中小企業こそDXは必須!メリット・進め方・成功事例10選も紹介
DXと聞くと、「大企業が行うもの」というイメージを抱いている方も多いかもしれません。
しかし、ある調査によると、中小企業経営者の約3割は、すでにDXに取り組んでいるか、DXの取り組みを検討している、というデータが得られています。
このように、DXは大企業だけの問題ではなく、中小企業においても重要視されている重要な取り組みになっています。
本記事では、DX推進を検討している中小企業の方に向けて、中小企業におけるDX推進の現状、推進のメリット、具体的な進め方、成功事例などについて分かりやすく解説していきます。
またDX総研では、DXを検討・推進する上で必ず押さえておきたい、DX成功事例50選の取り組みや成果をまとめたレポートを無料で配布しています。ご興味のある方は、以下リンクからダウンロードしてご活用ください。
目次
- 日本の中小企業のDX推進状況は?
- “今”中小企業にDXが求められている3つの理由
- 中小企業がDXを推進する5つのメリット
- 中小企業のDX成功事例10選
- ①【浜松倉庫】倉庫管理システム「SEIJI」で営業利益率4.5%向上
- ②【リノメタル】会社まるごとDXで年間売上12.7億円増大
- ③【トーシンパートナーズホールディングス】DXで年間約8,800時間の工数を削減
- ④【西原商事ホールディングス】廃棄物管理システムを自社開発し、処理工程を見える化
- ⑤【山口産業】社内全体に主体性を持たせたDX推進で生産性向上
- ⑥【高山】コロナ禍での経営危機をきっかけにDXに着手
- ⑦【福島コンピューターシステム】コロナを機に短期間でのデジタル化を実現
- ⑧【永井製作所】伝統の金型づくりでDXを推進
- ⑨【田島石油】DXでの業務効率化により1年間で約5百万円の人件費削減に成功
- ⑩【鶴見製紙】10年間で全ての紙の点検表や伝票の大部分を電子化
- 中小企業のDX推進を阻む5つの課題
- 中小企業がDXを進める6つのステップ
- 中小企業がDXで成功するための5つのポイント
日本の中小企業のDX推進状況は?
中小企業基盤整備機構が2023年10月に公開した「中小企業のDX推進に関する調査」には、全国の中小企業経営者や経営幹部に対してDXに関するアンケートを行った結果が記載されています。
この調査では、DXに関して様々な質問がなされ、その回答結果が集計されました。具体的な結果の概要は以下の通りです。
項目 | 回答結果 |
---|---|
DXの理解度 | DXについて「理解している」「ある程度理解している」と回答した企業は49.1%とほぼ半数に上った |
DXの必要性 | DXについて「理解している」「ある程度理解している」と回答した企業のうち、DXについて「必要だと思う」と回答した企業は71.9%となった |
DXに期待する成果 | DXに期待する効果については、業務効率化が64%、コスト削減が50.5%、データに基づく意思決定が31%となった |
DXの取り組み状況 | 既にDXに取り組んでいる、あるいは取り組みを検討していると回答した企業の割合は31.2%となった |
DXの具体的な取組内容 | DXの取組内容としては、ペーパーレス化が64.4%と最も多く、次いでホームページ作成(47.1%)、営業活動・会議のオンライン化(47.1%)となった |
DXの取り組み成果 | DXの「成果が出ている」「ある程度成果が出ている」と回答した企業は76.7%となった |
このように、中小企業では、DXについて理解している企業ですら50%にとどまり、大企業と比べてもDXについての認知度・普及度は低いことがうかがえます。一方で、DXに取り組んでいる企業の8割近くは何かしらの成果が出ており、一度取り組みを開始すれば、既存業務を高確率で改善できることがうかがえます。
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“今”中小企業にDXが求められている3つの理由

