです。同社は、ランナー向けのスマホアプリなどを通じてデジタル上での顧客との直接の繋がり強化を進めることで、販売に占めるEC/D2C比率を高め、収益率の向上を実現しています。

 

【課題・背景】

  • コロナをきっかけとする買い物のオンラインシフトに伴い、ECやD2Cでの販売比率を向上させ、売上げ拡大を図る必要に迫られていた
  • アシックスの売上のうちECでの比率はわずか数%であり、EC比率拡大に向けた施策が喫緊の課題となっていた

 

【具体的な取り組み】

  • ECサイトと連動し、限定クーポン等が貰えるロイヤリティプログラム「OneASICS」を展開し顧客接点を強化
  • ランニングの記録と仲間とのシェアができるスマホアプリ「アシックスランキーパー」を提供し購入後の顧客との接点も獲得
  • 購入後を含めた顧客データを活用し、各顧客の身体にフィットした商品を提案

 

【得られた成果】

  • 卸売中心で顧客接点が限定的だったが、デジタル顧客基盤が1,000万人超へ
  • 購入後も含めた多様な顧客接点の獲得により、ファン化を促進しLTVも向上
  • 課題としていたEC売上比率が5%から18%へ、D2C比率が17%から33%へ向上

 

③【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現

【LIXIL】接客等のDXを進め業務効率化と顧客体験向上を同時に実現
(画像:LIXIL)

LIXILは、建築材料や住宅設備機器などを製造・販売する日本を代表するメーカーの一つです。同社は、製品設計から接客まであらゆる販売プロセスにAIやIoTなどのデジタル技術を取り入れて、業務効率化と顧客体験(CX)の向上を同時に実現しました。

 

【課題・背景】

  • コロナをきっかけとするECの普及に伴い、オンラインでの顧客接点・販売チャネルの確保の必要性に迫られていた

 

【具体的な取り組み】

  • LIXILの製品を購入したい企業に対して、自宅から接客を受けられるサービス「LIXILオンラインショールーム」の提供
  • AIが顧客の希望に寄り添った見積りプランを提示する「かんたんプラン選び」の提供

 

【得られた成果】

  • 忙しい人でも気軽に製品購入に関する相談や見積りの取得が可能となり、累計相談数15万組突破、顧客満足度93%を達成
  • 時間を選ばず利用できるサービスとして「日本子育て支援大賞2023」を受賞

 

④【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供

【コマツ】IoT・AIを搭載したスマート建機ソリューションの提供
(画像:コマツ)

コマツは、ショベルやブルドーザーなどの建設機械や鉱山機械の製造を手掛ける日本の大手建設メーカーです。同社は、IoTやAIなどのデジタル技術を建設機械や産業機械に搭載した新たなソリューションを開発・提供し、製造業界や建設業界におけるモノづくりの現場のDXを支援しています。

 

【課題・背景】

  • 建設業界の人手不足に伴う、現場作業の効率化・省人化のためのソリューションを求める顧客企業がますます増えていた

 

【具体的な取り組み】

  • 建設・製造業界の企業に対して、遠隔地から機械の稼働状況を確認できるIoTを活用した管理システム「Komtrax」の開発・提供
  • 建設・製造業界の企業に対して、AIが部品の劣化状態を把握し、故障前に交換時期を予測する予知保全システムの提供
  • 建設業界の企業に対して、センサーを搭載し、自動制御を可能にしたICT建機の製造・販売

 

【得られた成果】

  • 機械の稼働状況の一元管理が可能となり、稼働率の向上、メンテナンス時期の把握、生産量集計の自動化などによる顧客の現場作業の効率化・生産性向上を実現
  • ある企業は、Komtraxにより、設備の稼働率が向上し、生産性が140%も増加するなど大幅な改善を実現
  • 遠隔地から顧客の機械の稼働状況や部品の劣化状態の把握が可能となり、効率的かつ適切な修理・保全サービスの提案が可能に

 

⑤【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現

【丸井グループ】百貨店×フィンテックにより売上の多角化を実現
(画像:丸井グループ)

日本を代表するデパート「丸井」を運営する丸井グループは、DXを推進することで、金融サービスの提供など小売の周辺領域にもビジネスの幅を拡大しています。オンラインとオフラインを上手に統合し、実店舗・EC両方での売上拡大とクレジットカード発行による収益の拡大を同時に実現しています。

 

【課題・背景】

  • ECの加速に対応すべく、販売チャネルを多角化するとともに、フィンテック等の周辺領域にも参入して収益基盤を拡大したい

 

【具体的な取り組み】

  • フィンテック事業に参入。低収入の若年層にも低限度額でクレジットカードを発行
  • ITの活用により独自の与信システムを確立

 

【得られた成果】

  • 5年間でカード会員数が23倍に増加し、2021年3月時点で709万人・取扱高2兆円超に到達
  • 利用と支払を繰り返すことで顧客の信用が創造される仕組みを構築し、会員一人当たりのLTVが2~4倍の増加を達成

 

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