近年、中小企業にDX推進が求められている理由として、以下の3つが挙げられます。
- ①企業間の競争激化への対応
- ②レガシーシステムの老朽化対策【2025年の崖】
- ③労働人口減少への対応
それぞれについて分かりやすく解説していきます。
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①企業間の競争激化への対応
2010年以降、誰もがスマートフォンやPCを通じてインターネットと繋がる時代となり、ビジネスの主戦場はリアルの世界からデジタルの世界にシフトしてきました。
そこで、各業界において、他社に先んじて、デジタルを活用した業務効率化/コスト削減や顧客体験の向上などを進めてきた企業が、市場シェアを拡大しています。
また、デジタルを活用し急成長を遂げるGAFAのようなテクノロジー企業は、国境や業界を問わず、それまでの勢力図を一変させるような動き(ディスラプション)を見せています。
そのため、ITやサービス業などはもちろん、小売や金融、製造業など比較的、リアルアセットの重要性や人手による仕事の割合が高かった業界でも、他業界や海外の新興企業から一気にシェアを奪われかねないという状況に置かれています。
このような状況に対応していくためには、これまで培った強みを活かしながら、DXを強力に推進し、競争優位性を高めていくことが求められます。
②レガシーシステムの老朽化対策【2025年の崖】

経済産業省によると、日本企業の約8割が、レガシーシステムと呼ばれる老朽化したITシステムを利用しています。
そのレガシーシステムの多くが、長年の継ぎ足しによって大きく複雑化しており、また開発担当の社員がいなくなっており中身が分からないブラックボックスになっています。
その結果、長期的に保守費や運用費が高くなってしまい、企業のIT関連予算の約8割が既存ビジネスの維持・運用にあてられているという問題があります。
経済産業省のレポートでは、このままDXが推進されない場合、2025年以降に国内全体で最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしており、このリスクは「2025年の崖」と呼ばれています。
③労働人口減少への対応

日本は今後少子高齢化が加速していき、それに伴う経済成長の低迷が危惧されています。日本の生産活動を担う労働人口は、2008年をピークに減少に転じており、企業の人手不足は深刻化しています。
また、諸国と比べた現状の労働者一人当たりの生産性も、20位以下で低迷している傾向にあります。
そんななか、経済成長を実現していくためには生産性向上が必要不可欠となり、その実現のためには、デジタルを活用した高付加価値のビジネスの創出や業務効率化などのDX推進が重要となります。
中小企業がDXを推進する5つのメリット

中小企業がDXを推進する代表的なメリットとして以下の5つが挙げられます。
- ①業務効率化やコスト削減を実現できる
- ②データ活用により企業の競争力を高められる
- ③新たなサービスやビジネスモデルを創出できる
- ④働き方改革を推進できる
- ⑤事業停止のリスクを回避できる(BCPの充実)
それぞれについて分かりやすく解説していきます。
※DX総研では経験豊富なコンサルタントによる、DXに関する個別無料相談会を実施しております。自社に合った推進方法や検討の進め方などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
①業務効率化やコスト削減を実現できる
DXを推進し、手作業で行っていた各業務のデジタル化を進めることで、業務効率化やコスト削減を実現できます。
例えば、書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理したり、RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化したりといった取り組みが挙げられます。
これらの取り組みにより、作業時間の短縮やヒューマンエラーの防止、作業人員の縮小などの成果が期待できます。
また、個別作業のデジタル化だけでなく、デジタル活用を前提とした、既存の業務プロセス全体の見直し・カイゼンを行うことで、より大きな成果を上げることが可能です。
②データ活用により企業の競争力を高められる
DX推進により、より多くのデータを収集したり、蓄積しているデータを有効活用することで、企業の競争力を高めることができます。
例えば、購入前〜購入後までの一連の顧客接点のデジタル化を進めることで、より広範囲な顧客情報や消費行動データを収集したり、これまで社内の各チームでバラバラに管理していたデータを、一元管理できるシステムを構築するなどの取り組みが挙げられます。
これらの取り組みにより、よりパーソナライズされた商品提案やプロモーション施策を実施したり、より詳細なデータを活用し、精度の高い戦略や企画の立案を行ったりすることが可能になり、競合との差別化を図ることができます。
③新たなサービスやビジネスモデルを創出できる
DXを推進し、既存業務のデジタル化を進めることは、新たなサービスやビジネスモデルの創出に繋がります。
既存業務のデジタル化に取り組む過程で、詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどを得ることができます。
それらを、新たなサービスの企画や構築に活用することで、既存事業の延長線上にはない、新たな顧客体験・提供価値を実現することに繋がります。
デジタルをベースとした新規性の高いサービスやビジネスモデルの創出により、競合との差別化や収益性の向上を図ることができます。
④働き方改革を推進できる
DXを推進し、デジタル活用により業務効率化を進めることで、働き方改革を推進することができます。
DXによる業務効率化は、従業員の長時間労働の削減に直結します。また、業務プロセスのデジタル化やコミュニケーションツールの導入などにより、リモートワークがしやすい環境を整備することで、柔軟な働き方を実現することにも繋がります。
これらの取り組みにより、より働きやすい環境を整え、従業員の負担/ストレスの軽減、モチベーションの向上が期待できます。また、捻出した時間をより付加価値の高い事業や業務に集中させ生産性を向上させることも可能です。
⑤事業停止のリスクを回避できる(BCPの充実)
DXに取り組むことで、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の充実に繋がり、緊急時の事業停止のリスクを回避できるというメリットもあります。BCPとは、災害や感染症の流行、システム障害などの緊急事態が発生した際の対策の計画のことを指します。
例えば、リモートワークを推進することで災害や感染症の流行時にも大きな支障なく業務を進められる、レガシーシステムを脱却することでシステム障害が発生し復旧にも時間がかかるといったリスクを避けられるといったメリットがあります。
このようなBCPの充実は、取引先や株主からの信頼性の向上や企業価値向上にも繋がります。
中小企業のDX成功事例10選
経済産業省は、他社のモデルケースになるような中小企業による優良なDX取組事例を、「DXセレクション」としてまとめています。以下では、DXセレクションの取り組みのうち、特に参考になる事例を10事例ご紹介します。
- ①【浜松倉庫】倉庫管理システム「SEIJI」で営業利益率4.5%向上
- ②【リノメタル】会社まるごとDXで年間売上12.7億円増大
- ③【トーシンパートナーズホールディングス】DXで年間約8,800時間の工数を削減
- ④【西原商事ホールディングス】廃棄物管理システムを自社開発し、処理工程を見える化
- ⑤【山口産業】社内全体に主体性を持たせたDX推進で生産性向上
- ⑥【高山】コロナ禍での経営危機をきっかけにDXに着手
- ⑦【福島コンピューターシステム】コロナを機に短期間でのデジタル化を実現
- ⑧【永井製作所】伝統の金型づくりでDXを推進
- ⑨【田島石油】DXでの業務効率化により1年間で約5百万円の人件費削減に成功
- ⑩【鶴見製紙】10年間で全ての紙の点検表や伝票の大部分を電子化
それぞれの事例について、具体的な取り組み内容や成果を分かりやすく解説していきます。
※中小企業を含む、企業による最新のDX成功事例50選の取り組みや成果をまとめた資料をダウンロード頂けます。
①【浜松倉庫】倉庫管理システム「SEIJI」で営業利益率4.5%向上

保管と輸配送基幹業務をベースに総合物流業を扱う浜松倉庫株式会社は、物流において先進的なDXの取り組みを進め、作業効率化、安全性の向上を実現しています。
【課題・背景】
- 生産人口減少による人手不足を補うための業務効率化が必要だった
- 競合他社との差別化による競争力の強化が求められていた
【具体的な取り組み】
- 倉庫管理システム「SEIJI」を開発
- SEIJIにより得られたデータをBI(Business Intelligence)ツールにより現状分析し、AIによる未来予測で戦略立案を実現
- 倉庫管理システムよりデータ化された倉庫指図と、他システムやロボットにより構築されるASRS(自動倉庫)の連携により、安全作業の提供を実現
【得られた成果・今後の展望】
- 生産性向上の実現により営業利益率4.5%向上
- より安全で効率的な作業の実現により、医療等の新分野へ参画
②【リノメタル】会社まるごとDXで年間売上12.7億円増大

金属加工業を手がける株式会社リノメタルは、クラウドサービスを活用し社内全体の業務を効率化しました。
【課題・背景】
- 「既存顧客への柔軟な対応」「新規顧客開拓」実現のために生産管理業務において「ミス・ムダ・属人化」から脱却する必要があった
【具体的な取り組み】
- SlackやAWSなど、5年間で28個のクラウドサービスを導入し、会社をまるごとDX化
- 製造現場においては生産管理システムを導入
【得られた成果・今後の展望】
- 生産管理業務工数が月間268時間削減
- 大手自動車部品メーカーからの大型案件の受注に成功し、年間売上12.7億円増大
- ミス・対応工数が月間358件・月間332時間削減
- 生産管理課の従業員は残業時間が80%減り、月1〜2日あった休日出勤は0日に
③【トーシンパートナーズホールディングス】DXで年間約8,800時間の工数を削減

不動産業を手がけるトーシンパートナーズホールディングスは、DXによるデジタル技術とデータの活用により、データドリブンな組織へと変革しました。
【課題・背景】
- 景気の変動にかかわらず安定的に収益を上げられる事業構造構築の必要性に迫られていた
【具体的な取り組み】
- 2021年11月に情報システム部内にDX推進組織を設置
- AI(モデリングツール)を活用した早期賃貸付けプロジェクトを始動し、賃貸募集時における適正賃料生成モデルを作成
【得られた成果・今後の展望】
- グループ全社の業務効率化によって年間約8,800時間の工数削減を実現
- 独自アプリの開発並びにIoT技術との連携等、顧客サポートの活性化を推進
④【西原商事ホールディングス】廃棄物管理システムを自社開発し、処理工程を見える化

廃棄物処理業を手がける株式会社西原商事ホールディングスは、DXで廃棄物処理におけるトレーサビリティを実現しました。
【課題・背景】
- 廃棄物処理法に基づいた処理工程のトレーサビリティの徹底が求められていた
【具体的な取り組み】
- 2007年に廃棄物管理システムの自社開発を開始
- 廃棄物一元管理システム『bee-net』を普及し、企業担当者による廃棄物情報へのアクセスを簡便化
- 廃棄物処理業者向けのアプリケーション『ビートルアシスト』を開発。ドライバーがスマートフォンからアプリへ入力したデータと『bee-net』を連携させたことにより、ドライバーが持ち帰る伝票を事務員が入力する作業の工程を削減
【得られた成果・今後の展望】
- 小売業を中心に全国7,000事業場の情報管理を経て、全国3,000社を超える同業他社とのネットワークを構築
- 廃棄物削減やリサイクル率向上等の環境負荷低減も実現
- 社内アンケートによると97%のドライバーが働きやすさが向上したと回答
⑤【山口産業】社内全体に主体性を持たせたDX推進で生産性向上

膜構造建築物や繊維などの製造業を手がける山口産業は現場を含む社内全体に主体性を持たせたDXを行うことで生産性の向上を実現しました。
【課題・背景】
- 自然災害やパンデミックなどによる仕入れ状況の変化にスピード感を持って対応する必要があった
- 高い技術力を必要とする膜構造建築のナレッジを承継する難しさや、少子高齢化等による人手不足に悩まされていた
【具体的な取り組み】
- 『DX人材育成』を会社の方針として位置付け社内プロジェクト化
- DX推進の課題はどこなのか月次経営会議で定期議題に挙げ、問題意識情勢とDXへの理解促進を推進
- 部門責任者がシステムや運用ルールを共有・実践することで、各事業部門毎にオーナーシップを醸成
【得られた成果・今後の展望】
- 5年で40種類以上のシステムやツールを導入したことで、全部門の工程が円滑化し、生産性が大幅に向上
- 社内のITリテラシーが高まったことで、『メタバースプロジェクト』などDXを加速させるプロジェクトへの参加希望者が増加
⑥【高山】コロナ禍での経営危機をきっかけにDXに着手

元々は文房具販売を行っており、現在はDX・IT企業として事業を進める株式会社高山は、社内において徹底したDXを推進しています。また、2022年1月の事業継承を機に社内で培ったDXノウハウを支援していくDX支援会社として業態を転換しました。
【課題・背景】
- 旧態ビジネスの文房具業界の衰退やコロナショックを機にDXに取り組む
【具体的な取り組み】
- デジタルマーケティング、CRM・SFA、販売管理から会計・給与系、オフィスEPR、生成AI、サイバーセキュリティ対策、ハイブリッドワークと一気通貫のデータ経営を徹底して実施
- 社員研修、勉強会でDXについて学ぶ環境を構築
- 内定者からテレワークアルバイト体制で早期育成、全ての教育コンテンツは社内SNS&動画にて集約し、各人の学習進捗、スキル状態を見える化
【得られた成果・今後の展望】
- 非生産的な労働をツールにより効率化したことで総労働時間を毎年各人5〜10%削減、生産性約120%上昇
- 2年連続で給与・賞与を増額でき、社員満足度向上
⑦【福島コンピューターシステム】コロナを機に短期間でのデジタル化を実現

ソフトウェア業を手がける福島コンピューターシステムは、コロナ禍で会社存続の危機に陥った際、効率化の必要性から短期間でのDXに成功しました。
【課題・背景】
- コロナ禍で社員が出社できない状況を想定し、仕事のやり方を変える必要があった
【具体的な取り組み】
- 企業間の契約書締結、請求書管理、契約書のAI審査、ファックスなどすべての業務をデジタル化
【得られた成果・今後の展望】
- ハンコは不要となり紙の使用量を46.8%削減、電力の使用量を17.3%削減
- 54.2%の社員がテレワーク可能に
⑧【永井製作所】伝統の金型づくりでDXを推進

金型づくり一筋で60年の歴史を持つ永井製作所は金型づくりという伝統的な領域においてDXを進めています。
【課題・背景】
- 業界の不確実性が高まり、生き残りのために持続可能な事業を実現させる必要があった
【具体的な取り組み】
- デジタルテクノロジーにおいて金型づくりの属人性体質の抜本的改革を実現
- デジタルに精通した地域DXコミュニティメンバーと連携しDX推進を確実化
【得られた成果・今後の展望】
- 未経験者が戦力になるまでの期間を80%短縮
- 年間の金型製作の請負能力を1.5倍向上
⑨【田島石油】DXでの業務効率化により1年間で約5百万円の人件費削減に成功

ガス・エネルギー業を手がける田島石油株式会社は、DXにより大幅な人件費削減に成功しました。
【課題・背景】
- DXで社内業務の効率化を実現し、顧客との対面での時間を増やしたい
- 少子高齢化による働き手不足に備えたい
【具体的な取り組み】
- 社員が各自にスマートフォンを持ち、システムをクラウド化することで情報のリアルタイムの共有を実現
- GoogleのBIツールであるLookerStudioを使用した「見える化経営」の実現
- 業務データは、全てグーグルワークスペースに移行
【得られた成果・今後の展望】
- スマートメーターで実施した業務改革とスプレッドシートを使用した基幹業務の効率化により1年間で約5百万円の人件費削減に成功
⑩【鶴見製紙】10年間で全ての紙の点検表や伝票の大部分を電子化

トイレットペーパーの製造販売を行う鶴見製紙株式会社は、部門横断でのDXを実施し、生産管理効率を向上させました。
【課題・背景】
- 生産工程におけるIoT化を進め、脱炭素化を推進しビジネスモデルの価値を高めたかった
【具体的な取り組み】
- 各部門に1名以上のDX委員会を任命し、DXに関する課題管理を部門横断で実施
- 10年間で全ての紙の点検表や伝票の大部分を電子化
- 収集した電子データはBIツールで分析
【得られた成果・今後の展望】
- 業務プロセス改善により属人化の解消、進捗が可視化され、効率的な生産管理が可能に
- すべての点検データを電子化してすぐ確認することで品質向上を実現
中小企業のDX推進を阻む5つの課題

中小企業のDX推進を阻む課題として以下の5つが挙げられます。
- ①初期投資やランニングコストがかかる
- ②デジタル人材の確保が難しい
- ③すぐには成果が出ない場合もある
- ④社内の関係部署と協力・連携しなければならない
- ⑤既存システムからの移行が難しい
それぞれについて分かりやすく解説していきます。
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①初期投資やランニングコストがかかる

DXの推進にはツールの導入や新たなシステム開発などが必要となり、数百万円〜数千万円の費用が必要になることも少なくありません。
また、DXは、従来の個別改善型のデジタル化と比べ、業務プロセスやビジネス全体の大規模な変革に取り組むことになるため、比較的高額な初期費用が必要になります。
一方で、数年スパンで見ると大きな成果が期待できるため、中長期でのコスト削減や売上向上の効果を試算した上で、適切な範囲内で予算を確保し投資を行うことが重要です。
②すぐには成果が出ない場合もある
業務プロセスの根本的な変革/効率化や新規事業の創出など、DXで大きな成果を上げるには、3〜5年ほどの期間が必要となるのが一般的です。
一方で、DX推進を始めてもすぐには期待する成果が上がらず、プロジェクトを打ち切りにしてしまうという企業も少なくありません。
そのため、「DXで大きな成果を上げるには中長期で取り組む必要がある」という認識を社内ですりあわせることや、最終ゴールに向けたマイルストーンを引き、初期フェーズでも進捗の評価を正しく行えるようにすること、比較的早期に成果の出やすい小規模なプロジェクトを走らせることなどが有効です。
③DX人材の確保が難しい

全社的なDXを推進する場合、最新のテクノロジーを使いこなせるエンジニアはもちろん、ビジネス戦略とデジタル活用の両方に知見をもつリーダーが各部門に必要となります。
経済産業省の調査によると、国内のIT人材の需要は拡大し続けるのに対し、供給は2019年をピークに減少しており、2030年にかけて40〜80万人規模で不足すると予想されています。このように、DX人材は新卒・中途問わず争奪戦が続いており、希望通りに採用が進むことは稀という状況です。
そのため、短期的には、外部ベンダーの起用などで体制を強化しつつも、中長期的には人材育成や採用の仕組みを強化していく必要があります。
④社内の関係部署の協力・連携が必要になる
DXの推進には、部門を横断する業務プロセスやシステムの見直し、加えて組織やビジネスモデルの再構築などが必要となります。
それらの取り組みを進める際には、社内の幅広い関係部署間の協力・連携が必要不可欠です。一方で、各部署や現場のメンバーは、目の前の通常業務を抱えているため、プロジェクトが円滑に進まないというケースが多く存在します。
そのため、全社としてのDXの必要性やビジョンを周知し、現場の声も吸い上げた上で、協力を得ながらDXを推進することが求められます。
⑤既存システムからの移行が難しい
既存システムから新たなシステムへの移行は、システムの移行そのものに加え、データのフォーマット変換や新たな業務プロセスの設計、利用する社員への研修など、様々な取り組みが必要となります。
特に、複雑化・ブラックボックス化が進みレガシー化してしまったシステムからの移行に取り組む場合、その技術的・工数的なハードルはかなり高く、現場が難色を示すということは少なくありません。
一方で、移行の難易度が高くなっていることは、そのシステムを利用し続けるための運用コストやリスクが大きくなっていることを意味する場合が多いため、移行に取り組む意義はより大きいと言えます。
中小企業がDXを進める6つのステップ

中小企業のDXの進め方は大きく6つのステップに分けられます。
それぞれのステップについてわかりやすく解説していきます。
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ステップ1:DXの目的・ビジョンを明確化する

DX推進の最初のステップとして、DXの目的・ビジョンを明確化しましょう。
「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定することで、その後の取り組み内容や優先度、進め方などを決定する軸とすることができ、ブレることなくプロジェクトを推進できます。
本ステップの検討には経済産業省の「DXレポート2.1」のフレームワークが役に立ちます。
自社の業務、製品/サービス、ビジネスモデルのそれぞれが、どの程度までデジタル化された状態を理想とするかを、市場環境や自社の特性を踏まえ、検討しましょう。
例えば、業務のデジタル化すら進んでいない企業であれば、3年後までにまずは業務のデジタライゼーションを目指す。一方で、業務のデジタル化が進んでいる企業であれば、3年後までに製品/サービスやビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションを目指す。といったビジョンの設定が考えられます。
ステップ2:自社の現状と課題を把握する

続いて、自社が現状どの程度DXを推進できているのか、ビジョンの実現に向け何が課題なのかを把握しましょう。
本ステップの検討には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」を活用することで、企業文化、推進体制、人材育成など、多角的な観点から評価を行うことができます。
それぞれの観点における自社の成熟度のレベルを把握することで、特にDX推進が遅れているポイントを明確にすることができ、その後の戦略や計画の策定に活かすことが可能です。
ステップ3:DXに関する戦略と計画を策定する

前ステップで策定したビジョンと自社の現状・課題に基づき、DXに関する戦略・計画を策定しましょう。
検討すべき項目は上記画像のように多岐に渡りますが、特に重要なのは、「戦略=デジタル化の優先度付け」です。
デジタル化の対象や取り組み内容の候補は極めて幅広いため、バラバラと取り組みを進めてしまうことでリソースが分散し、思うような成果が上がらないというケースは少なくありません。
そのため、取り組みの候補を幅出し・整理した上で、DXを推進しやすくインパクトも期待できる取り組みから着手し、その後難易度が高くよりインパクトの期待できる取り組みにシフトしていくといった進め方が有効となります。
例えば、受発注のやりとりに関する膨大な作業の効率化を重点課題とした企業であれば、まずは資料のペーパーレス化や判子の電子印化を進めた上で、その後一連の受発注プロセスをデジタル活用により自動化するといった進め方が考えられます。
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ステップ4:DX推進チームを構築する

DXを推進するには、ビジョンや戦略を社員に周知し、現場からの課題を吸い上げながら、各部門と連携・調整し、実行支援も行う、DX推進専門のチームが必要になります。
そのため、DX推進チームのメンバーには特に、デジタルへの知見、コミュニケーション能力、業務の知見などのスキルが求められます。
また、DX人材の具体的な職種の例は以下の通りです。
- プロジェクトマネージャー:DXやデジタルビジネス構築を主導するリーダー
- テックリード:システム設計や要件定義を担当し、開発を主導
- UI/UXデザイナー:DXやデジタルビジネスのユーザー向けのデザインを担当
- エンジニア:デジタルシステムの実装・インフラ構築を担当
- データサイエンティスト:事業・業務に精通しデータの収集・分析を担当
これらのDX人材の確保には、外部ベンダー等の人材を活用する方法と、社員に対するDX人材育成を実施する方法があります。
DX推進のスケジュールや、社員のDXスキルの有無、既存業務を含めたリソースの有無などを考慮し、自社に最適な方法を選択しましょう。
ステップ5:デジタル化により業務効率を向上させる
これまでに策定したビジョン・戦略・計画に基づき、実際に業務効率化に向けたデジタル化を推進していきましょう。
ここで、いきなり全社単位や部門横断の大規模なDXに着手してしまうと、デジタル化の難易度が高く、成果が出るまで長期間を要し、コストも膨大になってしまいます。
そこで、デジタイゼーション(書類で管理していたデータをクラウド上で一元管理する等)やデジタライゼーション(RPAの導入によりデスクワークの一部を自動化する等)など着実に成果の上がる取り組みを、特定の事業部や部門単位から進めるのがおすすめです。
前のステップまでは比較的トップダウン的な取り組みですが、本ステップからはいかに現場の各社員と深く対話し、小さな成功を積み重ねるというボトムアップ的な取り組みが重要です。
これにより、多くの人材から共感と信頼を勝ち取り、DX推進に巻き込んでいくことで、より大規模なDXの推進が可能になります。
ステップ6:PDCAを回し、ビジネスモデル変革まで繋げる

業務のデジタル化を進めることで、企業は今まで見えていなかった業務や顧客に関する様々なデータを収集・蓄積・可視化できるようになります。
これらのデータを分析し、新たな業務の課題やビジネスチャンスを発見し、取り組みを改善するというPDCAサイクルを、数ヶ月単位で何度も回すことで、大きな成果を上げることが可能です。
さらに、PDCAサイクルを回し続けることで、自社独自の詳細な顧客データやより効率的なオペレーション、先端技術活用のノウハウなどの強みが蓄積されていきます。この強み蓄積こそが、他社には真似できない、ユニークな新サービスやビジネスモデルの創出の源泉となります。
中小企業がDXで成功するための5つのポイント

中小企業がDXを成功させるためのポイントとして、以下の5つが挙げられます。
- ①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
- ②自社ならではのDX戦略を策定する
- ③十分なDX人材を確保する
- ④スモールスタートクイックウィンを実現する
- ⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する
それぞれのポイントについて分かりやすく紹介していきます。
①リーダーのコミットメントにより社内を巻き込む
DXは、個別業務のデジタル化だけでなく、全社規模の業務やビジネスモデル、組織文化の変革など、会社のコアとなる部分を大きく変えていく取り組みです。
そのため、経営陣や事業部のリーダーが起点となり、DXのビジョン・方針を明確に示し、社内全体を強力に動かしていく必要があります。
具体的には、「どのような中長期的なDXのビジョンを描くのか」、「業務や顧客体験、ビジネスモデルをどのように変えていくのか」、そのために「どの程度人材や予算を割り当てていくのか」などに対して、大きな権限を持って意思決定をしていくことが求められます。
一方で、経営陣やリーダー陣がDXに対する危機意識が低い場合などは、DX推進部門や経営企画部門などが主導し、リーダー陣を含め、DXに関する社内向けの勉強会/ワークショップを実施することも有効です。
②自社ならではのDX戦略を策定する

あらゆる人・モノ・コトがインターネットと繋がる現代で、人々の生活や業務、ビジネスの主戦場は、リアルの世界からデジタルの世界に加速度的にシフトし続けています。
その変化を踏まえ、いかにデジタルを活用し競争優位性を築いていくかは、全ての企業の経営戦略を考える上で必須のテーマとなっており、DX戦略を考えること=経営戦略を考えること、と言っても過言ではありません。
そのため、DX戦略を策定する際は、特定の事業部/部門×個別の業務×デジタル化という範囲で考えたり、同業他社が進めている取り組みをベースにして考えるといった、個別具体的なアプローチではなく、より中長期や全体のアプローチから、全社のビジョンや経営戦略、テクノロジートレンドや業界への影響などと連動させて考える必要があります。
③十分なDX人材を確保する
DXの成功に向けては、テクノロジーと経営戦略に対して深い知見を持つプロジェクトマネージャーや、専門的なスキルを有するエンジニア、デザイナーなどのDX人材を十分に確保することが必須となります。
本来であれば、既にDX人材が社内にいればよいのですが、ほとんどの日本企業で人材が不足しているという現状があります。
また、市場全体として人手不足で、DX人材の争奪戦となっており、採用も思うようには進められないというケースも多く見られます。
そのため、足元のDX推進にむけては、経営課題とデジタルの両方に精通した外部のエキスパートを活用しながら、中長期目線では実践や研修を通じた人材育成をしていくといったアプローチが有効です。
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④スモールスタートクイックウィンを実現する

DXがなかなか進まない理由として、業務や組織を大胆に変えていくことが必要な一方で、全社規模の大きな成果が上がるまでには5年程度を有するという点があります。
そのため、取り組みの方向性が正しくても、短期間では成果が見えにくいことから、部門間の軋轢や現場からの反発が生まれ、変革のスピードが落ちてしまうケースが少なくありません。
そこで、全社単位でのインパクトは小さくとも、比較的短期で成果が出る取り組みを進め、その成果を社内外に発信し巻き込んでいくことは非常に有効です。
取り組みの例としては、アナログデータのデジタル化や各種データの一元管理化、業務自動化ツールの導入などが挙げられます。
これらの取り組みにより小さな成功を積み重ね、他部門のリーダー陣や現場の社員のマインドが徐々に変わっていくことで、連鎖的に大規模なDXを推進しやすい状況を実現できます。
⑤ゴールへの最短かつ低コストなアプローチを設計する

業務の現状や課題を踏まえて設定したゴールに向けて、最適かつ低コストなアプローチ設計をすることは、DXの投資対効果を飛躍的に高めます。
そもそものDXの目的は、業務を効率化することや顧客により良い製品/サービスを届けることです。
一方で、「DXプロジェクトをやるぞ!」となると、本来目的であるはずのデジタル化自体が目的になってしまい、競合が取り組んでいるからといった理由で、自社にマッチしない大掛かりなデジタル化をすすめてしまうケースが少なくありません。
もし大規模なシステム開発をせずに効率化を実現できるのならそれがベストであり、そもそも業務は必要か、効率化のインパクトは大きいか、SaaSの導入で解決できないか、アジャイルな進め方で小規模なPoCで仮説を検証する余地はないか、などより幅広い視点で検討をするようにしましょう。
DXの実行フェーズになっても、デジタルへの知見はもちろんですが、全社単位での経営の視点や戦略思考が必要になります。
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